宝石乙女まとめwiki内検索 / 「かさをさしてかえろう」で検索した結果

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  • かさをさしてかえろう
      雨の日の天河石   天河石はりきる   そのころのマスター   そのころの天河石   くじけそう   傘買った   迎えに来てた 「迎えにきてくれたのか、ありがとな」 「マスター!」 「マスター、おかえりなさい! かさもってきたよ!」 「傘忘れて困ってたからな、助かったよ」 「えへへ、天河石、マスターの役にたてた?」 「ああ、ありがとな」 「傘をもらってしもたわい……最近の若者は親切じゃのう……」
  • 漫画・イラストストーリー
    ...所)」より かさをさしてかえろう 「黒曜石とか宝石乙女たちの別荘(避難所)」より 荒巻は大きいのに限る 「黒曜石とか宝石乙女たちの別荘(避難所)」より 雪の日の金剛石 「黒曜石とか宝石乙女たちの別荘(避難所)」より 雪だるま 「黒曜石とか宝石乙女たちの別荘(避難所)」より Laptop Kitten 「黒曜石とか宝石乙女たちの別荘(避難所)」より 猫耳天河石 「黒曜石とか宝石乙女たちの別荘(避難所)」より 悩み多き日 55スレ目「黒曜石とか雲母が久しぶりに帰省しても」より 年長乙女のナイトパーティ 55スレ目「黒曜石とか雲母が久しぶりに帰省しても」より みんな猫舌 55スレ目「黒曜石とか雲母が久しぶりに帰省しても」 「黒曜石とか雲母が冬ごもりしても(避難所)」より 秘薬ドラゴンサンダー...
  • まるで新婚さんな家に秋が来る
    休日の夜、二人でソファーに座りテレビで紅葉を見る。  「寒くなってきたと思ったら、秋が深まってきたのですねぇ」 温かいカップを抱えて彼女が紅葉に見入る。 そういえば、ウチの近所も そろそろ色着いてきているなぁ。  「次の休みには紅葉の並木道でも散歩しようか」 最近は 二人で寄り添って歩くことにも照れずに出来るようになった。 それだけ、彼女と一緒にいる時間が多いということだろうな。  「秋っていいですねぇ」 うっとりと呟く彼女に問いかけてみる  「秋といえば?」  「芸術の秋ですね」 彼女の姉妹が集まって織り成す演奏は素晴らしいの一言につきるものだった。  「食慾の秋もいいですね」 美味しい食材が揃う季節だものなぁ。彼女も料理の時から楽しそうにしているし。 毎日の食卓は実に素晴らく、僕も食事がなによりも楽しみになっている。  「読書の秋と...
  • 天災被害
    「マスターっ、すごい雨だよー!」 「分かったからそのまま外に出るなっ!」  よく、天災でテンションの上がるタイプってのがある。  金剛石はまさしくそれだった。いつもより酷い雨の中、傘も差さずに外へ出て行く。 「こういう中で走るのが特訓だよねっ。というわけでいってきまーす!」  もう口調を直すことも忘れたハイテンション状態。  どうしてこんな天気なのに元気なんだ……いや、こんな天気で遊べなかった 反動でも来たのか。  どちらにしても、放っておく訳にはいかない。傘を手に取り、金剛石の後を追う。  しかし……あいつ、やっぱり脚早いな。全然追いつける気配がない。 「あははははっ」  そのくせ金剛石の笑い声ばかり耳に入ってくる。  この酷い雨の中でもはっきりと……近所迷惑だ。あとでお仕置き確定だな。 「あっ、マスター! マスターも特訓ー?」 「違う! というか前見ろ前っ、...
  • 散歩 ~梅~
    「マスター、お散歩に行きませんか?」   雪が溶けて日に日に暖かさを増していく季節のある日、ペリドットに誘われて散歩に出た。   ときおり吹く風に冬の名残を残しつつも、日差しに春の訪れを感じる。   雪解け水の水溜りを手を繋いで飛び越えたり、枯れ草の下から新芽を見つけて何の花かワクワクしたり。   ふと気がつくと腕を組んで歩いたりしていたが、まあ、よしとしよう。   どれくらい歩いただろうか、吹く風に強い香りを感じた。   毎年この時期に僕が楽しみにしているあの花の香りだ。 「ペリドット、向こうへいってみよう」   彼女を促がし方向を変える。腕は離してくれないのですね……。   遊歩道を外れてけもの道を辿る。あそこだ、あの大きな木の下をくぐると……。 「うわぁ……すごいですねマスター。梅林ですか……あぁ、いい香り……」 「毎年、この時期に咲くんだ。少し早いかとも...
  • 小さなアイドル
     夕食の食材が入ったビニール袋を持ち、家路を急ぐ。  今日は主の好物である牛丼。こちらとしても、簡単に作れる料理で 喜ばせることが出来るのはありがたい。  ……手を抜いている訳ではないが。  まぁ、とりあえず早く帰ろう。  冬場は日が落ちるのも早い。すでに空は夕焼けの様相だ。  その上、この厳しい寒さだ。家の近所にある公園も、近頃は遊ぶ子供達の姿が見えない。  そんな寂しい公園の一角に、老若男女十数人ほどの人だかりが出来ていた。  一体何の集まりか……遠巻きにその様子をうかがっていると、 そこから少女らしき声色の歌声が聞こえてきた。  可愛らしく、それでいて澄んだ歌声。乾燥した空気の中で、その声は柔らかく、 そして確実に響いている。  ……この声を、某はよく知っている。 「……はい、これで終わりですっ」  歌声が終わり、人だかりの中か...
  • 編み物
      マスターがいない時間を使って編んでいたものが、もうすぐ完成する。途中、毛糸玉と戯れる猫と遊んでいたりしたので思ったより時間がかかったのだけれども、季節の訪れにはちょうどよかったようだ。   サイズは間違えようがない。デザインはシンプル。色合いも落ち着いたものにしたので、マスターの好みに合うはず。   マスターも、私が編んでいる姿をよく眺めていたっけ。 「飽きませんか?」 「え! いやいや、気にしないで続けてよ。見ていたいんだ」 「ふふっ、そんなに見られたら照れちゃいます」 「え、あー、そうか。じゃ、猫と遊んでるよ」   そう言いながらも私を見つめていたマスター。溢れる想いが伝わってくるのだが、さすがに気恥ずかしい。 「もー、意地悪なマスター。恥ずかしいですよぉ」 「ごめんごめん。いやー、なんていうかな。君が、こうして僕の部屋でくつろいで編み物をしているのが訳もな...
  • 雛飾りを作ろう!
    マ「さてここに取り出だしまするは大量の牛乳パックとダンボール」 化「そんなん買うお金あったん?」 マ「うむ、バイト先で捨てるって言うんでもらってきた。んで、このパックとダンボールであるものを作ろうと思う」 化「ロボット!」 マ「はずれ。そんなもの作る技術ありません」 化「鎧!」 マ「端午の節句じゃないんだから、っと、今のはヒントになっちゃったな。解答権はあと一回だ」 化「ん~……」 マ「よっく考えろよ~?」 化(『端午の節句じゃないんだから』……ハッ!) マ「時間切れまで残り四、三、二」 化「ハイ!」 マ「はい、化石さん答えをどうぞ!」 化「植木鉢!」 マ「ぶぶー。化石さんの眼鏡はボッシュートです」 化「ああっ!」 マ「正解は雛壇。明日は桃の節句だ」 化「おお! それで牛乳パックとダンボール!」 マ「化石さん、そこは窓です。人と話すときは相手の顔見て喋っ...
  • 今だけは、僕だけの
      いつもの散歩道。春の夕暮れは早く訪れ、冷たい風が吹く。   今日の同行は瑪瑙。いつもは恥ずかしがって一緒に歩くことが少ないのだが、無理矢理引っ張り出してきた。   他愛のない話をしながら二人で木立を抜ける。他に人や姉妹がいないせいか、いつもより少し饒舌な瑪瑙の姿が新鮮だ。自分の胸のうちを表に出さない娘なので気にはしていたのだが、こういう姿を見せてくれると嬉しいやら安心するやら。   ヒュゥゥゥ   冷たい風が吹きぬける。 「瑪瑙。おいで」   手を差し伸べてみる。いつもなら照れ屋のこの娘は拒むはずだが……。 「……はい」   風は相変らず冷たかったが、二人の手は温かだった。     ◇    ◇    ◇    ◇   マスターに引きずられるように散歩につき合わされる。   いつもなら断るのだけれど、強引さに負けてしまった。   一緒に歩...
  • クリスマスツリーを彩ろう
      クリスマスまであと1ヶ月を切った。今まで特に興味のあるイベントでもなかったけれど、人つきあいが多くなってからはこういうこともやってみたくなった。   しかし、私の手にはこの紙袋は大きすぎる。いや、ただ単に買いすぎただけか。 「いいんだよー?」 「グリーンダヨー」   突然の声、電気石だ。さっそく私の手元が気になるらしく、紙袋に目が移る。 「クリスマスツリーの飾り」 「ぴかぴか?」 「ある」 「ふさふさ?」 「もちろん」 「ん……」   どうやら電気石はこのツリーを気に入ってくれそうだ。となると、やはりここは……。 「飾りつけ、手伝って」 「いいんだよー」 「グリーンダヨー」 「おかえり虎眼……あれ、電気石?」 「ん」 「ツリーの飾りつけ、手伝ってもらう。上がって」   私の後に続いて、電気石が靴を脱いで家に上がる。ちゃんと靴をそろえておくあたり...
  • 化石の幸せな日々
    「お茶はなんぼでもお湯さして飲まな」   せめてお茶請けに   漬物石の友情   お茶漬け 「マスタマスタ、このお茶漬けご飯がほとんど入ってへんねん」 「そんなことはない! 見ろ! 百粒は入ってるじゃないか!」
  • 心の温かさ
    「魔法ってさ」 何だ藪から棒に。魔法がどうにかしたのか。 「便利だよね」 「まぁ、不便はしない」 そりゃ便利だ。便利すぎて涙が出る。人間で言うと車ぐらい便利だ。 にしても冷えるなぁ……そろそろストーブを出した方が…。 風が強いらしく電線が鳴っている。秋だというのに下手したら雪が降りそうだ。 などとボンヤリと考える暇も無いほどに主人は何か企んでいる。 「それで考えたんだけど」 「何をするつもりだ?」 いまいち主人が考えていることが読めない。暑さで頭がやられると言うが この場合は寒さで頭がやられてしまったのではないだろうか。 で、予想通りにロクデモナイ事を思ったより真剣に主人はつぶやいた。 「試験の問題を盗んでくるとかできないかな」 「そんな子犬のような期待した目で私を見るな。叶えたくなるじゃないか」 「……ダメですか」 「ダメで...
  • 流血注意
     2月も終わり、そろそろ外も暖かくなってきた。  今日は仕事を早めに切り上げての帰宅。まだ夕焼け色に空が染まっている時間帯に 帰れるのは、久しぶりだ。  ――さて、帰ったら何をしようか。歩きながら、同僚からもらったトマトジュースを飲む。  まぁ、何をしようと考えたところで、天の相手をさせられるのが関の山、か。  そんなことを考えているうちに、すでに視界には我が家のドアが見えてきた。  きっと、こんな時間に帰ってきたら二人とも驚くだろう。  そんなことを思い、ドアの前へ。ドアノブに手をかけ、鍵がかかっていないのを確認して回す。 「ただいま」  ほっと一息つきながら玄関へ。  すると、早速居間のドアを開け放ち、天が玄関に駆け込んでくる。後ろには珊瑚もいるようだが、 顔がうかがえない。 「あーっ、おかえりなさぁーい!」  残っていたトマトジュー...
  • ソーダちゃんの「ひとりより、ふたりなのっ」 その1
     リビングに駆け込んできたソーダの、第一声。 「ママーっ。ソーダひとりでねんねするーっ」  ……ソーダとの生活で、色々驚かされる経験をしてきた私だけど、これほどまで驚かさせられるとは思わなかった。  あの、甘えん坊のソーダが、一人で寝る? 夜になってから言うのだから、昼寝という訳ではない。  確かに、仕事で遅くなる時はソーダに添い寝をしてあげることは出来ない。それでも、他のお姉さん達が付き添ってくれているのは確実。一人で寝たことなど、これまで一度もないと思う。 「え、えっと……大丈夫なの?」  コーヒーの入ったマグカップをテーブルに置き。満面の笑みを浮かべるソーダに顔を向ける。 「うんっ。てんちゃんがー、おねーさんはひとりでねるんだよーっていってたー」 「お姉さんって、ねぇ」  そのお姉さんと呼ばれるには、ソーダはまだまだ幼すぎると思うけど……。  ...
  • ある日、森の中で
    「あれー……おかしいな……」   今、僕は湖のほとりの森の中にいる。なぜこんなところにいるのかというと、雲母についてきたからだ。   何やら特大荒巻が採れると言っていたんだけど……この辺の地理に詳しくない僕は雲母とはぐれてしまった。 「おーい、雲母ー!」   はぐれてからかれこれ一時間は経っただろうか。『迷ったらその場を動くな』とはよく言うけど、雲母相手じゃ探してもらえないかもしれない。なんせ嬉々として一人突っ走って行ったからなぁ……。   そんなわけで、あてもなく森をさまよい続ける。そういえば、ここら辺に誰か住んでるって話を聞いたような……誰だったかなぁ?   プチン。   ん? 今何か音がしたよう……な゙!?   ばしゃーん!   そうして僕の意識は途絶えた。 「――気がついた?」 「……んあ」   焦点の合わない視界の中、目だけで辺りを見回す。   目...
  • 夜の生活
      連日の残業。今日も帰宅は深夜か。さすがに疲れる。でも、独りのころとは違うからな。部屋に帰ることが楽しみになっている。 「ただいま」 「おかえりなさい。今日もお疲れ様です」   『おかえりなさい』。この一言を言ってもらえることがこんなに嬉しいものだとは、ペリドットと出会うまで知らなかった。ましてや、出迎えてくれるのが彼女だ。これ以上に幸せなことはない。 「最近、お帰りが遅いですね。お体は大丈夫ですか? 無理しないでくださいね」   心配してくれるんだなぁ。素直に嬉しいや。   おかしなものだ。同じようなことを言ってくれる人がいなかったワケじゃないが、聞く耳持たなかったんだよな。不思議と、彼女の言葉なら素直に受け入れられる。 「ああ、ありがと。少し疲れてるけど、あと一日だから。頑張るよ」 「あら、明日はお休みなのでは?」 「追い込み時期なんでね。9月末は大変なんだ」...
  • 団子の固さを決めるのは
    月「というわけでお団子を作ろうと思うのよ」 紫「なるほど。今夜は二人でしっぽり月見か。姉を独りにして」 月「なっ……ち、違っ……」 紫「ならなぜ急に団子なんか作ろうとしてるんだ?」 月「う……だって……お月見なんかしたことないって言うから……」 紫「ほぅ?」 月「も、もういいでしょっ! さっさとお団子作るの!」 月「うーん……こんなモン?」 紫「粉はみみたぶくらいの固さらしいな」 月「みみたぶ……」   ふに。 月「にゃーっ!? どどどどこ触ってんのよ!?」 紫「いやぁ、どっちの耳を触ればいいかわからなくてね。いっそ別のところを、と」 月「だからって……!!」 紫「ずいぶんと肉がついたんじゃないか?」 月「……アメジストの馬鹿ーっ!!」
  • 彼女なりの理由
    日付も変わろうかという頃になり、彼女は鏡から現れ出でた。 「ただいまー……」 「おかえり」 少女は今日も、ボロボロだった。 「いやー、やっぱりまだまだ修行不足ねー」 桃色の服は裂け汚れほつれ、太陽の様な明るい髪には、ところどころに土が混じっていた。 「ぼろぼろだね」 「うーん、またお姉さまに服直してもらわなくっちゃ」 少女はスカートを摘み上げ、頬に手を添え呟いた。 「金剛石は、どうしてそこまでするんだい」 優男は濡れタオルを少女に手渡し尋ねた。 「私は」 少女は、どこか遠くを見つめて答えた。 「私は、みんなに笑ってて欲しいから」 ◇ 暖かく穏やかな午後、空は薄暗く曇っていた。 少女は見た目からは想像できない、年を経た落ち着きを持っていた。 優男は少女の淹れたお茶を口に含み、自分が熱さも分からない程に焦っていることに気付いた。 「どうして彼女は...
  • 雪月花
    ~雪~ 「あら?」   寒くなってきた季節。鉛色の空からチラリホラリ。 「寒いと思ったら……」   バルコニーから雪が降る様を眺めるペリドット。街が白く染まっていく。 「ただいま、ペリドット。あれ? どうした?」 「ああ、マスター。お帰りなさい。雪が……」 「うん。強く降ってきたね。明日は積もるかな……って、冷えてるじゃないか。中に入ろう」 「はい」   深夜、ペリドットはまたバルコニーに立って、雪が降る街を眺めている。 「雪が好き?」 「あ、マスター。風邪をひきますよ」 「大丈夫。北国育ちなんだ。雪と寒さには慣れている」 「そうなんですか。私……雪は嫌いです」 「嫌いなのに、眺めているのかい?」 「ええ、雪は嫌い……寒いのも嫌い……でも、好きなんです」 「??????」 「昔……北国で暮らしたことがありました。1年の半分以上、雪に埋もれる国で...
  • カミナリコワイ
     突然だが、我が家は現在停電状態だ。  いや、我が家というのはおかしいか。この地域一帯が、台風の影響で停電中だ。おかげで懐中電灯やらろうそくやら用意するので大忙しだった。 「まったく、これぐらいもっと早くできませんの?」  ちなみに、こんなときでも優雅に紅茶を飲む相方は手伝う気ゼロなので、全て俺がやった。 「いや、そうは言うけどな……できれば鶏冠石も手伝って」 「乙女に仕事をさせるような殿方に育てた覚えはありませんわ」  ……そうっすか。まぁ、今さらどうこう言うつもりもない。鶏冠石らしいじゃないか、実に。 「だいたい、これだけ大きな家なら自家発電ぐらい用意したらどうですの?」 「ちょ、病院じゃないんだからさ」 「お黙りなさい。貴方は宝石乙女のマスターという自覚があるのですか? 常に万全の配備を整え、私の身の安全を保護する義務が――」  と、ろうそくの明かりの下で小言が始...
  • プリン記念日
    『おみやげはプリンがいいなぁ~♪』 『毎回毎回……だからねーよって言ってるだろうが』   俺がバイトに行く前、必ず天河石とする会話だ。   あいつと初めて出会ったときに、偶然残っていたプリンを食わせて以来気に入ったらしく、隙あらばプリンプリンとうるさい。   ちなみに契約したのは天河石の方が先だ。珊瑚はそれから1ヶ月後ぐらいに来たな。   ……そろそろ半年か。   まぁ、それがどうということではない。   それよりも今は俺の晩飯だ。バイトから帰ったらたいていあの二人は寝ているし、そういうときの俺は一人でコンビニ弁当を食べる。   まぁ、昔は毎日コンビニだったし、今さら気にすることでもない。だが、珊瑚が作ってくれる飯が食えるようになってからは食生活もよくなっている。   だから、最近コンビニの弁当が味気ない……誰か美味しい弁当教えてくれ、セ○ンかロー○ンで。   ……愚痴...
  • 私と、狐耳の……
     時々、電気石の面倒を見るついでに、他の子供達の面倒を見ることがある。  正直、問答無用に尻尾を弄ろうとしてくる子供達は苦手だった。その後の手入れにどれほどの時間を要するか……。  だからこうして、自分は遠くから子供達を眺めているだけ。あの子達の輪に入ろうものなら、まただんな様に迷惑をかけてしまう。  自宅の庭で遊ぶ子供達。相変わらず、微笑ましい光景。 「……何か?」  その輪に入ろうとせず、荒巻を抱きながらじっとわたくしを隣から見つめてくるだけの少女が一人。  雲母……・この子とは、あまり面識がない。住んでいる家も違えば、互いを結びつける接点もあまりない。  電気石の友達、ただそれだけか。とにかく、わたくしはこの子のことをよく知らない。 「尻尾は触らないように」 「分かってる」  まぁ、それならいいのだけど。  ……会話が続かない。  黙って見つめられるのは嫌だけ...
  • たまには世話をしてやろう
    雲「んっしょ、んっしょっと」 主「布団なんて敷いて何してるんだい?」 雲「たまにはマスターの世話してやる。ありがたく思え」 主「顔を赤くして言われても説得力がないなぁ。じゃあ今日は一緒に寝ようか」 雲「別にどうでもいい」 主「じゃあいらない?」 雲「マスターが言うのなら仕方ないから一緒に寝てやる」 主「はいはい」
  • 試金石百合日記11
    「やあ珊瑚。」 「またお主か。」 主人に言われたとおり、強引なんかじゃなくて少しずつ…。 そして確実に歩んでいこう。それがいい。 というかそうしなければ大人のキスをされた意味が無い。 「珊瑚、実は謝りたい事がある。」 とりあえず謝っていままでの清算をつけよう。 そうして、今度こそらぶらぶな関係に…。 「…あ、明日は槍の雨か?そ、それとも具合でも悪いのか? あ、頭をぶつけたか?だ、大丈夫なのか!?」 「ごめん、すごい悲しい。」 ひ、ひどい。そこまで意外か? 「じゃなくて、今までの事を謝りたい。ストーカーまがいの事したりとか 無理矢理キスしたりとか…。ごめん。」 腹をかかえて笑い出しそうだった珊瑚の表情は一瞬にして シリアスになり、静かに「そうか。」と。 「じゃあ、家に来るのもやめるのか?」 「珊瑚が嫌なら…。」 やっぱり...
  • 髪は女性の命らしい
      最近、髪がうっとうしい。伸びすぎたかなぁ。 「うーん……」   鏡の前で考え込んでみる……やっぱり長い。せっかく伸ばしたのだからもったいないとか、そういう思いはいっさいない。この際ばっさりカットしてしまおうかなぁ。でもどれぐらいにしようかなぁ。うーん、一人の意見で決めるのもアレだし、どうしよう。 「あーっ」 「痛っ、いや、ちょっ!」   いきなり背後から髪を引っ張られる。こんな悪戯をするのは一人しかいない……というかあたし以外にこの家にいるのは一人だけ。 「ソーダっ、めっ!」 「う……ごめんなさい」 「もぉ、髪を引っ張るのはダメ。ソーダだって痛いのは嫌でしょ、分かった?」 「あぅ……」   昔は叱っただけですぐ泣き出しちゃったけど、今回はちゃんと泣くのを我慢している。だからあまりきつく叱ったりはしない。それがあたしのやり方ってことで。   ……そうだ、この際だから...
  • 一つのりんごを分け合って
    「化石、りんごだ、赤い知恵の実だ」 「おぉぅ! でもマスタ、りんごってまだちょっと高いんと違うのん?」 「職場の人が分けてくれたんだなこれが」 「つまりタダ!?」 「そういうこったな、今剥いてやるからちょっと待ってな」   ショリショリショリショリ…… 「お待ちどう様」 「う、うさぎはん、ディスイズアジャパニーズうさぎはん……!」 「ありゃ、うさぎは嫌いだったか」 「ううん、マスタすごい! うさぎすごい!」 「はっはっは、好評で何よりだ。色が変わるまでに食っちまえ。それともあ~んとかして欲しいのか?」 「してほしいしてほしい! なんか恋人っぽいやがな!」 「子供じゃないんだからとか言うかと思ったら……ほれ、口開けれ」 「あ~ん」 「でけぇ口だな……」   カプ  シャリシャリ…… 「おいひ~」 「……妖怪口でか魔人に食われ哀れうさぎの命は儚く散った」 「...
  • 風邪
    季節変わりに風邪をひく。 子供の頃から体質のせいで繰り返してきたこととはいえ、 いい歳をして同じことを繰り返していると ちょっと自己嫌悪におちいる。 せっかくの連休だというのに、どこへも出かけることもなく部屋で眠る。 起きると彼女に叱られるから……。 いまも、夢と現の狭間を彷徨っている。 ふと、ぬくもりを感じる。 暑くも無く、寒くも無い。 ちょうどよい心地よい暖かさ。 春の陽だまりのようだ。 そして、あまずっぱい優しい香りに包まれる。 まるで、子供の頃に母親に抱かれていたような 静かで幸せな気持ちになる。 穏やかな気持ちのまま、また夢の中へ意識は沈んでいく。 まどろみから覚めた時に周りを見渡すと、ペリドットは椅子でうたた寝をしていた。 本を読んでいたのだろうか。 膝の上には先週末に僕が買って来た...
  • 二日酔いの特効薬
      過労の状態で泥酔してしまい、起き上がれなくなってしまった。 「もうっ! こんなになるまで呑むなんて。今日は罰として、一日中休んでもらいますからね」   ペリドットはご機嫌斜め。仕方ない。最近、仕事に追われて放っておいたし。一段落したと思ったら、二日酔いでくたばってるし。だらしない主人に愛想尽かしてなきゃいいけど。   ぼーっとしながら、彼女を眺める。 「どうしました? 大丈夫ですよ。私はそばにいます」   頬と髪を撫でられる。気持ちいい。意識が途切れていく……。   何時間たったのだろう? 意識が戻ってきた。まだ頭が痛む。 「目が覚めました? 食事はできそうですか? いま温めますから」   体がだるい。動く気力が湧かない。今日の俺ってダメダメだなぁ。 「体を起こしましょうね。大丈夫ですか? はい、ア~ン」   こ、これは、これがあの『ア~ン』なのかっ。なんてこ...
  • 真似してみたいお年頃
      身づくろい珊瑚   イメチェンに挑戦   見つかっちゃった珊瑚   まねっこソーダ   やっぱりやってみた   そしてあきらめた   困惑瑪瑙   まねっこソーダ   こどもは結構よく見てる   化粧品にも興味津々 鶏「ま……まあ、子供のすることですから(うう、秋の新色だったのに……)」 真「チキちゃん(鶏→チキン→チキたん)ドンマイよ。はい、秋の新色限定品、さしあげるわ」 鶏「お姐さま……っ!!」   そのころ マ「ああ、きんもくせいが綺麗だねえ」 電「……おべんじょ?」 マ「ええ!? ああ、うちの芳香剤……電気石、お外でおべんじょなんて言っちゃいけないよ。せめてトイレって言いなさい」 電「……じゃあソレ」  遊び疲...
  • 別離
     今年もまた、桜の季節がやってくる。  差し込む日差しは暖かく、外は新緑の様相を見せ始め、わたくしの名前とは正反対の、 命に満ちた光景が広がる。  こんな日は、誰よりも大切なあの方と、ただ静かに寄り添っていたい。  日差しを目一杯浴びながら、うたた寝をするあの方の顔を、ただ眺めていたい。  ……でも、あなたはもう、わたくしの隣にはいませんね。  春の陽気は、確かに周りの空気を暖めてくれる。  だけど、わたくしの隣はとても寒い。体ではなく、心が凍えそうになってしまう。  あぁ、だんな様……どうしてあなたはここにいないのですか? 「殺生石ぃー、ご主人様明日帰ってくるんだよっ。あと少しだからがんばって……あっ、お姉様! そっちはほこりが溜まってるから駄目ぇー」  散らかり放題の部屋で、蛋白石が掃除機を持って歩き回る。  そしてわたくしは……右手には...

  •   ぽつり。湖畔の水面に波紋が広がる。   雨か……。   ぽつぽつと波紋は数を増やしていく。日中の空模様からすると、特に雨の気配はなかったのだが……秋の天気はうつろいやすい。   本降りになるかもしれないな……人ごとのようにそう考える。別に本降りになろうとかまわない。雨は嫌いではない。むしろ好きだ。何の区別もなく、すべてを洗い流すさまが気に入っている。   淀んだ沼の底から這い出ていた私は、土と血で汚れきっている。それを洗い流してくれるような気がするのだ。   ぽつり。頬に雨粒があたる。手を出すと、それは手のひらに落ちて弾けた。わずかな刺激と冷たさが、私に存在の実感を与える。   夜の静けさは自らが闇の一部になったように感じさせる。雨音がその闇を照らし、雨粒が闇の中の私を探し出す。雨はしだいに強さを増し、髪から雫がぽたぽたと落ちた。   湖畔の水面がぐらぐらと波打っていた。...
  • ホントは頼りにしてるから
     秋の空は変わりやすく、昨日まで白い雲を浮かべていた青空も、 今日は灰色の雲から雨が降り落ちていた。  バルコニーに出る為に、ドア状になった大きめの窓を叩く、雨粒。 その音が、ずいぶんとうるさく耳に入る。 「はぁー、極楽極楽ぅ」  ベッドに全身を投げ出す金剛石。  雨音を押しのけ、スプリングの軋む音が、部屋に響く。 「……人の部屋でずいぶんとくつろいでますわね、貴女は」  相変わらず、乙女としての気品に欠けるこの妹。  私としても、何とかして矯正したいところだけど。  大体、用事もないのにどうしてこの屋敷に来るのだろうか。  今度改めてこの子に理由を聞いてみよう。もしも、ロクな理由でなければ どうしてくれようか……。  そんな事を考えていたら、部屋のドアがノックされる音が響く。 「鶏冠石ー」  ドアの向こうから、マスターの声が聞こ...
  • プロポーズ
     「コーヒー」 近頃のマスターは 以前の穏やかなマスターに戻ったようだ。 まるで憑物が落ちたよう。 何があったのかは いまさら聞くまい。 今日も二人で黒曜石の家を訪れて楽しい時間を過ごしてきた。 二人で歩く夕暮れの家路が嬉しい。子供のようにしりとり遊びをしながら歩く。  「比翼連理」 数日前にアメジストが折れた。 視線を伏せた数秒間で何を思ったのだろうか。 『姉を頼む』 その一言を残し、自室へと下がっていった。 月長石に背中に手形が残るくらい叩かれるまで僕も呆けていたようだ。 屋敷を出る際に見送りに来た月長石が伝えてくれた一言。 『姉を哀しませたら命が無いものと思え。 私はいつでも見つめている』 いったい、どこまでが本気なのやら……。 胸のつかえが取れてからは ペリドットと過ごす時間を増やしてみた。 以前よりも多めに。 やはり寂しかったのだろうか、前にも増...
  • ソーダの瞳に映る世界
    「ふぁあああぁ……うわ、もうこんな時間か……おはよう黒曜石、悪いけど濃いめのコーヒー入れてくれ……」   多忙による連日の徹夜に別れを告げ、泥のように眠った次の日。12時を回ってようやく起きた私は、リビングに出て黒曜石に声をかけた。 「おはよぉますたー! 黒曜石はお出かけしちゃったよ!」 「お姉ちゃん、晩ご飯のお買い物に行くって言ってた」 「……ん」   だがそこにいたのは、テーブルで行儀よくお絵描きにいそしむ天河石、ソーダ、雲母。口々に――雲母はうなずいただけだが――黒曜石の不在を教えてくれる。 「あ~おはようみんな。そうか、黒曜石はいないのか……」   黒曜石は毎日夕飯の買い物に行く。自分で煎れたコーヒーはまずいので飲みたくないのだが、こんな時間まで寝てた自分が悪いので仕方がない。 「ようやく仕事も片づいたし、今日はゆっくりできそうだな」   一人つぶやき、ぎこちない...
  • 言っておきたいことがある
    『プルルルル、プルルルル』 「あー、はいはい」   少々雲っていて肌寒い逢魔が時。無機質な音が鳴り響く。   こんな時間に電話なんて誰だろう。めったにかかってこないのに。 「もしもし」   とても懐かしい男からの電話だった。   そいつとは小学校のときに家族ぐるみでつき合っていた。中学に上がってからは学校が違ってしまったため、疎遠になってしまいそれっきりだった。   そいつがいったい何の用だろうと思ったが、『ちょっと会えないか』 といった簡単な呼び出しだった。   場所はそいつとよく遊んだ公園。歩いて15分くらいか……時間には少し早くなるけど、すぐ出とくかな。   部屋着に一枚上着を羽織り、その上にコートを着て早々に玄関に向かう。   と、忘れるところだった。 「漬物石ー。ちょっと出かけてくるから」 「あ、はい。夕御飯までには帰ってきて下さいね」   ひょこ...
  • いつかきっと
    「アメジスト、海って何ですか?」 唐突に、ホープが聞いてくる。 一瞬からかわれているのか、次は哲学的な問いなのか考えた後、無難にこう答えた。 「大きな水溜り」 途端、後頭部を軽く叩かれる。 「月長石、人の頭を気軽に叩くな」 「アメジストの答えはいい加減すぎなの!」 「……ああ、そういえばここは内陸だったな」 ホープは人目を避けるように暮らしてきた宝石乙女。 海を見たことがなくても不思議ではないのかもしれない。 「この本に詳しく書かれているよ。遠国の旅行者の記録だ」 ホープに一冊の本を渡す。 「ありがとうございます。いっぱい勉強しますね!」 笑って受け取るホープ。つられて私も笑う。 本一冊くらいでこんな顔をしてくれるなら、本当の海を見せてあげたら、どんなに喜ぶだろう。 そう思った。  ◇ 「月長石、月長石。お願いがあるの」 ホープがあた...
  • おめめを隠してだーれだ? 漬物石編
    「ただいま」   相変わらずの疲れた顔を浮かべて、マスターが帰宅する。   それを笑顔で出迎えるのも私の仕事。言葉に出すのは恥ずかしいけれど、いつもありがとうございます。 「あっ、おかえりなさい。お風呂、沸いてますよ」 「おぉ、ありがたい。今日は冬なのに汗かいてなぁ」   マスターは脱衣所へ。私はその間に夕食の仕上げをする。   それにしても、マスターの言う通り、仕事着は汗が染みこんでいて少し重かった。   今日はいつもよりお疲れなのかなぁ……。   ……ここは、いつもとは違うことをしていたわってあげたい。   でも、何をしよう……漬物とお酒はいつものことだし。でも、それはいつもマスターが喜んでくれるからやはり嬉しい。   ……そうじゃない、今日はいつもよりたくさん喜んでもらいたい。   何か、特に今できることは……そうだっ。   さっそく思いついたことをやるために...
  • 試金石とクリスマスの前
    世の中にはクリスマスというお祭りがある。 それが間近に迫ってきた今日……。今までなら僕はクリスマスを心から反対しただろう。 何故ならクリスマスパーティーを開くような友人はいないし 当然のことなら彼女もいない。実に陰気な日だったのだ。 だが今年は違う。今年のクリスマスには試金石がいる。 これは大きな変化だ。試金石が隣にいるだけで大分救われる。 ……最も、聖夜を性夜にしようなどという輩とは違うので静かなものになりそうだが。 「いやぁ、楽しみだな、クリスマス」 あまりにも楽しみなのでつい口に出た。本当に、ついだ。 「クリスマスなら私は珊瑚の家にでも行くが」 などという思ってもいなかった返答がきたのだ。 ……そうなると今年も陰気なクリスマスですか。それ、僕も行っちゃダメですか。 ショックの表情が顔に出たのだろう。試金石は意地が悪い笑みを浮かべた。 「冗談だ」 「……また...
  • ジュエリーメイデン第2話
    「ふむ、それで俺に勉強を教えてほしいと」 「そうなんだよ。 今クーラーぶっ壊れてるから家じゃ集中できなくてさ。ってことで真次郎おま――」 「却下だ」 「これはひどい」  場所はとある公立高校。そしてクラスで昼食中。  んでもって昼食中、尚吾が黒曜石と運命の出会いを果たしたころ、兄の啓吾は友人と交渉にあたっていた。  結果は見ての通りである。 「神奈もつめてーよな。神って苗字なんだからそんぐらいつき会ってやればいいのに」 「苗字は関係ないだろう」 「僕もよかったら見てもらおうと思ってたんだけど……どうしてもダメかな?」  と頼んだのは寝惚け眼の、ちょっと太めの少年だった。  だが、神奈と呼ばれた眼鏡の少年はゆっくりと首を振った。 「ダメだ。めんどくさすぎる。どうしてもっていうなら焼肉一年分持ってこい」 「一年分の焼肉の摂取量が分かんねーよ」  そんな友人のやり取り...
  • 名も無き乙女の昔話6
    夜更けだと言うのに、マスターと執事さんの言い争いが聞こえる…… 「――なりませんっ! 国王陛下より手出し無用の通達が届いておりますっ! 当家のためにも、ここは堪えて下され」 「何を申すかっ! 長きに渡る戦を収めようと尽力なされてきた彼の行為を無駄にするつもりかっ!  いまの国王に何ができるのか? 自らの保身に走っているだけではないか。  第一、戦で死ぬのは我々のような騎士だけではないっ! 無辜の民が殺される様を城から傍観しているほど腑抜けてはおらぬわっ!  そこをどけっ!」 「いいや、通しませぬ。先代よりご当主のことを託された私が止めねば、ご当家の存続にかかわります。  貴方が咎を問われれば、ご当家のみならずご親戚様や仕える我々まで責を負わねばなりません。  どうか、どうか留まってくだされ」 「聞け。私は騎士だ。わが血筋は貴族なんだ。騎士は何をもって騎士とするか? ...
  • クーベルチュールとかの話
     2月ももうすぐ3周目にさしかかろうとした頃のこと……。 「ねぇマスター、手作り用のチョコレートって何買えばいいの?」  そんなことをレッドベリルが聞いてくるものだから、俺は思わずこう答えてしまったんだ。 「手作り用ー? そんなでかいの食べきれるのかよ?」 「……食べる訳ないでしょー!」  まぁ、何だ。  バレンタインデーという存在を、俺はすっかりと忘れていた。  だから思わずそんな言葉が出てしまった訳で……うちの店、バレンタインで何かやることもないからなぁ。 「悪かったって。だから機嫌直せよ」 「反省してるように見えないもん……」  俺の向かいで、テーブルにふくれっ面を載せたレッドベリル。  もちろん、怒らせたことに反省はしている。だがチョコレート作るとか言い出すなんて思ってもいなかったし。 「あー、ちゃんと作り方教えるからさ。それで...
  • 台風が来た!
     最強級とかいう物騒な二つ名を得た台風が来た。だいたい最強とか、子供がつけるんじゃないんだから……もっといい表現はないのだろうか。 「最強なのは認めるけどよぉぉぉ!」  頭上に差すはずの傘を真横にして、自宅への道を進む。  風が強い。顔に当たる雨が痛い。というか歩きにくい。しかも夜になってからひどくなるという最悪のパターン。この状態で道を行くのは危ない。向かってくる車が見えない。だからって、素直に傘を頭上に掲げるなんてできるわけがなかった。やった時点で傘は崩壊する。高いんだからな、これ……。 「……ったぁぁーっ」  風に乗って、声と区別もつかない音が聞こえる……いや、声だ。聞き取りにくいが、確かに女の子の声だ。この声は……。 「…………すったぁーっ!!」  スター? にしきの? 「まっすったぁーっ!!」  あぁー、マスターか。なるほど俺のことか。 「って、誰だっ!?」 ...
  • お風呂二人前
      スケベな上司にガツンと一泡吹かせた今日も終わり。やーっと家に帰って来れましたっと。 「ただいまー」   時刻は午後7時。今日は用事があるとかで爆弾岩さんは早めに帰ったらしいので、きっとソーダも寂しがっているだろう。 「ママー、おかえりー♪」 「お、元気だね。いい子にしてた?」 「うんっ。ソーダいいこだよー」   しゃがんだあたしの背中に飛びついてくるソーダ。   スーツにしわがついてしまうかも知れないけど、まぁいいや。そのままおんぶをして、寝室へと向かう。 「ソーダ、お腹空いた?」 「ぺこぺこー」 「そっか。じゃあお風呂入ったらすぐご飯にしちゃおうか」 「おねーちゃんがつくってくれたよ。ソーダもおてつだいしたー♪」   さすが爆弾岩さんだ、頼りになる。   仕事に帰ってきてからご飯の支度って、かなりしんどいだよね……。 「そっか、偉いねソーダ」 「えへへー...
  • 彼女が学ぶ理由(わけ)
    珊「主、この図書館という場所に連れて行って頂きたいのだが」   そんな話から始まった休日。珊瑚の奴、いきなり図書館ってどういうことだろうか。   まぁ、俺も暇だしたまには付き合ってやってもいいという事で、こうして地元の図書館に来ている訳だ。 主「で、珊瑚は何について勉強したいんだー?」 珊「少々現代の知識に乏しい。だからその知識の補完をしたいのだ」 主「なるほど……じゃあ俺も少し手伝ってやるよ」 珊「かたじけない」   …………   とはいったものの、何をどう手伝うべきか……。   まぁ、適当に回ってみて珊瑚の気になった事を教えてやるってのが一番いいのかも知れないな。 珊「主、この嫌韓流というのはどういうものなのだ? テレビで韓流というのは聞いた事あるのだが」 主「……お前も天河石みたいなところに興味を持つんだな」   というか、何でいちいち俺の行く先にこの本あるん...
  • ソーダちゃんが家に来た
      ソーダちゃんが家に来た。   マスターたちの会合と年長乙女たちの意見を取り入れ、ときどき各家庭を訪問させるイベント。   よりよい成長のため、社会経験を積むため、環境変化の刺激を与えるため、いろいろな人とのコミュニケーションの訓練のため。   さまざまな理由づkけが成されたが、なんてことはない。みんな、ソーダちゃんを独占して一緒に遊びたいだけだ。   『ソーダ番』はこうして設けられた。   ペリドットにしても、ソーダちゃんが来る日はいつになくはしゃいでいるように見える。   妹とはいえ、これだけ歳が離れていると娘のような気持ちになるのか?   昨日から仕込んでいた料理を作り上げて、テーブルから溢れんばかりに並べている。   いくらなんでも、これは作りすぎでしょう……訴えかけるように目線を送ると、テヘッと言わんばかりにチロッと舌を出して首をすくめる。ああ、自覚はある...
  • マスターのストライクゾーン
    置「ふっふっふー、今日はいい物手に入っちゃったさぁ~」 虎「……それがいい物とは思えない」   今日の晩ご飯、何作ろうか。そんなことを考えながら家へと到着した僕。今日もお疲れ様でした。というわけで帰宅。今日は殺生石と二人きりの夜だからちょっとだけ緊張かなぁ。 主「ただいまー」 殺「おかえりなさいませ」 主「うわぁっ!?」   玄関で正座した殺生石がいきなり迎えてくれる。でも気配を消すことはないと思う……声かけられるまで気づかなかったよ。 主「え、えーっと、出迎えてくれるなんて珍しいね」 殺「はい、居間で待つのが少々息苦しかったもので」   ……息苦しかった? 一体どういうことなのか……。 殺「お話があります。こちらへ」 主「え……うん」   よく分からない。なんだか知らないけどよく分からない。別に怒っている素振りもないし、何か約束しているわけでもないし……もし...
  • 思いつきは、ペリドットさんから
     帰ってきて、早速出迎えてくれるのは殺生石。 「おかえりなさいませ。今夜は蛋白石達がいないので二人っきり……何か?」  いつも通りの着物姿。髪も艶のある黒で綺麗だし、9本の尻尾だって可愛く揺れている。  だけど、顔……何故か、僕の目の前にいる殺生石は、丸いメガネをかけていた。 「……殺生石、メガネ?」 「ええ」 「何か企んでるのかな?」 「いいえ」  じゃあ何でメガネなんだろう。  まず殺生石が目を悪くするなんて考えられないし、それ以外のメガネの用途なんて いつかない。良くてたまねぎを切る時のガード? 「これは、たまねぎの汁で目を痛めないための道具です」 「え……」  その答えに、何故か笑いがこみ上げそうになる。  まさか殺生石がそんな、メガネでたまねぎの……あまり効果ないと思うけど。  とにかく、どこか子供っぽい発想を殺生石が実...
  • 後悔は辛いこと、怖いこと
      珊瑚といえば斧。それはあいつを知る誰もが認めることだろう。   刃の部分が身の丈ほどはある斧を、彼女は自分の手足のように自在に扱う。   その姿を初めて見たとき、俺もかなり驚いた。 『この斧の輝きにかけて、主の命をお守りしよう』   俺があいつと初めて契約したときの一言。   ……ま、ぶっちゃけこのご時世、珊瑚の斧に身を守ってもらうことはほとんどないだろうけどな。 「主、何か顔についているか?」 「ん……いや、別に」   まぁ、どうしてそんなこと思ったかって、俺の目の前で珊瑚が斧の手入れをしているからなんだがな。   ここに来て全く血に染まったことのないそれは、なんというか美術館に飾ってありそうな感じだ。   薔薇とかいろいろな彫刻が浮き彫りにされていて、武器として扱うようには見えないからなおさらそう思う。 「なんつーか、毎日飽きないよなぁ、それ」 「ん、手入れ...
  • 呪い、苦しむ者へ
      宝石乙女の創造者は、芸術家だ。   たとえばこの本。人から見ればただの詩集だが、ひとつひとつの詩には、詩人の語るべき主題……テーマが存在する。   そして、私たちも一緒なのだ。私たちは創造主のテーマを元に作られた乙女たち。   オブシディアン、パール、マイカ。鉱石に創造主のテーマを抱かせ、私たちは作られた。   ……今日は月食の日。   彼が鉱石に抱かせたテーマは、言うなれば月食の中の闇。 「明るいな」   ベンチに座る私の背後で、初老の男が呟く。   私は、彼をよく知っている。 「人は光を求めるもの。自分たちのテリトリーに灯りを絶やさないからね。貴方とは、まったく違う」 「私は暗闇を求めている、そう言いたいわけだ」   まったく持ってその通り。   彼は月食の元でしか、姿を現さない。   もちろんその性格も暗い。私が巡り会ってきた人間たちの中で、最も陰気な人...
  • 二人の出会いに乾杯
    「今日も夕食美味しかったよ」 「ありがとうございます」  梅雨の抜け切らない中で、たまの晴れ間を見せたかと思えば、一段と暑くなった今日。 世間一般的に見れば何でもないとある一日なのだろう。  だが、僕らにとっては特別な日。いや、特別な前日といったところだろうか。 「マスター、紅茶のおかわりはいかがですか?」 「ありがとう、お願いするよ」  彼女の名前は黒曜石。ある日突然、僕の目の前に現れた女の子。  お世辞でなくても『かわいい』という言葉が口から零れるほどの容姿。その姿はお人形のよう。いや、実際に『ドール』なのだ。  彼女には沢山の姉妹がいる。お姉さんも妹も皆がそれぞれ個性的だ。  もちろん、その姉妹らにもそれぞれのマスターがいる。マスターを持たない娘もいるようだけれど。  そして、黒曜石に出会った『ある日』というのが、ちょうど一年前の明日なのだ。  正直なとこ...
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