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君は引力を信じるか - (2013/05/04 (土) 13:31:30) の1つ前との変更点

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 ◆ ◆ ◆  ――― 君は『引力』を信じるか?人と人の間には『引力』があるということを……  ◆ ◆ ◆ イギーは笑った。そしてその場を去る。 愚者はこの場に相応しくない。いや、言い換えるならば一体誰が愚者であろうか。 どうだっていいことだ。イギーにとって大切なのは自分のみ。 犬の影はゆっくりと朝焼けの街並みに消えていった。 愚者は愚者らしく。だが誰もが愚者でありえるのだ。人はそれに気づいていない。 【C-4 ティベレ川河岸/1日目 早朝】 【イギー】 [時間軸]:JC23巻 ダービー戦前 [スタンド]:『ザ・フール』 [状態]:首周りを僅かに噛み千切られた、前足に裂傷 [装備]:なし [道具]:基本支給品、ランダム支給品1~2(未確認) [思考・状況] 基本行動方針:ここから脱出するため、ポルナレフのように単純で扱いやすそうなやつを仲間にする。 1:優雅に逃走。あばよー! 2:花京院に違和感。  ◆ ◆ ◆ ペット・ショップのイライラは頂点に達していた。 醜く地を這い、所構わず汚物をまきちらす、憎き犬畜生。そんな犬に見事いっぱい喰らわされたと思うと喚き散らしたくなるぐらい、腹立だしかった。 自分の不甲斐無さを笑い、今もこの街のどこかを我がもの顔であの犬が歩いているかと思うと、怒りで気が狂いそうだった。  ―――許せないッ 絶対許してはならないッ! 確かに自分のミスでもあった。戦線を組んだスクアーロがダメージを喰らったことに、一瞬だが気を取られた。 直後、辺りを覆い尽くさんばかりに舞いあがった砂嵐。ペット・ショップは目をやられた。 幸い目に傷を追うようなことはなかったが、その隙は致命的だった。あの犬が身を隠し勝ち逃げるには充分すぎるぐらいの隙であった。 犬はスクアーロにダメージを追わせ、そしてペット・ショップの視力を奪い、逃走した。 それはもう笑えるほど優雅に、余裕綽々で。 一杯喰らわされたのはどちらだろうか。どちらが勝者に相応しいと言えようか。 考えるまでもなく、圧勝したのはイギ―だった。その事実、否定しようのない敗北感にペット・ショップは震えた。  ―――何たる恥ッ なんたる屈辱ッ 思えばペット・ショップは屈辱続きの数時間を過ごしている。 無傷で切りぬけた戦いは一つとしてなく、空の狩人の名が廃れるような散々たる結果だ。 怒りに燃えるペット・ショップが叫んだ。彼の苛立ちは、もう限界だった。 それだからペット・ショップは上空浮かぶ謎の物体を見つけた時、迷うことなく一直線に向かっていった。 背後でスタンドを展開、氷のミサイルは発射準備ばっちりだ。  ―――次こそはッ 次こそは必ずッ 空の捕食者、鳥類王者のプライド。ペット・ショップが飛ぶ。ペット・ショップが翔んでいく。 怪鳥ホルス神、空をゆく。夜明け前の空、勝ちどきを知らせる甲高い声が響いていった。  ◆ ◆ ◆ 「ッたく、なんだっていうんだよォ」 サーレ―の口から漏れた言葉は苦々しかった。 その拍子にふっと漏れ出たアルコールの臭いがチョコラ―タの鼻をくすぐり、彼は不愉快そうに顔をしかめた。 そして視線を僅かにだけ外すと、なおも不満をだらだらと言い続ける傍らの男を見た。 まったく呑気なものだ。そうチョコラ―タは思った。 足元に転がるいくつもの酒瓶とチョコレートの包み紙を見て、チョコラ―タはため息を吐く。 そして直後苦笑すると、彼はそれを隠すように顔を覆い、サーレ―に表情を見られないようにした。 酒にうつつを抜かしたサーレ―を笑える身ではない。自分だって、この数時間したことといえばドングリの背比べ、大して変わらないのだ。 手に持った自身の支給品を見つめ、チョコラ―タは更に笑顔を深くした。 彼がしたことと言えば、ナチス研究所が残した残虐非道の人体実験レポートを夢中で読みふけったのみ。 まったくもって笑えない。酒に溺れるサーレ―。読書にふけるチョコラ―タ。なんて間抜けな連中だったのだろう。 自分の事でありながら、チョコラ―タははっきりと、そう思った。 自分自身、呆れるほどに平和ボケしていたことを、彼は認めざるを得なかった。 「胡散臭ェ、鳥公が。まったく、このサーレ―様も舐められたもんだ」 男二人は背中合わせでピアノ中心に立ち、辺りを漂う怪しげな影を睨みつけていた。 突如現れた怪鳥は今にも二人を八つ裂きにせんばかりに、殺気に満ち溢れていた。 薬品の臭いもアルコールの臭いも吹き飛ばすほどの戦いの臭いを、その鳥は運び込んできた。 サーレ―は舌打ちをし、チョコラ―タは再度ため息。 チョコラ―タは落胆していた。まったく、もう少し待ってくれればレポートも読み終わることができたというのに。 男は恨めしそうに空舞う鳥を見つめ、残念そうにうつむいた。嘆かわしそうに、彼は頭を左右に振った。 だがしばらくし、再び彼が顔をあげたときには、その顔には笑顔が浮かんでいた。 そうだ、なにを嘆くことがある。レポートよりももっと刺激的で、もっと素晴らしいものがあるじゃないか。 眺めているだけじゃつまらない。実践しなければこの高鳴りは収まらない。 ああ、一体自分は何をしていたんだろう。殺し合いという最高の舞台を用意されながら、まったくなんて無駄な時間を過ごしていたんだろう。 ならば、動きだせ、チョコラ―タ。遠慮なんていらない、さっそくとりかかっていこうじゃないか。 男は両手を震わせ、空を掴むように指を動かした。滾る興奮が、彼を突き動かしていた。 躊躇いなんぞは一切ない。慈悲も情けも、この男には存在しない。 あるのは掛け値なしの狂気のみ。チョコラ―タは舌を震わせる蛇のように、獲物へと手を伸ばそうとしていた。  ―――そう、彼の傍に立つサーレ―という男。彼こそがチョコラ―タの獲物だった。  ◆ ◆ ◆  ―――ッたく、なんだっていうんだ 今度は口にださず、サーレ―は一人心の中で呟いた。 アルコールのせいか、身体は火照り熱を帯びていたが、それでも頭脳はクールに、そして正確に働いていた。 暗闇に漂う殺気を一つと混同するほどに、酔いは回っていなかった。 夜空に舞う鳥の影、背後から滲み出る狂気の香り。二つの気配は確かに自分に向けられていた。 上空数十メートルで、どうやらサーレ―は挟み撃ちの形に陥ったようだった。 だが男はうろたえない。逃げ場もなく、戦力差もハッキリしているというのにそれがどうしたと言わんばかりの態度だ。 サーレ―は首の骨を豪快にならし、腕をぐるぐるとまわし、肩の疲れをほぐしていた。 そしてさも手軽な感じで、さて、どうしたもんか、そう呟き、傍らにスタンドを呼び出した。 『クラフトワーク』、彼が信頼する自身のスタンド。一対一ならば決して負けることのない、強力なスタンド。 彼は絶対の自信を持っていた。例え多勢に無勢であろうと、俺のクラフトワークが負けるわけがない。 そう思っていた。 「よっ、と」 宙を裂く氷柱が雨嵐と襲いかかる。サーレ―は片手をあげ、冷静に一つ一つを固定し、防いでいく。 怪鳥が叫ぶ。宙に固定された氷柱を砕き、まきちらしながら、更に襲いかかる追撃の氷。 変わらずサーレ―はこれも冷静に対処。サーレ―の周りにはいまや無数の氷が浮かんでいる。 お見事、クラフトワーク。流石、サーレ―。 ペット・ショップはなおも手を休めず攻撃し続けているというのに、彼にはまったくもって関係なかった。 背後に立つチョココラータが驚き、感心するように唸った。サーレ―は淡々と、氷を固定し続けた。 高いところにいるものが有利になるスタンド能力。 さきほどチョコラ―タが言ったその言葉を思い出したサーレ―。攻撃を防ぎつつ、彼は僅かにだけ自分より高い位置にある氷に飛び移る。 後ろにいるチョコラ―タにも首だけでついてくるよう合図する。不気味なほど、男は素直に従ってきた。 今自分に必要なのは隙だ。サーレ―は再度襲いかかってきた氷の攻撃に対処しながら、そう思った。 鳥を出し抜くにしろ、後ろのチョコラ―タを始末するにしろ、どちらかの気を引く何かが欲しい。 さすがにいつまでもこうしておくわけにはいかない。ジリ貧だ。集中力が切れることもあり得る。 ならば第三者の介入が必要だ。ならばなるべく派手に、目立つように動き、誰か介入してくれるものを待とう。 そして隙ができ次第、チョコラ―タか鳥、どちらか順に始末していこう。 サーレ―がそこまで考えていた時、ペット・ショップがの叫び声が彼の思考を切り裂いた。チョコラ―タが後ろで何事か呟くのも聞こえた。 サーレ―は自らの顔に降りかかった影に、さっと顔をあげる。そして、おいおい、冗談じゃねーぞ、そう言った。 自身のスタンドに絶対の信頼を置く彼も、目の前の光景には呆れてものが言えなかった。 ペット・ショップがスタンド・パワーを集中させ、大きな大きな氷を作りだした。 それは北極から氷を丸々切りぬいてきたかのように、巨大で雄大。 圧倒的な大きさの氷が二人を押しつぶさんと、宙より迫る。そして……  ―――ドゴオオォォォー…………ン 轟音を立て、三つの影が氷に包まれる。霧靄が晴れた時、しかし変わらずそこには一匹と二人がいた。 怪鳥の叫びが一段と大きくなった。イライラが募っているのだろう。 最後に氷柱を撒き散らすと、一旦、距離を取るペット・ショップ。 サーレ―は変わらず向かっていく。ただ漠然と、なんとなく、気の向くまま、彼は進んでいく。 後ろに殺しを求める狂人を従え、苛立ちに吐く怪鳥を伴って。 二人と一匹が目指す先、そこにはGDS刑務所が、あった。そして二人と一匹はまるで引力に引きつけられるように、そこに向かっていった。 【D-3 南西 上空 / 1日目 早朝】 【サーレー】 [スタンド]:『クラフト・ワーク』 [時間軸]:恥知らずのパープルヘイズ・ビットリオの胸に拳を叩きこんだ瞬間 [状態]:ホロ酔い、冷静 [装備]:なし [道具]:基本支給品 [思考・状況] 基本行動方針:とりあえず生き残る 1.派手に動きまわって、誰かの注意を引きたい。そしてチョコラータとペット・ショップの隙を作りたい。 2.ボス(ジョルノ)の事はとりあえず保留 【チョコラータ】 [スタンド]:『グリーン・デイ』 [時間軸]:コミックス60巻 ジョルノの無駄無駄ラッシュの直後 [状態]:興奮 [装備]:なし [道具]:基本支給品×二人分、ランダム支給品1~2(間田のもの/確認済み) [思考・状況] 基本行動方針:生き残りつつも、精一杯殺し合いを楽しむ。 1.サーレーを殺したい。 [備考] サーレーの支給品はナチス人体実験レポート、チョコラータの支給品はナランチャのチョコレートとワイン瓶でした。 二人はそれぞれ支給品を交換しました。 【ペット・ショップ】 [スタンド]:『ホルス神』 [時間軸]:本編で登場する前 [状態]:全身ダメージ(中)、苛立ち [装備]:なし [道具]:なし [思考・状況] 基本行動方針:サーチ&デストロイ 1:八つ当たりだけど、この二人に完勝していらだちを解消したい。 2:自分を痛めつけた女(空条徐倫)に復讐 3:DIOとその側近以外の参加者を襲う [備考] 二人と一匹はGDS刑務所に向かっています。  ◆ ◆ ◆  ―――ドゴオオォォォー…………ン ――おい、おい! 大丈夫か、スクアーロ! うっとおしい、そう言葉を返そうとしたが、代わりに彼の口から出たのは血と呻き声だった。 どうやら少しの間気を失っていたようだ。口元から垂れる血をぬぐい、頭を振り、意識をはっきりさせる。 スクアーロはたった今、何が起きたかわからなかった。確かな事は一杯喰らわすはずが、一杯喰らわされていたということだけだ。 「チクショウ……!」 前歯を何本かを失った彼は、もごもごとはっきりしない悪態をつく。 老人のようにその言葉には力がなく、男は自らの情けなさを恥じた。 心配してるのか、興奮しているのか、とにかく喚き続けるアヌビス神を無視し、彼は辺りを見渡す。 戦いは既に場所を移っているようだった。遠く聞こえた戦闘音に耳を澄ませ、もう一度空を見上げる。 微かに見えた影は共に戦った鳥のものに見えた。誰と戦っているかはわからない。さっきの犬だとしたら、上空で戦っているのもおかしく思える。 とにかく、一度手を組んだやつが戦っているのを放っておくわけにはいかない。 スクアーロはアヌビス神を握り締め、戦場向かって駆けだした。 途中足がもつれ、倒れかけた。アヌビス神が心配そうに声をかけたが男はその声も無視する。 何も怒りに燃えているのはペット・ショップだけではない。借りた借りはきっちり返す。スクアーロとて、ギャングだ。 なめらっぱなしでは堪らない。 「クソッたれ…………!」 スクアーロは進む。鳥が行くままに後を追い、誰と戦っているかも知らずに進んでいく。 行く先にあるのはGDS刑務所。まるでなにものかに引かれるように、彼はふらふらと足を進めていった。 【D-3 中央 / 1日目 早朝】 【スクアーロ】 [スタンド]:『クラッシュ』 [時間軸]:ブチャラティチーム襲撃前 [状態]:脇腹打撲(中)、疲労(中)、前歯数本消失 [装備]:アヌビス神 [道具]:基本支給品一式 [思考・状況] 基本行動方針:ティッツァーノと合流、いなければゲームに乗ってもいい 0;なめらっぱなしは我慢ならないので、ペット・ショップを追って、きっちり借りは返すッ 1:まずはティッツァーノと合流。 2:そのついでに、邪魔になる奴は消しておく。 3:そんなわけで犬、恨みはねーが死んでもらう。  ◆ ◆ ◆  ―――ドゴオオォォォー…………ン 「あれは……!?」 「…………」 轟音に慌てて外に出てみれば、そこにあったのはとんでもない光景だった。 ストレイツォは普段はピクリともさせない顔を微かに歪ませ、吉良は柄にもなく眼を見開き、驚く。 ビルの間に突如出現した巨大な氷の塊。一瞬で砕け散ったそれは、キラキラとダイヤのように美しかった。 太陽の光と、それで生まれた影。更に遠目で見たため、そこにだれがいるのか何がいるのかはわからなかった。 二人の男はただ顔を見合わせ、何も言うことができなかった。 先の戦闘の傷をいやすため、二人は今までずっとサン・ジョルジョ・マジョーレ教会に身をひそめていた。 というのは建前で、実を言えば傷はとっくに癒えていた。ただ吉良がわざわざ平穏を捨ててまで外に行く気がしなかったので、仮病を装っていたのだ。 その一時の平穏も、今、崩れ去った。 ストレイツォが吉良を見つめる。何を言わずとも、吉良は目の前の男が何を言わんとしているかはわかっていた。 その眼は彼がよく知る目だ。偽善者で、情熱に燃える、やる気に満ち溢れる者の眼。自分とは真逆の人間が持つ眼だ。 やれやれと首を振り、息を吐く。こうなると言ってどうにかなるものでもない。そしてストレイツォほどの戦闘力をここで捨てるのも実際惜しい。 ストレイツォが何か言いかけるのを手で遮ると、吉良は黙って荷物を取りに建物の中に引っ込んだ。 その嫌々ながらも正義に燃える(ように見える)態度に、波紋の戦士は何も言わず感謝を示した。 吉良は準備を終え、戻ってくると、あいつはどうするのだ、そう訪ねてきた。あいつとはついさっき戦った男、リキエルのことである。 ストレイツォはロープで縛り上げられ、気を失っている男を見下ろした。 結局男から情報を聞き出そうという当初の予定はうまくいかなかった。ストレイツォの波紋がよっぽど効いたのか、あるいは疲労もあったのだろう。 リキエルは気絶したきり、目を覚まさず、今ものんきに白目をむいて倒れている。 無様なものだとストレイツォは思ったが、どうしようもないその男の存在に、頭を抱えた。 急に襲いかかってきた危険人物をここに置いていくのは責任感のない行為だ。 だが連れて行くのも大変だし、かと言って殺すのも後味の悪い話だ。悩む波紋戦士を吉良は黙って見つめていた。 結局彼はもう一度波紋を流し、男をその場においていくことにした。 ついでに持っていたロープで縛り上げ、誰かに殺されることないよう、協会の奥底に寝かしておいてやった。 あまり褒められた行為ではないが、致し方ないこと。何よりあの氷の元に、保護すべき誰かがいる可能性だってあるのだ。 遠目でもわかるほどのあれに惹きつけられる弱者だっているだろう。ならば、急がなければいけない。 一人でも多くを助けるため。波紋戦士の誇りにかけて、あれは見逃せるものではない。  ――― 本当にそうだろうか? 一瞬だけ浮かんだそんな疑問をストレイツォは何を言っているんだと、一蹴した。 それ以外の理由なんぞ何もない。戦士として、一人の人間として彼はあの場に向かうのだ。 助けるために、救うために、ストレイツォはGDS刑務所へと向かっていく。 引力に引きつけられるように、その足は軽快で、迷いないものだった。 後ろにいる吉良を急かし、ストレイツォは先を急いだ。 【D-2 サン・ジョルジョ・マジョーレ教会前 / 1日目 早朝】 【ストレイツォ】 [能力]:『波紋法』 [時間軸]:JC4巻、ダイアー、トンペティ師等と共に、ディオの館へと向かいジョナサン達と合流する前 [状態]:健康 [装備]:なし [道具]:基本支給品×3、ランダム支給品×1(ホル・ホースの物)、サバイバー入りペットボトル(中身残り1/3)ワンチェンの首輪 [思考・状況] 基本行動方針:吸血鬼ディオの打破 1.GDS刑務所に向かい、一般人を助ける。 2.周辺を捜索し吉良吉影等、無力な一般人達を守る。 3.ダイアー、ツェペリ、ジョナサン、トンペティ師等と合流した後、DIOの館に向かう。 【吉良吉影】 [スタンド]:『キラークイーン』 [時間軸]:JC37巻、『吉良吉影は静かに暮らしたい』 その①、サンジェルマンでサンドイッチを買った直後 [状態]:健康 [装備]:波紋入りの薔薇 [道具]:基本支給品 [思考・状況] 基本行動方針:静かに暮らしたい 1.平穏に過ごしたいが、仕方ないのでストレイツォについていく。 2.些か警戒をしつつ、無力な一般人としてストレイツォについて行く。 3.サンジェルマンの袋に入れたままの『彼女の手首』の行方を確認し、或いは存在を知る者ごと始末する。 4.機会があれば吉良邸へ赴き、弓矢を回収したい。 [備考] ハーブティーは飲み干しました。 二人はGDS刑務所に向かっています。 ストレイツォの支給品はマウンテン・ティムの投げ縄のみでした。 リキエルが持っていた支給品を取り上げました。一応基本支給品だけは置いていってあげました。 【リキエル】 [スタンド]:『スカイ・ハイ』 [時間軸]:徐倫達との直接戦闘直前 [状態]:両肩脱臼、顔面打撲、痛みとストレスによるパニック、気絶、縄で縛られてる [装備]:マウンテン・ティムの投げ縄(?) [道具]:基本支給品×2、 [思考・状況] 基本行動方針: ??? 0.気絶中  ◆ ◆ ◆  ―――ドゴオオォォォー…………ン マッシモ・ヴォルペは機械的に、顔をあげ、音が聞こえたほうを見やった。 しばらくの間、彼は何事かと耳を澄ませていたが、続けて音が聞こえることはなかったので、再び視線を落とし、考えにふけ始めた。 河はゆっくりと流れ続けていた。穏やかで、何の変哲もない河を、ヴォルペはじっと見つめていた。 ヴォルペはそっと目を閉じ、長々と息を吐いた。まるで乙女が恋煩いしているような、そんなため息だ。 記憶を掘り返せば脳裏に映る一人の男がこちらを見返している。 まるで蛇のように細く、切れた真っ赤な眼光が男を見返していた。ヴォルペはもう一度ため息をつき、そして歩き始めた。 どれだけ考えても、結局はなにもわからなかった。 男は歩きながら、自らの左胸にそっと手をやった。激しい運動をしたわけでもないのに心臓が早鐘を打っている。 それは未だかつて彼が経験したことのない事象だった。認めたくなくても、彼はそれを認めざるを得なかった。 俺は今、魅かれ始めている。幸せを求める自分自身が、何を求めているのか、気になり始めている。 そして何より……、更に呼吸を荒くし、男は歩調を速めた。脚の先は約束の地、GDS刑務所に向いていた。 DIO……俺はあの男に魅かれている。 約束の時間まではだいぶあったが、待ってなどいられなかった。 一刻でも早くDIOに会いたい。あの轟音、DIOに何かあったらそれは良くない。 気持ちは固まらず、未だ現実感はない。ただその二つだけは確かな感情だった。 マッシモ・ヴォルペはまるで引力に導かれるように、GDS刑務所へ続く道へと消えていった。 【E-2 GDS刑務所・特別懲罰房外 川岸 / 一日目 早朝】 【マッシモ・ヴォルペ】 [時間軸]:殺人ウイルスに蝕まれている最中。 [スタンド]:『マニック・デプレッション』 [状態]:健康、DIOに夢中 [装備]:携帯電話 [道具]:基本支給品、大量の塩、注射器、紙コップ [思考・状況] 基本行動方針:特になかったが、DIOに興味。 1.GDS刑務所い急いで戻る。 2.DIOと行動。 3.天国を見るというDIOの情熱を理解。しかし天国そのものについては理解不能。  ◆ ◆ ◆ 自分は誤解されやすい人間のようだ。ディ・ス・コはそう思った。 無口無表情、無駄な事は極力しない性格ではあると自覚している。だが自分は冷徹ではないし、どんな状況にあろうと冷静沈着でいられるとは思っていない。 襲われれば緊張もするし、きっと命がかかるような窮地に陥れば悲鳴をあげてしまうかもしれない、そうディ・ス・コは思っている。 けどそれを言う必要がなければ言わないし、顔に出したところで無駄ならば顔に出すこともしない。 ディ・ス・コと言う男は、そんな男だった。 そもそも、とディ・ス・コは、歩きながら胸中で思う。 ジャイロ・ツェペリがこの場にいなかったならば当初の目的は全て無駄になってしまう。 それに気づいた彼は、ある程度まで北上したところで進路を西にとった。 彼は地図に記されていない空白の場所を確認しに行こうと決めたのだ。 ジャイロ・ツェペリがいるかいないか、どちらにせよ、スティーブン・スティールが真実を語っているかどうかを確認することは、決して無駄になるまい。 ディ・ス・コはそう思ったから。 実際西の最果ての地は、そこらの風景となんら変わらず、境界らしきものも見えなかった。 だがある地点を越えて一歩踏み出すと、首輪は鳴り響びき、確かにそこに地図上の境界線があることを男に知らしめた。 首輪は確かに作動している。地図の外は地雷地帯。これは有益の情報だ。使える、確固たる情報だ。 ディ・ス・コはそう思った。 だから、この行動も無駄ではなかった。彼は自身に言い聞かせる。 臆病風に吹かれた故の行動であっても、結果的にそれが無駄足でなかったのならば、それはきっといいことだ。 いや、決して臆病風に吹かれたわけではない。心の内でそう訂正する。 ただ確認する必要があったから確認した。それだけのことだ。 東に向かって一歩一歩足を進め始めていた。 呼吸が乱れるようなこともなく、冷や汗や脂汗をかくようなこともしない。 そんな彼が今向かっているのはGDS刑務所。 ディスコの現在地から最も無駄なく、最短距離に位置する施設である。 ただ淡々と、機械のごとく脚を進め続けている。目的地に向けて、ディスコは歩き続けている。  ―――ドゴオオォォォー…………ン ふと鼓膜を震わす音に気づき、彼は空を見上げた。 東の空に顔を覗かす太陽を背に、宙に浮かんだ三つの影。なんだろうと、目を凝らす暇もなくその三つの影がもつれるように落下していった。 さっと走った緊張感を緩め、ディスコは顎をなぞり、今見た光景が何であったのか、考える。 しかし幾秒か考えても何も思い浮かばず、彼は再び歩き出した。 情報も何もなく考えるのは不安を呼び、捻じれた憶測を生む。ならばそれは無駄な行為だ。 無駄な行為は無駄なくするのが一番だ。 だがもしもGDS刑務所に行くこの行為、これすら無駄であったら。 ふと頭に思い浮かんだアイディアをディスコはやはり打ち消し、歩き出した。 それも無駄。考えても無駄だ。誰に言うでもなく、心の中、自分自身にそう言い聞かせ続ける。 それに、ディスコは柄にもなく、こう思った。 GDS刑務所に行けば何かわかる気がする。それは根拠のない、何かしらの確信であった。 強いて言うならば、ディスコは微かにだけ苦笑いを浮かべ、自分の馬鹿げた考えを嘲笑う。 彼は今、GDS刑務所に魅かれている。まるで引力を感じるかのように。運命にときめく少女のように。 【E-1 東部 / 1日目 早朝】 【ディ・ス・コ】 [スタンド]:『チョコレート・ディスコ』 [時間軸]:SBR17巻 ジャイロに再起不能にされた直後 [状態]:健康 [装備]:なし [道具]:基本支給品、シュガー・マウンテンのランダム支給品1~2(未確認) [思考・状況] 基本行動方針:大統領の命令に従い、ジャイロを始末する 1.サン・ピエトロ大聖堂に向かうのは保留。一旦GDS刑務所へ向かう。 2.信用できそうな奴を見つけたら、シュガー・マウンテンのことを伝える。 *投下順で読む [[前へ>囚われ人と盲目者]] [[戻る>本編 第1回放送まで]] [[次へ>その男、凶暴につき]] *時系列順で読む [[前へ>囚われ人と盲目者]] [[戻る>本編 第1回放送まで(時系列順)]] [[次へ>その男、凶暴につき]] *キャラを追って読む |前話|登場キャラクター|次話| |064:[[能ある吉良はスタンド隠す]]|[[ストレイツォ]]|105:[[トータル・リコール(模造記憶)(上)]]| |064:[[能ある吉良はスタンド隠す]]|[[吉良吉影]]|105:[[トータル・リコール(模造記憶)(上)]]| |064:[[能ある吉良はスタンド隠す]]|[[リキエル]]|105:[[トータル・リコール(模造記憶)(上)]]| |074:[[どうぶつ奇想天外ッ!]]|[[イギー]]|123:[[Faithful Dogs]]| |074:[[どうぶつ奇想天外ッ!]]|[[ペット・ショップ]]|133:[[最強]]| |059:[[空気]]|[[サーレー]]|133:[[最強]]| |059:[[空気]]|[[チョコラータ]]|133:[[最強]]| |074:[[どうぶつ奇想天外ッ!]]|[[スクアーロ]]|133:[[最強]]| |081:[[計画]]|[[マッシモ・ヴォルペ]]|105:[[トータル・リコール(模造記憶)(上)]]| |054:[[心全て引力]]|[[ディ・ス・コ]]|115:[[死亡遊戯(Game of Death)1]]|
 ◆ ◆ ◆  ――― 君は『引力』を信じるか?人と人の間には『引力』があるということを……  ◆ ◆ ◆ [[イギー]]は笑った。そしてその場を去る。 愚者はこの場に相応しくない。いや、言い換えるならば一体誰が愚者であろうか。 どうだっていいことだ。イギーにとって大切なのは自分のみ。 犬の影はゆっくりと朝焼けの街並みに消えていった。 愚者は愚者らしく。だが誰もが愚者でありえるのだ。人はそれに気づいていない。 【C-4 ティベレ川河岸/1日目 早朝】 【イギー】 [時間軸]:JC23巻 ダービー戦前 [スタンド]:『ザ・フール』 [状態]:首周りを僅かに噛み千切られた、前足に裂傷 [装備]:なし [道具]:[[基本支給品]]、ランダム支給品1~2(未確認) [思考・状況] 基本行動方針:ここから脱出するため、ポルナレフのように単純で扱いやすそうなやつを仲間にする。 1:優雅に逃走。あばよー! 2:花京院に違和感。  ◆ ◆ ◆ ペット・ショップのイライラは頂点に達していた。 醜く地を這い、所構わず汚物をまきちらす、憎き犬畜生。そんな犬に見事いっぱい喰らわされたと思うと喚き散らしたくなるぐらい、腹立だしかった。 自分の不甲斐無さを笑い、今もこの街のどこかを我がもの顔であの犬が歩いているかと思うと、怒りで気が狂いそうだった。  ―――許せないッ 絶対許してはならないッ! 確かに自分のミスでもあった。戦線を組んだ[[スクアーロ]]がダメージを喰らったことに、一瞬だが気を取られた。 直後、辺りを覆い尽くさんばかりに舞いあがった砂嵐。ペット・ショップは目をやられた。 幸い目に傷を追うようなことはなかったが、その隙は致命的だった。あの犬が身を隠し勝ち逃げるには充分すぎるぐらいの隙であった。 犬はスクアーロにダメージを追わせ、そしてペット・ショップの視力を奪い、逃走した。 それはもう笑えるほど優雅に、余裕綽々で。 一杯喰らわされたのはどちらだろうか。どちらが勝者に相応しいと言えようか。 考えるまでもなく、圧勝したのはイギ―だった。その事実、否定しようのない敗北感にペット・ショップは震えた。  ―――何たる恥ッ なんたる屈辱ッ 思えばペット・ショップは屈辱続きの数時間を過ごしている。 無傷で切りぬけた戦いは一つとしてなく、空の狩人の名が廃れるような散々たる結果だ。 怒りに燃えるペット・ショップが叫んだ。彼の苛立ちは、もう限界だった。 それだからペット・ショップは上空浮かぶ謎の物体を見つけた時、迷うことなく一直線に向かっていった。 背後でスタンドを展開、氷のミサイルは発射準備ばっちりだ。  ―――次こそはッ 次こそは必ずッ 空の捕食者、鳥類王者のプライド。ペット・ショップが飛ぶ。ペット・ショップが翔んでいく。 怪鳥ホルス神、空をゆく。夜明け前の空、勝ちどきを知らせる甲高い声が響いていった。  ◆ ◆ ◆ 「ッたく、なんだっていうんだよォ」 サーレ―の口から漏れた言葉は苦々しかった。 その拍子にふっと漏れ出たアルコールの臭いがチョコラ―タの鼻をくすぐり、彼は不愉快そうに顔をしかめた。 そして視線を僅かにだけ外すと、なおも不満をだらだらと言い続ける傍らの男を見た。 まったく呑気なものだ。そうチョコラ―タは思った。 足元に転がるいくつもの酒瓶とチョコレートの包み紙を見て、チョコラ―タはため息を吐く。 そして直後苦笑すると、彼はそれを隠すように顔を覆い、サーレ―に表情を見られないようにした。 酒にうつつを抜かしたサーレ―を笑える身ではない。自分だって、この数時間したことといえばドングリの背比べ、大して変わらないのだ。 手に持った自身の支給品を見つめ、チョコラ―タは更に笑顔を深くした。 彼がしたことと言えば、ナチス研究所が残した残虐非道の人体実験レポートを夢中で読みふけったのみ。 まったくもって笑えない。酒に溺れるサーレ―。読書にふけるチョコラ―タ。なんて間抜けな連中だったのだろう。 自分の事でありながら、チョコラ―タははっきりと、そう思った。 自分自身、呆れるほどに平和ボケしていたことを、彼は認めざるを得なかった。 「胡散臭ェ、鳥公が。まったく、このサーレ―様も舐められたもんだ」 男二人は背中合わせでピアノ中心に立ち、辺りを漂う怪しげな影を睨みつけていた。 突如現れた怪鳥は今にも二人を八つ裂きにせんばかりに、殺気に満ち溢れていた。 薬品の臭いもアルコールの臭いも吹き飛ばすほどの戦いの臭いを、その鳥は運び込んできた。 サーレ―は舌打ちをし、チョコラ―タは再度ため息。 チョコラ―タは落胆していた。まったく、もう少し待ってくれればレポートも読み終わることができたというのに。 男は恨めしそうに空舞う鳥を見つめ、残念そうにうつむいた。嘆かわしそうに、彼は頭を左右に振った。 だがしばらくし、再び彼が顔をあげたときには、その顔には笑顔が浮かんでいた。 そうだ、なにを嘆くことがある。レポートよりももっと刺激的で、もっと素晴らしいものがあるじゃないか。 眺めているだけじゃつまらない。実践しなければこの高鳴りは収まらない。 ああ、一体自分は何をしていたんだろう。殺し合いという最高の舞台を用意されながら、まったくなんて無駄な時間を過ごしていたんだろう。 ならば、動きだせ、チョコラ―タ。遠慮なんていらない、さっそくとりかかっていこうじゃないか。 男は両手を震わせ、空を掴むように指を動かした。滾る興奮が、彼を突き動かしていた。 躊躇いなんぞは一切ない。慈悲も情けも、この男には存在しない。 あるのは掛け値なしの狂気のみ。チョコラ―タは舌を震わせる蛇のように、獲物へと手を伸ばそうとしていた。  ―――そう、彼の傍に立つサーレ―という男。彼こそがチョコラ―タの獲物だった。  ◆ ◆ ◆  ―――ッたく、なんだっていうんだ 今度は口にださず、サーレ―は一人心の中で呟いた。 アルコールのせいか、身体は火照り熱を帯びていたが、それでも頭脳はクールに、そして正確に働いていた。 暗闇に漂う殺気を一つと混同するほどに、酔いは回っていなかった。 夜空に舞う鳥の影、背後から滲み出る狂気の香り。二つの気配は確かに自分に向けられていた。 上空数十メートルで、どうやらサーレ―は挟み撃ちの形に陥ったようだった。 だが男はうろたえない。逃げ場もなく、戦力差もハッキリしているというのにそれがどうしたと言わんばかりの態度だ。 サーレ―は首の骨を豪快にならし、腕をぐるぐるとまわし、肩の疲れをほぐしていた。 そしてさも手軽な感じで、さて、どうしたもんか、そう呟き、傍らにスタンドを呼び出した。 『クラフトワーク』、彼が信頼する自身のスタンド。一対一ならば決して負けることのない、強力なスタンド。 彼は絶対の自信を持っていた。例え多勢に無勢であろうと、俺のクラフトワークが負けるわけがない。 そう思っていた。 「よっ、と」 宙を裂く氷柱が雨嵐と襲いかかる。サーレ―は片手をあげ、冷静に一つ一つを固定し、防いでいく。 怪鳥が叫ぶ。宙に固定された氷柱を砕き、まきちらしながら、更に襲いかかる追撃の氷。 変わらずサーレ―はこれも冷静に対処。サーレ―の周りにはいまや無数の氷が浮かんでいる。 お見事、クラフトワーク。流石、サーレ―。 [[ペット・ショップ]]はなおも手を休めず攻撃し続けているというのに、彼にはまったくもって関係なかった。 背後に立つチョココラータが驚き、感心するように唸った。サーレ―は淡々と、氷を固定し続けた。 高いところにいるものが有利になるスタンド能力。 さきほどチョコラ―タが言ったその言葉を思い出したサーレ―。攻撃を防ぎつつ、彼は僅かにだけ自分より高い位置にある氷に飛び移る。 後ろにいるチョコラ―タにも首だけでついてくるよう合図する。不気味なほど、男は素直に従ってきた。 今自分に必要なのは隙だ。サーレ―は再度襲いかかってきた氷の攻撃に対処しながら、そう思った。 鳥を出し抜くにしろ、後ろのチョコラ―タを始末するにしろ、どちらかの気を引く何かが欲しい。 さすがにいつまでもこうしておくわけにはいかない。ジリ貧だ。集中力が切れることもあり得る。 ならば第三者の介入が必要だ。ならばなるべく派手に、目立つように動き、誰か介入してくれるものを待とう。 そして隙ができ次第、チョコラ―タか鳥、どちらか順に始末していこう。 サーレ―がそこまで考えていた時、ペット・ショップがの叫び声が彼の思考を切り裂いた。チョコラ―タが後ろで何事か呟くのも聞こえた。 サーレ―は自らの顔に降りかかった影に、さっと顔をあげる。そして、おいおい、冗談じゃねーぞ、そう言った。 自身のスタンドに絶対の信頼を置く彼も、目の前の光景には呆れてものが言えなかった。 ペット・ショップがスタンド・パワーを集中させ、大きな大きな氷を作りだした。 それは北極から氷を丸々切りぬいてきたかのように、巨大で雄大。 圧倒的な大きさの氷が二人を押しつぶさんと、宙より迫る。そして……  ―――ドゴオオォォォー…………ン 轟音を立て、三つの影が氷に包まれる。霧靄が晴れた時、しかし変わらずそこには一匹と二人がいた。 怪鳥の叫びが一段と大きくなった。イライラが募っているのだろう。 最後に氷柱を撒き散らすと、一旦、距離を取るペット・ショップ。 サーレ―は変わらず向かっていく。ただ漠然と、なんとなく、気の向くまま、彼は進んでいく。 後ろに殺しを求める狂人を従え、苛立ちに吐く怪鳥を伴って。 二人と一匹が目指す先、そこにはGDS刑務所が、あった。そして二人と一匹はまるで引力に引きつけられるように、そこに向かっていった。 【D-3 南西 上空 / 1日目 早朝】 【[[サーレー]]】 [スタンド]:『クラフト・ワーク』 [時間軸]:恥知らずのパープルヘイズ・ビットリオの胸に拳を叩きこんだ瞬間 [状態]:ホロ酔い、冷静 [装備]:なし [道具]:基本支給品 [思考・状況] 基本行動方針:とりあえず生き残る 1.派手に動きまわって、誰かの注意を引きたい。そして[[チョコラータ]]とペット・ショップの隙を作りたい。 2.ボス(ジョルノ)の事はとりあえず保留 【チョコラータ】 [スタンド]:『グリーン・デイ』 [時間軸]:コミックス60巻 ジョルノの無駄無駄ラッシュの直後 [状態]:興奮 [装備]:なし [道具]:基本支給品×二人分、ランダム支給品1~2(間田のもの/確認済み) [思考・状況] 基本行動方針:生き残りつつも、精一杯殺し合いを楽しむ。 1.サーレーを殺したい。 [備考] サーレーの支給品はナチス人体実験レポート、チョコラータの支給品はナランチャのチョコレートとワイン瓶でした。 二人はそれぞれ支給品を交換しました。 【ペット・ショップ】 [スタンド]:『ホルス神』 [時間軸]:本編で登場する前 [状態]:全身ダメージ(中)、苛立ち [装備]:なし [道具]:なし [思考・状況] 基本行動方針:サーチ&デストロイ 1:八つ当たりだけど、この二人に完勝していらだちを解消したい。 2:自分を痛めつけた女([[空条徐倫]])に復讐 3:DIOとその側近以外の参加者を襲う [備考] 二人と一匹はGDS刑務所に向かっています。  ◆ ◆ ◆  ―――ドゴオオォォォー…………ン ――おい、おい! 大丈夫か、スクアーロ! うっとおしい、そう言葉を返そうとしたが、代わりに彼の口から出たのは血と呻き声だった。 どうやら少しの間気を失っていたようだ。口元から垂れる血をぬぐい、頭を振り、意識をはっきりさせる。 スクアーロはたった今、何が起きたかわからなかった。確かな事は一杯喰らわすはずが、一杯喰らわされていたということだけだ。 「チクショウ……!」 前歯を何本かを失った彼は、もごもごとはっきりしない悪態をつく。 老人のようにその言葉には力がなく、男は自らの情けなさを恥じた。 心配してるのか、興奮しているのか、とにかく喚き続けるアヌビス神を無視し、彼は辺りを見渡す。 戦いは既に場所を移っているようだった。遠く聞こえた戦闘音に耳を澄ませ、もう一度空を見上げる。 微かに見えた影は共に戦った鳥のものに見えた。誰と戦っているかはわからない。さっきの犬だとしたら、上空で戦っているのもおかしく思える。 とにかく、一度手を組んだやつが戦っているのを放っておくわけにはいかない。 スクアーロはアヌビス神を握り締め、戦場向かって駆けだした。 途中足がもつれ、倒れかけた。アヌビス神が心配そうに声をかけたが男はその声も無視する。 何も怒りに燃えているのはペット・ショップだけではない。借りた借りはきっちり返す。スクアーロとて、ギャングだ。 なめらっぱなしでは堪らない。 「クソッたれ…………!」 スクアーロは進む。鳥が行くままに後を追い、誰と戦っているかも知らずに進んでいく。 行く先にあるのはGDS刑務所。まるでなにものかに引かれるように、彼はふらふらと足を進めていった。 【D-3 中央 / 1日目 早朝】 【スクアーロ】 [スタンド]:『クラッシュ』 [時間軸]:ブチャラティチーム襲撃前 [状態]:脇腹打撲(中)、疲労(中)、前歯数本消失 [装備]:アヌビス神 [道具]:基本支給品一式 [思考・状況] 基本行動方針:[[ティッツァーノ]]と合流、いなければゲームに乗ってもいい 0;なめらっぱなしは我慢ならないので、ペット・ショップを追って、きっちり借りは返すッ 1:まずはティッツァーノと合流。 2:そのついでに、邪魔になる奴は消しておく。 3:そんなわけで犬、恨みはねーが死んでもらう。  ◆ ◆ ◆  ―――ドゴオオォォォー…………ン 「あれは……!?」 「…………」 轟音に慌てて外に出てみれば、そこにあったのはとんでもない光景だった。 [[ストレイツォ]]は普段はピクリともさせない顔を微かに歪ませ、吉良は柄にもなく眼を見開き、驚く。 ビルの間に突如出現した巨大な氷の塊。一瞬で砕け散ったそれは、キラキラとダイヤのように美しかった。 太陽の光と、それで生まれた影。更に遠目で見たため、そこにだれがいるのか何がいるのかはわからなかった。 二人の男はただ顔を見合わせ、何も言うことができなかった。 先の戦闘の傷をいやすため、二人は今までずっとサン・ジョルジョ・マジョーレ教会に身をひそめていた。 というのは建前で、実を言えば傷はとっくに癒えていた。ただ吉良がわざわざ平穏を捨ててまで外に行く気がしなかったので、仮病を装っていたのだ。 その一時の平穏も、今、崩れ去った。 ストレイツォが吉良を見つめる。何を言わずとも、吉良は目の前の男が何を言わんとしているかはわかっていた。 その眼は彼がよく知る目だ。偽善者で、情熱に燃える、やる気に満ち溢れる者の眼。自分とは真逆の人間が持つ眼だ。 やれやれと首を振り、息を吐く。こうなると言ってどうにかなるものでもない。そしてストレイツォほどの戦闘力をここで捨てるのも実際惜しい。 ストレイツォが何か言いかけるのを手で遮ると、吉良は黙って荷物を取りに建物の中に引っ込んだ。 その嫌々ながらも正義に燃える(ように見える)態度に、波紋の戦士は何も言わず感謝を示した。 吉良は準備を終え、戻ってくると、あいつはどうするのだ、そう訪ねてきた。あいつとはついさっき戦った男、[[リキエル]]のことである。 ストレイツォはロープで縛り上げられ、気を失っている男を見下ろした。 結局男から情報を聞き出そうという当初の予定はうまくいかなかった。ストレイツォの波紋がよっぽど効いたのか、あるいは疲労もあったのだろう。 リキエルは気絶したきり、目を覚まさず、今ものんきに白目をむいて倒れている。 無様なものだとストレイツォは思ったが、どうしようもないその男の存在に、頭を抱えた。 急に襲いかかってきた危険人物をここに置いていくのは責任感のない行為だ。 だが連れて行くのも大変だし、かと言って殺すのも後味の悪い話だ。悩む波紋戦士を吉良は黙って見つめていた。 結局彼はもう一度波紋を流し、男をその場においていくことにした。 ついでに持っていたロープで縛り上げ、誰かに殺されることないよう、協会の奥底に寝かしておいてやった。 あまり褒められた行為ではないが、致し方ないこと。何よりあの氷の元に、保護すべき誰かがいる可能性だってあるのだ。 遠目でもわかるほどのあれに惹きつけられる弱者だっているだろう。ならば、急がなければいけない。 一人でも多くを助けるため。波紋戦士の誇りにかけて、あれは見逃せるものではない。  ――― 本当にそうだろうか? 一瞬だけ浮かんだそんな疑問をストレイツォは何を言っているんだと、一蹴した。 それ以外の理由なんぞ何もない。戦士として、一人の人間として彼はあの場に向かうのだ。 助けるために、救うために、ストレイツォはGDS刑務所へと向かっていく。 引力に引きつけられるように、その足は軽快で、迷いないものだった。 後ろにいる吉良を急かし、ストレイツォは先を急いだ。 【D-2 サン・ジョルジョ・マジョーレ教会前 / 1日目 早朝】 【ストレイツォ】 [能力]:『波紋法』 [時間軸]:JC4巻、[[ダイアー]]、トンペティ師等と共に、ディオの館へと向かいジョナサン達と合流する前 [状態]:健康 [装備]:なし [道具]:基本支給品×3、ランダム支給品×1([[ホル・ホース]]の物)、サバイバー入りペットボトル(中身残り1/3)[[ワンチェン]]の首輪 [思考・状況] 基本行動方針:吸血鬼ディオの打破 1.GDS刑務所に向かい、一般人を助ける。 2.周辺を捜索し[[吉良吉影]]等、無力な一般人達を守る。 3.ダイアー、ツェペリ、ジョナサン、トンペティ師等と合流した後、DIOの館に向かう。 【吉良吉影】 [スタンド]:『キラークイーン』 [時間軸]:JC37巻、『吉良吉影は静かに暮らしたい』 その①、サンジェルマンでサンドイッチを買った直後 [状態]:健康 [装備]:波紋入りの薔薇 [道具]:基本支給品 [思考・状況] 基本行動方針:静かに暮らしたい 1.平穏に過ごしたいが、仕方ないのでストレイツォについていく。 2.些か警戒をしつつ、無力な一般人としてストレイツォについて行く。 3.サンジェルマンの袋に入れたままの『彼女の手首』の行方を確認し、或いは存在を知る者ごと始末する。 4.機会があれば吉良邸へ赴き、弓矢を回収したい。 [備考] ハーブティーは飲み干しました。 二人はGDS刑務所に向かっています。 ストレイツォの支給品は[[マウンテン・ティム]]の投げ縄のみでした。 リキエルが持っていた支給品を取り上げました。一応基本支給品だけは置いていってあげました。 【リキエル】 [スタンド]:『スカイ・ハイ』 [時間軸]:徐倫達との直接戦闘直前 [状態]:両肩脱臼、顔面打撲、痛みとストレスによるパニック、気絶、縄で縛られてる [装備]:マウンテン・ティムの投げ縄(?) [道具]:基本支給品×2、 [思考・状況] 基本行動方針: ??? 0.気絶中  ◆ ◆ ◆  ―――ドゴオオォォォー…………ン マッシモ・ヴォルペは機械的に、顔をあげ、音が聞こえたほうを見やった。 しばらくの間、彼は何事かと耳を澄ませていたが、続けて音が聞こえることはなかったので、再び視線を落とし、考えにふけ始めた。 河はゆっくりと流れ続けていた。穏やかで、何の変哲もない河を、ヴォルペはじっと見つめていた。 ヴォルペはそっと目を閉じ、長々と息を吐いた。まるで乙女が恋煩いしているような、そんなため息だ。 記憶を掘り返せば脳裏に映る一人の男がこちらを見返している。 まるで蛇のように細く、切れた真っ赤な眼光が男を見返していた。ヴォルペはもう一度ため息をつき、そして歩き始めた。 どれだけ考えても、結局はなにもわからなかった。 男は歩きながら、自らの左胸にそっと手をやった。激しい運動をしたわけでもないのに心臓が早鐘を打っている。 それは未だかつて彼が経験したことのない事象だった。認めたくなくても、彼はそれを認めざるを得なかった。 俺は今、魅かれ始めている。幸せを求める自分自身が、何を求めているのか、気になり始めている。 そして何より……、更に呼吸を荒くし、男は歩調を速めた。脚の先は約束の地、GDS刑務所に向いていた。 DIO……俺はあの男に魅かれている。 約束の時間まではだいぶあったが、待ってなどいられなかった。 一刻でも早くDIOに会いたい。あの轟音、DIOに何かあったらそれは良くない。 気持ちは固まらず、未だ現実感はない。ただその二つだけは確かな感情だった。 [[マッシモ・ヴォルペ]]はまるで引力に導かれるように、GDS刑務所へ続く道へと消えていった。 【E-2 GDS刑務所・特別懲罰房外 川岸 / 一日目 早朝】 【マッシモ・ヴォルペ】 [時間軸]:殺人ウイルスに蝕まれている最中。 [スタンド]:『マニック・デプレッション』 [状態]:健康、DIOに夢中 [装備]:携帯電話 [道具]:基本支給品、大量の塩、注射器、紙コップ [思考・状況] 基本行動方針:特になかったが、DIOに興味。 1.GDS刑務所い急いで戻る。 2.DIOと行動。 3.天国を見るというDIOの情熱を理解。しかし天国そのものについては理解不能。  ◆ ◆ ◆ 自分は誤解されやすい人間のようだ。[[ディ・ス・コ]]はそう思った。 無口無表情、無駄な事は極力しない性格ではあると自覚している。だが自分は冷徹ではないし、どんな状況にあろうと冷静沈着でいられるとは思っていない。 襲われれば緊張もするし、きっと命がかかるような窮地に陥れば悲鳴をあげてしまうかもしれない、そうディ・ス・コは思っている。 けどそれを言う必要がなければ言わないし、顔に出したところで無駄ならば顔に出すこともしない。 ディ・ス・コと言う男は、そんな男だった。 そもそも、とディ・ス・コは、歩きながら胸中で思う。 ジャイロ・ツェペリがこの場にいなかったならば当初の目的は全て無駄になってしまう。 それに気づいた彼は、ある程度まで北上したところで進路を西にとった。 彼は地図に記されていない空白の場所を確認しに行こうと決めたのだ。 ジャイロ・ツェペリがいるかいないか、どちらにせよ、スティーブン・スティールが真実を語っているかどうかを確認することは、決して無駄になるまい。 ディ・ス・コはそう思ったから。 実際西の最果ての地は、そこらの風景となんら変わらず、境界らしきものも見えなかった。 だがある地点を越えて一歩踏み出すと、首輪は鳴り響びき、確かにそこに地図上の境界線があることを男に知らしめた。 首輪は確かに作動している。地図の外は地雷地帯。これは有益の情報だ。使える、確固たる情報だ。 ディ・ス・コはそう思った。 だから、この行動も無駄ではなかった。彼は自身に言い聞かせる。 臆病風に吹かれた故の行動であっても、結果的にそれが無駄足でなかったのならば、それはきっといいことだ。 いや、決して臆病風に吹かれたわけではない。心の内でそう訂正する。 ただ確認する必要があったから確認した。それだけのことだ。 東に向かって一歩一歩足を進め始めていた。 呼吸が乱れるようなこともなく、冷や汗や脂汗をかくようなこともしない。 そんな彼が今向かっているのはGDS刑務所。 ディスコの現在地から最も無駄なく、最短距離に位置する施設である。 ただ淡々と、機械のごとく脚を進め続けている。目的地に向けて、ディスコは歩き続けている。  ―――ドゴオオォォォー…………ン ふと鼓膜を震わす音に気づき、彼は空を見上げた。 東の空に顔を覗かす太陽を背に、宙に浮かんだ三つの影。なんだろうと、目を凝らす暇もなくその三つの影がもつれるように落下していった。 さっと走った緊張感を緩め、ディスコは顎をなぞり、今見た光景が何であったのか、考える。 しかし幾秒か考えても何も思い浮かばず、彼は再び歩き出した。 情報も何もなく考えるのは不安を呼び、捻じれた憶測を生む。ならばそれは無駄な行為だ。 無駄な行為は無駄なくするのが一番だ。 だがもしもGDS刑務所に行くこの行為、これすら無駄であったら。 ふと頭に思い浮かんだアイディアをディスコはやはり打ち消し、歩き出した。 それも無駄。考えても無駄だ。誰に言うでもなく、心の中、自分自身にそう言い聞かせ続ける。 それに、ディスコは柄にもなく、こう思った。 GDS刑務所に行けば何かわかる気がする。それは根拠のない、何かしらの確信であった。 強いて言うならば、ディスコは微かにだけ苦笑いを浮かべ、自分の馬鹿げた考えを嘲笑う。 彼は今、GDS刑務所に魅かれている。まるで引力を感じるかのように。運命にときめく少女のように。 【E-1 東部 / 1日目 早朝】 【ディ・ス・コ】 [スタンド]:『チョコレート・ディスコ』 [時間軸]:SBR17巻 ジャイロに再起不能にされた直後 [状態]:健康 [装備]:なし [道具]:基本支給品、[[シュガー・マウンテン]]のランダム支給品1~2(未確認) [思考・状況] 基本行動方針:大統領の命令に従い、ジャイロを始末する 1.サン・ピエトロ大聖堂に向かうのは保留。一旦GDS刑務所へ向かう。 2.信用できそうな奴を見つけたら、シュガー・マウンテンのことを伝える。 *投下順で読む [[前へ>囚われ人と盲目者]] [[戻る>本編 第1回放送まで]] [[次へ>その男、凶暴につき]] *時系列順で読む [[前へ>囚われ人と盲目者]] [[戻る>本編 第1回放送まで(時系列順)]] [[次へ>その男、凶暴につき]] *キャラを追って読む |前話|登場キャラクター|次話| |064:[[能ある吉良はスタンド隠す]]|[[ストレイツォ]]|105:[[トータル・リコール(模造記憶)(上)]]| |064:[[能ある吉良はスタンド隠す]]|[[吉良吉影]]|105:[[トータル・リコール(模造記憶)(上)]]| |064:[[能ある吉良はスタンド隠す]]|[[リキエル]]|105:[[トータル・リコール(模造記憶)(上)]]| |074:[[どうぶつ奇想天外ッ!]]|[[イギー]]|123:[[Faithful Dogs]]| |074:[[どうぶつ奇想天外ッ!]]|[[ペット・ショップ]]|133:[[最強]]| |059:[[空気]]|[[サーレー]]|133:[[最強]]| |059:[[空気]]|[[チョコラータ]]|133:[[最強]]| |074:[[どうぶつ奇想天外ッ!]]|[[スクアーロ]]|133:[[最強]]| |081:[[計画]]|[[マッシモ・ヴォルペ]]|105:[[トータル・リコール(模造記憶)(上)]]| |054:[[心全て引力]]|[[ディ・ス・コ]]|115:[[死亡遊戯(Game of Death)1]]|

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