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Towering Inferno ◆hhzYiwxC1.



どれくらい。床の冷たい集会所で待っただろう。
辺りは少しだけ明るんできた。
あの断末魔により、すでにほのかが亡き者になっていると、どうやら近くで聴いていたかもしれない者たちは、そう感じ取ったらしい。

それはある種の僥倖だったかもしれない。
ほのかに悪意はないし、彼女は他の生徒達も、悪意を孕んだ状態でこのゲームに乗っていてほしくはないと思っている。
だが、ほのかが気付かないような、何の変哲もない教室の中で、悪意を孕む者たちがいることも、少なからず沙羅には分かっていた。
このゲームは、そいつらに“牙”を齎す最悪の環境だ。
誰も来ないのはまさに僥倖。

と、ここで沙羅が考え付くのは、当然ながら「ここを速く移動したい」


「ねえ倉沢さん……そろそろここを移動しない?」

「え?」

どうやら、ほのかの頭の中には、移動をするという選択肢などは全く用意されていないようであった。その証拠に彼女は、沙羅の正論とも取れる言葉に、「信じられない」と言うような表情を向けた。

「どうして? 待ってたら裕也くんが来てくれるかもしれないのに……」

沙羅に、ほのかの気持ちが分からなくはなかった。だが、裏を返せば海野裕也も同じ状況に立っている。それどころではないかもしれないのだ。
甘えの過ぎるほのかに、沙羅は多少苛立ち、歯噛みした。

「………長谷川…さん」

その表情に、ほのかは間違いなく畏怖していた。沙羅は、その瞬間我に返る。
「…ごめん」


沙羅は、ほのかに軽く頭を下げ、表情を元の冷めたものに戻した。多少強硬な手段を取ってでも、ほのかを納得させるべきだった。
沙羅がその口下手な性格を恨むのは、何度目だろう?
ほのかには決して見えないが、沙羅は心の中で再び歯噛みしていた。


ほのかが抱いていた疑心は、ここにきて確固たるものに姿を変えていた。
湧き上がるのは、沙羅への恐怖。

そして、自分の不運さを恨んだ。
こんな危険な人が、いの一番に姿を現すなんて。
私は間違いなく殺される。

死にたくない。裕也くんに会うまで絶対に死にたくない。

死にたくない。その言葉をこの短時間に何度心の中で連呼しただろう。
死への拒絶は誰がためのものかは分からないが――

「ねえ…長谷川さん。やっぱりもう移動しましょう……」

「え?」

ほのかの突然の言葉に、沙羅は面食らった。皮肉にも自分がほのかにさせたような呆気に取られた顔を、わずか数分の間に、自分がする破目になってしまった。

「どう……したの? 急に」
「……………長谷川さんの言うことは尤もだよ……」

嘘だった。本当は、ずっとここに誰も来ないと信じていたかった。
かなり長い間、ここには誰も来ていない。そうだ。ここにいれば絶対に安全だ。

安全だ。安全なんだ。
きっとそのうち、声を聞いた裕也くんが駆けつけてくれるはずだ。そうに違いない。ほのかは、少なくともそう信じて疑わない。

「私がさきに行って……ちょっと様子を見てくるねっ!」

沙羅は、勇み足で階段を降りて行くほのかを、止めようとしたが、再び自分の口下手さが邪魔をした。

結局彼女は、「危ないから私が先に」と言う簡単な言葉すらも、発することはできなかった。
この呪い染みた口下手さを恨む前に、沙羅はすでに下の階にまで降りたほのかを追っていた。
もう恐がられるとか、口下手だとか言ってる場合ではない。

彼女一人では……

沙羅がそう思うよりも速く、集会所の入り口付近からほのかの叫び声が聞こえた。
沙羅は、叫ぶこともせず、ただただ血相を変えて階段を駆け降りる。
これは、沙羅の表情を垣間見ることのできないほのかからしてみれば「彼女はとても薄情だ」と思わざるを得ないかもしれない。
だけども沙羅は、全力だった。

そうして、階段を降りた先には、ほのかの口を塞ぎ、抑え込んでいる日向有人(男子二十五番)の姿があった。



沙羅が有人の姿を確認して、最初に行ったアクションは、「ベレッタを日向有人に向ける」だった。

「倉沢さんを放しなさい」

やや冷淡な口調で、沙羅は言い放った。
「まあ待て長谷川。落ち着け。俺に敵意はない」
沙羅のそれよりは少しだけ暖かくは感じられるが、それでも冷たいことには変わりない声で有人も言い放つ。
彼の腕の中で、ほのかは涙を流しながらジタバタともがいていた
「信じられないわ」

「俺はお前らの行動の方が信じられないね。ちょっとだけアンタらの放送を聴いていたが……あれじゃあ殺してくださいって言ってるようなもんだ」
「ひ…ひがうもん……」

ほのかが有人の腕の中で呟く。
「きっと…裕也くんが………」

ほのかの拘束は、突如として解かれた。そのことを沙羅もほのかも、不思議に思ったが、次の瞬間、ほのかの右頬に、有人の平手が見舞われていた。

ほのかは、痛みとショックを同時に受け、その場に立ち尽くし、何も言わずに再び涙を流し蹲る。

「何してるの!? 日向君!」
「お前ら……バカだろ…………ずっとここに籠城するつもりだったのか? おめでたいんだよ。脳みそが」

「俺はゲームに乗ってる奴を見かけた。そいつは……銀鏖院水晶はグレッグを殺してたよ……そして銀鏖院を……」

「俺は殺した」

ほのかと沙羅は、絶句をせずにはいられなかった。

「あなたは…このイベントに乗っているの?」
「さっきも言っただろ……俺はゲームに乗ってる奴しか狙わない」
有人は、デイパックのジッパーを開け放ち、ボウガンを中から取り出すと、そのまま集会所の中へと足を踏み入れた。

「お前らはどこへでも行け。できるだけ遠くへ、早いうちにな」



「ねえ……長谷川さん…」

「何? 倉沢さん」

港の方へ、息を切らしながら走る二人。沙羅の息は整っているが、運動が得意ではないほのかは、普通の女子よりもやや大きな胸を揺らしながら、整っていないリズムと息使いで沙羅に続く。
そんな中での会話だ。

「日向くん……何も言わずにあの中にいっちゃったし…私たちも何も言わずにあそこを離れちゃったけど…これでいいのかな?」


「……分からないわ………」
少なくとも、目の前でほのかを殴った有人を、沙羅は信用してはいない。そして、ほのか自身、有人はもちろんのこと、自分の身を案じてくれている沙羅のことを未だに信用できないでいた。


【E-8 港周辺/一日目・早朝】
【女子十三番:倉沢ほのか】
【1:わたし(達) 2:あなた(達) 3:○○さん、○○くん(達)】
[状態]:良好、不信、疲労、右頬に痣
[装備]:ドス
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本思考:できるだけ速く遠くへ移動する
0:長谷川沙羅と日向有人に強い不信
1:裕也くんに会いたい
[備考欄]
※沙羅が主催側の人間ではないかと強い不信感を抱いています
※日向有人がゲームに乗っているかもしれないと強い不信感を抱いています

【女子二十四番:長谷川沙羅】
【1:私(達) 2:あなた(達) 3:○○さん、○○くん(達)】
[状態]:良好
[装備]:ベレッタM92(15+1/15)
[道具]:支給品一式、予備マガジン×3
[思考・状況]
基本思考:みんなを助ける、ラトの仇をとる
0:できるだけ速く遠くへ移動する
※日向有人がゲームに乗っているかもしれないと強い不信感を抱いています


【F-8 集会所の中/一日目・早朝】
【男子二十五番:日向 有人(ひゅうが-ありひと)】
【1:俺(達) 2:あんた(達) 3:あいつ(ら)、○○(呼び捨て)】
[状態]:良好
[装備]:ボウガン(装填済み)
[道具]:支給品一式×2、ボウガンの矢(18/20)、サバイバルナイフ、毒薬(3瓶)
[思考・状況]
基本思考:殺し合いに乗る気は無い
0:テトに会って理由を聞きたい
1:襲われたら容赦はしない
2:集会所で待ち伏せて、マーダーを潰す
[備考欄]
※テト達三人が黒幕だと疑っています
※銀鏖院水晶が死んだと思っています
※倉沢ほのかの存在が、あの集団にとってマイナスになると思っています

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仲間を探して 長谷川沙羅 Panic Theater
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Fall'n Gods 日向有人 スカーフェイスと摩利支天