タスマニアデビル

分布

オーストラリア・タスマニア州

形態

体長50~70cm 程度
尾長23~30cm 程度
体重5~9kg 程度
口も大きく、上顎には2本の鋭い牙があり、この牙は一生伸び続ける。
前肢は後肢よりもやや長く、前肢には5本、後肢には4本の指があり、爪は引っ込めることができる。
また、尾は長く、体長の半分ほどもある。
この尾は、走っているときなどのバランスをとるために役立っているが、尾には脂肪を蓄えることができ、健康なものに対して、栄養状態の悪いものなどは細い尾をしている。
毛色は黒色や黒褐色などで、ふつうは喉の辺りに月の輪状の白い斑が見られ、尾の付け根辺りにも白い斑がある。
体は雄の方が大きく、別名・フクロクズリ、フクロアナグマなどと呼ばれることもある。

生態

森林や草原、山地などに生息しているが、谷間の岩場や海岸付近でも見られるほか、都市部周辺にも生息していて、さまざまな環境に適応している。
時に日光浴などをすることもあるが、タスマニアデビルは主として夜行性の動物で、昼間は岩穴や樹洞などの巣で休んでいることが多い。
また、巣穴は、使わなくなったウォンバットの穴などを利用することもあるが、巣穴は生涯を通して同じものが使われると考えられている。
普段は単独で生活しているが、あまり縄張り意識は強くなく、生息地域内では緩やかな社会的つながりをもった生活をしている。
行動範囲は4~27平方km程で、平均すると13平方km程度と言われているが、行動範囲が重なり合っていることもあるほか、数頭が集まって死肉を食べている様子なども観察されている。
動物質のものを好み、トカゲやカエル、ザリガニや魚などを食べるが、鳥やその卵、ネズミなどの小動物も捕食する。
また、餌として容易に利用できる死肉も好み、硬い骨などもバリバリと噛み砕いてしまう。
顎の力は非常に強く、鉛筆ほどの太さの鉄の棒なら、噛んで曲げてしまう。
獲物は単独で捕らえると言われているが、性質は荒く、ときにヒツジや鶏などの家禽も襲うが、動物質のものだけでなく、果実や種子なども食べ、利用できるものなら何でも食べてしまう。
鳴き声は、「背筋の凍るような」と言われるような声をあげるが、死肉を含め、何でも食べてしまうことからも「デビル」と名付けられている。
ところで、タスマニアデビルは視力は弱いが、優れた嗅覚と聴覚を持っていて、土の中の獲物も、優れた嗅覚と長くて頑丈な爪で掘り出してしまう。
また、動きは緩慢だが、短い距離なら時速13km程の速さで走ることもできると言われている。
一方、耐久力もあり、1.5kmの距離を時速25kmで走ることができるとも言われている。
走るだけでなく、タスマニアデビルは木に登ることもできる。
成長するに従って木登りは困難になるが、若いものは、垂直に立つ樹木を4mほども登ることができる。
これは、鳥の卵や昆虫類爬虫類などを捕らえるためでもあるが、成熟したものは、極端な空腹時には若いものを襲うことから、これを避けるためだとも言われている。
泳ぎも巧みで、50m程の幅がある川を泳いで渡ったりする。
繁殖期は3~4月頃で、この時期の雌は首の周りに脂肪がつき、繁殖のための巣作りをはじめる。
雄は雌を巡って激しく争い、優位な雄は雌の巣穴に入り込み、交配する。
交配は3~5日程の間続くが、雌は複数の雄と交配しようとするため、雌が巣穴から出ようとすると、雄は雌を攻撃して巣穴に連れ戻したり、飼育下では、水を飲みに行くときに雌を一緒に連れて行くようなことが観察されている。
しかし、雌は3~5日もすると反撃するようになり、雄を巣穴から追い出してしまう。
雄も複数の雌と交配するが、雌は、妊娠しなければ3週間ほどの発情期間の間に3回ほどは排卵する。
雌の妊娠期間は3週間程で、1産20~30子を出産するが、乳頭は4つなので、これにたどり着いたものだけが成長し、ふつうは2~3子を育てることになる。
また、ほかの有袋類と同様、子どもは育児嚢で育てられるが、タスマニアデビルの育児嚢は、カンガルー類とは異なり、コアラやウォンバットなどのように、後ろ向きについている。
生まれたばかりの子どもは体重0.2g程度で、目は閉じていて、体毛も生えていない。生後7週ほどで全長7cm程に育ち、15週目頃には目が開き、毛も生えてくる。4~5ヶ月程の間は育児嚢の中で授乳され、その後、育児嚢から出てくる。子どもは9ヶ月程で独立し、生後2年で性成熟する。
外敵は、人のほかはワシなどの猛禽類で、飼育下での寿命は6~7年程度。また、野生での寿命は5~6年程度と言われているが、野生下で5年以上生きるものはほとんどいないと言われている。

状況

タスマニアデビルはタスマニア島とその周辺諸島にしか分布していないが、ヨーロッパ人が入植した後、家畜や家禽などを襲う害獣として駆除され、生息数が減少した経緯がある。
移入されたキツネやイヌなども生息数の減少を招いたが、1990年代後半頃から広がりだしたデビル顔面腫瘍性疾患は、タスマニアデビルの顔や首などにできる致死性の悪性腫瘍で、これによっても個体数が大幅に減少している。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2019年05月03日 23:05