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【0章 ~私の名は…~】


 私が最初に覚えた感覚は、痛みだった。
 漆黒に沈む、何も見えない何も聞こえない永遠に続く暗き帳の中での、唯一の感覚。
 痛覚が訴える。
 私は、この先に進むべきではないのだと。
 この先には、絶望が待っているのだと。
 だからこそ私は、見えない足をその場に留まらせ、先に進むことができなかった。
 痛覚がだんだんと酷くなる。ズキズキと、まるで鋭い刃で差し貫かれるような激痛に、顔を歪める。
 激痛が続くと今度は、目の前に見えていた黒い闇自体がぼやけてきた。
 私は理解した。
 …あぁ、これは夢なのだと。ようやくこの長い夢から覚めることができるのだと。
 全身を満たす激痛に身をよじる事もできず、痛みの先にある安穏へと、私は意識を投げ捨てた。



~???・見知らぬ部屋~

 まるで長い夢を見ていたような倦怠感に包まれながら、私はゆっくりと身を起こした。
「……ここは?」
 思わず漏れる声。
 最初はそれが、自分が発した声だとは気付かなかった。
「ここ……は、私……は?」
 うっすらと目の前に流れる自身の長い髪を目で追った。髪は胸元に垂れ、自分の胸元には二つの小さな膨らみの間に小さなペンダントがかけられている。下半身は布団に隠れているため見えない。
 今度は自分の周りを確認する。どうやら、見知らぬ部屋のベッドを使い、眠っていたようだ。
 木造の建物の2階だろうか。窓から見える景色は、曇り空と向かいの建物の2階部分だけで、地面は全く見えない。
 部屋の中には建物と同じく木造の、小さな丸いテーブルが1つとタンスが1つ。テーブルのすぐ近くには椅子が2つほど置かれていた。
 そして何より目に付いたのは、テーブルの上に置かれた荷物。木造の部屋に囲まれたこの中で唯一メタリックな輝きを示す物質。
 一見すれば、ただの板のようにも見える。だがそれはただの板ではなく何かへ装着するような円形部と、ブレード状の長方形が組み合わさった機械のようだ。
 私は『それ』に見覚えがあった。
「これ……は……私、の…」
 ベッドから起き上がった私はゆっくりと『それ』に手を伸ばす。
 だが、私の指先が『それ』に触れた瞬間、突然爆音と同時に大きな振動が部屋を襲ったのだった。
「ッ!?」
 まるで、今まで緩慢だった動きが嘘と思えるほど俊敏にベッドから跳ね起き、窓の外へと身を乗り出して現状の把握に務める。
 身を乗り出して分かったことだが、やはり私が居た部屋は建物の2階部分に相当する場所だった。
 そして斜め向かいにある一軒家からもうもうと煙が立ち上っている。まるで何かが爆発したかのようだ。
 破壊現場となったそこには、まるでガラクタを集めて作り上げたような、機械のドラゴンが1体と、その足元にモヒカンの男が1人、猫背の取り巻きであろう男が2人存在していた。
「あれは……ッ!」
 私がその姿を、機械でできたドラゴンを見た瞬間、頭の中を懐かしい感覚が過ぎる。
 その感覚が一体何なのか思い出せないまま、私は身を乗り出していた身体を部屋の中へ戻す。そしてテーブルの上に置かれていたメタリックな物質、そう…これはデュエルディスクと呼ばれる機械だったはず。
 デュエルディスクを手にし、再度窓へと向き直る。窓の縁に足を掛けて、私はそのまま空中へと身を投げたのだった。



~??? 中央広場・倒壊した奥屋前~

「ハーッハッハッハッ! オレ様に楯突くからこんな目に遭うんだよ、分かったかこのクソ親父が!」
「そうだ! ジョニーの兄貴の言うとおりさっさと許可証を渡していれば、怪我なんてしなくても良かったのによぉ!」
「馬鹿な野郎だぜ。兄貴を怒らせたら誰にも手を付けられねぇってのに。なぁ、兄貴!」
 モヒカンの男が笑いながら、倒壊した建物に寄りかかる、大怪我をした初老の男性へと視線を向ける。
 取り巻きの二人も周囲から降り注ぐ幾多の視線に対して気にすることなくバカ笑いを続けていた。
「うぅ、ぐ……」
「村長さんよぉ。まだ今なら許してやらないこともないんだぜぇ? きちんと土下座して、この俺様に対して『楯突いてスミマセンでした、ジョニー様』って言えればなぁ」
「ぐぅ、が……はぁ…はぁ……」
「おいおい、ジョニーの兄貴の話を聞いていんのかよ? 土下座しろって言ってんだよ、土下座しろって!」
「ギャハハハハハ、無理だぜ兄貴! コイツ、耳が遠くなっちまってるみたいで聞こえてねぇんだよ!」
 勝手に盛り上がる三人に対し、付近の住民達は何も手を出すことができないようだ。
 何か一言でもあの場に水を差したら、その瞬間標的は自分になるかもしれない。そんな被害者の心理が働き、ただ呆然と今起きている一方的な暴虐を見つめることしかできないように見える。
 たった一人、この私を除いて。
「……ねぇ」
「あん? なんだ姉ちゃん、オレ様達に何か用でもあんのかぁ?」
 ジョニーと呼ばれたモヒカン頭の男が首から上だけを回して私へと視線を向ける。私は敢えて視線を逸らし、モヒカン男の後ろにそびえる巨竜へと視線を向けた。そして、ジョニーの腕に付けられているデュエルディスクにも。
「貴方が控えてるそのドラゴン」
「あぁ、コイツか。オレ様の優秀な手下の《スクラップ・ドラゴン》がどうかしたのか?」
「おいおい姉ちゃん、そんな着の身着だけなんて、兄貴と俺達に遊んでもらいたいのかぁ?」
 取り巻きの一人が鼻を荒くして一歩私へ近づく。まるで捕えようとしているのか、右手を持ち上げて指をわきわきと動かしている。
 取り巻きの言葉を理解したジョニーも顔を嫌らしく歪め、
「なるほど、オレ様達と遊びたいってのか。イイぜ、こっちに来いよ。オレ様達が天国へ連れてってやるよ」
 ジョニーが言葉を言い切ると同時に、取り巻きの指が私の腕に触れる。
 そして次の瞬間、私は触れそうになったその腕を払った。
「…少しだけ、思い出した」
「あぁ!? 兄貴の誘いを断るってのかぁ!?」
「……良いわ、少し遊んであげる」
 取り巻きの言葉を無視して、私はだらりと下げた左腕を持ち上げた。
 その左腕には、先ほど部屋のテーブルに置かれていたデュエルディスクと呼ばれる機械を既に装着している。
 それを見た取り巻きが慌てて後ろに下がり、叫んだ。
「あ、兄貴! コイツ、決闘者-デュエリスト-ですぜ!!」
「兄貴に挑戦するとは、命知らずな女だ…」
「テメェらは下がってろ。どうやら本格的に、オレ様と遊びたいようだ」
「……貴方たちを見ていると虫唾が走る。さぁ、決闘-デュエル-の時間よ!」
 決闘-デュエル-。私の口から自然と流れ出た言葉。
 その言葉が中空に溶けた瞬間、この空間に大きな影響を与えた。
 まずは、姿を現していた機械のドラゴン《スクラップ・ドラゴン》の姿が消える。
 そして私とジョニーを包むような、透明に近い半透明のドームが発生したのだった。これが決闘-デュエル-をするためのフィールド。
 私はこれを感覚的に覚えていた。そしてこれから、何を行うのかも。
 周りで様子を伺っていた村人たちは、突然の現象に目を見開いているようだ。
「…言っておくが、オレ様は今まで決闘-デュエル-で負けたことは一度も無ぇ。手加減をするつもりは全くねぇからな。泣いて許しを請うなら今のうちだぜぇ?」
「……必要ないわ。だって、勝つのは私だもの」
「ほざけ、クソアマッ!」
『決闘-デュエル-ッ!!』



 デュエルスタート 【??? VS ジョニー】
 先攻:???
 ライフポイントセット:4000
 デッキシャッフル
 初期手札5枚ドロー


~???のターン~

 私は私の身体が覚えている感覚に従い、右手をデュエルディスクの一部に手を添えた。
 そう、大量のカードが収められている大きなスロットの一番上に。
 そして先攻はデュエルを挑んだ挑戦者側からと決められている。
「私のターン、ドロー! 私は手札から《焔祭司》を召喚するわ」

 ~ Normal・Summon 《焔祭司》ATK1800 ~

 炎に包まれ、赤い錫杖を掲げる司祭が私の前に立ちはだかる。
 その姿を見たジョニーは「どうやらハッタリではなく、本物の決闘者-デュエリスト-のようだな…」と呟き、ニヤリといやらしい笑みを浮かべた。
「私はこれで、ターンエンドよ」

 ???フィールド(ライフ:4000、手札5枚)
 《焔祭司》ATK1800


~ジョニーのターン~

「オレ様のターン、ドロー!」

 鉛色に輝くデュエルディスクからカードを1枚引き抜き、笑みをより深くする。

「オレ様は手札から《スクラップ・ブレイカー》を攻撃表示で特殊召喚!」

 ~ Special・Summon 《スクラップ・ブレイカー》ATK2100 ~

 両肩が突出した、上半身の人型機械もどきがジョニーの前に出現する。
 しかし出現すると同時に機械全身からバチバチと火花が飛び始めた。
 私はその姿を見て眉を潜める。

「コイツは相手フィールド上にのみモンスターがいる場合に手札から特殊召喚できる。だが、特殊召喚した瞬間、自分フィールド上のスクラップモンスター1体を破壊しなければならない!」
「…貴方のフィールドには《スクラップ・ブレイカー》のみ。自爆するつもり?」
「んな訳ねぇだろーがよ」

 そう言うと、ジョニーは手札からカードを1枚抜き取り、デュエルディスクへと差し込む。

「チェーンして速攻魔法《スクラップ・スコール》発動! こいつは自分のスクラップモンスター1体を選択して発動。デッキからスクラップモンスター1体を墓地に送り、カードを1枚ドローするぜ」
「わざわざモンスターを墓地へ…」
「オレ様が墓地へ送るモンスターは《スクラップ・キマイラ》だ! そして、カードを1枚ドローする」

 デッキからモンスターカードを1枚墓地へ送り、カードを引くジョニー。

「そして、選択したスクラップモンスターは《スクラップ・スコール》により破壊される」
「どちらにせよ破壊はするのね」

 元々破壊される運命にあったモンスターに対し、わずかながら憐憫の情を浮かべる私。

「クズはオレ様のように理知的な奴が上手く使ってやらないとただのスクラップだからなぁ!」
「…気に入らないわね。その考え方は」
「ヘッ、クズはクズ同士でかばい合いってか? オレ様は手札から《切り込み隊長》を召喚するぜ」

 ~ Normal・Summon 《切り込み隊長》ATK1200 ~

「さらに《切り込み隊長》のモンスター効果、発動だぁ! 手札からレベル4以下のモンスター1体を特殊召喚できる」
「一気にモンスターを並べるつもりね…」
「出てこい《スクラップ・ビースト》!!」

 ~ Special・Summon 《スクラップ・ビースト》ATK1600 ~

 両手に剣を構える戦士の隣に、様々な部品を組み立てて作られた、狼型の機械が現れた。

「モンスターを並べたのは良いけど、どちらも私の《焔祭司》よりも攻撃力が低い。あまり、意味はないわ」
「いや、兄貴の本気はここからだ!」
「女ァ、兄貴の凄さを目の当たりにしてションベンちびるんじゃねぇぞ!!」

 馬鹿にされたとでも思ったのか、取り巻き二人が声をあげる。

「さぁ行くぜぇ! レベル3の《切り込み隊長》に、レベル4の《スクラップ・ビースト》をチューニング!!」

 チューナーモンスターと、チューナー以外のモンスターを一つのモンスターへと進化させる召喚方法、シンクロ召喚。
 私の頭の中に、そんな言葉が過ぎった。

「瓦礫の山に秘めた悪意ある暴虐の使徒よ。オレ様の手によりその姿を現せ! シンクロ召喚、出てこい《スクラップ・デスデーモン》!!」

 ~ Synchronize・Summon 《スクラップ・デスデーモン》ATK2700 ~

 私の、いやジョニーの背丈の数倍はあろう巨大な悪魔をモチーフとした人型機械が暴風とともに現れる。
 1対の翼をはためかせる度に、大きく砂埃が舞った。砂塵が目の中に入らないよう、思わず右手でガードする。

「出た、兄貴得意のシンクロ召喚だ!」
「兄貴ィ! そのままそのアマのモンスターを叩き潰しちまってください!!」
「とーぜんだぁ! このままバトル。デスデーモンで《焔祭司》を攻撃。デモニック・レーザーッ!!」

 《スクラップ・デスデーモン》の瞳がギラリと光ると、前傾姿勢になり口を大きく開いた。
 次の瞬間、口から紫色のレーザーが放出され、炎を纏う司祭の体に直撃する。一瞬すらも耐え抜くことができずに、《焔祭司》は爆散した。

 ATK 1800:2700
 Battle Damege ???:4000⇒3100

「ハーッハッハッハッ! どうだオレ様の強力なモンスターの一撃は! そこの廃屋みたいにボロボロにされたくなかったら、今のうちに許しを乞いな」
「その必要は無いわ。デュエルを続けましょう」
「…冷めた女だ、詰まらん。イイぜ、それならこのデュエルが済んだ後、貴様をグシャグシャに泣かせてやるよ! オレ様はこれで、ターンエンドだ!!」

 ジョニーフィールド(ライフ:4000、手札3枚)
 《スクラップ・デスデーモン》ATK2700


~???のターン~

「私のターン、ドロー」

 デュエルディスクからカードを引き、手札へ加える。そして即座に別のカードを引き抜き、デュエルディスクへと差し込んだ。

「私は手札から永続魔法《祝福の儀式》を発動。1ターンに1度、自分のフィールドに儀式モンスターが特殊召喚した時にカードを1枚ドローできる」
「はぁ? 儀式モンスターだと?」
「…兄貴ぃ、儀式モンスターって、何すかぁ?」
「バッカ、知らないのかよテメェ。召喚方法が面倒だからって誰からも忘れ去られちまってる、古臭ぇ召喚方法で呼び出すモンスターだ。そうっすよね、ジョニーの兄貴?」
「あぁ、オメェの言うとおりだ。まさか今時、そんなカビの生えたようなモンスターを使う奴がいるとは驚きだ。こいつは、傑作だぜ! ハハハハハハッ!!」
『ハハハハハハハハハ!!』

 ジョニーと取り巻きが腹を抱えて大笑いを始めるものの、私は表情一つ変えずに次のカードを手札から選択し、引き抜いた。

「私は《儀式巡りの術師》を召喚」

 ~ Normal・Summon 《儀式巡りの術師》ATK800 ~

「そして手札から儀式魔法《共鳴儀式召喚陣》を発動! 私はフィールドのレベル3モンスター《儀式巡りの術師》と、手札のレベル2モンスター《朱雀の巫女》をリリース!!」
「わざわざ召喚したモンスターをコストにしてまで、儀式モンスターを呼び出すってのか? まぁどうせ合計のレベルは5だ。《スクラップ・デスデーモン》を倒せるようなモンスターが出てくるとは思えねぇけどなぁ!!」
「集え、我が下に。勇敢なる仲間を守る数多の刀剣の導き手よ! リチュアル・サモン、顕現せよ《リチュニオン・ブレイロイド》!!」

 ~ Ritual・Summon 《リチュニオン・ブレイロイド》ATK2500 ~

 両手に細身の剣を、さらに両肩・腰・背中に1対ずつの刀剣を携え、さらに背筋を通すような大剣を背中に抱えた大柄な騎士が、少女を庇うようにして立ちはだかる。
 だが、それを見たジョニーの表情には愉悦の感情しか浮かんでいない。

「勇んで呼び出したは良いが、結局攻撃力はオレ様のモンスターの方が上。守りを固めるのかと思いきや攻撃表示とは、とんだド素人だな」
「さぁ、それはどうかしら?」
「あぁん?」
「私は儀式召喚のコストにした《儀式巡りの術師》のモンスター効果を発動。表側表示で存在するこのモンスターが儀式召喚のためにリリースした場合、デッキの1番上のカードを墓地に送り、カードを1枚ドローするわ。さらに《祝福の儀式》の効果でもう1枚ドロー」

 デュエルディスクから合計2枚のカードを引いた私の表情に、小さく笑みが浮かぶ。
 次の瞬間、表情を引き締め、宣言した。

「バトル。《リチュニオン・ブレイロイド》で《スクラップ・デスデーモン》を攻撃!」
「はっ! 決闘-デュエル-の基本ルールも知らねぇのか! どれだけ勇んでいようが、攻撃力の高い《スクラップ・デスデーモン》は倒せねぇよ!!」
「さらに私はダメージ計算時に手札から速攻魔法、《リチュニオン・ハウリング》を発動! このターン特殊召喚した『リチュニオン』と名のつくモンスターが戦闘する場合、ダメージ計算時のみ発動可能。戦闘する相手モンスターの攻撃力は私のモンスターの攻撃力分ダウンする。よって、攻撃力は《リチュニオン・ブレイロイド》の方が上となるわ。受けなさい、剣陣の閃撃ッ!」

 ATK 2500:2700⇒200
 Battle Damege ジョニー:4000⇒1700

「ぐぉっ!?」
『あ、兄貴ッ!?』

 大ダメージを受けたジョニーに対し、取り巻き達が悲鳴を上げる。
 だがジョニーは手でそれを制すると怒りに満ちた視線を私へ向けた。

「…今のは、やってくれたじゃねぇか」
「油断したのは、貴方よ。全力で私を倒すんじゃ無かったの?」
「あぁそのつもりだ。本気でぶっ潰してやるから、覚悟しておけ!」
「…私はバトルフェイズを終了して、メインフェイズ2へ。カードを1枚セットして、ターンエンドよ」

 ???フィールド(ライフ:3100、手札1枚)
 《リチュニオン・ブレイロイド》ATK2500
 《祝福の儀式》発動中(永続魔法)
 魔法・罠カード 1枚セット


~ジョニーのターン~

「オレ様のターン、ドロー!」
「このスタンバイフェイズ時、《リチュニオン・ブレイロイド》の効果が発動するわ。相手の手札1枚につき、相手ライフに200ポイントのダメージを与える。貴方の手札は4枚。よって、800ポイントのダメージよ。飛刃烈破ッ!」
「何だと、ぐぁあああ!!」

 Effect Damege ジョニー:1700⇒900

 《リチュニオン・ブレイロイド》が刃を4度振るうと、小さな真空波となりジョニーを襲った。
 ダメージを受けたジョニーは怒りを露わにし、発散するかのように怒号をあげる。

「舐めた真似をしてくれるじゃねぇか…。だが、ここからはオレ様の反撃だ!」

 ギラギラと怒りを宿らせた瞳を私へと向けたまま、カードを1枚手札からデュエルディスクへと差し入れる。

「オレ様は《スクラップ・キマイラ》を召喚!」

 ~ Normal・Summon 《スクラップ・キマイラ》ATK1700 ~

「そして《スクラップ・キマイラ》のモンスター効果、発動! 召喚に成功した時、墓地からスクラップのチューナーモンスター1体を特殊召喚できるんだよぉ!! オレ様はこの効果で、《スクラップ・ビースト》を再び特殊召喚するッ!!」

 ~ Special・Summon 《スクラップ・ビースト》ATK1600 ~

「行くぜぇ。レベル4の《スクラップ・キマイラ》にレベル4の《スクラップ・ビースト》をチューニング! 舞い降りよ、破壊を告げる巨竜。暴風と共に害する敵を打ち破れ。シンクロ召喚、暴虐の覇竜《スクラップ・ドラゴン》!!」

 ~ Synchronize・Summon 《スクラップ・ドラゴン》ATK2800 ~

 目の前に飛び出したのは、決闘-デュエル-直前まで実体化していた機械のドラゴン。
 破壊の波動をまき散らし、背中から噴出される蒸気がまるでジョニーの怒りを体現しているようだ。
 紫色に輝く凶悪な機械の瞳は、まっすぐに私を刺し貫いていた。

「出た、兄貴のエースモンスターの《スクラップ・ドラゴン》だ!」
「こいつが出ちまえば、もうあの女に勝ち目は無いぜ!!」
「慌てるなよ。まだまだこのくらいじゃオレ様の怒りは治まらねぇぜ。さらに手札から魔法カード《スクラップ・エリア》を発動! こいつはデッキから、スクラップのチューナーモンスター1体を手札に加えるカードだ。オレ様は《スクラップ・オルトロス》を手札に加える!!」

 手札から発動した魔法カードにより、デッキから新たなスクラップモンスターが加えられた。
 だが、それを見ても私は何も焦らない。ただ平然と、相手の動きを観察するだけだった。

「オレ様は手札から《スクラップ・オルトロス》を特殊召喚するぜ。このモンスターは、オレ様のフィールドにスクラップモンスターが存在する時、手札から特殊召喚できる」

 ~ Special・Summon 《スクラップ・オルトロス》ATK1700 ~

 特殊召喚したのは、頭を2つ持つ巨大な犬型の機械だ。
 だが、このモンスターも先程の《スクラップ・ブレイカー》と同様、全身から火花が飛び始める。

「《スクラップ・オルトロス》の特殊召喚成功時、自分フィールド上のスクラップモンスター1体を破壊する。オレ様が選択するのは、《スクラップ・オルトロス》だ!」
「…まさか、また自壊するつもり?」
「その前に、有効利用させてもらうけどなぁ! 手札から速攻魔法《スクラップ・スコール》発動! 効果はさっきも使ったから分かってるよなぁ?」
「……」
「オレ様はデッキから《スクラップ・ゴーレム》を墓地に送り、カードを1枚ドロー。そして《スクラップ・オルトロス》を破壊する」

 二つ首の犬型機械が爆発する。
 しかし、その爆散したはずの欠片はジョニーのデュエルディスクに集まり、墓地からカードを1枚抜き出した。

「《スクラップ・オルトロス》のモンスター効果だ。こいつが『スクラップ』と名のついたカードの効果によって破壊され墓地に送られた時、墓地からオルトロス以外のスクラップモンスター1体を手札に加える事ができる。オレ様が加えたのは《スクラップ・キマイラ》だ!」
「…それで? デッキを圧縮して、手札を入れ替えて…何がやりたいのかしら?」
「驚くのはこれからだ。手札から魔法カード《死者蘇生》発動!」

 カードがデュエルディスクに差し込まれた瞬間、地面から冷蔵庫と電子レンジをくっつけたようなスクラップモンスター、《スクラップ・ゴーレム》が復活した。
 巨体が地面を踏みつけると、それだけで周囲の砂埃が舞った。

 ~ Special・Summon 《スクラップ・ゴーレム》ATK2300 ~

「ハーッハッハッハッ! 《スクラップ・ゴーレム》のモンスター効果、発動!! 1ターンに1度、自分の墓地のスクラップモンスター1体を蘇生できる。オレ様はこの効果を使って、《スクラップ・ビースト》をオレ様のフィールドに特殊召喚する!!」
「レベル5のモンスターと、チューナーモンスターが並んだ…!」
「来るぜ、兄貴の持つ最強モンスターが!」
「行っけぇ兄貴ぃ! 澄ました剣士野郎をぶっ飛ばせぇ!!」
「オレ様は、レベル5の《スクラップ・ゴーレム》に、レベル4の《スクラップ・ビースト》をチューニング。舞い降りよ、破壊を告げる豪竜。双嵐と共に害する敵を打ち破れ。シンクロ召喚、《スクラップ・ツイン・ドラゴン》ッ!!」

 ~ Synchronize・Summon 《スクラップ・ツイン・ドラゴン》ATK3000 ~

 ジョニーの背後に浮かぶ《スクラップ・ドラゴン》と同等以上の巨大さを誇るモンスター《スクラップ・ツイン・ドラゴン》が、強大な威圧感と共に青白い瞳を輝かせながら出現した。
 その強大な姿を見上げる私だが、心の中は静かなものだ。理由は分からないが、あれらのモンスターに対して恐怖を一切覚えない。

「オレ様はカードを1枚セット」

 ジョニーは手札を1枚、魔法・罠カードをセットするスロットに差し込んだ。ニヤリとした笑みと共に。

「さっそく、コイツの力を見せてやる。《スクラップ・ツイン・ドラゴン》効果発動!」

 ジョニーの宣言と共に、機械の瞳に宿る青白い二対の光源が一際大きく輝きだす。

「1ターンに1度《スクラップ・ツイン・ドラゴン》は、自分のカード1枚を破壊する代わりに、相手のカード2枚を手札に戻す。その伏せカードがどんなカードだろうとも、手札に戻しちまえば関係ねぇ!!」

 効果発動の宣言を受けた《スクラップ・ツイン・ドラゴン》は、ジョニーの伏せたカードを叩き割り、さらに二つの首を伸ばして私のモンスターとセットカードの2枚へと照準を向けた。

「なら、その効果にチェーンしてリバースカードを発動するわ。私が発動するカードは速攻魔法《リチュニオン・リベレイション》!」

 対象となっていた伏せカードが起き上がり、《リチュニオン・ブレイロイド》を包む光を放った。

「このカードは私のフィールド上の『リチュニオン』と名のついた儀式モンスターをデッキに戻し、儀式召喚の為にリリースしたモンスター1組を、墓地から守備表示で特殊召喚する。蘇りなさい、《儀式巡りの術師》《朱雀の巫女》!」

 ~ Special・Summon 《儀式巡りの術師》DEF1400 ~
 ~ Special・Summon 《朱雀の巫女》DEF900 ~

 《スクラップ・ツイン・ドラゴン》から放たれた光線を浴びる前に《リチュニオン・ブレイロイド》が消え去り、代わりに身を守る2体のモンスターが私の前に出現した。
 そして、発動を終えた《リチュニオン・リベレイション》のカードも、光線を弾きとばし姿を消す。

「チッ、躱しやがったか。なら、パワーで粉砕するだけだ! このままバトル。《スクラップ・ドラゴン》で《儀式巡りの術師》を攻撃。スクラップ・ブレスッ!」

 DEF 1400:ATK 2800

 機械の巨竜から放たれた破壊光線を受け、術師は跡形も無く吹き飛んだ。

「続いて《スクラップ・ツイン・ドラゴン》で《サクリファイス・ゴーレム》を攻撃。スクラップ・ツイン・バイトッ!」

 DEF 1500:ATK 3000

 炎の鳥を模した衣類を纏う巫女《朱雀の巫女》に対し、《スクラップ・ツイン・ドラゴン》の二つの巨大な口が噛みつく。その巨大な圧力から守りきれるわけも無く、機械のドラゴンによって噛み砕かれた。
 これで私を守るカードは何も無い。
 この惨状を見つめ、ジョニーの笑みを益々深くなる。

「さぁ、これでもう貴様を守るカードは無くなったなぁ。オレ様の最強モンスター軍団を前に、恐怖にひれ伏すが良い!」
「ぃよっ! ジョニーの兄貴、格好良い!!」
「あんな雑魚決闘者-デュエリスト-なんて、一捻りにしちまって下さい!!」
「おう、任せておけ! これでオレ様のターンは終了だ」

 ジョニーフィールド(ライフ:900、手札1枚)
 《スクラップ・ドラゴン》ATK2800
 《スクラップ・ツイン・ドラゴン》ATK3000

 取り巻き達の応援に、右手を掲げて答えるジョニー。
 だがそれを見てもなお、私の表情が変わる事は無い。まるで勝利を信じきっているような純真な視線を、対戦相手であるジョニーへ突き刺し続けるだけだ。

~???のターン~

「…私のターン、ドロー。手札から魔法カード、《反儀式による収穫》を発動。このカードは手札から儀式モンスター1体を捨てて、カードを2枚ドローする。ただし、このターン儀式魔法カードは発動できない」

 最後の手札を墓地に送り、カードを2枚引き直す。
 そのカードを見た私は、迅速にカードをデュエルディスクのスロットにセットした。

「私はモンスターをセット。カードを1枚セットして、ターンエンド」

 ???フィールド(ライフ:3100、手札0枚)
 モンスター 1枚セット
 《祝福の儀式》発動中(永続魔法)
 魔法・罠カード 1枚セット


~ジョニーのターン~

 モンスターを裏側守備表示でセットし、魔法・罠カードを1枚伏せただけと言う完全に守りの姿勢に入る私。
 ジョニーはもはや勝利を確信したのか手早くカードをドローする。

「オレ様のターン、ドロー! このターンで決めてやるぜ。手札から《スクラップ・キマイラ》を召喚」

 ~ Normal・Summon 《スクラップ・キマイラ》ATK1700 ~

「召喚成功時、こいつの効果で墓地から《スクラップ・ビースト》を特殊召喚するぜ!」
「それなら、召喚成功時の効果にチェーンしてリバースカード、オープン。罠カード《激流葬》発動。このカードの効果により、フィールド上の全てのモンスターを破壊する」
「なんだと!?」

 私が発動したカード《激流葬》が、私のモンスターもろとも、強大な2体のドラゴンと、新たに呼び出された《スクラップ・キマイラ》を押し流し破壊する。

「だが、《スクラップ・キマイラ》の効果も続行される。オレ様は墓地から《スクラップ・ビースト》を特殊召喚!」

 ~ Special・Summon 《スクラップ・ビースト》ATK1600 ~

「さらに、相手によって破壊された《スクラップ・ドラゴン》と《スクラップ・ツイン・ドラゴン》のモンスター効果も発動だ。墓地からシンクロモンスター以外のスクラップモンスターを特殊召喚する」
「つまり、さらに2体のモンスターが増える、と言う事ね…」
「オレ様はこの効果で、《スクラップ・キマイラ》と《スクラップ・ゴーレム》を特殊召喚する!」

 ~ Special・Summon 《スクラップ・キマイラ》ATK1700 ~
 ~ Special・Summon 《スクラップ・ゴーレム》ATK2300 ~

「オレ様は、レベル4の《スクラップ・ビースト》にレベル4の《スクラップ・キマイラ》をチューニング。再び姿を現せ、《スクラップ・ドラゴン》ッ!」

 ~ Synchronize・Summon 《スクラップ・ドラゴン》ATK2800 ~

「そして《スクラップ・ゴーレム》の効果発動。1ターンに1度、墓地からスクラップモンスター1体を特殊召喚できる。墓地からもう一度《スクラップ・ビースト》を蘇生するぜ!」

 ~ Special・Summon 《スクラップ・ビースト》ATK1600 ~

「これで再びレベルは揃った。レベル5の《スクラップ・ゴーレム》にレベル4の《スクラップ・ビースト》をチューニング! 現れろ、オレ様の最強モンスター《スクラップ・ツイン・ドラゴン》ッ!!」

 ~ Synchronize・Summon 《スクラップ・ツイン・ドラゴン》ATK3000 ~

「凄ぇ! 兄貴、一度吹っ飛ばされた《スクラップ・ドラゴン》と《スクラップ・ツイン・ドラゴン》をこのターンで立て直した!!」
「流石だぜ兄貴! もう一生付いて行きやす!!」
「ハーッハッハッハッ! これで終わりだ、クソアマァ! バトル、《スクラップ・ドラゴン》で直接攻撃-ダイレクト・アタック-だぁッ」

 ―――:ATK 2800

 私の目の前に立つ巨大な機械のドラゴンは、その咢を開き、衝撃を蓄える。
 そして次の瞬間、私めがけて溜まりに溜まった衝撃砲を解き放つ。

「これで、後はツイン・ドラゴンの攻撃を喰らえば貴様のライフは0に……なにぃ!?」

 Battle Damege ???:3100⇒1700

 ジョニーが挙げる驚愕に対し、私は静かな声で答える。

「私の墓地に存在する《ハーフ・ガードナー》の効果。このカードが墓地に存在する限り、私が受ける戦闘ダメージは半分になる」
「《ハーフ・ガードナー》だと!? 一体いつの間にそんなカードが……、あッ! さっきの《激流葬》で破壊された貴様のモンスターか!!」
「ご名答。そしてこのカードが墓地に存在する際に、1000ポイント以上の戦闘ダメージを受けた時、私はカードを1枚ドローする」

 0枚だった手札が、ドローによって1枚増える。
 ここでジョニーは考え込んでしまう。このまま《スクラップ・ツイン・ドラゴン》で攻撃し、大ダメージを与えることはできる。だが、このターンで倒しきる事はできず、しかも相手にカードをドローさせてしまう事になる。

「どうしました、怖気付きましたか?」
「誰が…怖気付くかぁ! 《スクラップ・ツイン・ドラゴン》でクソアマに直接攻撃だッ!」

 ―――:ATK 3000

 《スクラップ・ツイン・ドラゴン》の長い尾が、私の身体を横なぎに払う。身体を打ち付ける衝撃が走るものの、怪我は無い。
 決闘-デュエル-中のモンスターは立体映像であり、実体化しているわけではないからだ。
 だがこれにより大きくライフポイントを削られてしまった。

 Battle Damege ???:1700⇒200

「…《ハーフ・ガードナー》の効果でダメージは半減。さらに私はカードを1枚ドロー」
「ライフを削りきれなかったのは残念だが、所詮は雀の涙のようなモノだ! 次のターン、貴様に残されたわずかばかりのライフを削りきってやるよぉ! オレ様はこれで、ターンエンドだ」
「このターンのエンドフェイズ時、墓地に存在する《ハーフ・ガードナー》の効果発動。エンドフェイズ時にこのカードが墓地に存在する場合、ゲームから除外する」
「…つまり、ダメージ半減効果もダメージによるドロー効果も、もうこれ以上発揮できないって訳だ。もっとも、既にライフは200ポイント。ドローするだけのダメージは受け切れないがなぁ」
「問題無いわ。だって、次の私のターンで勝てば良いだけの話なのだから」

 私はしれっと、宣言をした。次のターンで勝利するのだと。
 そしてこのデッキには、それを可能にするカードが眠っているのだと、直感的に理解できていた。

 ジョニーフィールド(ライフ:900、手札1枚)
 《スクラップ・ドラゴン》ATK2800
 《スクラップ・ツイン・ドラゴン》ATK3000


~???のターン~

「私の最後のターン、ドロー!」

 私は鋭く、デッキからカードをドローした。そして引いたカードに目を通した瞬間、わずかに唇の端が持ち上がる。

「私は手札から儀式魔法《共鳴儀式召喚陣》を発動! 私は手札のレベル6《リチュニオン・ナイトロイド》を選択するわ」
「フィールドにモンスターはいない。って事は、その残った手札がレベル6のモンスターって訳か…」
「いいえ。私は手札からレベル2モンスターの《玄武の巫女》をリリースする。このカードはレベル1だけど、儀式召喚のリリースに用いる際にはレベル2として扱う事ができる」
「ちょっと待て! それじゃあレベルが合わなくて儀式召喚できねぇじゃねぇか!!」

 ジョニーが口汚く怒鳴りつける。
 通常の儀式召喚では儀式モンスターのレベルと同等以上となるようにモンスターをリリースする必要がある。だが、少女が儀式召喚するためにはレベル4つ分足りない。

「私は墓地の、《焔祭司》を儀式召喚の素材として除外! このカードが墓地に存在する場合、『リチュニオン』と名のつく儀式召喚を行う際に除外する事で、必要レベル分として扱う事ができる。これで合計レベルは6となり、儀式召喚が可能となったわ」
「ば、馬鹿な…」
「集え、我が下に。黒き帳に潜む漆黒の刃! リチュアル・サモン、顕現せよ《リチュニオン・ナイトロイド》!!」

 ~ Ritual・Summon 《リチュニオン・ナイトロイド》ATK2600 ~

 全身を真っ黒に染めた鎧とフルフェイスの兜で纏い、両腕には鉤爪のついた悪魔のモンスターが儀式召喚される。
 その静かな殺意にジョニーは一瞬だけ気圧されるものの、攻撃力が自身のモンスターより低いと分かると途端に態度が変わった。

「儀式モンスターの特殊召喚に成功したため、《祝福の儀式》の効果でカードを1枚ドローする」
「は、ははは! 攻撃力は2600ポイント。オレ様の《スクラップ・ドラゴン》にも届かないじゃねぇか!!」
「届かないのなら、届かせれば良いだけの事。手札から装備魔法《リチュニオン・エンブレム》を発動。《リチュニオン・ナイトロイド》に装備する」

 《リチュニオン・ナイトロイド》ATK 2600⇒3100

「攻撃力が、《スクラップ・ツイン・ドラゴン》を超えやがった…!?」
「これで、バトル。《リチュニオン・ナイトロイド》で《スクラップ・ドラゴン》を攻撃。ダーク・クロスラッシュッ!!」

 黒衣の悪魔の姿が一瞬で掻き消え、次の瞬間には《スクラップ・ドラゴン》の首の付け根にまで接近する。両手に付けられた黒い鉤爪をⅩ字に振ると、首を両断し《スクラップ・ドラゴン》を破壊した。

 ATK 3100:2800
 Battle Damege ジョニー:900⇒600

「ぐ、まだだ…まだ終わっていないぜぇ! 次のオレ様のターンで《スクラップ・ツイン・ドラゴン》の効果を使い、直接攻撃をすればオレ様の勝ちだ!!」
「言ったはずよ、これが最後のターンだと。私は《リチュニオン・ナイトロイド》のモンスター効果、発動。このモンスターが戦闘によって相手モンスターを破壊した時、3つの効果から1つを選んで発動できる」
「3つの効果…だと!?」
「私は2つ目の効果、相手ライフに600ポイントのダメージを与える効果を選択! よって、貴方に600ポイントの追加ダメージを与えるッ!」

 Effect Damege ジョニー:600⇒0

「そんな、馬鹿な!? オレ様の最強のモンスター達が、骨董品のカビ臭ぇ儀式モンスターなんぞに、負けるわけが!? う、うわぁあああああああああああああああッ!!」
 わずかに姿を残していた《スクラップ・ドラゴン》が次の瞬間大きな爆発を撒き散らし、爆風によってジョニーとその取り巻き達を吹き飛ばしてしまった。
 地面に叩きつけられたジョニーはかすかに意識が残ったものの、建物に頭からぶつかった取り巻き達は、完全に気絶している。
 決闘-デュエル-の勝者である私はデュエルディスクを待機状態に戻しながら、ゆっくりとジョニーに近づいた。
 ジョニーが重い頭をゆっくりと上げ、私へ視線を向ける。

「て、メェ…一体……、何者…だ…?」

 かすかに繋いでいる意識の中で紡ぎ出した、小さな問い。
 それに答える私の声も、同じくか細い声だった。

「私の名前は、…ハルカ。ただの、決闘者-デュエリスト-、よ……」

 その言葉を最後に、ジョニーは意識を手放し、またハルカと名乗った私も糸が切れた人形のように地面へと倒れこんだのだった。

 これが、ハルカと名乗る少女の記憶に残る、最初の決闘-デュエル-。
 これから彼女を中心に巻き起こる様々な試練・苦難の、幕開けとなるのだった。


最終更新:2014年11月22日 22:32