その幸せは奪われる宿命-さだめ-
とある少女譚その壱
あるところに、一人の少女がおりました。
その少女は特別美しいというわけではありませんでしたが、好感をもたれる愛嬌がありました。その少女は才気に溢れているということはありませんでしたが、よく気が利く頭の良い娘でした。その少女は別段裕福ではなくとも、平凡でそして幸せな家庭で育ちました。
彼女は高校で出会った男性と、大学卒業と同時に結婚しました。彼は思いやりに満ちたやさしい心を持ち、また、優秀な人間でした。彼女は彼との間に一男一女を儲け、平和で小さな喜びに満ち溢れた日常を送りました。彼女の子供たちもまた、彼女のように利口で、良き相手と結ばれていきました。
彼女は80で天寿を全うし、夫、子供たち、そして孫たちに見守られながらその生涯を終えました。
めでたしめでたし。
この少女は、彼女が得られる最大限の幸福を手にしました。
それはありふれているようでなかなか手に出来ない、とても大切なもの。
たとえ少女が気が付かずとも、彼女は世界で一番幸せな少女でしょう。
……さて、この少女を、どう料理しようか……?
例えば――
少女が神になる運命を背負い彼もまた同じ運命だったとしたら?
→ 創造主に捨てられた世界の神・最も正しい一人を探して世界は循環する
少女が巡り巡る婚約指輪-エンゲージリング-で女神となったとしたら?
→ 彼が鳥籠に捕らえたのは・彼を鳥籠に捕らえた彼女
少女が虹と邂逅し倦怠の檻に捕らえられたとしたら?
→ 創造主が望む世界・虹色様-ディアーレインボー-の歪-ひず-んだエデン
少女が薄紅色の日本人形の元に生まれたとしたら?
→ ボーイロストガール・薄紅少女は悲劇を呼ぶ
少女が有り余る頭脳をもって箱庭を夢見たとしたら?
→ かくして人類の英知は箱舟に閉ざされた・洪水が旧文明を葬り去るその日
少女が終末に向かう箱庭で階段から落ちたとしたら?
→ 箱舟から放たれた鳩・旧文明が新文明の地へ帰還するその日
少女がパンドラの妖精と出会ったとしたら?
→ 巨人-ちちおや-が残した最後の力・世界の果てで全てはリリス-ははおや-に帰る
少女が神に愛された少年を奪ってしまったとしたら?
→ 鍵階層-キーフロア-の複写物としての泡階層-バブルフロア-・嫉妬倒錯復讐残虐無間地獄の物語
少女原型-イデアタイプ-は、幸せを求める貴方たちにとって理想の形。
でも少女原型の物語では貴方たちを満足させることが出来ない。
面白い物語とは、「何か欠けているものを得るために戦い、それを成し遂げる」物語。言い換えれば、彼女が最初から全て満たされていては物語として始まらない。
だから私は、少女原型から何かを奪わなければいけない。彼女を幸せな結末へ向かって走らせるために、彼女の幸せは遠いところになくてはならない。その幸せは奪われる宿命-さだめ-にある。
たとえ最後に幸せになったとしても、少女の失われた幸せな時間は最早取り返すことが出来ない。幸せを求める貴方たちは、他人の不幸を代償に楽しむしかないのだ。
……そして私は貴方たちのために少女から幸せを奪い続ける。
少し前に、「幸せ」をテーマに何か書いて持ち寄ろう、なんてすごく面白そうな企画をやっていました。
私はサボった不参加でしたので皆さんの作品を読んでいないのですが。残念。
というわけでちょっと(?)遅刻して私も「幸せ」について書いてみたよっと。
意味不明? 厨弐病? 俺だけ分かればいいや(←おまっ)
とりあえず申し訳程度に解説しておくと、少女が~したとしたら?→~・~の部分は
私が温めすぎて腐りかけているいろんな小説のアイデアです。
意図的に意味深にしました。実際は大したことないです。っていうかまだ頭の中にしか存在しな(ry
なんか読みたいのとかもっと知りたいのとかあったら書いてみるかもよ。
私は、私の物語の登場人物は基本的にみんな愛しています。
でも彼女たちに、一番最初に書いたようなありふれた最高の幸せを与えることが出来ない。
(書かないのに)読者と、そして私自身がもっと面白い展開を望むから。
そこには不運、絶望、悔恨、悲嘆がなくてはならない。彼女たちを突き動かす原動力に。
悲しい話ですね、ふぉふぉふぉふぉふぉ
制作に当たってちょっぴり影響された――というかきっかけを与えてくれた曲があります。
大好きな曲で、メロディも歌詞も世界観も本当に素晴らしい!
気に入ったら空想庭園の少女シリーズは要チェック! ボカロ曲なので苦手な方は注意!↓
感想などありましたらどうぞ↓
最終更新:2010年07月24日 09:39