これはジュン達が帝国軍とレジスタンスの戦いを止めに城を出て行った少し後の話である
ラグナロクは謁見の間にいた
玉座から離れ、窓の前に立ち外を見つめていた
バタバタとあわただしく城内で兵士が走り回る音が聞こえる
ラグナロク 「…」
兵士の話し声が聞こえてくる
ラーナ兵1 「わが軍が…優勢…ジャッジメント軍は…」
ラーナ兵2 「すでに敵は追い詰め…時間の問題…」
ラーナ兵3 「…メラー様が…」
聞こえてくる会話の内容にラグナロクは何の興味も示さない
ただ、黙って窓の外を見つめていた
ラグナロク 「…」
そのとき、兵士の一人が謁見の間に入ってきた
ラーナ兵 「失礼します、皇帝陛下に申し上げます!」
ラグナロク 「…なんだ」
立ったまま視線を兵士に向け、静かに聞き返すラグナロク
ラーナ兵 「ハッ、戦況はわが軍が圧倒的優位とのことです!」
ラグナロク 「そうか、わが軍の被害状況は?」
ラーナ兵 「わが軍に大きな被害は無いとのことです」
ラグナロク 「ふむ…さすがクーガにシリュウだ。やつらの指揮は見事だな」
ラーナ兵 「ええ、2人ともこの国の英雄ですからね」
ラグナロク 「…英雄、か」
ラーナ兵 「陛下?」
ラグナロク 「気にするな…そうだ、少し前にレオンが戦地へ向かったのだが何か聞いているか?」
ラーナ兵 「いえ、レオン様が戦地へ到着されたという話は聞いておりません」
ラグナロク 「そうか、わかった」
ラーナ兵 「増援を出されたんですか?」
ラグナロク 「まあ、そんなところだ」
ラーナ兵 「さすがです、これで長かったジャッジメントとの戦いも終わるでしょう」
ラグナロク 「もうよい、下がれ」
ラーナ兵 「ハッ、失礼しました」
兵士は意気揚々と部屋から出て行った
ラグナロク 「フン…」
再び視線を外へと戻すラグナロク
ラグナロク 「レオンめ、何を考えている…異世界人だと…?」
ジュンの顔がラグナロクの脳裏に浮かぶ
ラグナロク 「もはやこの戦は止められぬ…今さらどうする、レオンよ」
ふと、さっきの兵士が言った"英雄"という言葉を思い出した
そして、同時にシリュウの事も
ラグナロク 「…」
わなわなと不愉快な気分になっていくことをラグナロク本人も自覚していた
ラグナロク 「もう、お前らの役目は無いのだ…」
ラグナロク 「なぜ…!」
落ち着こうと、玉座へ座るラグナロク
そこへ突然さっきとは別の兵士が入ってくる
ラーナ兵 「へ、陛下!」
ラグナロク 「なんだ!騒々しい!」
萎縮する兵士
ラーナ兵 「も、申し訳ありません…」
はっ、と我に返るラグナロク
ラグナロク 「む…まあよい、一体なんだ?」
ラーナ兵 「は、はい。あの…」
ラグナロク 「はやく申せ」
ラーナ兵 「そ、それが…戦地に正体不明の巨大な魔物が出現したとの事です!」
ラグナロク 「…なんだと?」
ラーナ兵 「その魔物の出現で…わが軍とジャッジメント軍双方に甚大な被害が出ているようです」
ラーナ兵 「し、しかも…その…」
ラグナロク 「なんだ、はっきり申さんか!」
ラーナ兵 「そ、その魔物は…どうもメラー様が操っているらしく…」
ラグナロク 「なにぃ…!」
驚愕するラグナロク
ラグナロク 「(まさか、アレを…メラーめ…!)」
ラーナ兵 「いまレオン様が異世界人の者たちと共に魔物を沈める術を探しているとの事です」
ラグナロク 「なに、レオンが?」
ラーナ兵 「は、はい」
ラグナロク 「…」
ラーナ兵 「い、いかが致しましょう陛下」
ラグナロク 「クーガ達はどうした」
ラーナ兵 「クーガ様は、魔物の足を止めていると…」
ラグナロク 「…増援を送る、貴様もすぐに支度をしろ!」
立ち上がるラグナロク
ラーナ兵 「は、はい!」
ラグナロク 「今城にいる兵を集めろ、出陣の命を下す!」
ラグナロク 「補給兵、衛生兵もできる限り出陣させるんだ!歩哨兵もだ!」
ラーナ兵 「わかりました!」
部屋から飛び出していく兵士、再び玉座に座るラグナロク
ラグナロク 「メラーめ、勝手なまねを…」
右手で頭をかきむしるラグナロク
ラグナロク 「ええい、どいつもこいつも…」
ラグナロク 「なぜ…!」
ラグナロク 「なぜ、私の邪魔をする…!!」
強く、拳を握り締めるラグナロク
その拳を叩きつける
ダンッ!
音が部屋に響き渡る
ラグナロク 「えぇいっ、忌々しい…!」
部屋の外では、さっき以上に騒々しく兵士達が騒いでいた
end
最終更新:2008年05月30日 02:34