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 きぃん――と。  高音が前触れなく響き、その場にいた XX 名が同時に目を覚ます。  ある者は日常じみた声を漏らしながら口元を押さえ、ある者は即座に周囲を確認し戦闘態勢を取り、またある者は他者を意に介さず腕を組んで屹立する。  それぞれ思い思いの行動を取りながらも、全員が同じ疑問を抱いていた。  なかには完全に意識が覚醒するまでにたっぷり一分ほどかかったものもいたが、そんな者の脳内にさえ最終的には同じ疑問が浮かんだ。 「うわぁぁあああああ!? なぜッ、いつのまにッ、僕はこんなところで寝ていたんだァァーーーッ!?」  この場にいる全員が共通して抱いていた疑問を、野球のユニフォームを着込んだ少年が叫んだ。  被っている帽子の長いツバに隠れて見えづらいが、額からは大量の汗が噴き出している。  動転して未だ何ごとかを叫んでいる少年に、声をかける者は誰も現れない。  さながら彼だけが口を利くことを許されているかのように、その他の XX-1 名は誰一人として声を発しない。  ようやく少年がそのことに気付き、息を呑んだ瞬間。  薄暗かった場所に、灯りがともされた。 「なん、だ……? ここは……ッ」  照らされて明らかになった空間は、少年の言葉通り異質であった。  光は蛍光灯特有の輝きであり、上下左右を光沢のある黒い壁が覆っている。  どう考えても室内――であるはずなのに、【扉がない】のである。  光が当たっていない箇所があるのならば、壁の端が見えないほどに部屋が広いのならば、簡単な話である。  ただ、扉は見えないところにあるだけだ。  しかし――すべて目視できている。  天井には、扉などない。  前後左右の壁には、窓もない。  ほかの XX-1 名より小さい少年だからこそ見える床には、空気だけが通るほどの小さな穴さえない。  だからこそ分からない。 「通風孔一つないこんな部屋にッ、どうやって人間を入れたんだ!?」  その言葉にも、室内の XX-1 名はざわめかない。  表情が変わったものは少なくなかったが、にもかかわらず声が零れることはなかった。 『――さて、異なる時間と世界から選び抜かれた諸君』  唐突に、決して明瞭とは言えない声が響く。  少年の声とは異なっているが、その他の XX-1 名のものでもないようだった。  声がしたのは、天井しかないはずの彼らの上方であったのだから。  機械を通して音声を変換しているらしく、声の主の性別や年齢は判別できない。 『きみたちには、殺し合いをしてもらう』 「なにィィィーーーーーーッ!?」  予期していなかった言葉に、反射的に少年が叫ぶ。  額に張り付いている汗の粒が、見る見る大きくなっていく。  ユニフォームの袖で拭おうと腕を伸ばそうとして、また少年は声を張り上げた。 「いったいなんだッ、このリュックサックはァァァーーーーーッ!?」  驚きのあまり少年は、背負った覚えのないリュックサックを一気に下ろして地面に落とす。  開いていたらしく、衝撃でなかに入っていた紙切れが零れ落ちた。  転がりながら、折り畳まれた紙がゆっくりと開かれる。 「紙から! 拳銃が出て来たァァァァッ」 『各自に【紙】を一つから三つ配っている。  それを開くと、何かしら道具が出現する』  もはや汗の粒が大きくなるどころではない。  額に浮かんだ汗は、滝のように顔面全体を伝っている。  少年からは腕を上げる余裕すらなくなり、肩に顔を押し付けて汗を拭おうとして――また叫んだ。  肩に顔面が触れる前に、首を覆っている金属独特の冷たさに気付いたのだ。 「いったいなんだッ、この首輪はァァァーーーーーーーッ!?」  着込んだユニフォームはもはや、全身から溢れる汗によって変色している。  そんなことを気にも留めずに、少年は周囲に立つ XX-1 名に視線を飛ばす。  全員がリュックサックを背負い、首には首輪をはめていた。  機械音声が響く前までは、どちらを身につけているものもいなかったというのに。 『この殺し合いを快く思わない者も、少なからずいるだろう。  ゆえに、参加者全員に首輪をはめさせてもらった。  その首輪は、こちらの操作により爆発させることができる。  殺し合いの舞台から出た場合や、こちらが六時間ごとに行う【脱落者を告げる放送】によって指定する【禁止エリア】に侵入した場合は、躊躇なく爆破させてもらう。  なお丈夫ではないので、過度な衝撃を加えないよう注意したほうがいい。  異変が生じた際には、こちらの操作なしで爆発するよう設定されているからね』  機械音声が言い終えた途端、少年の首輪からアラームのような電子音が響く。 『証拠を見せよう』 「な゛ァ――――」  青ざめた表情で、少年は何ごとか言葉を発しようとした。  しようとしただけで、声は言葉にならなかった。  首輪が炸裂し、首を境に身体が二分されてしまったのだ。  首から下は糸の切れた人形のように力なく倒れ、首は爆発の衝撃で僅かに宙を舞ってから落下する。  血抜きしていない肉の焦げた刺激臭が、室内に充満する。 『以上で終了だ。  まァ、異常はこれから始まるんだけどね』  冗談を言うような口調で機械音声が告げ、少年を除く XX-1 名の姿が掻き消えた。  聞くものが誰もいない扉のない部屋に、音声変換をやめたらしい声が響き渡る。 『さて、ゲームスタートだ。  …………なァ、誰が残ると思う? いいじゃないか、答えろよ。きみに訊いてるんだよ、きみに』 &color(red){【エンポリオ・アルニーニョ 死亡】} &color(red){【残り XX-1 人】} 【主催者 不明】
 きぃん――と。  高音が前触れなく響き、その場にいた XX 名が同時に目を覚ます。  ある者は日常じみた声を漏らしながら口元を押さえ、ある者は即座に周囲を確認し戦闘態勢を取り、またある者は他者を意に介さず腕を組んで屹立する。  それぞれ思い思いの行動を取りながらも、全員が同じ疑問を抱いていた。  なかには完全に意識が覚醒するまでにたっぷり一分ほどかかったものもいたが、そんな者の脳内にさえ最終的には同じ疑問が浮かんだ。 「うわぁぁあああああ!? なぜッ、いつのまにッ、僕はこんなところで寝ていたんだァァーーーッ!?」  この場にいる全員が共通して抱いていた疑問を、野球のユニフォームを着込んだ少年が叫んだ。  被っている帽子の長いツバに隠れて見えづらいが、額からは大量の汗が噴き出している。  動転して未だ何ごとかを叫んでいる少年に、声をかける者は誰も現れない。  さながら彼だけが口を利くことを許されているかのように、その他の XX-1 名は誰一人として声を発しない。  ようやく少年がそのことに気付き、息を呑んだ瞬間。  薄暗かった場所に、灯りがともされた。 「なん、だ……? ここは……ッ」  照らされて明らかになった空間は、少年の言葉通り異質であった。  光は蛍光灯特有の輝きであり、上下左右を光沢のある黒い壁が覆っている。  どう考えても室内――であるはずなのに、【扉がない】のである。  光が当たっていない箇所があるのならば、壁の端が見えないほどに部屋が広いのならば、簡単な話である。  ただ、扉は見えないところにあるだけだ。  しかし――すべて目視できている。  天井には、扉などない。  前後左右の壁には、窓もない。  ほかの XX-1 名より小さい少年だからこそ見える床には、空気だけが通るほどの小さな穴さえない。  だからこそ分からない。 「通風孔一つないこんな部屋にッ、どうやって人間を入れたんだ!?」  その言葉にも、室内の XX-1 名はざわめかない。  表情が変わったものは少なくなかったが、にもかかわらず声が零れることはなかった。 『――さて、異なる時間と世界から選び抜かれた諸君』  唐突に、決して明瞭とは言えない声が響く。  少年の声とは異なっているが、その他の XX-1 名のものでもないようだった。  声がしたのは、天井しかないはずの彼らの上方であったのだから。  機械を通して音声を変換しているらしく、声の主の性別や年齢は判別できない。 『きみたちには、殺し合いをしてもらう』 「なにィィィーーーーーーッ!?」  予期していなかった言葉に、反射的に少年が叫ぶ。  額に張り付いている汗の粒が、見る見る大きくなっていく。  ユニフォームの袖で拭おうと腕を伸ばそうとして、また少年は声を張り上げた。 「いったいなんだッ、このリュックサックはァァァーーーーーッ!?」  驚きのあまり少年は、背負った覚えのないリュックサックを一気に下ろして地面に落とす。  開いていたらしく、衝撃でなかに入っていた紙切れが零れ落ちた。  転がりながら、折り畳まれた紙がゆっくりと開かれる。 「紙から! 拳銃が出て来たァァァァッ」 『各自に【紙】を一つから三つ配っている。  それを開くと、何かしら道具が出現する』  もはや汗の粒が大きくなるどころではない。  額に浮かんだ汗は、滝のように顔面全体を伝っている。  少年からは腕を上げる余裕すらなくなり、肩に顔を押し付けて汗を拭おうとして――また叫んだ。  肩に顔面が触れる前に、首を覆っている金属独特の冷たさに気付いたのだ。 「いったいなんだッ、この首輪はァァァーーーーーーーッ!?」  着込んだユニフォームはもはや、全身から溢れる汗によって変色している。  そんなことを気にも留めずに、少年は周囲に立つ XX-1 名に視線を飛ばす。  全員がリュックサックを背負い、首には首輪をはめていた。  機械音声が響く前までは、どちらを身につけているものもいなかったというのに。 『この殺し合いを快く思わない者も、少なからずいるだろう。  ゆえに、参加者全員に首輪をはめさせてもらった。  その首輪は、こちらの操作により爆発させることができる。  殺し合いの舞台から出た場合や、こちらが六時間ごとに行う【脱落者を告げる放送】によって指定する【禁止エリア】に侵入した場合は、躊躇なく爆破させてもらう。  なお丈夫ではないので、過度な衝撃を加えないよう注意したほうがいい。  異変が生じた際には、こちらの操作なしで爆発するよう設定されているからね』  機械音声が言い終えた途端、少年の首輪からアラームのような電子音が響く。 『証拠を見せよう』 「な゛ァ――――」  青ざめた表情で、少年は何ごとか言葉を発しようとした。  しようとしただけで、声は言葉にならなかった。  首輪が炸裂し、首を境に身体が二分されてしまったのだ。  首から下は糸の切れた人形のように力なく倒れ、首は爆発の衝撃で僅かに宙を舞ってから落下する。  血抜きしていない肉の焦げた刺激臭が、室内に充満する。 『以上で終了だ。  まァ、異常はこれから始まるんだけどね』  冗談を言うような口調で機械音声が告げ、少年を除く XX-1 名の姿が掻き消えた。  聞くものが誰もいない扉のない部屋に、音声変換をやめたらしい声が響き渡る。 『さて、ゲームスタートだ。  …………なァ、誰が残ると思う? いいじゃないか、答えろよ。きみに訊いてるんだよ、きみに』 &color(red){【エンポリオ・アルニーニョ 死亡】} &color(red){【残り XX-1 人】} 【主催者 不明】 [[戻る>ボツ作品集]]

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