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Slumdog Day Afternoon ◆hhzYiwxC1.


これは7年ほど前の出来事になる。
当時小学5年生だったノーチラスは、土曜日。いつものように市内方面行き18時の電車へ、意気揚々と乗り込む。

彼の思惑通り、車内は満員だった。
そして、車内に、どのような人が乗っているのか、素早くチェックし、今日もまたターゲットを見つけてた。
ひときわスカートが短く、制服のボタンを二つも外しているかなり刺激的な金髪の女子高生だ。
体勢を崩し、ドアに凭れかかっていることから推測して、少なくとも2駅前以上から乗っていて、あと1~2駅で降りると考えられる。
そして、更に幸いなことに、その女子高生の周辺には、“結界”が張られていたのだ。

ここで言う結界とは、魔術の類染みた摩訶不思議なものではなく、ノーチラスが勝手に用語可した、要するに人の壁だ。
女子高生の四方には、新聞を読むサラリーマンを始め、四人が、彼女を取り囲むように配置されていた。
もちろん彼らはこの女子高生に痴漢を働くつもりは毛頭ない。
だが、いたいけな小学生と、家庭に疲れた中年。
仮に車内で痴漢を騒がれたとしても、疑われるのは間違いなく後者だ。
そして、女子高生を取り囲む四人の男のうち、二人が獣人と言うから、好都合だ。


久しぶりにグローブをはめることなく、直に尻や乳を触れることに、ノーチラスは密かに歓喜し、いつも通り空き席を探す振りをして女子高生の方へとまっすぐ脚を伸ばした。


ドアの外を見ていた女子高生は、尻に奇妙な不快感を覚え、一瞬だけ後ろを振り返った。

一番疑わしい近くの四人(感触から判断して獣人の二人を重点的に)
だが、不意に振り返ったにも関わらず、その四人は、いずれも全く動じることはなかった。
不思議に思いもしたが、どうせ次の駅で降りるのだからと、見逃そうと思っていた。



その女子高生の背丈は、ちょうどノーチラスよりも6cmほど高かった。“結界”の後ろから尻を触るのは、安全策であるが、ノーチラスは不満も覚えていた。
尻も柔らかいが、いつものように冒険もしてみたい。

つまり何を狙うかと言うと、ノーチラスは、むしょうにこの女子高生の乳が揉みたかった。
先ほど尻を触った時も無反応だったことから推測して、恐らく彼女は痴漢を怖がっている。
好都合だった。
幸い、周りの客もこちらには興味を示そうとしない。

ノーチラスは、少し待った。だが既に答えは出ている。
そして、次の停車駅。そこに着いて、電車が止まった直後に、ノーチラスは“結界”の中に入り、手を上にのばして、そのままたわわに実った乳を鷲掴みにした。


「ひっ」

女子高生の少々引き気味の低い叫びに、ノーチラスは「しまった!」と自分の出過ぎた行動を諌めたが、それでもこの乳を手放すことはできなかった。

ドアが開くと同時に、女子高生は、ノーチラスの右手を掴んだ。

「やっぱりバレてた!」

心の中でそう叫んだころにはもう遅かった。
女子高生はすでにこちらを向いていた。

彼女は、少し驚いた風だったが、その呆気に取られた顔も、すぐに無理な笑いをまとった怒り顔に変貌した。
不味い……このままじゃ駅員に引き渡されちまう。
そのことを恐れたノーチラスは、もう一度女子高生の乳を強く揉みしだいた。

この判断によって、最終的にノーチラスは駅員に引き渡されるケースを逃れる。
だが、この判断が、紛れもなくそれ以上に最悪な結果を残してしまうことは、彼には予想することはできなかった。



女子高生の上半身に身につけていた制服とブラは、次の瞬間跡形もなく消し飛んだ。
女子高生は赤面し、己の乳が大衆の眼前に晒されていることを確認するととっさに左手でそれを隠し、そのまま掴んでいたノーチラスの右手を引っ張って、人がまだ沢山いるプラットホームに投げ飛ばした。


その直後にノーチラスは、後頭部を打って気絶した。







ノーチラスは、気がつくとトイレの個室の中。洋式トイレに座っていた。だが、立ち上がれない。貯水タンクに縄で括りつけられている。

個室のドアは開いていて、眼前には先ほどの女子高生(ジャンパーを羽織っていて、ジッパーは完全に閉めている)と、他にも数人の女子高生。いずれもスタンガンや金属バットなどを持っている。
明らかに殺る気満々だった。

実際体中が濡れているし、頭だけじゃなくそこらじゅうが痛い。
電気は消されていて暗いが、自分の体に赤紫色の痣はハッキリ見えた。

女子高生が何を言っているのか全く聞き取れないが、どうやら次撃は迫っているようだ。
意識が朦朧とする。これはマジに死ぬかもしれない。

だが何だろう?ノーチラスは、何故か今確実に、今までとは違うものを感じずにはいられなかった。
痛みと共に、快感にも似た何かが襲ってくる。
その理由は、今のノーチラスには分からない。だが、すぐに分かることになる。



「やめなさい!」

一人の女性と数人の刑事が、暗いトイレの中に入ってきた。


ノーチラスは保護された。担架で運ばれる途中。朦朧とする意識の中で、あの女子高生たちがパトカーで連れて行かれるのを見ていた。
「あなたにも落ち度はあるみたいだから今回の件は……」

この女の人の難しい言葉は、完璧に聞き流していた。
その後は救急車で病院に直行。
ズキズキと痛む頭に、病院のベッドで親父の拳骨を喰らったところで、再び意識はぷっつりだ。
意識が戻ったあとノーチラスが、暗黒面に堕ちたのと言うのは恐らく言うまでもないだろう。



ノーチラスに付き添っていた女性はノーチラスの父親に軽く会釈をして、病室を出ると、携帯電話を取り出した。
そうして移動しながら番号を入力してゆく。
電話は階段に脚を掛けたと同時に繋がった。女性は開口一番電話の向こうにこう話しかけた。

「もしもしクラウ?」
「もしも~し? だれれすか~」
電話の向こうから、明らかに酒に酔っているとしか思えないような声が響いて来て、女性は少々顔を歪めた。

「私よ私」
「私私詐欺はお断りしておりま~す……ひっく…」


「私私詐欺じゃないわよ! あなたの上司の篠原涼花(しのはら りょうか)! クビにするわよ!? せっかくいい大学出たばかりなのにそれは嫌でしょ?」

「所長れすか~ クビは勘弁れすね~」

「だったら酒飲まずに弁護士の秘書としての仕事をしなさいよ~ 妹さん…確かフラウちゃんだったっけ?今のあなた見たら彼女が泣くわよ?」

「なんれすか~? デスクワークはいやれすよ~?」
「いいえ。違うわ。この前の事件の被害者の娘……エヴィアンちゃんだっけ?」


「彼女。私が引き取るわ…」

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最終更新:2009年02月26日 14:20