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ヴィンテージ - (2006/11/23 (木) 06:50:18) のソース
今日は特に予定も何もない休日。外もいい天気だし、ひとつ本気出してお屋敷の片付けをすることにした。 「倉庫もしばらく使わないと傷むわねえ……今度虎ちゃんや雲母ちゃんに手伝ってもらって改装しようかしら」 あたしは庭園の隅にある年代物の倉庫の扉を開けた。 「うっぷ。埃っぽいわねえ……あら?」 倉庫の片隅に、大事そうに厚い布でくるまれた箱。埃を払って包みを解いてみると……。 「あら、まあ……こんなところに残ってたのね」 #ref(jm0121.gif) 「お帰り、爆ちゃん。手伝えなくてごめんなさいね」 屋敷に帰ると、マブダチの真ちゃんが暖炉の前のソファーでくつろいでいた。 #ref(jm0122.gif) 「ああ、いいのよ真ちゃん。好きでやってるようなもんだから。それより、ちょっといいもの見つけたのよ。ほら」 倉庫から持ち出したそれを出す。 「あら? ……まあ、懐かしいこと。そのワイン、18××年……だったかしら?」 「中身も傷んでないようよ。倉庫に大事にしまってあったわ。……懐かしいわね。ちょうど、真ちゃんが庭園を発ったときだったわね」 宝石乙女が庭園を発つとき、それはたいていマスターの元へ行くときだ。 真ちゃんは可憐な乙女の姿で旅立ち、そして戻ってきた。それ以来、彼女はこの姿のまま。 「ヴィンテージ(当たり年)……だったわ。素晴らしい時を過ごすことができた。過ぎ行く時は、私たち以外のものを全て連れ去ってしまったと思ったけど……」 真ちゃんはしばし懐かしそうに目を細めた。 #ref(jm0123.gif) 「うん」 「まだあったのね。私たちと同じ時を過ごしたものが……爆ちゃん、アメジストから貰ったソムリエナイフはどこにあったかしら」 「え、飲んじゃう気?」 あたしが慌ててると、真ちゃんはふふ、と笑った。 「おいしいものはおいしいうちに、ね。今日爆ちゃんが見つけてくれたのも何かの縁だわ。ペリドットと鉄鉱石も呼びましょうか」 いそいそと立ち上がる真ちゃんに、あたしは笑った。 「まったく、真ちゃんにはかなわないわね」 奇跡のような素晴らしい日々の思い出を胸に、これからの日々も素晴らしいものでありますように。 ----