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  幼い頃からひとりだった。 ☆ ☆ ☆ 「見失った……ですって?」 金属を切断するようなキンキンと響く悲鳴が耳障りだ、と花京院は思った。 自分の無能さを棚に上げて、文句ばかりを並べ立てる。 この女に惚れ込まれた康一という男に心底同情した。 やかましく喚く由花子の声を無視し、花京院は辺りを見渡す。 周りに転がっているのは、3人の大人の男たち、いずれも既に死体だ。襲撃者は彼らの方だった。 スタンド使いでない彼らは花京院の敵ではなかったが、3人がかりで同時に襲われたのでは、タンクローリーの姿を見失うには十分すぎる要素になる。 花京院は数分前の出来事を思い返す。 タンクローリーを追って杜王町エリアを後にした花京院典明、山岸由花子の両名は、道中であるタイガーバームガーデンにて待ち伏せによる襲撃を受けたのだ。 『俺の名はケイン!』 『俺の名はブラッディ!』 『そして俺の名はドノヴァンだァァ――ッ!』 突如、軍人風の男達に囲まれた花京院たち。 先行していた『法皇(ハイエロファント)』の能力でも察知できなかったのは、ナチス親衛隊コマンドーであるドノヴァンによる功績が大きい。 野生のコウモリにすら感づかれることのないドノヴァンの隠密能力は、『法皇(ハイエロファント)』の探索能力を容易に掻い潜っていた。 3人の襲撃者は花京院を取り囲むように姿を見せ、襲いかかった。 素早い身のこなし、手にはそれぞれナイフが握られている。 殺意を持って襲いかかってきたのかどうか、それはわからない。 真っ先に花京院を狙ってきたことからして、由花子を下衆い動機で襲うのが目的だったのかもしれない。 だが何にしても、生身の花京院がどうにかできる相手ではないことは明確だ。 『エメラルド・スプラッシュ!!!』 タンクローリーを逃さぬよう300メートル先行させていた『法皇の緑(ハイエロファント・グリーン)』を高速で呼び戻す。 そして射程距離ギリギリからの、その両掌から放たれる必殺の散弾『エメラルド・スプラッシュ』―――有無を言わさぬ最強の攻撃により、3人の軍人たちは悲鳴を上げる暇すら与えられず、沈黙する肉片へと姿を変えた。 文字通り、他愛のない襲撃者たちだ。しかしスタンドを呼び戻す必要があったため、追跡していたタンクローリーを見失うという結果に陥ってしまった。 「ほんっとスットロいわね、あんたは!? これじゃあ何のために組んだのか分かりやしないわ!?」 「うるさい人だな。自分の無能さを棚に上げて私を侮辱するとは呆れたものだ。この者たちを『貴女のスタンド』で始末してくれれば、私も『法皇』を呼び戻すこともなかったのですが――― もっとも冷静さの欠ける貴女では、彼らの襲撃に気づくことも対応することもできなかったでしょうがね?」 「ふざけんじゃあないわよ? 襲われたのはアンタじゃないの! どうしてあたしが助けなきゃいけないわけ? あたしが用があるのは康一くんだけなのよッ!!」 花京院は頭を抱える。やはりこの女はダメだ。 スタンド能力は強力だが、花京院のために使用するつもりは微塵もないらしい。 いざとなれば、彼女はいつでも花京院を犠牲―――身代わりに差し出すだろう。(もっともこれはお互い様だが) 由花子から得られた情報に大したものは無かったように思える。 自分の握るDIO様の情報やアレッシーの話と比較しても、割に合わない。 口を開けば「康一くん」、「康一くん」と、やかましい。自分から持ちかけた同盟関係だったが、花京院は既に見切りをつけていた。 そして、由花子も同様の結論にたどり着いていた。 『花京院くん、恐れることはないんだよ。友達になろう』 DIO様はあの時、私にそう言った。 初めは恐怖していたと思う。次に感じたのは安心だ。そして最終的に自分の中に生まれたのは、この上ない『憧れ』の感情だ。 『嫌いだって言ってるんだよ。きみに既にさあ……』 康一くんはあの時、あたしにそう言った。 あたしはこんなにも「好きだ」と言っていたのに――― あたしの中に生まれたのは、この上ない『怒り』の感情だ。 幼い頃からひとりだった。 子供の時から、友達はいなかった。 私の『法皇(ハイエロファント)』の見える人間など、誰一人いなかったからだ。 そんな者たちと友人になることなどできるわけがなかった。 幼い頃からひとりだった。 人を好きになったのは、初めての経験だった。 どいつもこいつも下心丸出しの、下卑た男ばかりだったからだ。 そんな者たちへの興味を持つことなんてあり得なかった。 DIO様は神のように思えた。 私の全てを理解してくれた。私のすべてを捧げたいと感じた。 彼と真の友人になりたい。彼の役に立つことならばなんでもやりたい。 彼のためならば命だって捨てられる。 康一くんはヒーローだった。 勇気と信念を持った男の顔。笑った時のカワイイ笑顔。すべてがあたしの理想だった。 彼と真の恋仲になりたい。彼のために自分の一生の全てを捧げても構わない。 そう思っていたのに。 だが、山岸由花子は違う。『法皇(ハイエロファント)』が見えるかどうかは問題ではなかったようだ。 友人とまではいかなくとも、目的を共有する同盟くらいならば何とかなると思っていたが…… 彼女は役に立たない。百害あって一利なし。いつか近いうちに、彼女に脚を引っ張られる時がきっと来る。 でも、花京院典明は違う。彼の能力で康一くんを見つけることはできたが、それだけだ。 康一くんの代わりになる事などありえないが、使える味方くらいにはなるかと思っていたが…… もう無理だ、こんな男と行動することなど耐えられない。こんな同盟関係を近いうちに仲間割れを起こし、どちらかがどちらかを裏切ることになるだろう。 やはり私にはDIO様だけだ。 やはりあたしには康一くんだけ……。 幼い頃から独りだった。 仲間なんか、はじめから必要なかった。 ☆ 「………………………………」 「………………………………」 2人の間に不穏な空気が流れる。 無言でにらみ合う彼らは、お互いが相手に抱いている負の感情を理解していた。 意味のない同盟関係はここまでだ。 向かい合って、臨戦態勢に入る2人。いつでもスタンド攻撃可能。 ――――そのとき、遠方で巨大な爆発音が響いた。 「……康一くんの居場所がわかったわ」 「…………その様だな」 爆発の規模から考えて、今の大爆音はタンクローリーに拠るものだ。 すなわち、そこが広瀬康一の居場所だ。そして、彼は足を失った。追いつくには今しかない。 無事でいればいいが――――――。 2人は同時に戦闘態勢を解く。余計な人間を相手にしている時間はお互いにない。 だがこれ以上この同盟関係を続けていくことは決して無いと、両人がすでに理解していた。 「悪いけど、あんたに構っている暇はないわ。あたしの目的は康一くんただ一人なの。もう行かせてもらうからね」 「好きにするがいい。私も、貴女の『お守り』をするのにはほとほと疲れていたところなのでね」 「フン!」 両者が刃を収めたのは、戦っても無傷で済む相手ではないとお互いに判断したからという理由もある。 お互いに自分の本来の目的ではない相手だ。不要な戦闘はできる限り避けたい。 長い髪を翻し、山岸由花子は一人、走り出した。 高く立ち上る煙と炎の明かりが何よりの目印だ。距離にして1キロメートルあるかないか――どのみち大した距離じゃあなさそうだ。 もし康一が無事ならば、すぐにでも移動してしまうだろう。そして、もし康一が無事でないならば、なおのこと急がねばならない。 康一の息の根を止めるのは、自分でないといけないのだ。 朝日の昇りだしたローマの街へ消えていく由花子の姿を、花京院は見送る。 彼女の行く末がどんな結末になるか、なんて彼にとってはどうでもいいことだ。 あえて質問がなかったので花京院は話さなかったが、タンクローリーに乗っていたのは広瀬康一だけじゃあない。 時代遅れのジョン・ウェインに、剃り込みを入れたヤンキー風の日本人。それに、ハンドルを握っていたのは某格闘ゲームの衝撃音波を用いる空軍少佐に似た大柄の男。 彼らのチームは少なくとも4人組以上、うち何人かは当然スタンド使いだろう。 由花子が目的を遂げるも良し、相打ちになるのがベストだが――― まあ由花子の能力程度じゃあ返り討ちが関の山だろう。 タンクローリーを追撃していた正体不明の敵の存在もあるが、まあ、知ったことじゃあない。 そんなことを考えながら、花京院は辺りの死体の握るナイフ類を回収する。 恐らくスタンド使いではない男たちだったが、統率の取れた彼らの動きは生身の人間ならたとえヘビー級のプロレスラーでも敵いはしないだろう。 『法皇(ハイエロファント)』を持つ花京院の敵ではなかったにしろ、彼らの連携は美しかった。 彼らのような関係が、真の『仲間』というものなのだろう。 花京院にとってはわからないことであるが――― ケインとブラッディは元の世界よりの仲間同士であるが、ドノヴァンに関してはこのローマに連れてこられた後に出会った者なのだ。 彼らがこの6時間の間にどのように出会い、どのような時間を過ごしてきたのか。今となっては知る由もない。 だが彼らは、花京院が17年間かけて作れなかった『友』を、ほんの数時間で築き上げていたのだ。 『エメラルド・スプラッシュ』による攻撃はとっさだったものとは言え、容赦のない全力の攻撃だった。 そのため、返り討ちにあった3人の男たちは、みな悉く即死してしまった。 『情報収集』が第一目的の花京院にとって『見敵即殺』はナンセンスだ。 アレッシーにしても由花子にしても、ゲーム開始以降、花京院は会話もなく相手を殺しにかかったことなどなかった。 無意識の即殺行為の裏側には、花京院の、仲間への『羨望』、『嫉妬』という感情があったのではないだろうか。 「…………フン、まさか」 馬鹿げた考えだ、と花京院はかぶりを振る。 恐れ多い考えだが、自分の友達はDIO様一人で充分だ。 DIO様のために生き、DIO様のために働き、DIO様のために死ぬ。 他の仲間など…… 『友達』などは、必要ない。 なぜならば―――――― 花京院典明は、幼い頃から独りだったのだから。 【E-5 タイガーバームガーデン / 1日目 早朝】 【花京院典明】 [時間軸]:JC13巻 学校で承太郎を襲撃する前 [スタンド]:『ハイエロファント・グリーン』 [状態]:健康、肉の芽状態 [装備]:刺青のナイフ、スリのナイフ、第22の男のナイフ [道具]:基本支給品×2、ランダム支給品1~2(確認済) [思考・状況] 基本行動方針:DIO様の敵を殺す 0.DIO様の敵を殺し、彼の利となる行動をとる。 1.山岸由花子との同盟を破棄した。放送後、今後の身の振りを考える。 2.ジョースター一行、ンドゥール、他人に化ける能力のスタンド使いを警戒。 3.空条承太郎を殺した男は敵か味方か……敵かもしれない。 4.山岸由花子の話の内容で、アレッシーの話を信じつつある。(考えるのは保留している) 【備考】スタンドの視覚を使ってサーレー、チョコラータ、玉美の姿を確認しています。もっと多くの参加者を見ているかもしれません。 【アレッシーが語った話まとめ】 花京院の経歴。承太郎襲撃後、ジョースター一行に同行し、ンドゥールの『ゲブ神』に入院させられた。 ジョースター一行の情報。ジョセフ、アヴドゥル、承太郎、ポルナレフの名前とスタンド。 アレッシーもジョースター一行の仲間。 アレッシーが仲間になったのは1月。 花京院に化けてジョースター一行を襲ったスタンド使いの存在。 【山岸由花子が語った話まとめ】 数か月前に『弓と矢』で射られて超能力が目覚めた。(能力、射程等も大まかに説明させられた) 広瀬康一は自分とは違う超能力を持っている。(詳細は不明だが、音を使うとは認識・説明済み) 東方仗助、虹村億泰の外見、素行など(康一の悪い友人程度、スタンド能力は知らないしあるとも思っていない) ※ケインとブラッディはバオー来訪者に登場したドレスの戦闘兵二人組です。 ※ケイン、ブラッディ、ドノヴァンの参戦時期は不明です。 ※彼らの行動目的やこれまでの行動経緯は不明ですが、花京院、由花子以外の参加者との遭遇は無かったようです。 ※ただしムーロロの『オール・アロング・ウォッチタワー』に目撃されている可能性はあります。 ※ケインの支給品は、刺青(スピードワゴンの仲間@Part1)のナイフでした。 ※ブラッディの支給品は、スリ(に扮したナチス兵@Part2)のナイフでした。 ※ドノヴァンの支給品は、第22の男(バオー来訪者に登場する刺客の一人)のナイフでした。 ※彼らに他の支給品があったかどうかは不明です。 ☆ ☆ ☆ 「見つけたわ………康一くん!」 見間違うはずもない、凛々しい笑顔。 あんな大爆発があったにもかかわらず、やはり無事だった。 花京院は「逃げながら敵と戦っている」と言っていたが、この様子だと敵を見事に撃破したようだ。 さすが自分が惚れた男性、と物陰から様子を伺っている由花子は笑みを漏らす。 厄介なことに康一は他の仲間たちに囲まれている(その中にはあの「東方仗助」の姿もあった)が、由花子にとっては些細なことだ。 花京院が考えているほど、由花子は愚かではない。 多勢に無勢。考え無しに飛び出して殺害を企てるような馬鹿な真似はしない。 しかし、康一たちが少しでも油断し隙を見せたならば、その時は……… (待っていてね、康一くん。すぐにでもあなたを殺してあげるから――――――) いや、殺すのではない。由花子は自分に言い聞かせる。 康一は自分の中で生き続けるのだ。由花子のことを「嫌いだ」と言った康一だけがいなくなり、由花子の理想である『広瀬康一』が、彼女の中で永遠に生き続けるのだ。 これからは何処へ行くのも、何をするのも、彼女の中の『康一』いつも一緒になる。 自分と広瀬康一以外の人間など誰ひとり必要ない。 なぜならば―――――― 山岸由花子は、幼い頃から独りだったのだから。 【C-5 北西 コルソ通り/一日目 早朝】 【山岸由花子】 [スタンド]:『ラブ・デラックス』 [時間軸]:JC32巻 康一を殺そうとしてドッグオンの音に吹き飛ばされる直前 [状態]:健康・虚無の感情(小)・興奮(大) [装備]:なし [道具]:基本支給品×2、ランダム支給品合計2~4(自分、アクセル・ROのもの。全て確認済) [思考・状況] 基本行動方針:広瀬康一を殺す。 0.見つけたわ、康一くん。 1.康一くんをブッ殺す。他の奴がどうなろうと知ったことじゃあない。 2.花京院をぶっ殺してやりたいが、まずは康一が優先。乙女を汚した罪は軽くない。 ※チーム『HEROES』を発見しました。現在、物陰より彼らを観察しています。 ※向こうはまだ由花子の存在に気がついていません。 【コンビ・花*花 同盟決裂】 &color(red){【ケイン 死亡】} &color(red){【ブラッディ 死亡】} &color(red){【ドノヴァン 死亡】} &color(red){【残り 76人】} *投下順で読む [[前へ>単純]] [[戻る>本編 第1回放送まで]] [[次へ>大統領、Dio、そして……]] *時系列順で読む [[前へ>単純]] [[戻る>本編 第1回放送まで(時系列順)]] [[次へ>大統領、Dio、そして……]] *キャラを追って読む |前話|登場キャラクター|次話| |&color(blue){GAME START}|[[ドノヴァン]]|&color(red){GAME OVER}| |092:[[病照]]|[[花京院典明]]|109:[[眠れるまで 足掻いて]]| |092:[[病照]]|[[山岸由花子]]|115:[[死亡遊戯(Game of Death)1]]| |&color(blue){GAME START}|[[ケイン]]|&color(red){GAME OVER}| |&color(blue){GAME START}|[[ブラッディ]]|&color(red){GAME OVER}|
  幼い頃からひとりだった。 ☆ ☆ ☆ 「見失った……ですって?」 金属を切断するようなキンキンと響く悲鳴が耳障りだ、と花京院は思った。 自分の無能さを棚に上げて、文句ばかりを並べ立てる。 この女に惚れ込まれた康一という男に心底同情した。 やかましく喚く由花子の声を無視し、花京院は辺りを見渡す。 周りに転がっているのは、3人の大人の男たち、いずれも既に死体だ。襲撃者は彼らの方だった。 スタンド使いでない彼らは花京院の敵ではなかったが、3人がかりで同時に襲われたのでは、タンクローリーの姿を見失うには十分すぎる要素になる。 花京院は数分前の出来事を思い返す。 タンクローリーを追って杜王町エリアを後にした[[花京院典明]]、[[山岸由花子]]の両名は、道中であるタイガーバームガーデンにて待ち伏せによる襲撃を受けたのだ。 『俺の名は[[ケイン]]!』 『俺の名は[[ブラッディ]]!』 『そして俺の名は[[ドノヴァン]]だァァ――ッ!』 突如、軍人風の男達に囲まれた花京院たち。 先行していた『法皇(ハイエロファント)』の能力でも察知できなかったのは、ナチス親衛隊コマンドーであるドノヴァンによる功績が大きい。 野生のコウモリにすら感づかれることのないドノヴァンの隠密能力は、『法皇(ハイエロファント)』の探索能力を容易に掻い潜っていた。 3人の襲撃者は花京院を取り囲むように姿を見せ、襲いかかった。 素早い身のこなし、手にはそれぞれナイフが握られている。 殺意を持って襲いかかってきたのかどうか、それはわからない。 真っ先に花京院を狙ってきたことからして、由花子を下衆い動機で襲うのが目的だったのかもしれない。 だが何にしても、生身の花京院がどうにかできる相手ではないことは明確だ。 『エメラルド・スプラッシュ!!!』 タンクローリーを逃さぬよう300メートル先行させていた『法皇の緑(ハイエロファント・グリーン)』を高速で呼び戻す。 そして射程距離ギリギリからの、その両掌から放たれる必殺の散弾『エメラルド・スプラッシュ』―――有無を言わさぬ最強の攻撃により、3人の軍人たちは悲鳴を上げる暇すら与えられず、沈黙する肉片へと姿を変えた。 文字通り、他愛のない襲撃者たちだ。しかしスタンドを呼び戻す必要があったため、追跡していたタンクローリーを見失うという結果に陥ってしまった。 「ほんっとスットロいわね、あんたは!? これじゃあ何のために組んだのか分かりやしないわ!?」 「うるさい人だな。自分の無能さを棚に上げて私を侮辱するとは呆れたものだ。この者たちを『貴女のスタンド』で始末してくれれば、私も『法皇』を呼び戻すこともなかったのですが――― もっとも冷静さの欠ける貴女では、彼らの襲撃に気づくことも対応することもできなかったでしょうがね?」 「ふざけんじゃあないわよ? 襲われたのはアンタじゃないの! どうしてあたしが助けなきゃいけないわけ? あたしが用があるのは康一くんだけなのよッ!!」 花京院は頭を抱える。やはりこの女はダメだ。 スタンド能力は強力だが、花京院のために使用するつもりは微塵もないらしい。 いざとなれば、彼女はいつでも花京院を犠牲―――身代わりに差し出すだろう。(もっともこれはお互い様だが) 由花子から得られた情報に大したものは無かったように思える。 自分の握るDIO様の情報や[[アレッシー]]の話と比較しても、割に合わない。 口を開けば「康一くん」、「康一くん」と、やかましい。自分から持ちかけた同盟関係だったが、花京院は既に見切りをつけていた。 そして、由花子も同様の結論にたどり着いていた。 『花京院くん、恐れることはないんだよ。友達になろう』 DIO様はあの時、私にそう言った。 初めは恐怖していたと思う。次に感じたのは安心だ。そして最終的に自分の中に生まれたのは、この上ない『憧れ』の感情だ。 『嫌いだって言ってるんだよ。きみに既にさあ……』 康一くんはあの時、あたしにそう言った。 あたしはこんなにも「好きだ」と言っていたのに――― あたしの中に生まれたのは、この上ない『怒り』の感情だ。 幼い頃からひとりだった。 子供の時から、友達はいなかった。 私の『法皇(ハイエロファント)』の見える人間など、誰一人いなかったからだ。 そんな者たちと友人になることなどできるわけがなかった。 幼い頃からひとりだった。 人を好きになったのは、初めての経験だった。 どいつもこいつも下心丸出しの、下卑た男ばかりだったからだ。 そんな者たちへの興味を持つことなんてあり得なかった。 DIO様は神のように思えた。 私の全てを理解してくれた。私のすべてを捧げたいと感じた。 彼と真の友人になりたい。彼の役に立つことならばなんでもやりたい。 彼のためならば命だって捨てられる。 康一くんはヒーローだった。 勇気と信念を持った男の顔。笑った時のカワイイ笑顔。すべてがあたしの理想だった。 彼と真の恋仲になりたい。彼のために自分の一生の全てを捧げても構わない。 そう思っていたのに。 だが、山岸由花子は違う。『法皇(ハイエロファント)』が見えるかどうかは問題ではなかったようだ。 友人とまではいかなくとも、目的を共有する同盟くらいならば何とかなると思っていたが…… 彼女は役に立たない。百害あって一利なし。いつか近いうちに、彼女に脚を引っ張られる時がきっと来る。 でも、花京院典明は違う。彼の能力で康一くんを見つけることはできたが、それだけだ。 康一くんの代わりになる事などありえないが、使える味方くらいにはなるかと思っていたが…… もう無理だ、こんな男と行動することなど耐えられない。こんな同盟関係を近いうちに仲間割れを起こし、どちらかがどちらかを裏切ることになるだろう。 やはり私にはDIO様だけだ。 やはりあたしには康一くんだけ……。 幼い頃から独りだった。 仲間なんか、はじめから必要なかった。 ☆ 「………………………………」 「………………………………」 2人の間に不穏な空気が流れる。 無言でにらみ合う彼らは、お互いが相手に抱いている負の感情を理解していた。 意味のない同盟関係はここまでだ。 向かい合って、臨戦態勢に入る2人。いつでもスタンド攻撃可能。 ――――そのとき、遠方で巨大な爆発音が響いた。 「……康一くんの居場所がわかったわ」 「…………その様だな」 爆発の規模から考えて、今の大爆音はタンクローリーに拠るものだ。 すなわち、そこが広瀬康一の居場所だ。そして、彼は足を失った。追いつくには今しかない。 無事でいればいいが――――――。 2人は同時に戦闘態勢を解く。余計な人間を相手にしている時間はお互いにない。 だがこれ以上この同盟関係を続けていくことは決して無いと、両人がすでに理解していた。 「悪いけど、あんたに構っている暇はないわ。あたしの目的は康一くんただ一人なの。もう行かせてもらうからね」 「好きにするがいい。私も、貴女の『お守り』をするのにはほとほと疲れていたところなのでね」 「フン!」 両者が刃を収めたのは、戦っても無傷で済む相手ではないとお互いに判断したからという理由もある。 お互いに自分の本来の目的ではない相手だ。不要な戦闘はできる限り避けたい。 長い髪を翻し、山岸由花子は一人、走り出した。 高く立ち上る煙と炎の明かりが何よりの目印だ。距離にして1キロメートルあるかないか――どのみち大した距離じゃあなさそうだ。 もし康一が無事ならば、すぐにでも移動してしまうだろう。そして、もし康一が無事でないならば、なおのこと急がねばならない。 康一の息の根を止めるのは、自分でないといけないのだ。 朝日の昇りだしたローマの街へ消えていく由花子の姿を、花京院は見送る。 彼女の行く末がどんな結末になるか、なんて彼にとってはどうでもいいことだ。 あえて質問がなかったので花京院は話さなかったが、タンクローリーに乗っていたのは広瀬康一だけじゃあない。 時代遅れのジョン・ウェインに、剃り込みを入れたヤンキー風の日本人。それに、ハンドルを握っていたのは某格闘ゲームの衝撃音波を用いる空軍少佐に似た大柄の男。 彼らのチームは少なくとも4人組以上、うち何人かは当然スタンド使いだろう。 由花子が目的を遂げるも良し、相打ちになるのがベストだが――― まあ由花子の能力程度じゃあ返り討ちが関の山だろう。 タンクローリーを追撃していた正体不明の敵の存在もあるが、まあ、知ったことじゃあない。 そんなことを考えながら、花京院は辺りの死体の握るナイフ類を回収する。 恐らくスタンド使いではない男たちだったが、統率の取れた彼らの動きは生身の人間ならたとえヘビー級のプロレスラーでも敵いはしないだろう。 『法皇(ハイエロファント)』を持つ花京院の敵ではなかったにしろ、彼らの連携は美しかった。 彼らのような関係が、真の『仲間』というものなのだろう。 花京院にとってはわからないことであるが――― ケインとブラッディは元の世界よりの仲間同士であるが、ドノヴァンに関してはこのローマに連れてこられた後に出会った者なのだ。 彼らがこの6時間の間にどのように出会い、どのような時間を過ごしてきたのか。今となっては知る由もない。 だが彼らは、花京院が17年間かけて作れなかった『友』を、ほんの数時間で築き上げていたのだ。 『エメラルド・スプラッシュ』による攻撃はとっさだったものとは言え、容赦のない全力の攻撃だった。 そのため、返り討ちにあった3人の男たちは、みな悉く即死してしまった。 『情報収集』が第一目的の花京院にとって『見敵即殺』はナンセンスだ。 アレッシーにしても由花子にしても、ゲーム開始以降、花京院は会話もなく相手を殺しにかかったことなどなかった。 無意識の即殺行為の裏側には、花京院の、仲間への『羨望』、『嫉妬』という感情があったのではないだろうか。 「…………フン、まさか」 馬鹿げた考えだ、と花京院はかぶりを振る。 恐れ多い考えだが、自分の友達はDIO様一人で充分だ。 DIO様のために生き、DIO様のために働き、DIO様のために死ぬ。 他の仲間など…… 『友達』などは、必要ない。 なぜならば―――――― 花京院典明は、幼い頃から独りだったのだから。 【E-5 タイガーバームガーデン / 1日目 早朝】 【花京院典明】 [時間軸]:JC13巻 学校で承太郎を襲撃する前 [スタンド]:『ハイエロファント・グリーン』 [状態]:健康、肉の芽状態 [装備]:刺青のナイフ、スリのナイフ、第22の男のナイフ [道具]:[[基本支給品]]×2、ランダム支給品1~2(確認済) [思考・状況] 基本行動方針:DIO様の敵を殺す 0.DIO様の敵を殺し、彼の利となる行動をとる。 1.山岸由花子との同盟を破棄した。放送後、今後の身の振りを考える。 2.ジョースター一行、[[ンドゥール]]、他人に化ける能力のスタンド使いを警戒。 3.[[空条承太郎]]を殺した男は敵か味方か……敵かもしれない。 4.山岸由花子の話の内容で、アレッシーの話を信じつつある。(考えるのは保留している) 【備考】スタンドの視覚を使って[[サーレー]]、[[チョコラータ]]、玉美の姿を確認しています。もっと多くの参加者を見ているかもしれません。 【アレッシーが語った話まとめ】 花京院の経歴。承太郎襲撃後、ジョースター一行に同行し、ンドゥールの『ゲブ神』に入院させられた。 ジョースター一行の情報。ジョセフ、アヴドゥル、承太郎、ポルナレフの名前とスタンド。 アレッシーもジョースター一行の仲間。 アレッシーが仲間になったのは1月。 花京院に化けてジョースター一行を襲ったスタンド使いの存在。 【山岸由花子が語った話まとめ】 数か月前に『弓と矢』で射られて超能力が目覚めた。(能力、射程等も大まかに説明させられた) 広瀬康一は自分とは違う超能力を持っている。(詳細は不明だが、音を使うとは認識・説明済み) [[東方仗助]]、[[虹村億泰]]の外見、素行など(康一の悪い友人程度、スタンド能力は知らないしあるとも思っていない) ※ケインとブラッディはバオー来訪者に登場したドレスの戦闘兵二人組です。 ※ケイン、ブラッディ、ドノヴァンの参戦時期は不明です。 ※彼らの行動目的やこれまでの行動経緯は不明ですが、花京院、由花子以外の参加者との遭遇は無かったようです。 ※ただしムーロロの『オール・アロング・ウォッチタワー』に目撃されている可能性はあります。 ※ケインの支給品は、刺青(スピードワゴンの仲間@Part1)のナイフでした。 ※ブラッディの支給品は、スリ(に扮したナチス兵@Part2)のナイフでした。 ※ドノヴァンの支給品は、第22の男(バオー来訪者に登場する刺客の一人)のナイフでした。 ※彼らに他の支給品があったかどうかは不明です。 ☆ ☆ ☆ 「見つけたわ………康一くん!」 見間違うはずもない、凛々しい笑顔。 あんな大爆発があったにもかかわらず、やはり無事だった。 花京院は「逃げながら敵と戦っている」と言っていたが、この様子だと敵を見事に撃破したようだ。 さすが自分が惚れた男性、と物陰から様子を伺っている由花子は笑みを漏らす。 厄介なことに康一は他の仲間たちに囲まれている(その中にはあの「東方仗助」の姿もあった)が、由花子にとっては些細なことだ。 花京院が考えているほど、由花子は愚かではない。 多勢に無勢。考え無しに飛び出して殺害を企てるような馬鹿な真似はしない。 しかし、康一たちが少しでも油断し隙を見せたならば、その時は……… (待っていてね、康一くん。すぐにでもあなたを殺してあげるから――――――) いや、殺すのではない。由花子は自分に言い聞かせる。 康一は自分の中で生き続けるのだ。由花子のことを「嫌いだ」と言った康一だけがいなくなり、由花子の理想である『広瀬康一』が、彼女の中で永遠に生き続けるのだ。 これからは何処へ行くのも、何をするのも、彼女の中の『康一』いつも一緒になる。 自分と広瀬康一以外の人間など誰ひとり必要ない。 なぜならば―――――― 山岸由花子は、幼い頃から独りだったのだから。 【C-5 北西 コルソ通り/一日目 早朝】 【山岸由花子】 [スタンド]:『ラブ・デラックス』 [時間軸]:JC32巻 康一を殺そうとしてドッグオンの音に吹き飛ばされる直前 [状態]:健康・虚無の感情(小)・興奮(大) [装備]:なし [道具]:基本支給品×2、ランダム支給品合計2~4(自分、[[アクセル・RO]]のもの。全て確認済) [思考・状況] 基本行動方針:広瀬康一を殺す。 0.見つけたわ、康一くん。 1.康一くんをブッ殺す。他の奴がどうなろうと知ったことじゃあない。 2.花京院をぶっ殺してやりたいが、まずは康一が優先。乙女を汚した罪は軽くない。 ※チーム『[[HEROES]]』を発見しました。現在、物陰より彼らを観察しています。 ※向こうはまだ由花子の存在に気がついていません。 【コンビ・花*花 同盟決裂】 &color(red){【ケイン 死亡】} &color(red){【ブラッディ 死亡】} &color(red){【ドノヴァン 死亡】} &color(red){【残り 76人】} *投下順で読む [[前へ>単純]] [[戻る>本編 第1回放送まで]] [[次へ>大統領、Dio、そして……]] *時系列順で読む [[前へ>単純]] [[戻る>本編 第1回放送まで(時系列順)]] [[次へ>大統領、Dio、そして……]] *キャラを追って読む |前話|登場キャラクター|次話| |&color(blue){GAME START}|[[ドノヴァン]]|&color(red){GAME OVER}| |092:[[病照]]|[[花京院典明]]|109:[[眠れるまで 足掻いて]]| |092:[[病照]]|[[山岸由花子]]|115:[[死亡遊戯(Game of Death)1]]| |&color(blue){GAME START}|[[ケイン]]|&color(red){GAME OVER}| |&color(blue){GAME START}|[[ブラッディ]]|&color(red){GAME OVER}|

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