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嫌な相手との同行時における処世 - (2014/05/02 (金) 00:09:07) の1つ前との変更点

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「なあオイ花京院さんよぉ、黙ってないでもうちっとなんか喋ったらどうだよ?」 「………………」 D-7北東の路上。 花京院典明は『人捜し』のため周囲を調べつつ、ただひたすらに北上を続けていた。 「ヒヒヒ、ひょっとしてどうせ歩くなら野郎二人よりも女と一緒の方が―――とか考えてるってか? なんならおれが叶えてやろうか」 「………なんのためにわたしがきさまと並んで歩いているのだと思っている」 「冗談だっての―――しっかしマジな話、ホントにこっち来てよかったのかねえ?」 「わたしは西から来たが奴はいなかった………きさまが隠れていた南東の方に来ていないのならば、北―――すなわちこちらの可能性が一番高い。  手がかりはこれきりだが、きさまにも他に当てなどないのだろう」 「っていわれてもねぇ~~~、わかんなかったら人に聞く………ってのはどうだ? 近くに誰かしらいねーのか?」 「先程の二人の他にはすぐ接触できそうな距離に参加者は見当たらない………きさまがその騒がしい口を閉じていてくれるならば、あるいは見つかるかもしれんがな」 (何処にいる………空条承太郎………) スタンドも駆使して周囲を探るが、目当ての人物―――空条承太郎の姿は何処にも確認できない。 せめて手がかりぐらいは残っていないかとも考えるが、痕跡は何一つ見つからなかった―――そもそもこの時点で承太郎は大規模な戦闘などに巻き込まれたりしていないのだから当然だが。 そして、歩き続ける花京院のすぐ近くで彼にひたすら話しかけているのは当の捜し人、空条承太郎―――無論本物ではなく、その正体はスタンドで『変装』している彼の同行者である。 ラバーソール―――本名かどうかはわからないがそう名乗った男は、同行者としては先程まで一緒にいた山岸由花子に勝るとも劣らない存在だった―――悪い意味で。 DIOに金で雇われているというこの男は欲望をそのまま形にしたような存在であり、彼の下品な口調は信用できそうな要素など欠片も見られないうえにいちいちこちらを苛立たせる。 さらにいえば彼はDIOに忠誠を誓っているわけではないため、今でさえいつ襲い掛かってきてもおかしくない人物であった。 それでも我慢して同行させているのは、彼のスタンド『黄の節制』の存在、これに利用価値を見出したからだ。 承太郎に変装した彼と並んで歩いていれば彼らの知り合い―――DIOの敵が間違いなく接触を試みてくるだろうから、そこで不意をつくのもたやすい。 さらにもうひとつ、聞き出した『黄の節制』の防御能力がいざ承太郎と戦う局面において役に立つと考えていたからである。 ―――忌々しいことだが未来において自分が敗れた可能性が高い以上、一人で挑むということはすなわち敗北を意味すると言っても過言ではない。 となれば承太郎と戦う前に戦力のひとつでも確保しておく必要がある………すぐに承太郎本人を追う以上、この時点で花京院の頭からラバーソールと別行動して効率的に敵を始末していく選択肢は自然と消滅し、彼との同行を選んだのだ。 だが花京院にとって、それらの利点と現在感じている不快感がつりあうかどうかはまた別の問題であった。 ―――そもそも何故彼らが承太郎ひとりに集中してその足取りを追っているのかというと、話は彼らが出会って情報交換を終えたころまで遡る。 ラバーソールとの情報交換………というよりお互いの一方的な話だったが、相手の話の中には有益な情報があった。 ―――すなわち、彼が殺し合いの開始後に空条承太郎と遭遇していたということ。 承太郎一人を始末したところでジョースター一族が根絶やしになるわけではない。 だが、少なくとも彼が死ねば子孫を残すことも、DIOと戦うことすらも無くなるため、何らかの形で未来の『運命』は変わると信じていた。 すぐにラバーソールの記憶を頼りに承太郎と遭遇したという場所を訪れてみたのだが……… 「………………いないな」 「ったりめーだろが。会ったっつってもまだ夜も明けてねーころだ、とっくにどっか行っちまったに決まってんだろーがよ、このタコッ!」 やはりとでもいうべきか、到着したときには時既に遅く目的の相手は同行者の言う通り、どこか遠くへ去ってしまった後のようであった。 花京院はどうにか承太郎の足取りをつかむべく、ひとまずスタンドで近くの参加者を捜索する。 「………やや東に星の模様の服の男、その少し南に原住民風の男………か」 「………ん? オイ、もうちょっと詳しく教えやがれ」 小さく呟いただけだったがラバーソールが耳聡く聞きつけ、何か思い当たることがありそうな顔で聞いてきた。 花京院が相手の容姿を告げると、頬を掻きつつ微妙そうな顔で言う。 「あー、あのガキにサンドマンのヤローか………そいつらは放っとこうぜ。さっき承太郎のフリしてダマしてやったからな………  あいつら恐ろしくせっかちな上に人の話ぜんぜん聞かねーから、むしろ本物の承太郎と会ったら問答無用で殺そうとするんじゃないかねえ、ヒヒヒ」 結局彼らはその二人との接触を避け、交換した情報のみから推測して北を目指すことを決め、歩き出した。 そして話は冒頭へと戻るのだが――― 「………なあオイ花京院さんよぉ、アンタ実際あの得体の知れない承太郎に勝てるのか? ンン~?」 「策はある」 現在の花京院はこの選択は失敗だったか、と思い始めていた。 ここまで承太郎の手がかりは全く得られていないどころか、油断も隙もない同行者が襲い掛かってくるのを警戒して自身のスタンドを近くに待機させているため広範囲の索敵も行えずにいた。 それに加えて、誰とも遭遇できずにラバーソールの好き勝手な無駄口や意味のない行動を一人で相手し続けることにもなり、次第にストレスもたまってくる。 いっそのこと襲い掛かってきてくれたほうが楽かもしれない………顔には出さずともそう思いつつ、花京院はひたすら歩を進めていった。 ―――その後も移動中の彼らが他の参加者と遭遇することが無かったのは単に巡り合わせが悪かったからか、はたまた誰かにとっての幸運、あるいは不幸だったのか。 ともあれ、そんな彼らにようやく変化が訪れたのはじきにC-8が禁止エリアになろうかという時刻のことであった。 # 「コイツどっかで見たことあるんだよな………確かDIO………様の部下の………なんて奴だったかな」 「………………」 C-7の路上に差し掛かったとき彼らの目に飛び込んできたのは首無しの死体―――いや、首はすぐそばに転がっていたため正確には『無い』わけではなかったが、ともかくそういう死体。 これまでスタンドによる索敵で死体を見かけたことはあったのだが、知った顔でない上に持ち物が奪い去られていることから無視してきた。 だがこの死体はデイパックを所持したままであるということ、そして進路上にありわざわざ避ける必要はないという二点の理由から、彼らはこの死体のある道へと足を踏み入れたのだった。 そこでラバーソールが首をひねりつつ生首のほうを見て「見覚えがある」と言い出して足を止め………しばらくして彼はどうにか記憶の中の回答に辿りつく。 「あーそうそうダンだな、スティーリー・ダンって奴だ。能力はしらねーが」 「………DIO様の部下」 それを聞いた花京院は死体を検分し始める。 ―――周りには争いの跡は全く無い………死体と血痕が無ければここで何かが起こったとは思えないほどだ。 ―――ダンのデイパックの中には、ほとんど………というよりひとり分にしては多すぎるほどの支給品が残っている―――基本支給品を除けば、使い道のなさそうな物ばかりだが。 ―――首と胴体はさほど離れていないところにあるにもかかわらず、彼の首輪はどこにも見あたらない。 ―――そして、首の切断面………『切断された』というよりは『ちぎりとられた』という表現のほうが適切といえそうな痕跡。 そこまで調べて胴体に軽く触れたところで花京院はある事実に気付き眉をひそめ………ラバーソールもそれを見て訝しむ。 「なんかあったか?」 「………まだ微かに温かい」 「………へぇ」 ふざけた言動が多いとはいえラバーソールも裏に生きる人間である。 その言葉の意味―――すなわち、犯人はまだ近くにいるかもしれないということを瞬時に理解し気を引き締める。 だが、花京院の様子から即座に襲撃を受ける様子はなさそうだと判断するとすぐにその表情は元に戻り………彼の注意は別のものへと移っていく。 その間、花京院は『犯人』について考えていた。 (不必要そうな道具は放置、その一方首輪は持っていったということは主催者に反抗する意思あり、さらに首の切断面からするとおそらく刃物は用いていない………  そして、この辺りにいた参加者でDIO様の部下を殺害しそうな人間を考えると最も有力なのは――――――やはり空条承太郎か) 実際のところ花京院の推測は的中だったのだが、彼本人はあくまで自身の持つ情報のみから導き出したものという認識のため確信までは持っていなかった。 ひとまずラバーソールの意見も聞いてみるかと顔を上げたところで、彼はダンの胴体に黄色いスライムが纏わりついている、という異様な光景を目にする。 当然、誰の仕業かは一目瞭然だったので花京院はスライムの主に向かって問いかけ、相手もそれに答えた。 「何をしている」 「見て理解しやがれってんだこの田ゴ作が、死体なんてもう用はねーだろ? おれがいただいて養分にしちまうんだよ、ドゥーユゥーアンダスタンドゥ?」 「………構わんが急げ、犯人を追う」 空条承太郎を相手どる以上、多少信用できないとはいえ戦力は多いに越したことはない。 となればラバーソールのこの行動は結果的にプラスへとつながるかもしれない………そう考えると花京院は捕食を許可し、無表情のまま再び歩き出そうとする。 一方、そんな彼の考えを欠片も理解していないラバーソールはどこまでも自分の意思で突っかかっていった。 「あん? てめーイカレてんのか? こんな奴の仇討ちなんてする必要ねーだろ」 「きさまの話が真実ならば、こいつを殺した奴はすなわち、DIO様の敵に位置するということだ」 「………ヒヒヒ、ご熱心なことで………まるで恋する少女みたいでッ!!?」 その言い回しが気に入らず―――『恋する少女』という部分で山岸由花子を思い出したからなのだが―――途端に不機嫌になった花京院はギロリと相手を睨みつける。 ラバーソールは一瞬たじろいだものの、それ以上の追求は無かったため言葉を続けた。 「ヒ、ヒヒヒ………で、花京院さんよぉ。その敵とやらを追うにはどっち行きゃあイイのかわかってんのかねぇ?」 ラバーソールからすれば何の気なしに出てきた軽口であったが、受けた花京院はその問題に改めて腕を組み考える。 (………そうだ、誰が犯人だとしても『どちらに向かった』のか………それがわからないことには―――) 「北か?西か? まさかそろそろ禁止エリアになる東に突っ込むなんてマヌケなことはしねーよなぁ?」 未だ話し続ける同行者から視線をはずすと花京院は地図を取り出し、しばらく眺めつつ考えを巡らす。 そのすぐ横のラバーソールは死体を食うことに夢中………というわけではなく、花京院をちらちらと横目で見ていた。 正直彼からすれば、まだ対策らしい対策も思いついていないのにあの得体の知れない承太郎と遭遇しかねない行動は避けたかったのだが……… (油断してる………わきゃねーよな。クソッ、『こいつ』さえ無けりゃ………) ダンの死体をスタンドで捕食する間、ラバーソールは先程花京院と出会って彼の話を聞いた直後のことを思い出していた……… # 「―――以上だ、きさまに心当たりのある人物はいるか?」 「いねぇーな………しっかしアンタ、マジでDIOに忠誠誓ってんのかよ? 人の心変わりってな恐ろしいねェ、ヒヒヒ」 「………………」 「まあ、その肉の芽がモノホンかどうかはしらねーが、おれとやる気ならとっくにやってる以上嘘じゃなさそーだな………で、結局アンタ何がしてーんだよ」 「無論、ジョースター達を始末する………特に重要なのは空条承太郎だ。やつだけは、一刻も早く始末しなければならない………きさまにも手伝ってもらうぞ」 ―――ラバーソールと花京院が遭遇した場所からさほど離れていない民家。 花京院は自身の目的と今まで遭遇してきた参加者の情報を話し終えたところでラバーソールに聞くが、相手の反応はちゃんと答えているのかどうかすら怪しい曖昧なもの。 もっとも、花京院のほうも今対峙している相手がアレッシーの言っていた『自分に変装したスタンド使い』だとして、そういう男の情報に過大な期待など元からしていない。 ………ただ彼が知る未来において、どうも自分がDIOの敵になったというのは事実らしく、それ自体に利用価値は見出しつつも内心複雑な思いを抱いていた。 ひとまず自分がDIOの味方だということだけ再確認させると、ラバーソールに協力するよう視線を向ける。 だが……… 「………ん? 手伝えって? おれが、てめーをか? ヒヒヒ………ゴメンだね! おれはおれの好きにやりてーからな」 「………………」 「そもそも、おれへの態度がなっちゃいねぇんじゃねえのか? 協力しろってんならそれなりの誠意ってもんをみせてもらわねーとなぁ?」 ニヤニヤ笑いながらラバーソールは拒否する。 彼の立場からすれば目の前の花京院もジョースター一行であることに変わりはない。 DIOの支配下にあるとはいえ、自分の知る限りそこから逃れて敵に回った相手に協力する、しかも先程本能で危険と判断した承太郎を追うなどまっぴら御免であった。 またお互いに相手への信頼など持ちあわせていないため、自然と彼らの会話は平行線をたどる。 「誠意………? ふん、うぬぼれるな。わたしが誠意を見せる相手はただひとり、DIO様だけだ」 「ヒヒヒ………んじゃあこの話はなしだな。おれは勝手にやらせてもらうぜ」 「それもできない相談だな」 「あん?」 ラバーソールはしばし言葉の意味を考え………次の瞬間には相手がやる気になったのかと思い下品な笑みを浮かべつつ、構える。 しかし……… 「へえ~? んじゃあ今この場でおれに食われる準備ができましたってか? うれしいね「その通りだ」………は?」 相手が割り込ませた言葉に耳を疑う。 今、目の前の男はなんと言ったのか? 目を白黒させるラバーソールに対し花京院は静かに続ける。                   「その通りだ、わたしを食いたいのなら………食わせてやる」 次の瞬間ラバーソールは仰天した…… ふつう相手に捕食されそうになったら食われまいとする! DIOへの忠誠心があるならなおさら食われるわけにはいかない!! その脅しで有利に交渉をしかけるはずだった! しかし! 花京院は…逆におもいっきり食われようとしたッ! (ヒ、ヒ、ヒッヒヒヒ………こいつ、スタンドも―――) 「きさまはおそらくこう考えているだろう………こいつ、スタンドも出さずに何を考えているのか、と」 (………………) 「スタンドは『すでに出している』………………食いたければ勝手に食えばいい」 それを聞いたラバーソールは視線を動かして辺りを見回すが………『法皇の緑』の姿はどこにもない。 そうこうしているうちに花京院が再び口を開いた。 「ただし――――――きさまが食った後はわたしの好きにさせてもらうがな」 「………………ゲッ!!?」 言い終わると同時にラバーソールの両手が「勝手に」動き、自らの首を絞めはじめる。 その様子はまさに数時間前の光景の焼き直し………ただ異なるのは、犠牲者が山岸由花子ではなくラバーソールという点。 「確かに『きさまのスタンド』にわたしでは勝てんかもしれん………だが『きさま自身』はどうかな?」 「グ………ガガ………ッ」 自分の意思ではもがくことすらできず、スタンドは―――出せたとしても、自らの呼吸が止まる前に相手を捕食することは出来そうもない。 苦しみながらもラバーソールは舌打ちしつつ後悔していた。 (クソッ!もう気付きやがるとは………だから『こいつとだけは』戦いたくなかったんだ!!) 打撃も斬撃も、熱や冷気さえも無効化する自身のスタンド『黄の節制』。 そんな彼がジョースター一行の中で唯一警戒しなければならないと考えていたのが目の前の男―――花京院の『法皇の緑』である。 油断した拍子に自分の体内に侵入され、操られてしまえばいかにスタンドが無敵とてどうしようもない。 すなわち、ジョースター達と戦う際に彼だけは万が一にも近くにいてもらっては困る―――シンガポールでも花京院本人を遠ざけておき、その隙に彼に化けて承太郎を始末して残りは他の追っ手にまかせるつもりだったのだ。 現在のように相手がひとりだけ、しかも味方の立場ならばどうにでもできるという期待があったのだが、その考えは大甘だった―――いまさらながらにラバーソールは理解した。 脅しは十分と判断した花京院が一旦手を自由にすると、ラバーソールは途端に卑屈になって喋りだす。 「じ………冗談だ、冗談! まさかおれと仲間われしようっていうんじゃあないよな!? DIOの部下同士、仲良くやろうぜ? おい!」 「………わたしは寛大だ。きさまの態度も、下品極まりない言動にも目をつぶろう………だが、これだけは言っておく」 命が惜しい相手は口先だけでも反抗の意思はないことを示してくる―――これまた似たような展開。 ワンパターン………そう表現することも出来るが、『定石』だけでねじ伏せられる相手にわざわざ『奇策』は必要ないのだ。 先程はこの時点で妥協した花京院だったが今度は下手に出ず、相手を睨みつけたまま大仰なポーズを取ると厳かに言った。 「DIO『様』だ………部下というなら、あの方には敬意を払え」 「わわ、わかってるって、おれにとってもDIO………様は大事な雇い主様だからな、な!」 「………………」 その言葉を受けてようやくラバーソールの全身は自由を取り戻す。 だがスタンドが出て行った様子は無く、彼の態度は低いままであった。 そして機嫌をとろうとでもしたのだろう、口を滑らせて今後の行動を決定付ける情報を漏らしてしまう。 「そ、そうだ! あんたにとっておきの情報があるぜ! 結構前だが、おれはこっから少し北で承太郎本人と会ったんだ!」 「なに………!? すぐにそこまで………待て、今の話は本当か? もし口からでまかせだった場合は………」 「し、心配いらねーって! この状況で嘘はいわねー!」 花京院はハッキリ言って彼の言葉など信用していなかった。 だがひょっとしたら真実かもしれないと思ったら………万が一でも真実だという可能性があるのなら………そう考えると、相手の話を聞かないわけにはいかなかった。 「………まあいい、さわりだけ話せ………」 「お、おう………まあ最初から話すとだ、おれはコロッセオのちょい北で―――」 「………きさまの頭脳がマヌケなことはよくわかった………………それとも」 「あん?」 相手の無知さに呆れつつも、眉ひとつ動かさずに花京院は続ける。 「空条承太郎は、実際そんな無駄口ばかり叩く男なのか? ならば別に構わんが―――」 # (ヒヒヒ、大真面目な顔であの発言―――無駄口を叩きまくる?『あの』承太郎が? ほんとケッサクだったねえ。  思わず想像して笑い転げちまって………って違うだろが!) ラバーソールはうっかり別方向に行きかけた思考を元に戻す。 ………そう、今まで同行という言葉を用いてきたこの二人の関係、断じて対等なものではなかった。 ラバーソールは花京院に力で脅され、反抗すれば殺されるという状態で強制的に連れてこられていたのだ。 何故花京院が相手を力づくで使役する方法を選んだのかというと、山岸由花子との一件で彼が懲りていたこともある。 つまり、いかに立場上『敵』ではなくとも、このような相手と対等な関係を結ぶ必要などない、首輪でもつけて上下関係をはっきりさせておかない限り、同行にメリットなど欠片もないということ。 すなわち花京院は最初からラバーソールと『対等』にも『仲間』にもなる気は無かったのだ………! 実際、ラバーソールの性格を考えるとこの方法は実に正しいと言えるが、勿論相手にしてみればたまったものではなかった。 改めてラバーソールは自分の状態を再確認する。 現在、体は自由に動くしスタンドも使える―――だが、今も自分の体内に潜んでいる『法皇の緑』が花京院の意思ひとつでいつでも自分を始末できるというのはおそらく事実である。 操る条件としてスタンドを体内に侵入させる必要があるということはわかっているが、それをどう防げというのか。 スタンドで体内をガードする、あるいはこのまま体内に閉じ込めて捕食してしまうというのも考えたが、『黄の節制』は空気を通さない上に相手のスタンドは紐状になれる。 わずかでも隙間があれば相手は脱出、攻撃共に思いのままであり、逆に隙間が無ければ自分が窒息してしまう。 また花京院本体に肉片を取り付かせて逃げても、射程外に離脱する前に操られて終了というのが関の山………そこまで考えてラバーソールの額に一筋の汗が浮かんだ。 (………ん? ひょっとしていまのおれ、『脱出不可能』なんじゃあ………ま、まさかな!  なんか手はあるだろ! えーとまだ残ってた支給品は確か………) と、その時。 考えを巡らすラバーソールの耳に遠くから微かに何か―――自動車のエンジンがかかるような音が飛び込んできた。 花京院の方へと顔を向けるとどうやら彼にも聞こえていたらしく、音の発生源と思われる方角を眺めつつ話しかけてくる。 「………聞こえたか? 西のほう、車のエンジンがかかる音がした」 「ん? ああ、なーんかそれっぽい音はしたような………」 音の正体に関して深く考えていないラバーソールを尻目に花京院は即座にスタンドを音の方向へと伸ばす。 チャンスかと思うラバーソールだったが、すぐに紐状のスタンドが自分の口から伸びつづけていることに気付いて全部出て行ったわけではないと理解する。 ―――実際『法皇の緑』の一部だけではその人間を操ることはできないのだが、その事実を知らないラバーソールに反抗はできなかった。 そして『法皇の緑』が遠くに確認したのは―――高級そうな車が、道を左折して曲がり角へと消えていく光景。 その車が見えなくなるまでの『一瞬』………そう、本当に一瞬。 もしも承太郎がきちんとダンの死体の後始末をしていれば、花京院たちがこの場で立ち止まることは無かった―――そうなっていれば、生まれなかったかもしれない瞬間。 だが、確かにその一瞬のうちに花京院は車の運転席にてハンドルを握る男の姿を捉えていた。 「………空条承太郎」 花京院の知る姿―――元々の記憶にあった彼とも、殺し合いの最初に爆破された彼とも微妙に異なるその姿……… ラバーソールもその点については話の中で触れていたため、人違いという可能性も想定はしていた。 しかし、実際に見たことによりその考えは雲散する―――あそこまで似た人間が、他にいるはずがない。 追跡はその場で終了―――このタイミングで仕掛けるのは得策でないと判断し、スタンドを呼び戻すと即座にラバーソールのほうへと向き直った。 「………承太郎を発見した。追うぞ、急げ………取り逃すことなど許されん」 「オイ、まだ首が残って―――」 「無駄口は控えろ、それともわたしに逆らう気か?」 戻した『法皇の緑』をちらつかせる。 それを見たラバーソールも胴体はすでに捕食し終えていたため、食い下がらずに従う。 「お、おう、しゃーねえな………んー、どっかにゴミ箱でもありゃあ、マイケル・ジョーダンばりのダンクでこの首をぶちかましてやるんだがねぇ」 「一塁ベースに………いや、さっさと来い」 「チキショー、エラそうにしやがって………っていうか相手は車だろ? んな急いだって追いつける保障はねーんだからもうちょいゆっくり行こーぜ?」 ラバーソールを半ば強引に促し、花京院は足早に歩きだす。 ………あるいは、この時彼が抱いていた焦燥感―――DIOのためにジョースターを始末することを誓っておきながら未だに何も出来ていない自身の不甲斐なさが、遂に出口を見つけて溢れ出たのかもしれない。 傍から見てもそれが感じとれるぐらいに気迫がこもった足取りで花京院は進みだす。 そこにラバーソールもしぶしぶ着いていくが、彼の素顔はひどく歪んでいた。 (とはいったものの、あくまで早歩き………ま、全力疾走して追いついたときにはすっかり息切れしてました、じゃあとんだ笑いものだしな………  クソ、付け入る隙が見当たらなすぎてホント笑えてきちまうぐらい冷静だなコイツ………しょうがねえからここはおとなしく従って―――) 今までラバーソールは花京院に対して無駄口を叩いて歩みを止めたり、必要以上に自分を警戒させて広範囲の索敵を封じることでのらりくらりと追跡を遅らせていれば承太郎の足跡を見失い、そのうち諦めるかと思っていた。 だが彼にとっては不幸なことに、承太郎は捕捉されてしまった―――となるとどうやら近いうちに決戦となる可能性が高そうである。 かといって花京院から逃げられない以上、往生際の悪い彼もさすがに腹をくくって――― (―――いられるかっての! ジョーダンじゃあねえ! さっさとスタンドの対策してコイツを食っちまわねえと、おれのほうが使い捨てられちまう!  承太郎を追うのはともかく、このおれがロクに日の光も浴びてねーようなレロレロのメロン野郎にこんな扱いされるのはメチャゆるさんよなああああ!!) ―――いなかった。 意外と余裕がありそうにも見えるのだがそれもそのはず、ラバーソールにはひとつだけ希望があったのだ………自分が生かされているという事実が。 いつでも殺せるとまで脅迫しておいて承太郎を倒すのに同行しろ、と指示してくるのは自分の能力が『必要』とされているという証拠。 つまり、よっぽど下手な行動でも取らない限り花京院は自分を殺す気はない………おまけに近くの敵は花京院が勝手に見つけてくれるため、歩く間自分が周囲に気を配る必要もない。 (要するに、ハンサムラバーソールさまがこの立場をひっくり返すようなアイデアを思いつく時間はまだあるってワケだ、ヒヒヒヒヒ) 立場上は花京院の下僕のような存在のラバーソールだが、彼は彼なりに現在の状況を利用していたのである。 もっともそれも浅知恵………例えば次の放送で承太郎の名が呼ばれ、自分が用済みと判断されたときはどうするのか………などといったことは何一つ考えていないのだが。 未来では味方となる男―――空条承太郎を殺さんとする男、花京院典明。 逆に未来では敵となる男―――花京院典明と共に行動する男、ラバーソール。 加えてどちらも完全に自分の意思で行動しているわけではないこの奇妙な二人組み。 信頼や協調性など欠片も存在せぬまま、彼らは当面の目標である承太郎へ向けてゆっくりと、だが確実にその距離を縮めていくのだった……… 【C-7 南部 / 1日目 昼】 【偽スターダストクルセイダース】 【花京院典明】 [スタンド]:『ハイエロファント・グリーン』 [時間軸]:JC13巻 学校で承太郎を襲撃する前 [状態]:健康、肉の芽状態 [装備]:ナイフ×3 [道具]:基本支給品、ランダム支給品1~2(確認済) [思考・状況] 基本行動方針:DIO様の敵を殺す。 1.空条承太郎を追跡し、始末する。 2.ジョースター一行の仲間だったという経歴を生かすため派手な言動は控え、確実に殺すべき敵を殺す。 3.1、2のためにラバーソールを使役・利用する。 4.機会があれば山岸由花子は殺しておきたい。 5.山岸由花子の話の内容、アレッシーの話は信頼に足ると判断。時間軸の違いに気づいた。 ※ラバーソールから名前、素顔、スタンド能力、ロワ開始からの行動を(無理やり)聞き出しました。 【アレッシーが語った話まとめ】 花京院の経歴。承太郎襲撃後、ジョースター一行に同行し、ンドゥールの『ゲブ神』に入院させられた。 ジョースター一行の情報。ジョセフ、アヴドゥル、承太郎、ポルナレフの名前とスタンド。 アレッシーもジョースター一行の仲間。 アレッシーが仲間になったのは1月。 花京院に化けてジョースター一行を襲ったスタンド使いの存在。 【山岸由花子が語った話まとめ】 数か月前に『弓と矢』で射られて超能力が目覚めた。ラヴ・デラックスの能力、射程等も説明済み。 広瀬康一は自分とは違う超能力を持っている。詳細は不明だが、音を使うとは認識、説明済み。 東方仗助、虹村億泰の外見、素行なども情報提供済み。尤も康一の悪い友人程度とのみ。スタンド能力は由花子の時間軸上知らない。 【ラバーソール】 [スタンド]:『イエローテンパランス』 [時間軸]:JC15巻、DIOの依頼で承太郎一行を襲うため、花京院に化けて承太郎に接近する前 [状態]:疲労(小)、空条承太郎の格好、『法皇の緑』にとりつかれている [装備]:なし [道具]:基本支給品一式×4、不明支給品2~4(確認済)、首輪×2(アンジェロ、川尻浩作)、ブーメラン、おもちゃのダーツセット、おもちゃの鉄砲 [思考・状況] 基本行動方針:勝ち残って報酬ガッポリいただくぜ! 1.花京院をどうにかして始末する、この扱いは我慢ならねえ。 2.承太郎と出会ったら………どうしようかねえ? ※サンドマンの名前と外見を知りましたが、スタンド能力の詳細はわかっていません。 ※ジョニィの外見とスタンドを知りましたが、名前は結局わかっていません。 ※花京院からこれまで出会った参加者を聞きましたが、知っている人間は一人もいないため変装はできません。 ※エジプト九栄神は一人も知らないようです。そのため花京院からアレッシーが語った話や時間軸に関することは一切聞かされていません。 【備考】 ・C-7南部路上のスティーリー・ダンの死体のうち胴体がラバーソールによって捕食されました。所持品もラバーソールが回収し、首だけがそのまま放置されています。 ・二人が聞いた車の音は第143話『本当の気持ちと向き合えますか?』で承太郎たちがぶどうが丘高校から出発したときのものです。 ・二人は体力を消耗しない程度の(承太郎たちの車よりもやや遅い)ペースで承太郎たちを追跡しています。  そのため車が走っている間(第148話『大乱闘』で空条邸に駐車するまで)には追いつけません。 *投下順で読む [[前へ>新・戦闘潮流]] [[戻る>本編 第2回放送まで]] [[次へ>はぐれヒーローたちの協力と限界]] *時系列順で読む [[前へ>新・戦闘潮流]] [[戻る>本編 第2回放送まで(時系列順)]] [[次へ>はぐれヒーローたちの協力と限界]] *キャラを追って読む |前話|登場キャラクター|次話| |128:[[目に映りしものは偽]]|[[花京院典明]]|161:[[She's a Killer Queen]]| |128:[[目に映りしものは偽]]|[[ラバーソール]]|161:[[She's a Killer Queen]]|
「なあオイ花京院さんよぉ、黙ってないでもうちっとなんか喋ったらどうだよ?」 「………………」 D-7北東の路上。 [[花京院典明]]は『人捜し』のため周囲を調べつつ、ただひたすらに北上を続けていた。 「ヒヒヒ、ひょっとしてどうせ歩くなら野郎二人よりも女と一緒の方が―――とか考えてるってか? なんならおれが叶えてやろうか」 「………なんのためにわたしがきさまと並んで歩いているのだと思っている」 「冗談だっての―――しっかしマジな話、ホントにこっち来てよかったのかねえ?」 「わたしは西から来たが奴はいなかった………きさまが隠れていた南東の方に来ていないのならば、北―――すなわちこちらの可能性が一番高い。  手がかりはこれきりだが、きさまにも他に当てなどないのだろう」 「っていわれてもねぇ~~~、わかんなかったら人に聞く………ってのはどうだ? 近くに誰かしらいねーのか?」 「先程の二人の他にはすぐ接触できそうな距離に参加者は見当たらない………きさまがその騒がしい口を閉じていてくれるならば、あるいは見つかるかもしれんがな」 (何処にいる………[[空条承太郎]]………) スタンドも駆使して周囲を探るが、目当ての人物―――空条承太郎の姿は何処にも確認できない。 せめて手がかりぐらいは残っていないかとも考えるが、痕跡は何一つ見つからなかった―――そもそもこの時点で承太郎は大規模な戦闘などに巻き込まれたりしていないのだから当然だが。 そして、歩き続ける花京院のすぐ近くで彼にひたすら話しかけているのは当の捜し人、空条承太郎―――無論本物ではなく、その正体はスタンドで『変装』している彼の同行者である。 [[ラバーソール]]―――本名かどうかはわからないがそう名乗った男は、同行者としては先程まで一緒にいた[[山岸由花子]]に勝るとも劣らない存在だった―――悪い意味で。 DIOに金で雇われているというこの男は欲望をそのまま形にしたような存在であり、彼の下品な口調は信用できそうな要素など欠片も見られないうえにいちいちこちらを苛立たせる。 さらにいえば彼はDIOに忠誠を誓っているわけではないため、今でさえいつ襲い掛かってきてもおかしくない人物であった。 それでも我慢して同行させているのは、彼のスタンド『黄の節制』の存在、これに利用価値を見出したからだ。 承太郎に変装した彼と並んで歩いていれば彼らの知り合い―――DIOの敵が間違いなく接触を試みてくるだろうから、そこで不意をつくのもたやすい。 さらにもうひとつ、聞き出した『黄の節制』の防御能力がいざ承太郎と戦う局面において役に立つと考えていたからである。 ―――忌々しいことだが未来において自分が敗れた可能性が高い以上、一人で挑むということはすなわち敗北を意味すると言っても過言ではない。 となれば承太郎と戦う前に戦力のひとつでも確保しておく必要がある………すぐに承太郎本人を追う以上、この時点で花京院の頭からラバーソールと別行動して効率的に敵を始末していく選択肢は自然と消滅し、彼との同行を選んだのだ。 だが花京院にとって、それらの利点と現在感じている不快感がつりあうかどうかはまた別の問題であった。 ―――そもそも何故彼らが承太郎ひとりに集中してその足取りを追っているのかというと、話は彼らが出会って情報交換を終えたころまで遡る。 ラバーソールとの情報交換………というよりお互いの一方的な話だったが、相手の話の中には有益な情報があった。 ―――すなわち、彼が殺し合いの開始後に空条承太郎と遭遇していたということ。 承太郎一人を始末したところでジョースター一族が根絶やしになるわけではない。 だが、少なくとも彼が死ねば子孫を残すことも、DIOと戦うことすらも無くなるため、何らかの形で未来の『運命』は変わると信じていた。 すぐにラバーソールの記憶を頼りに承太郎と遭遇したという場所を訪れてみたのだが……… 「………………いないな」 「ったりめーだろが。会ったっつってもまだ夜も明けてねーころだ、とっくにどっか行っちまったに決まってんだろーがよ、このタコッ!」 やはりとでもいうべきか、到着したときには時既に遅く目的の相手は同行者の言う通り、どこか遠くへ去ってしまった後のようであった。 花京院はどうにか承太郎の足取りをつかむべく、ひとまずスタンドで近くの参加者を捜索する。 「………やや東に星の模様の服の男、その少し南に原住民風の男………か」 「………ん? オイ、もうちょっと詳しく教えやがれ」 小さく呟いただけだったがラバーソールが耳聡く聞きつけ、何か思い当たることがありそうな顔で聞いてきた。 花京院が相手の容姿を告げると、頬を掻きつつ微妙そうな顔で言う。 「あー、あのガキに[[サンドマン]]のヤローか………そいつらは放っとこうぜ。さっき承太郎のフリしてダマしてやったからな………  あいつら恐ろしくせっかちな上に人の話ぜんぜん聞かねーから、むしろ本物の承太郎と会ったら問答無用で殺そうとするんじゃないかねえ、ヒヒヒ」 結局彼らはその二人との接触を避け、交換した情報のみから推測して北を目指すことを決め、歩き出した。 そして話は冒頭へと戻るのだが――― 「………なあオイ花京院さんよぉ、アンタ実際あの得体の知れない承太郎に勝てるのか? ンン~?」 「策はある」 現在の花京院はこの選択は失敗だったか、と思い始めていた。 ここまで承太郎の手がかりは全く得られていないどころか、油断も隙もない同行者が襲い掛かってくるのを警戒して自身のスタンドを近くに待機させているため広範囲の索敵も行えずにいた。 それに加えて、誰とも遭遇できずにラバーソールの好き勝手な無駄口や意味のない行動を一人で相手し続けることにもなり、次第にストレスもたまってくる。 いっそのこと襲い掛かってきてくれたほうが楽かもしれない………顔には出さずともそう思いつつ、花京院はひたすら歩を進めていった。 ―――その後も移動中の彼らが他の参加者と遭遇することが無かったのは単に巡り合わせが悪かったからか、はたまた誰かにとっての幸運、あるいは不幸だったのか。 ともあれ、そんな彼らにようやく変化が訪れたのはじきにC-8が禁止エリアになろうかという時刻のことであった。 # 「コイツどっかで見たことあるんだよな………確かDIO………様の部下の………なんて奴だったかな」 「………………」 C-7の路上に差し掛かったとき彼らの目に飛び込んできたのは首無しの死体―――いや、首はすぐそばに転がっていたため正確には『無い』わけではなかったが、ともかくそういう死体。 これまでスタンドによる索敵で死体を見かけたことはあったのだが、知った顔でない上に持ち物が奪い去られていることから無視してきた。 だがこの死体はデイパックを所持したままであるということ、そして進路上にありわざわざ避ける必要はないという二点の理由から、彼らはこの死体のある道へと足を踏み入れたのだった。 そこでラバーソールが首をひねりつつ生首のほうを見て「見覚えがある」と言い出して足を止め………しばらくして彼はどうにか記憶の中の回答に辿りつく。 「あーそうそうダンだな、[[スティーリー・ダン]]って奴だ。能力はしらねーが」 「………DIO様の部下」 それを聞いた花京院は死体を検分し始める。 ―――周りには争いの跡は全く無い………死体と血痕が無ければここで何かが起こったとは思えないほどだ。 ―――ダンのデイパックの中には、ほとんど………というよりひとり分にしては多すぎるほどの支給品が残っている―――[[基本支給品]]を除けば、使い道のなさそうな物ばかりだが。 ―――首と胴体はさほど離れていないところにあるにもかかわらず、彼の首輪はどこにも見あたらない。 ―――そして、首の切断面………『切断された』というよりは『ちぎりとられた』という表現のほうが適切といえそうな痕跡。 そこまで調べて胴体に軽く触れたところで花京院はある事実に気付き眉をひそめ………ラバーソールもそれを見て訝しむ。 「なんかあったか?」 「………まだ微かに温かい」 「………へぇ」 ふざけた言動が多いとはいえラバーソールも裏に生きる人間である。 その言葉の意味―――すなわち、犯人はまだ近くにいるかもしれないということを瞬時に理解し気を引き締める。 だが、花京院の様子から即座に襲撃を受ける様子はなさそうだと判断するとすぐにその表情は元に戻り………彼の注意は別のものへと移っていく。 その間、花京院は『犯人』について考えていた。 (不必要そうな道具は放置、その一方首輪は持っていったということは主催者に反抗する意思あり、さらに首の切断面からするとおそらく刃物は用いていない………  そして、この辺りにいた参加者でDIO様の部下を殺害しそうな人間を考えると最も有力なのは――――――やはり空条承太郎か) 実際のところ花京院の推測は的中だったのだが、彼本人はあくまで自身の持つ情報のみから導き出したものという認識のため確信までは持っていなかった。 ひとまずラバーソールの意見も聞いてみるかと顔を上げたところで、彼はダンの胴体に黄色いスライムが纏わりついている、という異様な光景を目にする。 当然、誰の仕業かは一目瞭然だったので花京院はスライムの主に向かって問いかけ、相手もそれに答えた。 「何をしている」 「見て理解しやがれってんだこの田ゴ作が、死体なんてもう用はねーだろ? おれがいただいて養分にしちまうんだよ、ドゥーユゥーアンダスタンドゥ?」 「………構わんが急げ、犯人を追う」 空条承太郎を相手どる以上、多少信用できないとはいえ戦力は多いに越したことはない。 となればラバーソールのこの行動は結果的にプラスへとつながるかもしれない………そう考えると花京院は捕食を許可し、無表情のまま再び歩き出そうとする。 一方、そんな彼の考えを欠片も理解していないラバーソールはどこまでも自分の意思で突っかかっていった。 「あん? てめーイカレてんのか? こんな奴の仇討ちなんてする必要ねーだろ」 「きさまの話が真実ならば、こいつを殺した奴はすなわち、DIO様の敵に位置するということだ」 「………ヒヒヒ、ご熱心なことで………まるで恋する少女みたいでッ!!?」 その言い回しが気に入らず―――『恋する少女』という部分で山岸由花子を思い出したからなのだが―――途端に不機嫌になった花京院はギロリと相手を睨みつける。 ラバーソールは一瞬たじろいだものの、それ以上の追求は無かったため言葉を続けた。 「ヒ、ヒヒヒ………で、花京院さんよぉ。その敵とやらを追うにはどっち行きゃあイイのかわかってんのかねぇ?」 ラバーソールからすれば何の気なしに出てきた軽口であったが、受けた花京院はその問題に改めて腕を組み考える。 (………そうだ、誰が犯人だとしても『どちらに向かった』のか………それがわからないことには―――) 「北か?西か? まさかそろそろ禁止エリアになる東に突っ込むなんてマヌケなことはしねーよなぁ?」 未だ話し続ける同行者から視線をはずすと花京院は地図を取り出し、しばらく眺めつつ考えを巡らす。 そのすぐ横のラバーソールは死体を食うことに夢中………というわけではなく、花京院をちらちらと横目で見ていた。 正直彼からすれば、まだ対策らしい対策も思いついていないのにあの得体の知れない承太郎と遭遇しかねない行動は避けたかったのだが……… (油断してる………わきゃねーよな。クソッ、『こいつ』さえ無けりゃ………) ダンの死体をスタンドで捕食する間、ラバーソールは先程花京院と出会って彼の話を聞いた直後のことを思い出していた……… # 「―――以上だ、きさまに心当たりのある人物はいるか?」 「いねぇーな………しっかしアンタ、マジでDIOに忠誠誓ってんのかよ? 人の心変わりってな恐ろしいねェ、ヒヒヒ」 「………………」 「まあ、その肉の芽がモノホンかどうかはしらねーが、おれとやる気ならとっくにやってる以上嘘じゃなさそーだな………で、結局アンタ何がしてーんだよ」 「無論、ジョースター達を始末する………特に重要なのは空条承太郎だ。やつだけは、一刻も早く始末しなければならない………きさまにも手伝ってもらうぞ」 ―――ラバーソールと花京院が遭遇した場所からさほど離れていない民家。 花京院は自身の目的と今まで遭遇してきた参加者の情報を話し終えたところでラバーソールに聞くが、相手の反応はちゃんと答えているのかどうかすら怪しい曖昧なもの。 もっとも、花京院のほうも今対峙している相手が[[アレッシー]]の言っていた『自分に変装したスタンド使い』だとして、そういう男の情報に過大な期待など元からしていない。 ………ただ彼が知る未来において、どうも自分がDIOの敵になったというのは事実らしく、それ自体に利用価値は見出しつつも内心複雑な思いを抱いていた。 ひとまず自分がDIOの味方だということだけ再確認させると、ラバーソールに協力するよう視線を向ける。 だが……… 「………ん? 手伝えって? おれが、てめーをか? ヒヒヒ………ゴメンだね! おれはおれの好きにやりてーからな」 「………………」 「そもそも、おれへの態度がなっちゃいねぇんじゃねえのか? 協力しろってんならそれなりの誠意ってもんをみせてもらわねーとなぁ?」 ニヤニヤ笑いながらラバーソールは拒否する。 彼の立場からすれば目の前の花京院もジョースター一行であることに変わりはない。 DIOの支配下にあるとはいえ、自分の知る限りそこから逃れて敵に回った相手に協力する、しかも先程本能で危険と判断した承太郎を追うなどまっぴら御免であった。 またお互いに相手への信頼など持ちあわせていないため、自然と彼らの会話は平行線をたどる。 「誠意………? ふん、うぬぼれるな。わたしが誠意を見せる相手はただひとり、DIO様だけだ」 「ヒヒヒ………んじゃあこの話はなしだな。おれは勝手にやらせてもらうぜ」 「それもできない相談だな」 「あん?」 ラバーソールはしばし言葉の意味を考え………次の瞬間には相手がやる気になったのかと思い下品な笑みを浮かべつつ、構える。 しかし……… 「へえ~? んじゃあ今この場でおれに食われる準備ができましたってか? うれしいね「その通りだ」………は?」 相手が割り込ませた言葉に耳を疑う。 今、目の前の男はなんと言ったのか? 目を白黒させるラバーソールに対し花京院は静かに続ける。                   「その通りだ、わたしを食いたいのなら………食わせてやる」 次の瞬間ラバーソールは仰天した…… ふつう相手に捕食されそうになったら食われまいとする! DIOへの忠誠心があるならなおさら食われるわけにはいかない!! その脅しで有利に交渉をしかけるはずだった! しかし! 花京院は…逆におもいっきり食われようとしたッ! (ヒ、ヒ、ヒッヒヒヒ………こいつ、スタンドも―――) 「きさまはおそらくこう考えているだろう………こいつ、スタンドも出さずに何を考えているのか、と」 (………………) 「スタンドは『すでに出している』………………食いたければ勝手に食えばいい」 それを聞いたラバーソールは視線を動かして辺りを見回すが………『法皇の緑』の姿はどこにもない。 そうこうしているうちに花京院が再び口を開いた。 「ただし――――――きさまが食った後はわたしの好きにさせてもらうがな」 「………………ゲッ!!?」 言い終わると同時にラバーソールの両手が「勝手に」動き、自らの首を絞めはじめる。 その様子はまさに数時間前の光景の焼き直し………ただ異なるのは、犠牲者が山岸由花子ではなくラバーソールという点。 「確かに『きさまのスタンド』にわたしでは勝てんかもしれん………だが『きさま自身』はどうかな?」 「グ………ガガ………ッ」 自分の意思ではもがくことすらできず、スタンドは―――出せたとしても、自らの呼吸が止まる前に相手を捕食することは出来そうもない。 苦しみながらもラバーソールは舌打ちしつつ後悔していた。 (クソッ!もう気付きやがるとは………だから『こいつとだけは』戦いたくなかったんだ!!) 打撃も斬撃も、熱や冷気さえも無効化する自身のスタンド『黄の節制』。 そんな彼がジョースター一行の中で唯一警戒しなければならないと考えていたのが目の前の男―――花京院の『法皇の緑』である。 油断した拍子に自分の体内に侵入され、操られてしまえばいかにスタンドが無敵とてどうしようもない。 すなわち、ジョースター達と戦う際に彼だけは万が一にも近くにいてもらっては困る―――シンガポールでも花京院本人を遠ざけておき、その隙に彼に化けて承太郎を始末して残りは他の追っ手にまかせるつもりだったのだ。 現在のように相手がひとりだけ、しかも味方の立場ならばどうにでもできるという期待があったのだが、その考えは大甘だった―――いまさらながらにラバーソールは理解した。 脅しは十分と判断した花京院が一旦手を自由にすると、ラバーソールは途端に卑屈になって喋りだす。 「じ………冗談だ、冗談! まさかおれと仲間われしようっていうんじゃあないよな!? DIOの部下同士、仲良くやろうぜ? おい!」 「………わたしは寛大だ。きさまの態度も、下品極まりない言動にも目をつぶろう………だが、これだけは言っておく」 命が惜しい相手は口先だけでも反抗の意思はないことを示してくる―――これまた似たような展開。 ワンパターン………そう表現することも出来るが、『定石』だけでねじ伏せられる相手にわざわざ『奇策』は必要ないのだ。 先程はこの時点で妥協した花京院だったが今度は下手に出ず、相手を睨みつけたまま大仰なポーズを取ると厳かに言った。 「DIO『様』だ………部下というなら、あの方には敬意を払え」 「わわ、わかってるって、おれにとってもDIO………様は大事な雇い主様だからな、な!」 「………………」 その言葉を受けてようやくラバーソールの全身は自由を取り戻す。 だがスタンドが出て行った様子は無く、彼の態度は低いままであった。 そして機嫌をとろうとでもしたのだろう、口を滑らせて今後の行動を決定付ける情報を漏らしてしまう。 「そ、そうだ! あんたにとっておきの情報があるぜ! 結構前だが、おれはこっから少し北で承太郎本人と会ったんだ!」 「なに………!? すぐにそこまで………待て、今の話は本当か? もし口からでまかせだった場合は………」 「し、心配いらねーって! この状況で嘘はいわねー!」 花京院はハッキリ言って彼の言葉など信用していなかった。 だがひょっとしたら真実かもしれないと思ったら………万が一でも真実だという可能性があるのなら………そう考えると、相手の話を聞かないわけにはいかなかった。 「………まあいい、さわりだけ話せ………」 「お、おう………まあ最初から話すとだ、おれはコロッセオのちょい北で―――」 「………きさまの頭脳がマヌケなことはよくわかった………………それとも」 「あん?」 相手の無知さに呆れつつも、眉ひとつ動かさずに花京院は続ける。 「空条承太郎は、実際そんな無駄口ばかり叩く男なのか? ならば別に構わんが―――」 # (ヒヒヒ、大真面目な顔であの発言―――無駄口を叩きまくる?『あの』承太郎が? ほんとケッサクだったねえ。  思わず想像して笑い転げちまって………って違うだろが!) ラバーソールはうっかり別方向に行きかけた思考を元に戻す。 ………そう、今まで同行という言葉を用いてきたこの二人の関係、断じて対等なものではなかった。 ラバーソールは花京院に力で脅され、反抗すれば殺されるという状態で強制的に連れてこられていたのだ。 何故花京院が相手を力づくで使役する方法を選んだのかというと、山岸由花子との一件で彼が懲りていたこともある。 つまり、いかに立場上『敵』ではなくとも、このような相手と対等な関係を結ぶ必要などない、首輪でもつけて上下関係をはっきりさせておかない限り、同行にメリットなど欠片もないということ。 すなわち花京院は最初からラバーソールと『対等』にも『仲間』にもなる気は無かったのだ………! 実際、ラバーソールの性格を考えるとこの方法は実に正しいと言えるが、勿論相手にしてみればたまったものではなかった。 改めてラバーソールは自分の状態を再確認する。 現在、体は自由に動くしスタンドも使える―――だが、今も自分の体内に潜んでいる『法皇の緑』が花京院の意思ひとつでいつでも自分を始末できるというのはおそらく事実である。 操る条件としてスタンドを体内に侵入させる必要があるということはわかっているが、それをどう防げというのか。 スタンドで体内をガードする、あるいはこのまま体内に閉じ込めて捕食してしまうというのも考えたが、『黄の節制』は空気を通さない上に相手のスタンドは紐状になれる。 わずかでも隙間があれば相手は脱出、攻撃共に思いのままであり、逆に隙間が無ければ自分が窒息してしまう。 また花京院本体に肉片を取り付かせて逃げても、射程外に離脱する前に操られて終了というのが関の山………そこまで考えてラバーソールの額に一筋の汗が浮かんだ。 (………ん? ひょっとしていまのおれ、『脱出不可能』なんじゃあ………ま、まさかな!  なんか手はあるだろ! えーとまだ残ってた支給品は確か………) と、その時。 考えを巡らすラバーソールの耳に遠くから微かに何か―――自動車のエンジンがかかるような音が飛び込んできた。 花京院の方へと顔を向けるとどうやら彼にも聞こえていたらしく、音の発生源と思われる方角を眺めつつ話しかけてくる。 「………聞こえたか? 西のほう、車のエンジンがかかる音がした」 「ん? ああ、なーんかそれっぽい音はしたような………」 音の正体に関して深く考えていないラバーソールを尻目に花京院は即座にスタンドを音の方向へと伸ばす。 チャンスかと思うラバーソールだったが、すぐに紐状のスタンドが自分の口から伸びつづけていることに気付いて全部出て行ったわけではないと理解する。 ―――実際『法皇の緑』の一部だけではその人間を操ることはできないのだが、その事実を知らないラバーソールに反抗はできなかった。 そして『法皇の緑』が遠くに確認したのは―――高級そうな車が、道を左折して曲がり角へと消えていく光景。 その車が見えなくなるまでの『一瞬』………そう、本当に一瞬。 もしも承太郎がきちんとダンの死体の後始末をしていれば、花京院たちがこの場で立ち止まることは無かった―――そうなっていれば、生まれなかったかもしれない瞬間。 だが、確かにその一瞬のうちに花京院は車の運転席にてハンドルを握る男の姿を捉えていた。 「………空条承太郎」 花京院の知る姿―――元々の記憶にあった彼とも、殺し合いの最初に爆破された彼とも微妙に異なるその姿……… ラバーソールもその点については話の中で触れていたため、人違いという可能性も想定はしていた。 しかし、実際に見たことによりその考えは雲散する―――あそこまで似た人間が、他にいるはずがない。 追跡はその場で終了―――このタイミングで仕掛けるのは得策でないと判断し、スタンドを呼び戻すと即座にラバーソールのほうへと向き直った。 「………承太郎を発見した。追うぞ、急げ………取り逃すことなど許されん」 「オイ、まだ首が残って―――」 「無駄口は控えろ、それともわたしに逆らう気か?」 戻した『法皇の緑』をちらつかせる。 それを見たラバーソールも胴体はすでに捕食し終えていたため、食い下がらずに従う。 「お、おう、しゃーねえな………んー、どっかにゴミ箱でもありゃあ、マイケル・ジョーダンばりのダンクでこの首をぶちかましてやるんだがねぇ」 「一塁ベースに………いや、さっさと来い」 「チキショー、エラそうにしやがって………っていうか相手は車だろ? んな急いだって追いつける保障はねーんだからもうちょいゆっくり行こーぜ?」 ラバーソールを半ば強引に促し、花京院は足早に歩きだす。 ………あるいは、この時彼が抱いていた焦燥感―――DIOのためにジョースターを始末することを誓っておきながら未だに何も出来ていない自身の不甲斐なさが、遂に出口を見つけて溢れ出たのかもしれない。 傍から見てもそれが感じとれるぐらいに気迫がこもった足取りで花京院は進みだす。 そこにラバーソールもしぶしぶ着いていくが、彼の素顔はひどく歪んでいた。 (とはいったものの、あくまで早歩き………ま、全力疾走して追いついたときにはすっかり息切れしてました、じゃあとんだ笑いものだしな………  クソ、付け入る隙が見当たらなすぎてホント笑えてきちまうぐらい冷静だなコイツ………しょうがねえからここはおとなしく従って―――) 今までラバーソールは花京院に対して無駄口を叩いて歩みを止めたり、必要以上に自分を警戒させて広範囲の索敵を封じることでのらりくらりと追跡を遅らせていれば承太郎の足跡を見失い、そのうち諦めるかと思っていた。 だが彼にとっては不幸なことに、承太郎は捕捉されてしまった―――となるとどうやら近いうちに決戦となる可能性が高そうである。 かといって花京院から逃げられない以上、往生際の悪い彼もさすがに腹をくくって――― (―――いられるかっての! ジョーダンじゃあねえ! さっさとスタンドの対策してコイツを食っちまわねえと、おれのほうが使い捨てられちまう!  承太郎を追うのはともかく、このおれがロクに日の光も浴びてねーようなレロレロのメロン野郎にこんな扱いされるのはメチャゆるさんよなああああ!!) ―――いなかった。 意外と余裕がありそうにも見えるのだがそれもそのはず、ラバーソールにはひとつだけ希望があったのだ………自分が生かされているという事実が。 いつでも殺せるとまで脅迫しておいて承太郎を倒すのに同行しろ、と指示してくるのは自分の能力が『必要』とされているという証拠。 つまり、よっぽど下手な行動でも取らない限り花京院は自分を殺す気はない………おまけに近くの敵は花京院が勝手に見つけてくれるため、歩く間自分が周囲に気を配る必要もない。 (要するに、ハンサムラバーソールさまがこの立場をひっくり返すようなアイデアを思いつく時間はまだあるってワケだ、ヒヒヒヒヒ) 立場上は花京院の下僕のような存在のラバーソールだが、彼は彼なりに現在の状況を利用していたのである。 もっともそれも浅知恵………例えば次の放送で承太郎の名が呼ばれ、自分が用済みと判断されたときはどうするのか………などといったことは何一つ考えていないのだが。 未来では味方となる男―――空条承太郎を殺さんとする男、花京院典明。 逆に未来では敵となる男―――花京院典明と共に行動する男、ラバーソール。 加えてどちらも完全に自分の意思で行動しているわけではないこの奇妙な二人組み。 信頼や協調性など欠片も存在せぬまま、彼らは当面の目標である承太郎へ向けてゆっくりと、だが確実にその距離を縮めていくのだった……… 【C-7 南部 / 1日目 昼】 【偽スターダストクルセイダース】 【花京院典明】 [スタンド]:『ハイエロファント・グリーン』 [時間軸]:JC13巻 学校で承太郎を襲撃する前 [状態]:健康、肉の芽状態 [装備]:ナイフ×3 [道具]:基本支給品、ランダム支給品1~2(確認済) [思考・状況] 基本行動方針:DIO様の敵を殺す。 1.空条承太郎を追跡し、始末する。 2.ジョースター一行の仲間だったという経歴を生かすため派手な言動は控え、確実に殺すべき敵を殺す。 3.1、2のためにラバーソールを使役・利用する。 4.機会があれば山岸由花子は殺しておきたい。 5.山岸由花子の話の内容、アレッシーの話は信頼に足ると判断。時間軸の違いに気づいた。 ※ラバーソールから名前、素顔、スタンド能力、ロワ開始からの行動を(無理やり)聞き出しました。 【アレッシーが語った話まとめ】 花京院の経歴。承太郎襲撃後、ジョースター一行に同行し、[[ンドゥール]]の『ゲブ神』に入院させられた。 ジョースター一行の情報。ジョセフ、アヴドゥル、承太郎、ポルナレフの名前とスタンド。 アレッシーもジョースター一行の仲間。 アレッシーが仲間になったのは1月。 花京院に化けてジョースター一行を襲ったスタンド使いの存在。 【山岸由花子が語った話まとめ】 数か月前に『弓と矢』で射られて超能力が目覚めた。ラヴ・デラックスの能力、射程等も説明済み。 広瀬康一は自分とは違う超能力を持っている。詳細は不明だが、音を使うとは認識、説明済み。 [[東方仗助]]、[[虹村億泰]]の外見、素行なども情報提供済み。尤も康一の悪い友人程度とのみ。スタンド能力は由花子の時間軸上知らない。 【ラバーソール】 [スタンド]:『イエローテンパランス』 [時間軸]:JC15巻、DIOの依頼で承太郎一行を襲うため、花京院に化けて承太郎に接近する前 [状態]:疲労(小)、空条承太郎の格好、『法皇の緑』にとりつかれている [装備]:なし [道具]:基本支給品一式×4、不明支給品2~4(確認済)、首輪×2(アンジェロ、[[川尻浩作]])、ブーメラン、おもちゃのダーツセット、おもちゃの鉄砲 [思考・状況] 基本行動方針:勝ち残って報酬ガッポリいただくぜ! 1.花京院をどうにかして始末する、この扱いは我慢ならねえ。 2.承太郎と出会ったら………どうしようかねえ? ※サンドマンの名前と外見を知りましたが、スタンド能力の詳細はわかっていません。 ※ジョニィの外見とスタンドを知りましたが、名前は結局わかっていません。 ※花京院からこれまで出会った参加者を聞きましたが、知っている人間は一人もいないため変装はできません。 ※エジプト九栄神は一人も知らないようです。そのため花京院からアレッシーが語った話や時間軸に関することは一切聞かされていません。 【備考】 ・C-7南部路上のスティーリー・ダンの死体のうち胴体がラバーソールによって捕食されました。所持品もラバーソールが回収し、首だけがそのまま放置されています。 ・二人が聞いた車の音は第143話『[[本当の気持ちと向き合えますか?]]』で承太郎たちがぶどうが丘高校から出発したときのものです。 ・二人は体力を消耗しない程度の(承太郎たちの車よりもやや遅い)ペースで承太郎たちを追跡しています。  そのため車が走っている間(第148話『[[大乱闘]]』で空条邸に駐車するまで)には追いつけません。 *投下順で読む [[前へ>新・戦闘潮流]] [[戻る>本編 第2回放送まで]] [[次へ>はぐれヒーローたちの協力と限界]] *時系列順で読む [[前へ>新・戦闘潮流]] [[戻る>本編 第2回放送まで(時系列順)]] [[次へ>はぐれヒーローたちの協力と限界]] *キャラを追って読む |前話|登場キャラクター|次話| |128:[[目に映りしものは偽]]|[[花京院典明]]|161:[[She's a Killer Queen]]| |128:[[目に映りしものは偽]]|[[ラバーソール]]|161:[[She's a Killer Queen]]|

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