「勝負師ミラション真夜中の賭け事」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

勝負師ミラション真夜中の賭け事 - (2012/07/19 (木) 21:42:56) の1つ前との変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

人っ子一人いないローマの路上にミラションは立ち尽くしていた。 殺し合いを強要してきた謎の男。爆死した三人の男。そして目の前にはイタリアにあるはずのコロッセオ。 アメリカのグリーンドルフィン刑務所に収監されている囚人とは言え、 誰だってこんな奇妙な出来事に巻き込まれたら混乱するだろう。 首筋に違和感を覚え、右手をそこに伸ばして見ると、先程の男が説明していた通りに冷たい首輪が付けられていた。 体中にゾッと鳥肌が立ち、冷や汗が流れる。心臓がバクバク音を立てる。 ああ、これは夢じゃあないんだな、と悟ったミラションは深く溜息を付き、視線を地面に落した。 あの邪悪なプッチ神父をして性悪と呼ばせた盗癖女ミラション。 彼女がバトルロワイアルの参加者として呼ばれる直前までは、 空条徐倫とその仲間からDISCを奪い、金に換え、さらには仮釈放の権利まで得ようと画策する所だった。 いつまでも道路の中央で立ち尽くしている訳にはいかない、と思った彼女は静かに歩きだし、今後の方針を考える。 ……まず一つ目は、殺し合いの中で生き延びるのは難しいからひたすら逃げ回ること。 ……次に保護してくれそうな人がいたら、積極的に頼ること。 ……アメリカには帰りたいが、再び投獄されるのは嫌だ。 とりとめのない思考を繰り返しているうちに、彼女は目星い建物を見つけ、そこで籠城することに決める。 中に入ってみると、ミラションは顔を綻ばせずにはいられなかった。 煌びやかな家具に絵画に装飾品。部屋の中央には立派な丸テーブル。三脚の椅子。 どれもアンティークな逸品で、かなり高価なものだろう、と彼女は目算した。 テーブルの上に注目するとバラバラのままのトランプとチップ。飲みかけのコーヒーが二つ。 ミラションは真っ白なチップを一枚手にとって、五本の指で巧みに弄び始めた。 先程より少し落ち着いたのは、金目のものに囲まれたこの部屋を見つけたからかも知れない、 と思いミラションはまた少し笑みを浮かべた。 籠城することは決めたものの、ポーカーの相手くらいは居てもいいな、と呑気な考えが彼女の頭を過った。 ミラションはチップを手にしたまま一通り部屋の中を観察し、 ――インテリアがどうのこうの、というよりは、絵画や装飾品を売りに出した時のことを考えていた―― ふと思い出して自身に与えられたデイパックの中身を改め始める。 パンが数個に飲料水、懐中電灯(さっき怖い思いをして夜道を歩く前に見つけたかった、と彼女は小さく舌打ちした) 地図(こんなの出鱈目じゃあないか?と顔を曇らせた)鉛筆、紙、方位磁石、時計(安っぽいものね、と鼻を鳴らした) ここまで確認した後、彼女は今しがた見つけた紙(メモ用の物だと彼女は考えた)とは 少し質の違う紙が一枚とくたびれた布に包まれた『何か』を発見した。 布を開けたミラションは、この部屋に入ってからもう何度目か分からない笑顔をこぼした。 主催者からのそのプレゼントは、守銭奴のミラションを大いに喜ばせるものだった。  * 一人の男が真夜中のローマを駆けていた。人は彼のことを『サンドマン』と呼ぶ。 二本の長い三つ編み。両肩付近の蛇の刺青。美しい肉体美を申し訳程度に隠す首と腰回りの民族衣装。 アメリカ横断レースであるSBRの参加者の一人である彼は、ローマには似つかわしくないかも知れない。 この地に来る直前、彼は大統領と契約を交わし、同じくレース参加者である ディエゴ・ブランドーと手を組み、金を手に入れるための謀略を巡らせていた。 そんな男が今、コロッセオに背を向けて走っているのだった。 サンドマン自身には、なぜ自分がアメリカから遠く離れた地にいるのかが分からなかった。 ――故郷にいた頃に読んだ『白人の本』でコロッセオと、それがイタリアにあるということは認識していた。 SBRの主催者であるスティール氏と会話したことが数度しかないサンドマンだが、 先程の会場の異様な雰囲気には違和感を覚えた。年の割にエネルギッシュな人物だとは思っていたが、 レースだけでなく『バトルロワイアル』という殺し合いにも手を出すことに心底呆れかえった。 ……金のことしか考えない白人の発想だ。まあ、もらえるものはもらわなければ故郷を取り戻すことはできないか…… 走りながら思考を巡らせ、彼はこの地においてたった一つの目標を定めた。 優勝者には望むもの全て、とスティール氏は言っていたものの、殺し合いなんかに乗るより、レースで優勝するより、 どう考えてもジャイロ・ツェペリとジョニィ・ジョースターの持つ遺体を大統領に献上する方が アメリカと取引するのには『いい条件』だと判断を下した。 どうしてこの場に連れて来られたか想像が付かないし、金を手に入れなければ故郷を取り戻すことさえ出来はしないが、 最優先はアメリカ、アリゾナの地を再び踏むこと。そのためには何だってしよう、と決意を固めた。 走り続けたサンドマンはコロッセオから少し離れた場所で脚を止めた。 中に誰かいる。窓際で人影が動いている。話を聞くべきだ、とサンドマンはすぐに結論を出した。 なぜならここまで駆けてくる間、誰一人として見かけなかったからである。 参加者にしろそうでないにしろ、状況を打開するには情報が必要だ、と聡明な彼は考えたのである。 ……足音を立てずに建物に侵入し、目的の部屋まで到達するのはわけないことだった。 サンドマンがドアを開けると、ある一点を見つめた一人の女が椅子に腰かけていた。  * 「何だお前誰だッ!」 突然の来客にミラションは動揺する。手のひらの上の『宝物』はすぐに握り拳を作って男から見えないようにした。 「お前こそ誰だ? 『バトルロワイアル』の参加者か? もしそうなら、お前は殺し合いに乗っているのか?」 「質問に質問で返すのかお前はァァ――! あ、あたしが先に聞いたんだお前から名乗れェェ――!!」 「俺はサウンドマン。殺し合いには乗っていないから、少しお前と情報交換がしたい」 「サンドマン? 砂男(サンドマン)って言うのか? あたしはミラション。ただの一般人さ。 こんなことに巻き込まれる覚えのないような善良な市民だ……」 サンドマンはもうこれで何度目か分からない間違いを訂正する気にもならず、女のことを真っ直ぐ見据える。 確かに特徴のない普通の女。珍しい服装をしているようにも見えるが白人の趣味は分からないな、と思うだけだった。 ミラションにしてみれば、いきなりインディアンのコスプレをした男 (彼が本当にインディアンで、19世紀の人間だとは一切思っていない)に話しかけられて一瞬うろたえたが、 持ち前のポーカーフェイスと度胸でいともたやすく「自分が一般人だ」という嘘をついたのだった。 「……そうか。オレは一人でもこの地を脱出して故郷に帰りたい。何かお前が知っている情報があれば教えて欲しい」 「あたしだって何も知らないわ! ここでジッとして助けがくるのを待つんだ。殺し合いには乗らない」 「……なるほどな」 どうせこれ以上この女と話しても無駄だ、サンドマンはそう結論を出し、踵を返した。 ――もし今彼が振り返らなければ、ミラションの顔が悪だくみのために歪んだのを見逃さずに済んだかも知れなかったのだが―― 女が背中越しに煩いくらいに話しかけてくるので、サンドマンは身体をドアから背け、再び部屋の中を向いた。 「あたしは暫くここにいるつもりだ…… あんたと同じくこんな所から脱出したいと思ってるが、助けを待ってるんだ。 それに、夜中にむやみに動き回るもんじゃあないよ。あたしは賭け事は好きだが、無謀なことをするのは好きじゃあない。 なあ、サンドマン。お前がどんなやつかは知らないが、少なくとも殺し合いには乗って無いんだろう? こんな夜中に無理に動き回らなくてもいいんじゃあないか? それよりも、朝日が昇ってから行動を開始した方がいいに決まってるさ。 イタリアの日出時間なんて知らないが、少なくとも夜が明けるのはまだまだ先だろう? もしあんたが良ければ、この部屋で少し休んでいくといい。 ……もしそうするなら、ちょっと賭け事でもしないかい? 息抜きってやつが必要だからね。 あたしはこれを賭けるよ。キレイだろ? 包みは大したことねーけどな。どうだ? 乗るかいサンドマン」 ただのギャンブル好きでカネに汚い白人の戯言だ、と話半分で聞いていたサンドマン。 なんでこんな女の話を真面目に聞いてやったんだろう、と少し頭を捻った。 しかし、ミラションが見せた手のひらにサンドマンは自分でも驚くほどに釘付けになってしまう。 くたびれた布切れにまとわりつく白砂。月明かりに照らされ、柔らかく反射する深緑。 故郷を離れる時に最愛の姉が彼に託し、SBRレースの参加料に消えたエメラルド。 『サンドマン…… だったら…… 必要でしょ……? 持って行きな…… 父さんと母さんのカタミよ……』 故郷を誰よりも大切にする男はエメラルドを貰った日のことを思い出す。 こんな所で再び目にし、あまつさえ再びそれを手に入れる機会が巡ってくるとは思ってもいなかった。 「お前、そのエメラルドをどこで手に入れた?!」 「なんだ急に熱くなって」 「……お前の賭けに乗ろうッ! オレは……この荷物を全部賭ける」 ミラションの思惑は成功した。籠城するには色々荷物が欲しいし、 この男だって自分と同じように宝石か何かを持っているかもしれない。 何か賭け事を行って、荷物を撒きあげればいい。もし交渉に失敗しても、ミラションには失うものもない。 声をかけてみて、乗ってくれればラッキー、くらいに思っていたので彼女は必死に笑いをこらえた。 今や冷静さを欠いているのはサンドマンの方。 ミラションは自身のギャンブルの腕には自信があったし、刑務所内で得た『力』を試してみたかった。 理由は違えど金を求めてやまない男と女 ――男は故郷のために、女は私欲を満たすために 二人の勝負の火蓋が、今切って落とされた。 「グッド! 賭けは成立ね」 【F-8 コロッセオ近くの建物内 / 1日目・深夜】 【ミラション】 [スタンド]:『取り立て人 マリリン・マンソン』 [時間軸]: SO4巻 徐倫襲撃前 [状態]:健康 [装備]:なし [道具]:基本支給品、サンドマンの両親の形見のエメラルド、ランダム支給品1(未確認) [思考・状況] 基本行動方針:籠城作戦を取り、生き残る 1. サンドマンから荷物を撒きあげる 【サンドマン】 [スタンド]:『イン・ア・サイレント・ウェイ』 [時間軸]:SBR10巻 ジョニィ達襲撃前 [状態]:健康 [装備]:なし [道具]:基本支給品、ランダム支給品1~2(未確認) [思考・状況] 基本行動方針:金を集めて故郷に帰る 1. ミラションのエメラルドを手に入れる 【備考】 ・ミラションはエニグマの紙に入っている方のランダム支給品は未確認です ・二人がいるのは二部でジョセフ達がマルクを待っている間にトランプしていた建物(部屋)です *投下順で読む [[前へ>TRIP HEAVEN]] [[戻る>本編 第1回放送まで]] [[次へ>恥知らずのウォッチタワー]] *時系列順で読む [[前へ>TRIP HEAVEN]] [[戻る>本編 第1回放送まで(時系列順)]] [[次へ>恥知らずのウォッチタワー]] *キャラを追って読む |前話|登場キャラクター|次話| |&color(blue){GAME START}|[[ミラション]]|056:[[獲得]]| |&color(blue){GAME START}|[[サンドマン]]|056:[[獲得]]|
人っ子一人いないローマの路上に[[ミラション]]は立ち尽くしていた。 殺し合いを強要してきた謎の男。爆死した三人の男。そして目の前にはイタリアにあるはずのコロッセオ。 アメリカのグリーンドルフィン刑務所に収監されている囚人とは言え、 誰だってこんな奇妙な出来事に巻き込まれたら混乱するだろう。 首筋に違和感を覚え、右手をそこに伸ばして見ると、先程の男が説明していた通りに冷たい首輪が付けられていた。 体中にゾッと鳥肌が立ち、冷や汗が流れる。心臓がバクバク音を立てる。 ああ、これは夢じゃあないんだな、と悟ったミラションは深く溜息を付き、視線を地面に落した。 あの邪悪なプッチ神父をして性悪と呼ばせた盗癖女ミラション。 彼女がバトルロワイアルの参加者として呼ばれる直前までは、 [[空条徐倫]]とその仲間からDISCを奪い、金に換え、さらには仮釈放の権利まで得ようと画策する所だった。 いつまでも道路の中央で立ち尽くしている訳にはいかない、と思った彼女は静かに歩きだし、今後の方針を考える。 ……まず一つ目は、殺し合いの中で生き延びるのは難しいからひたすら逃げ回ること。 ……次に保護してくれそうな人がいたら、積極的に頼ること。 ……アメリカには帰りたいが、再び投獄されるのは嫌だ。 とりとめのない思考を繰り返しているうちに、彼女は目星い建物を見つけ、そこで籠城することに決める。 中に入ってみると、ミラションは顔を綻ばせずにはいられなかった。 煌びやかな家具に絵画に装飾品。部屋の中央には立派な丸テーブル。三脚の椅子。 どれもアンティークな逸品で、かなり高価なものだろう、と彼女は目算した。 テーブルの上に注目するとバラバラのままのトランプとチップ。飲みかけのコーヒーが二つ。 ミラションは真っ白なチップを一枚手にとって、五本の指で巧みに弄び始めた。 先程より少し落ち着いたのは、金目のものに囲まれたこの部屋を見つけたからかも知れない、 と思いミラションはまた少し笑みを浮かべた。 籠城することは決めたものの、ポーカーの相手くらいは居てもいいな、と呑気な考えが彼女の頭を過った。 ミラションはチップを手にしたまま一通り部屋の中を観察し、 ――インテリアがどうのこうの、というよりは、絵画や装飾品を売りに出した時のことを考えていた―― ふと思い出して自身に与えられたデイパックの中身を改め始める。 パンが数個に飲料水、懐中電灯(さっき怖い思いをして夜道を歩く前に見つけたかった、と彼女は小さく舌打ちした) 地図(こんなの出鱈目じゃあないか?と顔を曇らせた)鉛筆、紙、方位磁石、時計(安っぽいものね、と鼻を鳴らした) ここまで確認した後、彼女は今しがた見つけた紙(メモ用の物だと彼女は考えた)とは 少し質の違う紙が一枚とくたびれた布に包まれた『何か』を発見した。 布を開けたミラションは、この部屋に入ってからもう何度目か分からない笑顔をこぼした。 主催者からのそのプレゼントは、守銭奴のミラションを大いに喜ばせるものだった。  * 一人の男が真夜中のローマを駆けていた。人は彼のことを『[[サンドマン]]』と呼ぶ。 二本の長い三つ編み。両肩付近の蛇の刺青。美しい肉体美を申し訳程度に隠す首と腰回りの民族衣装。 アメリカ横断レースであるSBRの参加者の一人である彼は、ローマには似つかわしくないかも知れない。 この地に来る直前、彼は大統領と契約を交わし、同じくレース参加者である [[ディエゴ・ブランドー]]と手を組み、金を手に入れるための謀略を巡らせていた。 そんな男が今、コロッセオに背を向けて走っているのだった。 サンドマン自身には、なぜ自分がアメリカから遠く離れた地にいるのかが分からなかった。 ――故郷にいた頃に読んだ『白人の本』でコロッセオと、それがイタリアにあるということは認識していた。 SBRの主催者であるスティール氏と会話したことが数度しかないサンドマンだが、 先程の会場の異様な雰囲気には違和感を覚えた。年の割にエネルギッシュな人物だとは思っていたが、 レースだけでなく『バトルロワイアル』という殺し合いにも手を出すことに心底呆れかえった。 ……金のことしか考えない白人の発想だ。まあ、もらえるものはもらわなければ故郷を取り戻すことはできないか…… 走りながら思考を巡らせ、彼はこの地においてたった一つの目標を定めた。 優勝者には望むもの全て、とスティール氏は言っていたものの、殺し合いなんかに乗るより、レースで優勝するより、 どう考えても[[ジャイロ・ツェペリ]]と[[ジョニィ・ジョースター]]の持つ遺体を大統領に献上する方が アメリカと取引するのには『いい条件』だと判断を下した。 どうしてこの場に連れて来られたか想像が付かないし、金を手に入れなければ故郷を取り戻すことさえ出来はしないが、 最優先はアメリカ、アリゾナの地を再び踏むこと。そのためには何だってしよう、と決意を固めた。 走り続けたサンドマンはコロッセオから少し離れた場所で脚を止めた。 中に誰かいる。窓際で人影が動いている。話を聞くべきだ、とサンドマンはすぐに結論を出した。 なぜならここまで駆けてくる間、誰一人として見かけなかったからである。 参加者にしろそうでないにしろ、状況を打開するには情報が必要だ、と聡明な彼は考えたのである。 ……足音を立てずに建物に侵入し、目的の部屋まで到達するのはわけないことだった。 サンドマンがドアを開けると、ある一点を見つめた一人の女が椅子に腰かけていた。  * 「何だお前誰だッ!」 突然の来客にミラションは動揺する。手のひらの上の『宝物』はすぐに握り拳を作って男から見えないようにした。 「お前こそ誰だ? 『バトルロワイアル』の参加者か? もしそうなら、お前は殺し合いに乗っているのか?」 「質問に質問で返すのかお前はァァ――! あ、あたしが先に聞いたんだお前から名乗れェェ――!!」 「俺はサウンドマン。殺し合いには乗っていないから、少しお前と情報交換がしたい」 「サンドマン? 砂男(サンドマン)って言うのか? あたしはミラション。ただの一般人さ。 こんなことに巻き込まれる覚えのないような善良な市民だ……」 サンドマンはもうこれで何度目か分からない間違いを訂正する気にもならず、女のことを真っ直ぐ見据える。 確かに特徴のない普通の女。珍しい服装をしているようにも見えるが白人の趣味は分からないな、と思うだけだった。 ミラションにしてみれば、いきなりインディアンのコスプレをした男 (彼が本当にインディアンで、19世紀の人間だとは一切思っていない)に話しかけられて一瞬うろたえたが、 持ち前のポーカーフェイスと度胸でいともたやすく「自分が一般人だ」という嘘をついたのだった。 「……そうか。オレは一人でもこの地を脱出して故郷に帰りたい。何かお前が知っている情報があれば教えて欲しい」 「あたしだって何も知らないわ! ここでジッとして助けがくるのを待つんだ。殺し合いには乗らない」 「……なるほどな」 どうせこれ以上この女と話しても無駄だ、サンドマンはそう結論を出し、踵を返した。 ――もし今彼が振り返らなければ、ミラションの顔が悪だくみのために歪んだのを見逃さずに済んだかも知れなかったのだが―― 女が背中越しに煩いくらいに話しかけてくるので、サンドマンは身体をドアから背け、再び部屋の中を向いた。 「あたしは暫くここにいるつもりだ…… あんたと同じくこんな所から脱出したいと思ってるが、助けを待ってるんだ。 それに、夜中にむやみに動き回るもんじゃあないよ。あたしは賭け事は好きだが、無謀なことをするのは好きじゃあない。 なあ、サンドマン。お前がどんなやつかは知らないが、少なくとも殺し合いには乗って無いんだろう? こんな夜中に無理に動き回らなくてもいいんじゃあないか? それよりも、朝日が昇ってから行動を開始した方がいいに決まってるさ。 イタリアの日出時間なんて知らないが、少なくとも夜が明けるのはまだまだ先だろう? もしあんたが良ければ、この部屋で少し休んでいくといい。 ……もしそうするなら、ちょっと賭け事でもしないかい? 息抜きってやつが必要だからね。 あたしはこれを賭けるよ。キレイだろ? 包みは大したことねーけどな。どうだ? 乗るかいサンドマン」 ただのギャンブル好きでカネに汚い白人の戯言だ、と話半分で聞いていたサンドマン。 なんでこんな女の話を真面目に聞いてやったんだろう、と少し頭を捻った。 しかし、ミラションが見せた手のひらにサンドマンは自分でも驚くほどに釘付けになってしまう。 くたびれた布切れにまとわりつく白砂。月明かりに照らされ、柔らかく反射する深緑。 故郷を離れる時に最愛の姉が彼に託し、SBRレースの参加料に消えたエメラルド。 『サンドマン…… だったら…… 必要でしょ……? 持って行きな…… 父さんと母さんのカタミよ……』 故郷を誰よりも大切にする男はエメラルドを貰った日のことを思い出す。 こんな所で再び目にし、あまつさえ再びそれを手に入れる機会が巡ってくるとは思ってもいなかった。 「お前、そのエメラルドをどこで手に入れた?!」 「なんだ急に熱くなって」 「……お前の賭けに乗ろうッ! オレは……この荷物を全部賭ける」 ミラションの思惑は成功した。籠城するには色々荷物が欲しいし、 この男だって自分と同じように宝石か何かを持っているかもしれない。 何か賭け事を行って、荷物を撒きあげればいい。もし交渉に失敗しても、ミラションには失うものもない。 声をかけてみて、乗ってくれればラッキー、くらいに思っていたので彼女は必死に笑いをこらえた。 今や冷静さを欠いているのはサンドマンの方。 ミラションは自身のギャンブルの腕には自信があったし、刑務所内で得た『力』を試してみたかった。 理由は違えど金を求めてやまない男と女 ――男は故郷のために、女は私欲を満たすために 二人の勝負の火蓋が、今切って落とされた。 「グッド! 賭けは成立ね」 【F-8 コロッセオ近くの建物内 / 1日目・深夜】 【ミラション】 [スタンド]:『取り立て人 マリリン・マンソン』 [時間軸]: SO4巻 徐倫襲撃前 [状態]:健康 [装備]:なし [道具]:[[基本支給品]]、サンドマンの両親の形見のエメラルド、ランダム支給品1(未確認) [思考・状況] 基本行動方針:籠城作戦を取り、生き残る 1. サンドマンから荷物を撒きあげる 【サンドマン】 [スタンド]:『イン・ア・サイレント・ウェイ』 [時間軸]:SBR10巻 ジョニィ達襲撃前 [状態]:健康 [装備]:なし [道具]:基本支給品、ランダム支給品1~2(未確認) [思考・状況] 基本行動方針:金を集めて故郷に帰る 1. ミラションのエメラルドを手に入れる 【備考】 ・ミラションはエニグマの紙に入っている方のランダム支給品は未確認です ・二人がいるのは二部でジョセフ達がマルクを待っている間にトランプしていた建物(部屋)です *投下順で読む [[前へ>TRIP HEAVEN]] [[戻る>本編 第1回放送まで]] [[次へ>恥知らずのウォッチタワー]] *時系列順で読む [[前へ>TRIP HEAVEN]] [[戻る>本編 第1回放送まで(時系列順)]] [[次へ>恥知らずのウォッチタワー]] *キャラを追って読む |前話|登場キャラクター|次話| |&color(blue){GAME START}|[[ミラション]]|056:[[獲得]]| |&color(blue){GAME START}|[[サンドマン]]|056:[[獲得]]|

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: