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黒金の意志 - (2013/07/08 (月) 10:07:58) の1つ前との変更点

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「邪魔しないでッ」 撥ねつけるような言葉に続いて、乾いた音が部屋に響いた。 リサリサの傍に屈んでいたジョルノが後ずさる。彼の右の手の甲には赤いみみずばれの様な跡がついていた。 女性が彼を振り払おうとした際、反射的にはたいてしまったのだろう。 少年は立ちあがると黙ってはたかれた場所を撫でた。奇妙な痺れた感覚が、そこには残っていた。 「復讐……ッ! 私には、今ここで倒れてはならない理由があるッ!」 エリザベスの精神力は凄まじいものだった。 今の今まで虫の息だったはずだ。頭蓋骨を割られ、片腕はもげ、滝のように血を流したはずだというのに。 それでも彼女は動こうとした。限界を迎えた肉体に鞭打ち、エリザベスはよろけながらも歩みを止めなかった。 一歩、また一歩。順調に踏み出しかけた彼女が、次の瞬間、大きく傾いた。 派手な音をたて、カフェの椅子がなぎ倒される。エリザベスが倒れた。慌てて男たちは彼女の元に駆け寄り、そして言葉を失う。 彼女はそれでも進もうという意志を見せていた。 四つん這いであろうが、足が動かまいが……ただ進むのみ。這ってでも前進する。 そのあまりの迫力を目の前にして、ジョルノは何も言えなかった。 少年の伸ばしかけた腕が引っ込む。 脳裏にちらつく先の光景。喉元へ突きつけられた、尖った黒い切っ先。 それは本能的なためらいだった。 彼女に手を貸すことが正しいだとか、助け起こすべきだとか、怪我人に無理をさせてはいけないだとか。 そんなものを超越した場所にある、踏み入れてはいけない、未知のものへの恐れ。 かわりに手を差し出たのは琢馬だった。 無言で傍らに膝をつくと、彼は抱きかかえる様にエリザベスをその場に立たせた。 血だらけの服装だったが、黒の服に目立つ埃をはたき落とし、零れ落ちたタバコとライターを拾いあげてやる。 何の感情も見せず、淡々としたものだった。当たり前のように琢馬はそうして、そうすることに躊躇いもしなかった。 立ちあがったエリザベスはすぐに歩き出す。 手を貸してもらった琢馬を見やることも、感謝の言葉を述べるようなこともしなかった。そうする余裕も必要もないと思っているかのようだ。 進んでは崩れ落ちかけ、また歩いては立ち止まる。荒い呼吸とうまく動かない足に苛立っている。 それでも、彼女は進むことを辞めなかった。 そんな彼女を、琢馬は黙ってじっとみつめていた。 「……邪魔をしないでと言ったはずよッ!」 数分が経ち、何度目になるかわからない転倒。女性の体がくしゃりと折れ、カフェの床に横たわった。 何も言わず助けようとした青年に向かい、彼女はそう叫んだ。 琢馬は退かなかった。それでも彼はエリザベスが立ち上がるのを助けようと、その場にしゃがみ込む。 そうして琢馬は手を貸して……次の瞬間、エリザベスが立ちあがるのと同時に、彼自身の体がよろめいた。 琢馬がバランスを失い、倒れる。今度は青年が机と椅子をなぎ倒し、彼はその場で尻もちをついた。 別にエリザベスにそうするつもりがあったわけではない。強く振り払ったつもりもないし、傷つけるつもりなんて一切なかった。 人二人分の体重は琢馬が想像した以上に負担だっただけのこと。それは単純なアクシデントだった。 「琢馬……!」 「大丈夫ですか?」 ウェザーとジョルノが心配そうに駆け寄った。エリザベスは一歩踏み出して、その心配そうな声に立ち止まり、振り返る。 大きな怪我はなかった。幸か不幸か、額の皮膚の薄い部分が切れ、血がほんの少しだけ流れているだけだ。 たいしたことないと琢馬は手を挙げ、ポケットからハンカチを取り出すと傷口をそれで抑えた。 フローリングの床に座る青年。立ちつくす二人の男。少し離れて立つ女性。 なんとなく、気まずい沈黙が辺りを漂った。 十数秒そのまま時が流れ、そして青年は立ち上がる。 琢馬の動きに迷いはなかった。座っている間にそうしようと決めていたかのように、彼は迷いなく女性の元へと近づいていった。 男たちには止める理由もなく、暇もなく。三人が黙って見つめる中、琢馬はエリザベスの傍で立ち止まると口を開いた。 「俺は―――」 琢馬はエリザベスに真っすぐ視線を向けて言う。 二人の距離は三メートルほど。琢馬は女性の顔をじっと見つめ、エリザベスも彼を見返した。 「別にアンタの復讐を止めようと思っていないし、アンタがどこに行って、何をしようたって構わないと思ってる。  アンタがどんな人間かも知らなければ、何が起きたかもわからない。口をはさむ権利なんかないとはわかっているつもりだ。  ただ気になっただけだ。お節介とはわかってるがアンタがあまりに無計画そうなんで、つい横から口を挟みたくなった」 「…………」 「アンタ、あてはあるのか? 空軍司令、ディオの部下。そう言ったな。  そいつの容姿は? 勤務場所は? それが変わってるかもしれないとは考えないのか?  今アンタはここがどこで、どんな状況かわかってて、それを口にしてるのか? 本気で、混じり気なしに復讐を誓ってるのか?  もしそうだとしたら、まず最初に現状を把握しようと何故思わない。自分がどれだけ軽率で、浅はかだってことに気がつかない。  そんなんで本当に、復讐が果たされると……アンタはそう、思ってるのか?」 復讐という言葉を口にした途端、部屋の空気がピシリと震えた。 怒りに顔を歪ませるエリザベス。反射的に口を開きかけ、そして琢馬の真っ暗な目に睨まれ、言葉に詰まる。 彼の瞳は深く、淀んでいた。墨を流し込んだような真黒な瞳。まるで吸い込まれていくかのように底無しの瞳だ。 それでも彼女は何よとばかりに、強い口調で言い返す。 「貴方には関係のないことよッ」 琢馬も即座に言葉を返した。 「いいや、あるね。アンタはもう俺を突き飛ばしたり、邪険に扱ったりしないはずだ」 そして続ける。 「なぜなら俺はアンタの復讐に手を貸そうと思っているからだ」 先ほどとはまた違った緊張感と沈黙がカフェの中を満たした。 ジョルノが眉をひそめる。ウェザー・リポートが何か言いたげに口を開きかけ……、琢馬は片手をあげてそれを黙らせた。 彼は引き続いて、エリザベスに話しかける。 「エリザベス……って言ったな。俺があんたの復讐を手伝ってやる。  俺があんたの手となり足となり脳となり……必ずや、復讐を成し遂げさせてやる」 どうせ一人じゃ満足にも動けないんだろ。 彼女が目覚めてからずっと引きずっていた足を指さし、青年は言葉を締めくくった。 あまりに当然かのように言うので、しばらくの間、誰も口を開くことができなかった。 それぞれがそれぞれで考えることが多すぎて、そして疑うことが多すぎて。 誰が何を信じて、話がどこを目指そうとしているのか。きっと琢馬以外、誰もわからなかったに違いない。 「ウェザー・リポート、すまないがジョルノ・ジョバァ―ナと二人きりで話がしたい」 静寂を破って、琢馬がそう言った。 そしてウェザーが反論する暇もなく、またそうするだろうと見越して、彼は畳みかける様に言葉を重ねた。 琢馬にしては珍しい、早口の口調だった。 「『オレにはお前を助けながら歩き回る積もりも余裕もない。  お前が自分の能力を絶対に明かさないというなら、お前に背中を見せる気もない』……だろ?  ならば俺はここを出ていく。でていくならば、お前らが言うスタンドとやらの能力を明かす必要もない。  違うか?」 ウェザーは眼を細め、青年の顔を見た。警戒心に疑心。彼には琢馬が何を考えているのかわからなかった。 わからなかったが……今仮にいくら説明を求めたところで、琢馬は何も言わないつもりだろう。 それがわかる程度には、ウェザーは琢馬と言う男を理解していた。 チラリと視線を外せば、傍らに立つ少年と眼があう。それを受け、ジョルノは落ち着いた口調でこう言った。 「ウェザー・リポート、僕は大丈夫です。それよりもエリザベスのことを……お願いします」 即答とはいかずにウェザーはしばらく考えに沈み……、そして小さくうなずいた。 ◆ 「なるほど」 「勿論、中には例外もありますが原則的には今の説明に従います。何か説明が欠けていたものはありますか」 「いや、大丈夫だ。完全に理解した」 そうですか。ジョルノはそう返し、一息ついた。 ずっと喋り通しで流石の彼もいささか疲れていた。傍らに置いたカバンからペットボトルを取り出し、一口口にする。 琢馬は眉間にしわを寄せた表情で、宙を見つめていた。いきなりのことに戸惑っているのだろうか。何か考えごとをしているようにも見える。 それも当然のことだろう。伝えるべき情報は山のようにあったのだから。 ウェザー・リポートとエリザベスが隣の部屋で待機する中、琢馬がジョルノに尋ねたのはスタンド能力に関してだった。 スタンドとは一体何なのか。スタンドとは一体どういったもので、それに対してどうすればいいのか。 琢馬は一度としてジョルノの説明を遮るようなことをしなかった。 彼の説明を一言も逃すまいと、いつも以上にその暗く尖った視線を少年に貼り付け、話に耳を澄ませていた。 話は十分とてかからなかった。 「一つだけ聞いていいですか?」 それ以上話すことはなかった。二人は気軽におしゃべりを楽しむような人物でもないし、それほど慣れ合った仲でもない。 どちらからともなく椅子から立ち上がる二人。琢馬は隣の部屋と続くドアへと向かっていた。 そんな彼を止めたのは、ジョルノの問いかけだった。後ろから青年を呼びとめるジョルノ・ジョバァーナ。 「何故僕だったのでしょうか……?  何故貴方はウェザー・リポートでなく、僕にこんな説明をさせたのですか?」 振り返った琢馬は訝しげに少年を見た。問いかけるような視線にジョルノは再び口を開く。 「もしかしたら僕は友好的な振りをしていただけかもしれない。  実は僕は殺し合いに乗った参加者で、二人きりになった貴方に襲いかかるつもりだったのかもしれない」 「……そうしたかったのか?」 まさか。琢馬の皮肉のような返事に、意図せずとも強い口調でそう言い返してしまう。 素直に質問に答えなかった自分の態度を反省したわけでもないが、琢馬が次に口を開いた時、些かその口調は柔らかくなっていた。 「確かにウェザー・リポートは信用できる。  四時間近くずっと一緒にいて、途中共闘らしき行為もした。  もしもアイツが俺を殺そうと思っていたなら百回は好機があっただろうし、アイツのことだ……ほんとにその気になったならとっくに行動していただろ。  そしてもしアイツがそうしていたならば……俺は為すすべもなくやられていた。間違いなく、な。 「…………」 「そう言う意味では、ジョルノ・ジョバァーナ、お前の指摘は正しい。  ここでお前と二人きりになるリスクと俺が得る情報のメリットを天秤にかければ、確かにその通りだ。  わざわざお前である必要は、まったくない。スタンドとやらもウェザーに聞けばいいだけの話だ」 「なら…………」 「……別に大した理由じゃないさ。単純にアンタと話して見たかっただけ、それだけだ」 少年は肩をすくめ、そうですか、とだけ返した。それ以外返す言葉を思いつかなかった。 「アンタは……」 ジョルノはドアノブにかけた手をはたと止め、琢馬を見る。琢馬の話はまだ終わっていなかった。 迷った末に、言葉が口から零れ落ちてしまった。思わず話しだしてしまって、そうした以上、話さずにはいられない。 そんな感じで琢馬は話を続けていた。 「真黒な太陽、みたいだな」 彼の眼を見つめる。至近距離で見ると琢馬の真っ暗な眼は更に黒く、底知れないもののように思えた。 「最初は眩しいと思ったんだ。けど違った。目を背けたくなったのは眩しいからじゃなくて、底が知れないからだ。見てると吸い込まれそうなんだ。  じっと好機を伺っているんじゃないか? 誰にも言わなかった……言えなかった野望を、長い間、胸に秘めていたんじゃないか?  能力があるくせに、大きな野望や目的を持っている。だからあえてその能力をひけらかさないでいるし、ひけらかす必要もないと思っている。  他人にどう思われてもいいという図太さと、他人を当てにせずとも生きていけるという自信もある。  一人でいることに慣れているし、別段それが可笑しいとも思っていない。なんせ野望のためなんだ、その野望のためならば孤独だって恐れていない。  重要なのは大胆な行動力と冷静な観察力。時がきたならアンタは計画的に冷静にことを運ぶだろう。  そう、アンタはまるで、まるで…………」 そこまで話して、彼は続きをのみこんだ。 喋りすぎたと気がついた青年は、きまりの悪さに下を向き、ごまかす。 そして、ぼそっと呟くように言葉を吐き、そうして彼は話を終わらせた。 ジョルノの視線が痛いほど彼に突き刺さっているのはわかったが、直接目を見る気にはどうしてもなれなかった。 「忘れてくれ。人間観察の自慢をしたくなっただけだ」 振り絞るように、そう言った。 ◆ 「復讐、か」 「可能性は高いと思います。結局全部話してくれたわけでもないし、僕の推測でしかありません。  が……少なくとも、僕にはそう思えました」 ボールペンが机をコツコツと叩く音だけが長い間部屋を支配していた。 エアコンのサーモスタットがカタンと音をたてる。互いの息遣いさえ聞こえてきそうなほどに、とても静かだった。 ウェザー・リポートは頷いてボールペンをポケットにしまい、指の先で瞼をこすった。 ひどく眠たげな表情だったが、口調はしっかりとしていた。 「……ここに来るまでに、俺たちは一人の男と戦った。相手もスタンド使いだった」 「琢馬も同じような事を言っていました」 彼は話が聞こえているのか、話を聞いていないのか。 曖昧な表情のままでウェザーは頷く。 そして天井を見上げ、同じ口調で話を続けた。 「男は……、いや……老人と呼んだほうがいいかもしれないな。  老人は戦争が原因で妹を亡くした。別に彼のせいだったわけじゃない。極論を言えば戦争が彼女を殺したんだ。  だが老人はそう思わなかった。彼は妹の死を全て背負いこみ、それ故にそれ以降、彼の人生は空虚で空っぽなものだったと言っていた。 「…………」 「これは俺の勝手な憶測だが、彼は妹が死んだ瞬間に死んだのだと思う。肉体的にという意味でなく、彼自身の精神が、その瞬間に死んだんだ」 ウェザー・リポート、貴方は。そう口にして、ジョルノはそこで言葉を止める。 彼が信用できる人物だとはわかっていた。直感にも近い感覚だったがそれが少年にはわかっていたし、安心感のような好意も抱いていた。 だからこそ、その問いを尋ねてよいものかどうか、判断がつかなかった。 奇妙な空白の中、ウェザーが控え目にジョルノを見つめていた。続きを促すような視線だった。 「……怖いんですか、記憶を取り戻すことが」 ウェザーは答えなかった。視線を繋げたまま少しの間考え、そして口をひらく。 「自信がないんだ」 どこか頼り気ない、か細さを感じさせる声だ。 その言葉を最後に彼の姿が唐突に消えてしまうのではないだろうかと心配になるぐらいだった。 儚げな横顔を浮かべ、男はポツリとそうこぼす。 「老人は……琢馬は、そしてエリザベスは、もしかしたら……“俺”なのかもしれない。俺は彼らと同じなのかもしれない。そう思ったんだ。  俺も記憶があったころはああだったのかもしれない。復讐に燃え、怒りに身体を震わせ、何かもがどうでもいいとそんな風に思っていたのかもしれない。 「…………」  「あるい俺は同じじゃないことに脅えているのかもしれない。  記憶を取り戻した途端に、何も成し遂げていない、当たり前の日常を満喫していた自分自身に呆然としてしまうかもしれない」 「老人の人生を空虚といった貴方が、日常を虚しいものだと言うんですか……?」 ウェザーは返事を返さず、黙って窓の外へと視線を逸らした。 つられてジョルノも外を覗き見る。これと言って目を引く様なものもなく、何かが特別変わったわけでもなかった。 二人は黙ったままいくらか時が経ち……長い沈黙の後、ウェザーがポツリとつぶやいた。 誰にあてたでもなく、返事かどうかもわからないぐらいの小さな声で、彼はその言葉を口にした。 わからない。わかってることは、取り戻すかもわからない記憶をどう扱っていいかわからないってことだけだ、と。 今度の沈黙はそれほど長く続かなかった。 振り向くと同時にウェザー・リポートはジョルノ、と少年の名前を呼び、視線を合わせる。 途端、思わずため息が零れ落ちかけた。 初めてあった時からどこか“彼女”と同じ雰囲気をしているとは気づいていた。 どこが似ているかはわからなかったが、なんとなく感覚的に似ていると思っていたのだ。 改めて目を合わせ、合点がつく。 少年の希望に満ちた眼が、徐倫と同じなんだ。 どんな絶望にだって負けやしない。何度絶望しても諦めない。そう思わせてくれる力強い眼をジョルノは、そして徐倫は持っていた。 その眼で見透かすように、自分を見つめてきた。 だからだろう、こんなにもウェザーは自然に話してしまう。彼の前で、自分の気持ちを、正直に吐露してしまう。 ウェザー・リポートはゆっくりと、言う。 「君はどう思う? 復讐という行為は吐き気を催す邪悪なのか?  仇を討つために生きるということは、罰せられるべき悪徳なのか?  琢馬は、エリザベスは……許されてはいけない、罪を背負うべき人間なのか……?」 ブーン……と低い機関音を響かせ、部屋の隅に置かれた冷蔵庫が再び動きだした。 ジョルノは、何も言わなかった。 “両親”を恨んだことがない。そうはっきり言い切れるかと問われれば、ジョルノは迷ってしまうだろう。 暗闇に震えていたころの記憶が思い浮かぶ。養父の醜く歪んだ顔。無関心な母。そして、財布の中の写真に写る一人の男性。 父が母を捨てなかったならば。母が自分をちゃんと一人の人間として見つめてくれたならば。養父がまともな人間であったならば。 だれにも打ち明けたことのない、複雑な感情は自分の中で確かに渦巻いている。 傷跡は消えたわけではない。何重にも積み重なった記憶が蓋となり、うまく誤魔化せるようになっただけのことだ。 年を取るということは或いはそういうことなのかもしれない。 忘れるわけでもなく、癒えたわけでもない傷から目を背ける賢さ。治るという行為そのものを諦めてしまう行為。 考えに沈んでいた少年はそっと瞳を開いた。それでも彼の眼から気高い黄金の輝きが消えることはない。 僕にもわかりませんよ、そう彼は返した。ウェザーもそうかと呟いた。 彼の横顔はどこかがっかりしているようにも、ほっとしているようにもジョルノには見えた。 その寂しげな横顔を見て、ジョルノは一人の男のことを思い出す。 ブチャラティ、貴方なら何と答えましたか。胸中の彼にそう問いかけた。 少年と男は人気の失せたカフェで、それぞれの想いを胸にいただいたまま朝を迎えていた。 軽い朝食でもどうですか。そうウェザーに声をかけると、彼は薄い頬笑みで答えてくれた。つられて少年も笑う。 少しだけ空気が和らぐ。ミスタとの約束の時刻を過ぎていることには気がついていたが、ジョルノはカフェを離れようとは思わなかった。 【B-2 ダービーズ・カフェ店内 / 1日目 午前】   【ジョルノ・ジョバァーナ】 [スタンド]:『ゴールド・エクスペリエンス』 [時間軸]:JC63巻ラスト、第五部終了直後 [状態]:健康 [装備]:閃光弾×1 [道具]:基本支給品一式 (食料1、水ボトル半分消費) [思考・状況] 基本的思考:主催者を打倒し『夢』を叶える。 1.ミスタたちとの合流。もう少しダービーズ・カフェで待つ。 2.放送、及び名簿などからの情報を整理したい。 [参考] ※時間軸の違いに気付きましたが、まだ誰にも話していません。 ※ミキタカの知り合いについて名前、容姿、スタンド能力を聞きました。 【ウェザー・リポート】 [スタンド]:『ウェザー・リポート』 [時間軸]:ヴェルサスに記憶DISCを挿入される直前。 [状態]:健康、ナイーブ [装備]:スージQの傘、エイジャの赤石 [道具]: 基本支給品×2(食料1、水ボトル半分消費)、不明支給品1~2(確認済み/ブラックモア) [思考・状況] 基本行動方針:主催者と仲間を殺したものは許さない。 1.ジョルノと共に行動。とりあえずはカフェで待機。 ◆ 母を重ねていたわけではない。 「あッ」 間の抜けたエリザベスの声に続き、彼女の体が傾く。先と同じようなへまはしない。 躊躇わず腕を伸ばし、琢馬は彼女の体ごと抱きかかえる。 腕に感じる彼女の柔らかさ。そして心配したくなるほどの身軽な体。 琢馬は驚いた。一体この細い体のどこにそれだけのパワーが。そう思えてしまうほどに、彼女は華奢で、その体は軽かった。 「……気をつけないと」 エリザベスが一人で立てるのを確認した後、青年はボソリと言った。 非難しているわけでもないのに、自分の口調がきつくなっているように思えて琢馬はらしくもなく動揺した。 表情の揺れを誤魔化すように、エリザベスの手から飛び出た介助用の杖を取りに行く。 押し付ける様に彼女の手にその杖を握らせると、二人はまた歩き出す。一歩、また一歩。 悲劇的とも言えそうなほど、のんびりとしたスピードだった。 だが琢馬は気にしなかった。それどころか腕を差し出し、こっちのほうが安定する、と言い彼女に掴ませた。 二人三脚のような、歪な影が街を進んでいた。二人の間に会話はなく、沈黙の街が二人を見つめていた。 躊躇いはなかった。罪の意識すら感じなかった。琢馬はすでに心に決めていたのだ。 それでも感じる微かな胸の痛み。それは自分の中に残った僅かな良心か、兄としての責任感か、或いは子供としての最後の甘えか。 頭を振って姿勢をただす。だからこそだ。ならばこそ、やらなければいけないんだ。 全部投げ捨てる、たったいま決めたことじゃないか。今度こそ決断したはずじゃないか。 『これからは、自分のためだけに――― 幸せに―――あなた自身の未来へ――― イキナサイ』 今さら歩みを止めるわけにはいかなかった。全てを忘れて新しい道を進むことはできやしない。 “忘れる”事は復讐を忘れることだ。復讐を忘れるとは全てを失うのと一緒だ。 ひとりの男を絶望に突き落とすために、自分は生きてきた。 琢馬にとって復讐とは生まれた時からずっと傍にあり続けたもの。復讐とともに生まれと言っても過言でない。 自分にはそれしかなかったのだから。それしかしらず、それだけのためにこれまで生きてきたのだ。 『頼む――――ッ! 琢馬――――ッ!! 千帆を――――ッ!! 頼む――――ッ!!』 積み上げてきた記憶の数々は、もはやガラクタ以下の紙屑同然。 何の意味も持たないゴミの山。例え綺麗に整頓され、本棚に収まっていようとも。それはもはや必要ないもの。 どれだけびっしり文字で埋まっていようと、真っ白と一緒。もう無駄なものとなってしまったんだ。 復讐は達成された。或いは達成されてないのかもしれない。そして、これから達成しようにも、それはできなくなった。 琢馬の気持ちも、理想も、計画も。全て踏みにじり、現実は彼を追いたてた。 後に残されたのは蓮見琢馬と言う空っぽの人間。 ちょうど一個だけ余ってしまったパズルピースのようだ。まるで復讐の想いが形となり、『結果』だけが残ってしまった、双葉千帆かのように。 そう、蓮見琢馬は似ている。蓮見琢馬は、“双葉千帆”に“似ている”。 母は満足して逝った。復讐を果たすべき父はもういない。 二つの願いを託され、どちらに動こうともその願いは彼をがんじがらめに縛りつける。 自由に生きたいともがけば母の影が。元の生活を求め、平穏を辿れば父の怨念が。 「だからこそ、俺は……」 ―――これは「呪い」を解く物語だ。そして、蓮見琢馬が歩き出す物語。 太陽が昇りかける朝、『蓮見琢馬』は人を殺した。 精一杯の力を振り絞って、つい先まで隣を歩いていた女性の首を絞めあげた。 「か……はッ、あ」 細腕の下で震える喉。掌に感じる死の感触を、きっと自分は死んでも忘れない。 カランと音をたて介助用の杖が宙を舞った。弱弱しく抵抗する女性。更に力を込め、まるで首の骨を折らんばかりにねじあげる。 何故だか母を刺し貫いた時の感触が思い浮かんだ。記憶の波から漏れだした想いが腕を震わせ、視界をにじませた。 そうしてゆっくりと、女性のもがく力は弱くなり、皮膚越しに彼女が冷たくなっていくことを琢馬は感じ取った。 アスファルトの上に横たわる彼女を見降ろした。何も考えられなかった。達成感も沸かなかったし、高揚感もなかった。 わかっているのは踏み出した一歩の軽さ。途方もなく、終わりの見えない道を、自分が歩き出したという感覚だけだった。 太陽は全く同じ強さで照り続けている。見慣れない街並み立っていると、現実感を失い、自分の体がまるで消え去ってしまいそうに思えた。 窓に反射した日光が思いのほか強く、少年は顔をしかめた。白い肌を焦がす、ジリジリという音が聞こえてくるかのようだ。 琢馬は最後に彼女に、さようなら、と一言言おうとして、その言葉を途中で飲み込む。 何も見てはいない女性の瞳を覗きこみ、そしてその中に写った自分の顔を見る。能面みたいに無表情だった。 もうこの場ですべきことは何も残っていなかった。 エリザベスのデイパックを拾い上げ、彼女に渡した杖を手に持つ。握り手はまだ温かい。 千帆を探そう。まるで子供のころの思い出を唐突に思いだしたかのように、そう思った。 それは兄として? 恋人として? “道具”を利用する人間として? わからない。だが彼女に会わないといけない。自分の始まりは彼女と共にあった。ならば終わりも、新たな始まりも彼女と共にあらなければいけない。 ―――これは「呪い」を解く物語。そして、蓮見琢馬が歩き出す物語。 蓮見琢馬の姿は街並みの影に、ゆっくりと消えていった。 &color(red){【リサリサ 死亡】} &color(red){【残り 72人】} 【C-3 中央/ 1日目 午前】   【蓮見琢馬】 [スタンド]:『記憶を本に記録するスタンド能力』 [時間軸]:千帆の書いた小説を図書館で読んでいた途中。 [状態]:健康 [装備]:双葉家の包丁、承太郎のタバコ(17/20)&ライター、SPWの杖 [道具]: 基本支給品×2(食料1、水ボトル半分消費)、不明支給品2~3(リサリサ1/照彦1or2:確認済み) [思考・状況] 基本行動方針:他人に頼ることなく生き残る。千帆に会って、『決着』をつける。 0.??? 1.双葉千帆を探す。 2.千帆に対する感情は複雑だが、誰かに殺されることは望まない。 どのように決着付けるかは、千帆に会ってから考える。 [参考] ※参戦時期の関係上、琢馬のスタンドには未だ名前がありません。 ※琢馬はホール内で岸辺露伴、トニオ・トラサルディー、虹村形兆、ウィルソン・フィリップスの顔を確認しました。 ※また、その他の名前を知らない周囲の人物の顔も全て記憶しているため、出会ったら思い出すと思われます。 ※また杜王町に滞在したことがある者や著名人ならば、直接接触したことが無くとも琢馬が知っている可能性はあります。 ※蓮見琢馬の支給品は スピードワゴンの杖@二部 だけでした。 *投下順で読む [[前へ>境遇]] [[戻る>本編 第2回放送まで]] [[次へ>勝者]] *時系列順で読む [[前へ>理由]] [[戻る>本編 第2回放送まで(時系列順)]] [[次へ>スター・プラチナは笑わない]] *キャラを追って読む |前話|登場キャラクター|次話| |108:[[メメント]]|[[リサリサ]]|&color(red){GAME OVER}| |108:[[メメント]]|[[ジョルノ・ジョバァーナ]]|135:[[Catch The Rainbow......]]| |108:[[メメント]]|[[ウェザー・リポート]]|135:[[Catch The Rainbow......]]| |108:[[メメント]]|[[蓮見琢馬]]|144:[[相性]]|
「邪魔しないでッ」 撥ねつけるような言葉に続いて、乾いた音が部屋に響いた。 [[リサリサ]]の傍に屈んでいたジョルノが後ずさる。彼の右の手の甲には赤いみみずばれの様な跡がついていた。 女性が彼を振り払おうとした際、反射的にはたいてしまったのだろう。 少年は立ちあがると黙ってはたかれた場所を撫でた。奇妙な痺れた感覚が、そこには残っていた。 「復讐……ッ! 私には、今ここで倒れてはならない理由があるッ!」 エリザベスの精神力は凄まじいものだった。 今の今まで虫の息だったはずだ。頭蓋骨を割られ、片腕はもげ、滝のように血を流したはずだというのに。 それでも彼女は動こうとした。限界を迎えた肉体に鞭打ち、エリザベスはよろけながらも歩みを止めなかった。 一歩、また一歩。順調に踏み出しかけた彼女が、次の瞬間、大きく傾いた。 派手な音をたて、カフェの椅子がなぎ倒される。エリザベスが倒れた。慌てて男たちは彼女の元に駆け寄り、そして言葉を失う。 彼女はそれでも進もうという意志を見せていた。 四つん這いであろうが、足が動かまいが……ただ進むのみ。這ってでも前進する。 そのあまりの迫力を目の前にして、ジョルノは何も言えなかった。 少年の伸ばしかけた腕が引っ込む。 脳裏にちらつく先の光景。喉元へ突きつけられた、尖った黒い切っ先。 それは本能的なためらいだった。 彼女に手を貸すことが正しいだとか、助け起こすべきだとか、怪我人に無理をさせてはいけないだとか。 そんなものを超越した場所にある、踏み入れてはいけない、未知のものへの恐れ。 かわりに手を差し出たのは琢馬だった。 無言で傍らに膝をつくと、彼は抱きかかえる様にエリザベスをその場に立たせた。 血だらけの服装だったが、黒の服に目立つ埃をはたき落とし、零れ落ちたタバコとライターを拾いあげてやる。 何の感情も見せず、淡々としたものだった。当たり前のように琢馬はそうして、そうすることに躊躇いもしなかった。 立ちあがったエリザベスはすぐに歩き出す。 手を貸してもらった琢馬を見やることも、感謝の言葉を述べるようなこともしなかった。そうする余裕も必要もないと思っているかのようだ。 進んでは崩れ落ちかけ、また歩いては立ち止まる。荒い呼吸とうまく動かない足に苛立っている。 それでも、彼女は進むことを辞めなかった。 そんな彼女を、琢馬は黙ってじっとみつめていた。 「……邪魔をしないでと言ったはずよッ!」 数分が経ち、何度目になるかわからない転倒。女性の体がくしゃりと折れ、カフェの床に横たわった。 何も言わず助けようとした青年に向かい、彼女はそう叫んだ。 琢馬は退かなかった。それでも彼はエリザベスが立ち上がるのを助けようと、その場にしゃがみ込む。 そうして琢馬は手を貸して……次の瞬間、エリザベスが立ちあがるのと同時に、彼自身の体がよろめいた。 琢馬がバランスを失い、倒れる。今度は青年が机と椅子をなぎ倒し、彼はその場で尻もちをついた。 別にエリザベスにそうするつもりがあったわけではない。強く振り払ったつもりもないし、傷つけるつもりなんて一切なかった。 人二人分の体重は琢馬が想像した以上に負担だっただけのこと。それは単純なアクシデントだった。 「琢馬……!」 「大丈夫ですか?」 ウェザーとジョルノが心配そうに駆け寄った。エリザベスは一歩踏み出して、その心配そうな声に立ち止まり、振り返る。 大きな怪我はなかった。幸か不幸か、額の皮膚の薄い部分が切れ、血がほんの少しだけ流れているだけだ。 たいしたことないと琢馬は手を挙げ、ポケットからハンカチを取り出すと傷口をそれで抑えた。 フローリングの床に座る青年。立ちつくす二人の男。少し離れて立つ女性。 なんとなく、気まずい沈黙が辺りを漂った。 十数秒そのまま時が流れ、そして青年は立ち上がる。 琢馬の動きに迷いはなかった。座っている間にそうしようと決めていたかのように、彼は迷いなく女性の元へと近づいていった。 男たちには止める理由もなく、暇もなく。三人が黙って見つめる中、琢馬はエリザベスの傍で立ち止まると口を開いた。 「俺は―――」 琢馬はエリザベスに真っすぐ視線を向けて言う。 二人の距離は三メートルほど。琢馬は女性の顔をじっと見つめ、エリザベスも彼を見返した。 「別にアンタの復讐を止めようと思っていないし、アンタがどこに行って、何をしようたって構わないと思ってる。  アンタがどんな人間かも知らなければ、何が起きたかもわからない。口をはさむ権利なんかないとはわかっているつもりだ。  ただ気になっただけだ。お節介とはわかってるがアンタがあまりに無計画そうなんで、つい横から口を挟みたくなった」 「…………」 「アンタ、あてはあるのか? 空軍司令、ディオの部下。そう言ったな。  そいつの容姿は? 勤務場所は? それが変わってるかもしれないとは考えないのか?  今アンタはここがどこで、どんな状況かわかってて、それを口にしてるのか? 本気で、混じり気なしに復讐を誓ってるのか?  もしそうだとしたら、まず最初に現状を把握しようと何故思わない。自分がどれだけ軽率で、浅はかだってことに気がつかない。  そんなんで本当に、復讐が果たされると……アンタはそう、思ってるのか?」 復讐という言葉を口にした途端、部屋の空気がピシリと震えた。 怒りに顔を歪ませるエリザベス。反射的に口を開きかけ、そして琢馬の真っ暗な目に睨まれ、言葉に詰まる。 彼の瞳は深く、淀んでいた。墨を流し込んだような真黒な瞳。まるで吸い込まれていくかのように底無しの瞳だ。 それでも彼女は何よとばかりに、強い口調で言い返す。 「貴方には関係のないことよッ」 琢馬も即座に言葉を返した。 「いいや、あるね。アンタはもう俺を突き飛ばしたり、邪険に扱ったりしないはずだ」 そして続ける。 「なぜなら俺はアンタの復讐に手を貸そうと思っているからだ」 先ほどとはまた違った緊張感と沈黙がカフェの中を満たした。 ジョルノが眉をひそめる。[[ウェザー・リポート]]が何か言いたげに口を開きかけ……、琢馬は片手をあげてそれを黙らせた。 彼は引き続いて、エリザベスに話しかける。 「エリザベス……って言ったな。俺があんたの復讐を手伝ってやる。  俺があんたの手となり足となり脳となり……必ずや、復讐を成し遂げさせてやる」 どうせ一人じゃ満足にも動けないんだろ。 彼女が目覚めてからずっと引きずっていた足を指さし、青年は言葉を締めくくった。 あまりに当然かのように言うので、しばらくの間、誰も口を開くことができなかった。 それぞれがそれぞれで考えることが多すぎて、そして疑うことが多すぎて。 誰が何を信じて、話がどこを目指そうとしているのか。きっと琢馬以外、誰もわからなかったに違いない。 「ウェザー・リポート、すまないがジョルノ・ジョバァ―ナと二人きりで話がしたい」 静寂を破って、琢馬がそう言った。 そしてウェザーが反論する暇もなく、またそうするだろうと見越して、彼は畳みかける様に言葉を重ねた。 琢馬にしては珍しい、早口の口調だった。 「『オレにはお前を助けながら歩き回る積もりも余裕もない。  お前が自分の能力を絶対に明かさないというなら、お前に背中を見せる気もない』……だろ?  ならば俺はここを出ていく。でていくならば、お前らが言うスタンドとやらの能力を明かす必要もない。  違うか?」 ウェザーは眼を細め、青年の顔を見た。警戒心に疑心。彼には琢馬が何を考えているのかわからなかった。 わからなかったが……今仮にいくら説明を求めたところで、琢馬は何も言わないつもりだろう。 それがわかる程度には、ウェザーは琢馬と言う男を理解していた。 チラリと視線を外せば、傍らに立つ少年と眼があう。それを受け、ジョルノは落ち着いた口調でこう言った。 「ウェザー・リポート、僕は大丈夫です。それよりもエリザベスのことを……お願いします」 即答とはいかずにウェザーはしばらく考えに沈み……、そして小さくうなずいた。 ◆ 「なるほど」 「勿論、中には例外もありますが原則的には今の説明に従います。何か説明が欠けていたものはありますか」 「いや、大丈夫だ。完全に理解した」 そうですか。ジョルノはそう返し、一息ついた。 ずっと喋り通しで流石の彼もいささか疲れていた。傍らに置いたカバンからペットボトルを取り出し、一口口にする。 琢馬は眉間にしわを寄せた表情で、宙を見つめていた。いきなりのことに戸惑っているのだろうか。何か考えごとをしているようにも見える。 それも当然のことだろう。伝えるべき情報は山のようにあったのだから。 ウェザー・リポートとエリザベスが隣の部屋で待機する中、琢馬がジョルノに尋ねたのはスタンド能力に関してだった。 スタンドとは一体何なのか。スタンドとは一体どういったもので、それに対してどうすればいいのか。 琢馬は一度としてジョルノの説明を遮るようなことをしなかった。 彼の説明を一言も逃すまいと、いつも以上にその暗く尖った視線を少年に貼り付け、話に耳を澄ませていた。 話は十分とてかからなかった。 「一つだけ聞いていいですか?」 それ以上話すことはなかった。二人は気軽におしゃべりを楽しむような人物でもないし、それほど慣れ合った仲でもない。 どちらからともなく椅子から立ち上がる二人。琢馬は隣の部屋と続くドアへと向かっていた。 そんな彼を止めたのは、ジョルノの問いかけだった。後ろから青年を呼びとめる[[ジョルノ・ジョバァーナ]]。 「何故僕だったのでしょうか……?  何故貴方はウェザー・リポートでなく、僕にこんな説明をさせたのですか?」 振り返った琢馬は訝しげに少年を見た。問いかけるような視線にジョルノは再び口を開く。 「もしかしたら僕は友好的な振りをしていただけかもしれない。  実は僕は殺し合いに乗った参加者で、二人きりになった貴方に襲いかかるつもりだったのかもしれない」 「……そうしたかったのか?」 まさか。琢馬の皮肉のような返事に、意図せずとも強い口調でそう言い返してしまう。 素直に質問に答えなかった自分の態度を反省したわけでもないが、琢馬が次に口を開いた時、些かその口調は柔らかくなっていた。 「確かにウェザー・リポートは信用できる。  四時間近くずっと一緒にいて、途中共闘らしき行為もした。  もしもアイツが俺を殺そうと思っていたなら百回は好機があっただろうし、アイツのことだ……ほんとにその気になったならとっくに行動していただろ。  そしてもしアイツがそうしていたならば……俺は為すすべもなくやられていた。間違いなく、な。 「…………」 「そう言う意味では、ジョルノ・ジョバァーナ、お前の指摘は正しい。  ここでお前と二人きりになるリスクと俺が得る情報のメリットを天秤にかければ、確かにその通りだ。  わざわざお前である必要は、まったくない。スタンドとやらもウェザーに聞けばいいだけの話だ」 「なら…………」 「……別に大した理由じゃないさ。単純にアンタと話して見たかっただけ、それだけだ」 少年は肩をすくめ、そうですか、とだけ返した。それ以外返す言葉を思いつかなかった。 「アンタは……」 ジョルノはドアノブにかけた手をはたと止め、琢馬を見る。琢馬の話はまだ終わっていなかった。 迷った末に、言葉が口から零れ落ちてしまった。思わず話しだしてしまって、そうした以上、話さずにはいられない。 そんな感じで琢馬は話を続けていた。 「真黒な太陽、みたいだな」 彼の眼を見つめる。至近距離で見ると琢馬の真っ暗な眼は更に黒く、底知れないもののように思えた。 「最初は眩しいと思ったんだ。けど違った。目を背けたくなったのは眩しいからじゃなくて、底が知れないからだ。見てると吸い込まれそうなんだ。  じっと好機を伺っているんじゃないか? 誰にも言わなかった……言えなかった野望を、長い間、胸に秘めていたんじゃないか?  能力があるくせに、大きな野望や目的を持っている。だからあえてその能力をひけらかさないでいるし、ひけらかす必要もないと思っている。  他人にどう思われてもいいという図太さと、他人を当てにせずとも生きていけるという自信もある。  一人でいることに慣れているし、別段それが可笑しいとも思っていない。なんせ野望のためなんだ、その野望のためならば孤独だって恐れていない。  重要なのは大胆な行動力と冷静な観察力。時がきたならアンタは計画的に冷静にことを運ぶだろう。  そう、アンタはまるで、まるで…………」 そこまで話して、彼は続きをのみこんだ。 喋りすぎたと気がついた青年は、きまりの悪さに下を向き、ごまかす。 そして、ぼそっと呟くように言葉を吐き、そうして彼は話を終わらせた。 ジョルノの視線が痛いほど彼に突き刺さっているのはわかったが、直接目を見る気にはどうしてもなれなかった。 「忘れてくれ。人間観察の自慢をしたくなっただけだ」 振り絞るように、そう言った。 ◆ 「復讐、か」 「可能性は高いと思います。結局全部話してくれたわけでもないし、僕の推測でしかありません。  が……少なくとも、僕にはそう思えました」 ボールペンが机をコツコツと叩く音だけが長い間部屋を支配していた。 エアコンのサーモスタットがカタンと音をたてる。互いの息遣いさえ聞こえてきそうなほどに、とても静かだった。 ウェザー・リポートは頷いてボールペンをポケットにしまい、指の先で瞼をこすった。 ひどく眠たげな表情だったが、口調はしっかりとしていた。 「……ここに来るまでに、俺たちは一人の男と戦った。相手もスタンド使いだった」 「琢馬も同じような事を言っていました」 彼は話が聞こえているのか、話を聞いていないのか。 曖昧な表情のままでウェザーは頷く。 そして天井を見上げ、同じ口調で話を続けた。 「男は……、いや……老人と呼んだほうがいいかもしれないな。  老人は戦争が原因で妹を亡くした。別に彼のせいだったわけじゃない。極論を言えば戦争が彼女を殺したんだ。  だが老人はそう思わなかった。彼は妹の死を全て背負いこみ、それ故にそれ以降、彼の人生は空虚で空っぽなものだったと言っていた。 「…………」 「これは俺の勝手な憶測だが、彼は妹が死んだ瞬間に死んだのだと思う。肉体的にという意味でなく、彼自身の精神が、その瞬間に死んだんだ」 ウェザー・リポート、貴方は。そう口にして、ジョルノはそこで言葉を止める。 彼が信用できる人物だとはわかっていた。直感にも近い感覚だったがそれが少年にはわかっていたし、安心感のような好意も抱いていた。 だからこそ、その問いを尋ねてよいものかどうか、判断がつかなかった。 奇妙な空白の中、ウェザーが控え目にジョルノを見つめていた。続きを促すような視線だった。 「……怖いんですか、記憶を取り戻すことが」 ウェザーは答えなかった。視線を繋げたまま少しの間考え、そして口をひらく。 「自信がないんだ」 どこか頼り気ない、か細さを感じさせる声だ。 その言葉を最後に彼の姿が唐突に消えてしまうのではないだろうかと心配になるぐらいだった。 儚げな横顔を浮かべ、男はポツリとそうこぼす。 「老人は……琢馬は、そしてエリザベスは、もしかしたら……“俺”なのかもしれない。俺は彼らと同じなのかもしれない。そう思ったんだ。  俺も記憶があったころはああだったのかもしれない。復讐に燃え、怒りに身体を震わせ、何かもがどうでもいいとそんな風に思っていたのかもしれない。 「…………」  「あるい俺は同じじゃないことに脅えているのかもしれない。  記憶を取り戻した途端に、何も成し遂げていない、当たり前の日常を満喫していた自分自身に呆然としてしまうかもしれない」 「老人の人生を空虚といった貴方が、日常を虚しいものだと言うんですか……?」 ウェザーは返事を返さず、黙って窓の外へと視線を逸らした。 つられてジョルノも外を覗き見る。これと言って目を引く様なものもなく、何かが特別変わったわけでもなかった。 二人は黙ったままいくらか時が経ち……長い沈黙の後、ウェザーがポツリとつぶやいた。 誰にあてたでもなく、返事かどうかもわからないぐらいの小さな声で、彼はその言葉を口にした。 わからない。わかってることは、取り戻すかもわからない記憶をどう扱っていいかわからないってことだけだ、と。 今度の沈黙はそれほど長く続かなかった。 振り向くと同時にウェザー・リポートはジョルノ、と少年の名前を呼び、視線を合わせる。 途端、思わずため息が零れ落ちかけた。 初めてあった時からどこか“彼女”と同じ雰囲気をしているとは気づいていた。 どこが似ているかはわからなかったが、なんとなく感覚的に似ていると思っていたのだ。 改めて目を合わせ、合点がつく。 少年の希望に満ちた眼が、徐倫と同じなんだ。 どんな絶望にだって負けやしない。何度絶望しても諦めない。そう思わせてくれる力強い眼をジョルノは、そして徐倫は持っていた。 その眼で見透かすように、自分を見つめてきた。 だからだろう、こんなにもウェザーは自然に話してしまう。彼の前で、自分の気持ちを、正直に吐露してしまう。 ウェザー・リポートはゆっくりと、言う。 「君はどう思う? 復讐という行為は吐き気を催す邪悪なのか?  仇を討つために生きるということは、罰せられるべき悪徳なのか?  琢馬は、エリザベスは……許されてはいけない、罪を背負うべき人間なのか……?」 ブーン……と低い機関音を響かせ、部屋の隅に置かれた冷蔵庫が再び動きだした。 ジョルノは、何も言わなかった。 “両親”を恨んだことがない。そうはっきり言い切れるかと問われれば、ジョルノは迷ってしまうだろう。 暗闇に震えていたころの記憶が思い浮かぶ。養父の醜く歪んだ顔。無関心な母。そして、財布の中の写真に写る一人の男性。 父が母を捨てなかったならば。母が自分をちゃんと一人の人間として見つめてくれたならば。養父がまともな人間であったならば。 だれにも打ち明けたことのない、複雑な感情は自分の中で確かに渦巻いている。 傷跡は消えたわけではない。何重にも積み重なった記憶が蓋となり、うまく誤魔化せるようになっただけのことだ。 年を取るということは或いはそういうことなのかもしれない。 忘れるわけでもなく、癒えたわけでもない傷から目を背ける賢さ。治るという行為そのものを諦めてしまう行為。 考えに沈んでいた少年はそっと瞳を開いた。それでも彼の眼から気高い黄金の輝きが消えることはない。 僕にもわかりませんよ、そう彼は返した。ウェザーもそうかと呟いた。 彼の横顔はどこかがっかりしているようにも、ほっとしているようにもジョルノには見えた。 その寂しげな横顔を見て、ジョルノは一人の男のことを思い出す。 ブチャラティ、貴方なら何と答えましたか。胸中の彼にそう問いかけた。 少年と男は人気の失せたカフェで、それぞれの想いを胸にいただいたまま朝を迎えていた。 軽い朝食でもどうですか。そうウェザーに声をかけると、彼は薄い頬笑みで答えてくれた。つられて少年も笑う。 少しだけ空気が和らぐ。ミスタとの約束の時刻を過ぎていることには気がついていたが、ジョルノはカフェを離れようとは思わなかった。 【B-2 ダービーズ・カフェ店内 / 1日目 午前】   【ジョルノ・ジョバァーナ】 [スタンド]:『ゴールド・エクスペリエンス』 [時間軸]:JC63巻ラスト、第五部終了直後 [状態]:健康 [装備]:閃光弾×1 [道具]:[[基本支給品]]一式 (食料1、水ボトル半分消費) [思考・状況] 基本的思考:主催者を打倒し『夢』を叶える。 1.ミスタたちとの合流。もう少しダービーズ・カフェで待つ。 2.放送、及び名簿などからの情報を整理したい。 [参考] ※時間軸の違いに気付きましたが、まだ誰にも話していません。 ※ミキタカの知り合いについて名前、容姿、スタンド能力を聞きました。 【ウェザー・リポート】 [スタンド]:『ウェザー・リポート』 [時間軸]:ヴェルサスに記憶DISCを挿入される直前。 [状態]:健康、ナイーブ [装備]:スージQの傘、エイジャの赤石 [道具]: 基本支給品×2(食料1、水ボトル半分消費)、不明支給品1~2(確認済み/[[ブラックモア]]) [思考・状況] 基本行動方針:主催者と仲間を殺したものは許さない。 1.ジョルノと共に行動。とりあえずはカフェで待機。 ◆ 母を重ねていたわけではない。 「あッ」 間の抜けたエリザベスの声に続き、彼女の体が傾く。先と同じようなへまはしない。 躊躇わず腕を伸ばし、琢馬は彼女の体ごと抱きかかえる。 腕に感じる彼女の柔らかさ。そして心配したくなるほどの身軽な体。 琢馬は驚いた。一体この細い体のどこにそれだけのパワーが。そう思えてしまうほどに、彼女は華奢で、その体は軽かった。 「……気をつけないと」 エリザベスが一人で立てるのを確認した後、青年はボソリと言った。 非難しているわけでもないのに、自分の口調がきつくなっているように思えて琢馬はらしくもなく動揺した。 表情の揺れを誤魔化すように、エリザベスの手から飛び出た介助用の杖を取りに行く。 押し付ける様に彼女の手にその杖を握らせると、二人はまた歩き出す。一歩、また一歩。 悲劇的とも言えそうなほど、のんびりとしたスピードだった。 だが琢馬は気にしなかった。それどころか腕を差し出し、こっちのほうが安定する、と言い彼女に掴ませた。 二人三脚のような、歪な影が街を進んでいた。二人の間に会話はなく、沈黙の街が二人を見つめていた。 躊躇いはなかった。罪の意識すら感じなかった。琢馬はすでに心に決めていたのだ。 それでも感じる微かな胸の痛み。それは自分の中に残った僅かな良心か、兄としての責任感か、或いは子供としての最後の甘えか。 頭を振って姿勢をただす。だからこそだ。ならばこそ、やらなければいけないんだ。 全部投げ捨てる、たったいま決めたことじゃないか。今度こそ決断したはずじゃないか。 『これからは、自分のためだけに――― 幸せに―――あなた自身の未来へ――― イキナサイ』 今さら歩みを止めるわけにはいかなかった。全てを忘れて新しい道を進むことはできやしない。 “忘れる”事は復讐を忘れることだ。復讐を忘れるとは全てを失うのと一緒だ。 ひとりの男を絶望に突き落とすために、自分は生きてきた。 琢馬にとって復讐とは生まれた時からずっと傍にあり続けたもの。復讐とともに生まれと言っても過言でない。 自分にはそれしかなかったのだから。それしかしらず、それだけのためにこれまで生きてきたのだ。 『頼む――――ッ! 琢馬――――ッ!! 千帆を――――ッ!! 頼む――――ッ!!』 積み上げてきた記憶の数々は、もはやガラクタ以下の紙屑同然。 何の意味も持たないゴミの山。例え綺麗に整頓され、本棚に収まっていようとも。それはもはや必要ないもの。 どれだけびっしり文字で埋まっていようと、真っ白と一緒。もう無駄なものとなってしまったんだ。 復讐は達成された。或いは達成されてないのかもしれない。そして、これから達成しようにも、それはできなくなった。 琢馬の気持ちも、理想も、計画も。全て踏みにじり、現実は彼を追いたてた。 後に残されたのは[[蓮見琢馬]]と言う空っぽの人間。 ちょうど一個だけ余ってしまったパズルピースのようだ。まるで復讐の想いが形となり、『結果』だけが残ってしまった、[[双葉千帆]]かのように。 そう、蓮見琢馬は似ている。蓮見琢馬は、“双葉千帆”に“似ている”。 母は満足して逝った。復讐を果たすべき父はもういない。 二つの願いを託され、どちらに動こうともその願いは彼をがんじがらめに縛りつける。 自由に生きたいともがけば母の影が。元の生活を求め、平穏を辿れば父の怨念が。 「だからこそ、俺は……」 ―――これは「呪い」を解く物語だ。そして、蓮見琢馬が歩き出す物語。 太陽が昇りかける朝、『蓮見琢馬』は人を殺した。 精一杯の力を振り絞って、つい先まで隣を歩いていた女性の首を絞めあげた。 「か……はッ、あ」 細腕の下で震える喉。掌に感じる死の感触を、きっと自分は死んでも忘れない。 カランと音をたて介助用の杖が宙を舞った。弱弱しく抵抗する女性。更に力を込め、まるで首の骨を折らんばかりにねじあげる。 何故だか母を刺し貫いた時の感触が思い浮かんだ。記憶の波から漏れだした想いが腕を震わせ、視界をにじませた。 そうしてゆっくりと、女性のもがく力は弱くなり、皮膚越しに彼女が冷たくなっていくことを琢馬は感じ取った。 アスファルトの上に横たわる彼女を見降ろした。何も考えられなかった。達成感も沸かなかったし、高揚感もなかった。 わかっているのは踏み出した一歩の軽さ。途方もなく、終わりの見えない道を、自分が歩き出したという感覚だけだった。 太陽は全く同じ強さで照り続けている。見慣れない街並み立っていると、現実感を失い、自分の体がまるで消え去ってしまいそうに思えた。 窓に反射した日光が思いのほか強く、少年は顔をしかめた。白い肌を焦がす、ジリジリという音が聞こえてくるかのようだ。 琢馬は最後に彼女に、さようなら、と一言言おうとして、その言葉を途中で飲み込む。 何も見てはいない女性の瞳を覗きこみ、そしてその中に写った自分の顔を見る。能面みたいに無表情だった。 もうこの場ですべきことは何も残っていなかった。 エリザベスのデイパックを拾い上げ、彼女に渡した杖を手に持つ。握り手はまだ温かい。 千帆を探そう。まるで子供のころの思い出を唐突に思いだしたかのように、そう思った。 それは兄として? 恋人として? “道具”を利用する人間として? わからない。だが彼女に会わないといけない。自分の始まりは彼女と共にあった。ならば終わりも、新たな始まりも彼女と共にあらなければいけない。 ―――これは「呪い」を解く物語。そして、蓮見琢馬が歩き出す物語。 蓮見琢馬の姿は街並みの影に、ゆっくりと消えていった。 &color(red){【リサリサ 死亡】} &color(red){【残り 72人】} 【C-3 中央/ 1日目 午前】   【蓮見琢馬】 [スタンド]:『記憶を本に記録するスタンド能力』 [時間軸]:千帆の書いた小説を図書館で読んでいた途中。 [状態]:健康 [装備]:双葉家の包丁、承太郎のタバコ(17/20)&ライター、SPWの杖 [道具]: 基本支給品×2(食料1、水ボトル半分消費)、不明支給品2~3(リサリサ1/照彦1or2:確認済み) [思考・状況] 基本行動方針:他人に頼ることなく生き残る。千帆に会って、『決着』をつける。 0.??? 1.双葉千帆を探す。 2.千帆に対する感情は複雑だが、誰かに殺されることは望まない。 どのように決着付けるかは、千帆に会ってから考える。 [参考] ※参戦時期の関係上、琢馬のスタンドには未だ名前がありません。 ※琢馬はホール内で[[岸辺露伴]]、[[トニオ・トラサルディー]]、虹村形兆、[[ウィルソン・フィリップス]]の顔を確認しました。 ※また、その他の名前を知らない周囲の人物の顔も全て記憶しているため、出会ったら思い出すと思われます。 ※また杜王町に滞在したことがある者や著名人ならば、直接接触したことが無くとも琢馬が知っている可能性はあります。 ※蓮見琢馬の支給品は スピードワゴンの杖@二部 だけでした。 *投下順で読む [[前へ>境遇]] [[戻る>本編 第2回放送まで]] [[次へ>勝者]] *時系列順で読む [[前へ>理由]] [[戻る>本編 第2回放送まで(時系列順)]] [[次へ>スター・プラチナは笑わない]] *キャラを追って読む |前話|登場キャラクター|次話| |108:[[メメント]]|[[リサリサ]]|&color(red){GAME OVER}| |108:[[メメント]]|[[ジョルノ・ジョバァーナ]]|135:[[Catch The Rainbow......]]| |108:[[メメント]]|[[ウェザー・リポート]]|135:[[Catch The Rainbow......]]| |108:[[メメント]]|[[蓮見琢馬]]|144:[[相性]]|

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