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無題?妖夢SS

妖夢「・・・・え・・・?」

自分の主人から発せられた言葉に耳を疑う妖夢

幽々子「聞こえなかったの?あなたにはこの仕事を辞めてもらいますって言ったのよ」

普段の何気ない会話のように平然と発せられたその言葉、
幼い頃からずっと自らの命は主人の為にあると信じていた妖夢にとって 
それは死刑の宣告にも等しかった

妖夢「わかりました・・・この魂魄妖夢が不要と申されるなら仕方ありません、
   ただちにこの白玉楼から去りましょう。」

主人の命令に逆らうなど一度も考えた事が無かった
お前は要らない、出て行けと言われても逆らう事もできず、ただ立ち去るしかなかった
きつい仕事を言いつけられる事もあった「春を集めて来なさい」などと無茶な命令をされたこともあった、
しかしこれほどまでに自分の意思と相反する命令があっただろうか



妖夢「これからどうしようか・・どこに住んでどうやって暮らせばいいんだろう」

数日の間、当てもお金も無く幻想境を彷徨う妖夢、冬の初めの魔法の森を歩き回り、ぽつぽつとまばらに残っていた木苺やブナの実で飢えをしのいだ
しかしそれらも人間の胃袋に十分な量ではなかった

寒さでじんじんと痛む両の耳、剣を持つのも辛くなるほどに冷え切った10本の指、雪が積もり乱れていく自慢の白い髪

冥界一の剣士と誇り高かったかつての自分
しかし今、ああ、私はなんと弱い生き物なのだろうと考える、涙がポロポロと零れ落ちた

魔理沙「おっおっおっ、妖夢じゃないか、こんな所でどうしたよ、山ごもりの修行か?

妖夢「・・・・」

魔理沙「どうもちょっと違うみたいだな」

魔理沙は妖夢がいつもの妖夢ではない事にすぐに気付いた、
魔法の箒の後ろに乗せて自分の家に連れ帰る魔理沙
それを見かけて激しくパルスィするアリス



魔理沙「散らかってるけどくつろいでけよ、良かったら風呂も貸してやるぞ、」

妖夢「ありがとうございます」

魔理沙「お腹減ってんだろ、これでも食べろよ」

妖夢「いただきます」

自分の昼食の為に作っておいたオニギリを気前良く差し出す魔理沙
妖夢はそれをもそもそと食べ始めた

魔理沙「白玉桜で何かあったのか?話だけならタダでいくらでも聞いてやるぜ」

魔理沙の言葉で食べるのを止める妖夢、そして震える身体から
涙と共に言葉を搾り出すようにか弱く喋りだした

妖夢「ゆゆ様が・・・・私の事・・・いらないって・・・」

魔理沙「・・・そうか」

何か事情はあるんだろうがこいつも苦労してんだなと
魔理沙は何とかして妖夢を慰めようと考えた

魔理沙「そうだ、せっかくだから今まで言えなかった幽々子の愚痴でも言ってみようぜ!」

妖夢「ゆゆ様の愚痴・・・ですか?そんなの思ったことも無かったです」

魔理沙「長く一緒だったんだから流石になんかあるだろ、ゆゆ様のブタやろーっ!とかゆゆ様のごくつぶしー!とかさ」

妖夢「う~ん、ゆゆ様の・・ゆゆ様の・・・・・・・ゆゆ様のにのうでプニプニッ!」

魔理沙「二の腕プニプニ?」

妖夢「プニプニなんです」

魔理沙「あははっ!そうか、二の腕プニプニかぁ!あははははははは、そこはデブでいいだろっ、にのうでプニプニ!あっはははははは」

妖夢「そんなに可笑しかったですか?ふっふふふふふふ」

魔理沙の大笑いに釣られて妖夢も笑い出した、
目に涙を浮かべながらの笑いであったが、少し気持ちが楽になった気がした。



魔理沙「これから何か仕事を探さなきゃいけないんだろ?だったら私にいい考えがあるんだ、」

妖夢「よい考え?」

魔理沙「私と妖夢と霊夢とで3人組の怪盗をやるんだ
     妖夢の剣術と私の魔砲、霊夢の術で最高の怪盗トリオになれるぜっ!」

妖夢「怪盗?悪い事はちょっと・・・」

魔理沙「落ち武者が盗賊になるのはよくある事だぜ」

妖夢「落ち武者ですか私は」

魔理沙の思いつきはそれまで信じていた道徳に反する物だったが、絶望しかけていた妖夢には楽しい事に感じられた
世間を騒がす大泥棒、庭師みたいな堅い仕事じゃないけれど、いっそこんな道も悪くないかな・・と




霊夢「ふざっけんじゃないわよ!私はこれでも聖職者なのよ!」

博麗神社に誘いに来ていた魔理沙と妖夢、もちろん霊夢が誘いに乗るはずは無かった、

霊夢「魔理沙はともかくとして妖夢まで一緒になって何やってるのよ!
   庭師の仕事はどうしたのよ!」

妖夢「クビになりました」

霊夢「えぇっ!?」

魔理沙「ちぇっ、しょうがないな、緑色でもいちおう絵的に成立するから早苗でも誘ってみるか、べ~~だ!」


霊夢は妖夢の言葉が信じられなかった、まさかあんなに忠誠心のあった妖夢を訳も無くクビにできる筈は無い、
これは調査するしかない、下手をするとあの亡霊ともう一度一戦交えるかもしれぬ、と霊夢は覚悟を決めた



翌日、霊夢は白玉楼を訪れた、庭番のいない庭はすんなりと通り抜けられた。
幽々子の真意を知るためにわざわざ地底から古明地さとりを呼び出し、庭に潜ませていた。

幽々子「あらあらよく来てくれたわね、まあお茶でも飲んでって」

霊夢「ちょっと聞きたい事があるのよ、妖夢をクビにしたという話は本当なの?

幽々子「ええ、本当よ」

霊夢「どうしてなの、あんなに強くてあんたに忠実だった妖夢をクビにするなんて」

幽々子「・・・あの子を自由にしてみたかったからよ」

霊夢「自由に?」

幽々子「あの子は生まれてから今まで私の為だけに生きてくれたわ、
    幼い頃、小遣いを貰って駄菓子を買うときも「ゆゆさまのすきそうなものー」という基準で選んできたくらいよ
    だから一度、私に仕える以外の自由な道を歩ませてみたらどうなるかなーと思って」

霊夢「自由な道ですか、それが悪い道であってもですか?」

幽々子「え?」

妖夢が魔理沙に誘われて泥棒になりかけていると霊夢から聞いた幽々子    
あのくそまじめだった妖夢が・・・
短期間のあまりの変化に幽々子は驚いたようだった

そして霊夢たちは白玉楼を後にした

霊夢「ご苦労だったわね、あの亡霊、何か嘘ついてた?」

さとり「いや、嘘はついてないけど気になることが・・・」

霊夢「何かあったの?」 

さとり「あの亡霊、心が凄く荒んでる、食欲がないみたいで最近はまともな物を食べてないようね
    それに庭師がいなくて荒れ放題の庭がすごく気になってる、
    そして何よりさみしさに耐えられなくなって来てて、心の中で「ようむ帰ってきて」と何度も泣いていたわ」

霊夢「そんなに妖夢にべったりだったのに・・・ホントに馬鹿な亡霊ね」



それから半月ほど経った頃、魔理沙と妖夢は幻想境中で盗掘を繰り返していた
どんな堅い扉や鍵も、妖夢の一閃は斬り壊した、壁や床を斬って逃走経路を作る事もあった


魔理沙「だいたいの所は行きつくした感があるな、そうだ、あそこに行ってみないか?」

妖夢「白玉楼ですか、いいですよ、もう未練もありませんし、」

魔理沙「よーし決まりだな、出発だー!」

白玉楼に着いた妖夢達、
しかし、それは妖夢がいた頃とはすっかり様子が変わっていた

妖夢「・・・・これが・・白玉楼?」

魔理沙「こんなに汚かったかな?」

庭師がいない庭は荒れ果てていた。雑草が生い茂り、ヤブ蚊が屋敷の中まで入り込む、
当の屋敷も、ゴミや枯葉が散乱し、優雅だった白玉楼の姿は失われていた。

魔理沙「こりゃあ盗むもんも無さそうだな、帰るか」

妖夢「ちょっと待って下さい、せっかくだからゆゆ様の様子を見てみます。」

魔理沙「ちぇっ、未練は無いんじゃなかったのかよ。」

幽々子は縁側で荒れ果てた庭をぼーっと見つめていた、
服はダルダル、洗濯もろくにしていない様子で所々染みになっており、
その瞳は心ここにあらずという風で、もはやかつての優雅な姿は無かった

妖夢「ゆゆ様・・・?」

幽々子「妖夢、妖夢なのね・・・久しぶり、
    魔理沙と一緒に暮らしてるって噂は本当だったのね」

妖夢「はい、」

幽々子「ごはん、ちゃんと食べてる?」

妖夢「はい」

どこで覗いていたのか魔理沙が会話に入ってきた

魔理沙「ふんっ、いまさら保護者のつもりかよ
    お前に捨てられた時、こいつがどんな状態だったか知ってるのか?
    寒いのと腹ペコなのでボロボロに弱りきってて、とても放ってはおけなかった
    わかるか?あんたは一羽じゃ生きていけない雛鳥を、巣から放り投げたんだ!」


幽々子は驚いた、まさか自分がそんなにも妖夢追い詰めてしまっていたとは
そして「一人でもそこそこ生きていけるだろう」という自分の根拠の無い思い込みを心底悔いた


魔理沙「妖夢に戻ってきて欲しいって顔してるな、
    でももう無理だぜ、妖夢はあんたから離れても立派に生きていけるんだ」

魔理沙の言葉から目を逸らすようにうつむく幽々子

魔理沙「どんなに妖夢が大事だったか今頃気付いてももう遅いよ、自業自得だぜ
    今度は逆に従者に見捨てられるとはな」

妖夢「もう止めてください、帰りましょう、魔理沙」

「帰りましょう」の言葉に幽々子はどうしようもなく悲しくなった、
ああ、今の妖夢の帰る場所はここじゃないんだ、と

二人が白玉楼の門から出た後、幽々子は布団にうずくまり、泣いた
自分の事を心から慕ってくれている少女にした残酷な仕打ち
最高の従者のありがたさを忘れてしまっていた自分の過ち
もう2度と自分の下へ帰ってくる事のない妖夢
罪悪感と喪失感が胸の中でグルグルと渦を巻き、吐き気となって幽々子を苦しめた
誰も助けてはくれない、一番に助けてくれる人を自ら捨ててしまったのだから


妖夢たちが魔理沙の家に帰ると、見慣れぬ人影があった

魔理沙「おっ、お客さんだ、誰かな?」

さとり「お邪魔してるよ、」

魔理沙「おお、烏の時の騒ぎ以来だな、」

さとり「じつは妖夢という人にお話があって来たのよ」

妖夢「私に?」

さとりは霊夢と一緒に白玉楼を訪ね、そこで幽々子の心を読んだ事を話した、
そして何故幽々子が妖夢をクビにしたのかを

魔理沙「う~む、究極のありがた迷惑って奴だな、でもなんであの時言わなかったんだ?」

さとり「自分の口から言っても言い訳にしかならないでしょう、」

妖夢「私がいらなくなったわけじゃなかったんだ・・・」

さとり「むしろその逆よ、あの亡霊は今あんたを渇望しているわ、
    でも、新しい生活を始めた今、もう戻る義理も必要性も無い、
    これからどうするか決めるのはあんたの自由よ

魔理沙「妖夢、どうするんだ?」


妖夢はふっと微笑み、語り出した


妖夢「あの時魔理沙が助けてくれなかったら、私は今ここにいなかったかもしれない
   一度は私を捨てた主人を助ける義理なんてないかもしれない
   それでも、それでも私はあの人が大切なんです・・・・・
   今までありがとう・・・魔理沙と一緒の毎日、楽しかったよ」

魔理沙「そうか・・・そうだよな、それがいいよな、」



朝の白玉楼、また切ない一日が始まる・・・起きるのが嫌になる、
いっそのこと朝なんてこないほうがいい、そう思いつつも朝の日差しには勝てず、目を覚ます幽々子
すっかりせんべい布団になった布団から起き上がり、ふと庭の方を見ると、不思議な事が起こっていた

雑草が生い茂り荒れ果てていたはずの庭が、庭師がいた頃のような元の整った庭に戻っていた

そして目の前に、失ってしまったはずの小さな従者がちょこんと座っていた

妖夢「おはようございます、幽々子様、一度は解雇を命じられた身でありながら、またここで働きたいと思い、
   ここに参りました、どうか、どうかもう一度あなたのお傍に置いて頂けないでしょうか、」

これは夢か、夢なら覚めないで、幽々子は妖夢に駆け寄り、ひっしりと抱きしめた

幽々子「妖夢・・・ごめんね、ごめんね、もう二度と・・・もう二度とあんな事しないから・・・・・」

妖夢「ただ今帰りました・・・ゆゆ様」

幽々子は溢れる涙を抑え切れなかった、妖夢の小さな胸で、涙が枯れるまで泣いた、

妖夢もまた涙を流していた、ああ、自分はこの人が大好きで大切なんだ、本当は片時も離れたくないんだと、改めて実感した

そしてあの決別がまるで夢だったかのように、白玉楼のいつもの生活が始まる



魔理沙「うんうん良かった良かった、やっぱり元の鞘に収まるのが一番だぜ」

アリス「そうよね!やっぱり魔理沙のパートナーは私じゃなくっちゃ!」

さとり「あんたどっから出てきた・・」

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最終更新:2008年12月18日 06:07
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