「DEUCE TO 7」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

DEUCE TO 7 - (2016/06/10 (金) 23:28:47) の1つ前との変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

恐竜に追われること早十数分。奴らは蛇のようにしつこかった。 襲いかかってくるようならば返り討ちにしてみせる。だらだら追いかけるようなら一気に加速して振り切ってみせる。 だが恐竜たちは姑息で、賢く、狼のように統率の採れた集団だった。プロシュートと千帆の乗ったバイクを追いかけて、回り込んで―――とにかくうっとおしかった。プロシュートがいらいらを表情に出さないようにするのに苦労するほどだった。 サイドミラーの中で三匹のうち、二匹が細い路地裏へと飛び込んだ。プロシュートは頭の中で地図を思い描いた。西への逃げ道を塞ごうって魂胆らしい。 以前ギアは3にいれたままで、速度計は40キロに届くか届かないかをさまよっている。プロシュートは顔をしかめ、もどかしい思いをアクセルに変えた。 いい加減追いかけっこにはうんざりした頃だった。 「あっ」 ヘルメット越しに千帆がくぐもったつぶやきを漏らした。同時にプロシュートはバイクのハンドルを右に切ろうとして―――間に合わない、と思った。 路地裏から突然身を投げ出した小柄な男の体にバイクが迫る。プロシュートは三人全員が無傷でいられることを諦めた。中でも一番優先順位の低かったのは、ようやく馴染み始めたバイクそのものだった。 バイクすべてをめちゃくちゃにする必用はなく、そうする時間もパワーも足りなかった。右ハンドルを思い切り握り、前輪を止めた。二人の体が前に投げ出されると同時にバイクの横っ面に一撃をぶちかました。 「『グレイトフル・デッド』!」 金属がひしゃげる音、息を呑む音―――宙に投げ出され、ぐるりと世界が大きく回った。頭上の街灯が空を横切り、目の中でアーチを描いた。 千帆を抱きかかえるようにかばい、スタンドで着陸の衝撃を和らげた。かばいきれなかった左肩に大きな傷みが走り、プロシュートの息が止まった。 衝撃の余韻が道路の端々に広がっていった。 横っ面に投げ出されたバイクは歩道をフラフラとさまよったあと、力なく民家に激突した。 空に向かってかしあげられたタイヤが風車のように大きく回っていた。エンジンの熱がむわっとアスファルトを撫で、痛む体にじわじわと染みこんだ。 「立てるか?」 「……だいじょうぶ、です」 千帆に傷はなかった。ヘルメット越しに目を白黒させながら、必死に冷静さを取り戻そうとする。プロシュートは頷くとそのまま伏せていろ、と小さく言った。 腰を落としたまま振り返り、跳ね飛ばしかけた男の影に目を向けた。影は路地裏に体半分入れたまま、こちらをじっと見つめていた。あちらにも怪我はないようだった。 影はこちらの安否を気遣うでもなく、大声で悪態をつくでもなく、惑わしげに体を揺らしていた。 プロシュートは千帆に合図を出し、ついてくるように指示を出す。 千帆は慣れない様子で拳銃を取り出すと、それを両手で握り締め、背後を警戒しながらプロシュートの背中に張り付いた。 プロシュートの中では怒りが渦巻いてた。それは突然飛び出してきた男への怒りでもあったが、どちらかといえば自分のマヌケ具合に向けられた怒りだった。 運転に100%集中できていたか? ノー。周りへの警戒を100%怠っていなかったか? ノー。 遺体の気配に気を取られていなかったか? ノー。 宮本と名乗る少年がもたらした情報が常に目の端でちらついていた。情報不足の中、いくら考えても結論は出ないとわかっていたはずなのに、現状戦力も情報も足りなさすぎるという杞憂がプロシュートの判断をにぶらした。 これで『足』も失った。抱えるのは傷ひとつつけたくない妹分と拳銃二丁、残るは育朗が残した『甘ったれ精神』だ。 最も捨て去るべきものがプロシュートの足を絡みとり、そして今不安要素となって現れた。 プロシュートは甘く生き慣れていない。これまでずっと苦味と痛みだけが信用できると言い続けてきたのだ。そう簡単には変われない。 プロシュートは足を早め、最後の十歩を大股で詰め寄ると、男の胸ぐらをつかみんだ。 後ろで千帆が止めるように何かを言ったが、プロシュートには何も聞こえなかった。ただ目の前にあるチンピラ風情の男がひたすら気に入らなかった。 プロシュートはその襟首を掴むと力任せにひねり上げた。男は怯えたように、短い呼吸を繰り返した。 「いいか、二秒だけやる。質問に答えろ。イエスもノーも要求しちゃいねェ。これはれっきとした事実になる。そうだろ、エエ?」 手触りがやけに軽く、柔らかいことが気になったがプロシュートは尋問を進めた。スタンドを呼び出すと男が腕の中で小さくうめいたのが聞こえた。 「名前は?」 「こ、小林玉美」 「仲間は?」 「ほかに二人……近くにいる。多分ここから見える範囲に」 怒りと混乱がプロシュートの腕の力を強めた。 罠にハメられた―――隣で千帆が息を飲む。プロシュートも同じ気持ちだった。奇妙な広がりが代わりに手を覆ったことに気がつくまでは。 玉美の首はプロシュートが意図したより、強く曲がってしまっていた。その首はまるでゴムのように柔かく、ねじ曲がった。 プロシュートは玉美の顔が見えなかった。隣に立つ千帆と死んだ男の視線が結びついた。千帆の目の中で怯えが揺らいだ。首を曲げたまま、死んだはずの男が呟いた。 「『ザ・ロック』……発動したってことは、アンタたちは信用できる……ってことだなァ~~~!」 「てめェ、スタンド使い……ッ!」 「お、重い……ッ!」 千帆の体に錠前が浮かび上がった。グレイトフル・デッドの拳がわずかに早く、玉美の体に叩き込まれていた。 玉美の体はゴムまりのようにはずみ、対面の民家の窓を突き破った。砕かれた窓に血はつかなかった。 バイクの前に身を投げ出したのも、姿を隠さなかったことも、こうして尋問されることも全て玉美の計算内。 玉美の言葉は真実だった。協力者が二人いる。 千帆にスタンド攻撃を仕掛けたもの、玉美の体にスタンド能力を発動させたもの、プロシュートたちの接近を感知したもの。 (野郎……うかつだった! マンモーニだったのは……ほかでもない、この俺だッ!) 足を失い、千帆は動けない。あたりがざわつく雰囲気をプロシュートは感じた。もはや一刻の猶予もない。 千帆が立ちあろうと足掻いてるうちに、辺りをさらに薄暗くする霧が満ち溢れていた。 満月は滲んで、形を失った。千帆がプロシュートの背中に手を伸ばしても、あたりの風景は変わらなかった。 「いいか、千帆……これは俺が『勝手』にやることだ。てめェの敵だとか、貸し借りだとか、そんなものはどうでもいい。  俺が俺の納得と怒りを鎮めるために、俺は今からやる……! 止めたとしても無駄だぜ……、いいなッ!」 「プロ、シュート……さん」 「『グレイトフル・デッド』! 半日ぶりの全力全開だッ! たっぷり浴びせかけてやれッ!」 街灯の光が消える。頭上の月も星も消え去り、湿った空気が一斉に流れ込んだ。 直後……、東と西―――周りの方向全てから鶏を絞め殺したような奇妙な鳴き声が聞こえた。 霞越しにフラフラと揺れる影が、二人に近寄り、少し離れた場所でどうっ、と音を立てて倒れた。最後に断末魔と痙攣を残して、その四本足は動くのをやめた。 千帆とプロシュートは影に近づいて、その死体を見下ろした。そこに横たわっていたのはチンピラではなく、小型のバイクほどある、一匹の恐竜だった。 「プロシュートさん、これって……?」 千帆にかけられたスタンドはまだ解けない。状況は複雑を極めていく。 わかっているだけで四人、この状況を引き起こしたスタンド使いがいる。プロシュートは一息吐くと、千帆の手をつかみ、杜王駅の方向へ向かって歩き出した。 今は逃げることが懸命だ。怒りは収まってはいないが、一発ぶちかまして頭が冷えた。全部自分の責任だ。今ならそう判断できる。 「スタンドには射程距離がある。歩けるだけ歩け。無理なら言え」 細い路地裏をゆっくりと駆けていく二人。 その二人の向こうからの光が突然途切れた。少し小柄な―――さっきよりは大きいから別の人間だ―――影が二人の足元まで伸びた。 千帆を庇うように後ろに隠し、プロシュートはポケットからベレッタを取り出した。銃口を向けるのと、女の声が聞こえてきたのは同時だった。 「待って!」 プロシュートは狙いをぴたりとつけたまま、自分が驚きのあまり銃を落とさなかったことに感心した。体は長年の習慣を忘れてはいなかったようだ。 覆った影で顔ははっきりとしない。だがプロシュートがその顔を見間違えることはありえなかった。 穴があくほど見つめたのだ。写真がすり切れるほどに見返して、焼き付けて―――何より絶対にやりとげるという覚悟があった。だから見間違えるはずがない。 目の前に立っているのは……ボスの娘、トリッシュ・ウナだ。黒くて大きな目が二人を見つめていた。 「誤解させてしまったのは謝るわ……。でもアナタたちは『信頼できる』。その子の鍵がその証拠。だから力を貸して欲しい……ッ! 今、この状況を切り抜ける力が……ッ!」 遠く、西の方から馬の嘶きが聞こえた。背後で千帆が大きく、息を沈めるようように呼吸を繰り返した。プロシュートは拳銃のトリガーに指をかけた。 薄い皮膚の下で突然、遺体がうねるのがわかった。共鳴している。プロシュートは力でそれを押さえつけると、拳銃を握り直した。 ◆ トランペットの音、力強い男性ボーカルの叫び、リズムを刻むドラム音。 誰だってじっとしてはいられない。膝を小刻みに揺らしていたが、ついには広いフロアに飛び出し、思うがままに体をくねらせた。 ムーロロはそんなディエゴの姿を煙越しに見つめた。咥えた紙タバコがジジジ……と音を立てて、口先で灰に変わっていった。 部屋はタバコの煙、アルコールの匂い、レコードが流す音楽の音でいっぱいだった。 ムーロロはワイングラスにタバコをつっこみ、また意味もなくタバコに火をつけた。ディエゴは変わらず踊り続けている。 曲が終わり、ムーディーな音楽に変わったところで、ディエゴはようやく満足したようだった。 ソファに放り投げた酒瓶を片手にムーロロのいるデスクに戻ってくる。瓶から直接酒を煽ろうとしたが既に空になっていた。ディエゴは唇を曲げ、瓶を放り投げた。ムーロロが代わりにデスクの上の瓶を差し出してやった。 「上機嫌だな」 ディエゴの顔色はいい。頬は上気し、口元にはだらしない笑みが浮かべられていた。 酒を半分ほど煽ったディエゴは一息つき、意味もないニヤニヤ笑いを机越しによこした。 ムーロロはタバコを差し出すと、ディエゴが咥えたのを見てから、火をつけてやった。煙を溶かすように一瞬だけ火があたりを照らした。 ディエゴはゆっくりと煙を吸い、吸った時の倍の時間をかけて煙を吐き出した。ムーロロは顔にかけられた煙を手で払い、顔をしかめた。 「程々にしておいて欲しいもんだ」 「自分も楽しんでおきながらどの口が言うんだ、ええ?」 「俺はほとんど飲んでいやしない」 ムーロロが指さした先には半分ほど減ったグラスと、そこに突っ込まれた何本もの吸殻があった。 ディエゴは自分のタバコもそこに突っ込むと、椅子を傾け、二本足でバランスをとった。 前後に揺するたび、木製の椅子がきい、きい……と浅く鳴いた。いつの間にか音楽も止み、屋敷中にその鳴き声が伝わっていくようだった。 「祝い酒だ。二人の今後の発展を願って!」 「実務は俺だけに任せておいて、その言い草か?」 テーブルには酒とタバコに紛れて、二人の支給品とムーロロの用意した地図が置かれている。その脇には紙とハサミが置かれていた。その様子からついさっきまでムーロロが作業していたことが伺えた。 ディエゴは地図に目線をやった。七つの赤いバツ印、27つの白いコマ(几帳面な文字でそれぞれ名前が書かれている)―――ディエゴは指先で目元をこすると椅子に座り直す。ムーロロは共犯者がようやく会話をする気になったことにほっとした。邪魔なガラクタをどけて、立ち上がる。 「現在生存者は27名、そのうち殺し合いに乗り気なものは限られている。はっきりと打倒を目指している組はジョースター一族を中心に各地に分散していて……」 「その話、長くなりそうか?」 あくびを噛み殺し、ディエゴが呻いた。 「さっさと本題に入ろうじゃないか。もはや俺たちは殺し合いから『降りた』ことなんだしな」 首輪をつつきながらそう続けた。ムーロロは露骨に嫌な顔をすると、椅子に座りなおした。 「俺たちの目的は遺体の総取りだ。誰が死のうが何人くたばろうと知ったことじゃない。  たとえ遺体を総取りにすることがヴァレンタインの計画の一端であったとしても、今はこれが最善手だ」 「一人一人に頭を下げてお伺い立てて来いとでも言うのか。俺たちは対等なはずだぜ、ディエゴ」 「対等―――ほう、対等ねェ」 ディエゴは地図を眺め、遺体を持ったコマの数を数えた。七つのコマ越しにムーロロと目を合わせる。ムーロロは突然帽子の裏地に興味を持ったようで、視線が合うことはなかった。しばらくそうした時間が流れたが、ディエゴは鼻を鳴らし、話を進めた。 「俺はそんなお利口さんじゃないぜ、ムーロロ。奪い取る……カスどもたちには犬のエサでもくれてやれ、だ」 そう言いながらディエゴは緑色の紙とハサミを取りあげ、何物かを作り始めた。ムーロロの目の前で緑のコマが次々と積み上がっていく。 その緑のコマは地図のあちこちに一見無造作に配置されていった。十はあるようだった。ディエゴはそれらを自由自在に動かしながら、言う。 「お伺いはしなくていい。ただ狩りには参加してもらうぜ。いや、猟か。追い込み猟だ」 「銃の腕前には自信がない」 「司令官としての技量を見込んでの採用だぞ、カンノーロ・ムーロロ君」 「前線に立たなくていいと聞いてほっとしたよ」 ムーロロはディエゴが動かしたコマをじっと眺めた。しばらくしていくつかのコマを持ち直し、ほんの少しだけ手直しを加えた。 「現状一番の問題はカーズだ。ジョースター一族をはじめとしたお利口さん方は厄介だ―――厄介だが対処の仕様はある。  恐竜たちの物量作戦で押しつぶすことも不可能じゃあない。混乱を引き起こし、各個撃破を狙ってもいい。  流石に全員大集合となったら手がつけられないが情報網では俺たちが上だ。進路を見張って妨害工作を繰り返せばいい。  だがカーズ、やつにはこれが効かない。俺のスタンドもお前のスタンドも、柱の男には敵わない。だから―――」 柱の男を意味する黒のコマは盤上に一つ。その存在は太く、逞しく……なによりも大きい。 ムーロロは東にいた参加者をまとめ―――トリッシュ、玉美、ナランチャ、プロシュート、双葉千帆の文字をディエゴは読み取った―――中央にいたいくつかの参加者もそこに加えた。七つのコマの周りに恐竜たちを配置して足止めをする。 そこに南南西からまたも恐竜を使い、黒いコマを誘導、一団とぶつける。黒いコマが集団に飛び込みいくつかのコマをなぎ倒した。ムーロロは顔を上げ、ディエゴの様子を伺った。 「漁夫の利狙いだ」 「消耗を狙って横からかっさらう―――いいじゃないか。最終直線まで集団を利用して足を休め……刺して、奪い取る。俺好みだ」 ディエゴはムーロロからカーズのコマを受け取ると、そのまま群がっていた周りのコマ全てを横倒しにした。そこには柱の男一人だけが立っていた。 「だが―――『こうなったら』……どうする?」 七つのうち二つのコマが持っていた遺体がカーズのコマに加わり、カーズが持つ遺体の総数は三つになる。相対する集団は周りに存在しない。 今度はムーロロが様子を伺われる番だった。ディエゴはカーズのコマを指で弾き飛ばし、ムーロロの方へよこした。 「消耗したカーズ―――本当に消耗していればの話だが―――相手でも、俺とお前じゃ相性が悪い。  やつは稀代の大食いだ。油断したらカードでも恐竜でもなんでも食われるぜ」 しばらくの間、二人は無言のまま見つめ合う。保身と策略が言葉もなく二人のあいだを飛び交った。 部屋の真下でごそごそと誰かが動く気配がした。ムーロロは黒いコマを取り上げ、やれやれと小さく呟いた。 「作戦は弾切れか、司令官」 「いや、あるぜ。ただリスクがある。懐柔に自信は?」 「イタリアマフィアを一人手懐けたという実績はあるが」 「よっぽどお人好しなんだろうな、そいつァ。それかお前が知らんうちに裏切ってる可能性もあるぜ、気をつけな」 ムーロロは緑のコマを二つ作ると中央の参加者二人の傍に動かした。そのまま二人を挟み込み、四つのコマが北へと向かう。 ディエゴはその一団がDIOの館にたどり着くのをじっと眺めていた。ムーロロは視線をコマに向けたまま、小さく言った。 「コイツは文字通り、俺たちにとっての爆弾になるぜ、ディエゴ」 「爆弾ならもうすでに一つ抱えているさ」 ディエゴはムーロロが持つコマにかかれた名前に目を落とす。不安と疑いを覆った、皮肉な笑みが浮かんでいった。 「対カーズ最終兵器―――『キラ・ヨシカゲ』、か……」 ◆ その一室は膨らみきった風船のようであった。 「周りに敵は?」 正面の壁にもたれたナランチャは興味なさげに発言者―――プロシュートを見つめ返した。しばらく待ったが答えは帰ってこなかった。 ナランチャ、とトリッシュがたしなめるように言ったが、ナランチャは黙ったままだった。トリッシュの目線から隠れるように顔をうつむかせた。 トリッシュが間を取り持つかのように、プロシュートに目線を向けた。プロシュートはソファに座りなおすと肩をすくめた。 「俺がアンタに危害を加えることを恐れているらしい」 「そんな気はないのよね?」 「顎先の餌より背後の虎の方が気になるたちでね。シーザー、もう一度説明を頼む」 風が唸りをあげると、ガタガタと建物全体が震えた。シーザーは窓の外を一瞥すると向き直り、出会ったばかりの仲間たちを見た。 緊張感と不安が部屋の中に漂っている。かつて相対していたギャングの二人がその中心にいた。 机をはさんで傾きかけた混乱を支えていたのは二人の少女たちだった。トリッシュは背後に立つナランチャをたしなめ、千帆は隣に座る男の自制心をつっついた。 シーザーは唇を噛み、細ばった隙間からゆっくりと息を吐きだした。足元でイギーが眠たげにあくびをひとつした。 「トリッシュたちと合流したのはほんの偶然だったんだ。  フーゴ―――はぐれた俺たちの仲間のひとりで、トリッシュの仲間でもあるらしい―――を探して東に向かってる途中、気づいたら恐竜たちに囲まれてしまっていた。  とにかく数が多かった。埒があかないと思って強引に包囲網を切り抜けたら……」 「私たちと出くわした、ってわけ」 トリッシュがあとを引き継ぎ、そう付けくわた。隣で玉美が大きく、励ますように頷いていた。 「私たちがアナタたちと会ったのはその直後。恐竜に襲われて、最初にナランチャがスタンド攻撃をくらってしまった。  恐竜化が始まってしまうと戦いはジリ貧で―――玉美のスタンドは戦闘向きじゃないし、一人でも仲間が必要だと思って……」 「それであの茶番か」 プロシュートの声は抑えていたが、皮肉げだった。ナランチャは壁から背を離すとトリッシュを庇うように前に進んだ。プロシュートにむかって凄んでみせる。典型的な威嚇の態度だった。 そんな態度をプロシュートは鼻で笑った。慌ててシーザーがその場を取り繕った。二人の間に割ってはいると、説明を引き継いだ。 「俺が柱の男―――カーズを見かけたのはだいたいそれぐらいの時だ。  俺とイギーはしんがりを引き受けていたんだ。トリッシュたちのために時間を稼ぎながら戦っていたら、恐竜たちが突然方向を変えはじめた。  追いかけた先で、カーズは五匹程度の恐竜に囲まれていた。それほど苦戦しているようには見えなかった」 「カーズについて、もう少し詳しく教えてくれ」 「柱の男たちは不老不死、驚異的な柔軟性と筋力をもった種族だ。太陽の光とこの俺が持つ技術―――波紋以外弱点はない。  力でも能力でも奴らを押し込むのは至難の業だ。奴らは速く、強く、固く、鋭い――― 一対一で戦えば死を覚悟して挑むしかない」 「で、そんなカーズやら恐竜やら波紋使いやら―――そんな戦いのど真ん中に俺たちはノコノコ迷い込んじまったってわけだ」 プロシュートは一息をおくと、頬の筋肉を強ばらせた。 「これが誰かに仕組まれたものじゃなければな」 なにか大きなものを切り崩したような音が聞こえた。地面が揺れて、窓枠がやかましく鳴いた。 トリッシュは時計を一瞬見つめ、それからナランチャを振り返った。 ナランチャは固く結んでいた腕をのろのろとほどいた。相変わらず席にはつかず、立ったままだった。 壁に背中をもたらせたまま、目の前にレーダーを展開し状況を報告する。左目は暗く、しつこいくらいにプロシュートから離れなかった。 「―――この家の周りをうろつく反応が五つ、西に大きな反応が一つ。その大きな反応を中心に衛星みたいに動いてる奴が全部で六つ。  数が減ったり増えたりしてるから、きっと戦闘中なんだろう。じりじりとこっちに寄ってきてる。このままいけば十分もしないうちに俺たちとかち合う」 「……遺体が反応する方向と一緒、ですね」 千帆が不安げにプロシュートの顔を見た。部屋の隅でシルバー・バレットが首を振り、低く嘶いた。 しばらく沈黙が続いた。風が窓を揺する音、地面が震えて花や椅子が擦れる音―――どんな音でも不安をわき起こさないものはなかった。 冷たい空気が低いとろこにたまり込むように、そこにいた六人(と一匹)の胸の内に暗い気持ちを渦巻かせた。 なし崩しに築かれた、やわな同盟がぐらついている。同盟でありながら協力する目的が霧で覆われていた。 本当に協力する必要はあるのか。協力して解決できるものなのだろうか。 ぴしゃりと膝を叩く音で皆が我に返る。全員の視線を集めると、プロシュートは一人一人と目線を合わせながら話を続けた。 「できすぎた結果はこの際脇においておくとしよう。  誰かが恐竜を使って俺たちをカーズとぶつけようが、ぶつけまいが、どっちにしろやつはほうっておけない脅威だ。  逃げようにもヤツの―――柱の男のスピードじゃいずれ追いつかれる。遺体という『レーダー』を互いに持っていることだしな。  だからここは逃げずに立ち向かう―――! 今ッ! ここでッ! カーズを……―――ぶッ殺す!」 プロシュートの言葉が部屋と男達に染み込んでいった。ナランチャはほんの一瞬だけ男のことを警戒することを忘れた。 固く覆われた殻の中に強引に割り込んでくる男……ナランチャはブチャラティのことを思いだした。そしてそんなことを考えた自分に驚き、嫌になった。 自分の恩人であり、尊敬する人とトリッシュの命を狙う暗殺チームの男。 その二人を対等のように扱いかけた自分が嫌になった。ナランチャはプロシュートを睨みつけたまま、爪先を手のひらに食い込ませた。 違う、コイツはトリッシュを狙う『悪』なんだ―――それでもナランチャの耳に、プロシュートの言葉は力強く響いていた。 「前に立つのは俺とイギーと……アンタだ、ボスの娘」 「トリッシュよ。名前で呼んでもらっても構わないわ」 トリッシュは素早く返し、微笑んだ。シーザーはその美しい横顔を眺め、ため息を漏らした。気を抜けば恋に落ちてしまいそうだった。 プロシュートの顔に奇妙なシワが浮かんだ。強引に笑おうとしたところを無理やり止めたかのような、不自然な表情だった。千帆は隣で物珍しそうに、そんな男の顔を眺めた。 「俺と、イギーと―――……トリッシュ。  シーザーの言うとおり、柱の男たちは相当にタフだ。だが奴らに弱点がある。  シーザーの素敵な波紋以外にひとつだけ……それも致命的な奴がな」 「馬鹿な、やつらは千年も生きる超生物だぞ……!」 「その超生物とやらを平気でここに呼びだしたんだ輩がいるんだぜ?」 プロシュートは喉元に手を伸ばすと、ゆっくりと首輪をなでた。そして左手でもったベレッタの先をそこに押し当てた。 「こうすれば例え波紋使いでなくても、スタンド使いでなくても……千帆みてーなガキにだってカーズは仕留められる」 シーザーはプロシュートをじっと見つめ、ゆっくりと頷いた。同意はしたものの、以前険しい顔付きのままだった。 「奴がそう簡単に接近させてくれるとは俺には到底思えない」 「そのためにアンタがいるんだ、シーザー」 「……話の筋が読めんな」 「マフィアが人を殺すとき、わざわざターゲットを薄暗い森の中に呼び出したりするか? ただでさえ厄介な柱の男を身構えさせ、わざわざことを複雑にする必用はない。  大切なのはヤツが予想もしない方向から鉛玉をぶち込んでやることだ。恐竜相手に奴も苛立ってる頃だ。俺たちは可能な限りやつを挑発する。  ダメージを与えることが目的じゃあない。だから交戦回数はできるだけ少なくする。足止めして状況把握に務め……焦らせるだけ焦らし上げる。  シーザー、アンタが最初前に立たないのはそのためだ。俺たちの戦い次第でアンタが一番負担を負いかねない」 シーザーは頷き、拳を握った。 「ナランチャはレーダーで周囲の確認、不安要素の排除に務める。恐竜たち、ほかの参加者たち―――できるだけ俺たちが戦いに集中できるように、頼む」 「私と玉美さんは……?」 「ナランチャと一緒に行動してくれ。お前たちの役割は遺体の死守。お前たちが遺体を守るんだ。いいな、信頼してるぜ」 言い残したことは何もないように思えた。時間も、危機も迫っていた。玉美が揉み手をしながら不安げにナランチャを仰ぎ見た。 ナランチャは何も言わず壁から背を離すと、武器の点検をし始めた。プロシュートはそれを見てソファから立ち上がった。それが仲間たちへの合図になった。 プロシュート、トリッシュ、イギー。シーザー、ナランチャ、玉美、千帆。二つに分かれたチームが、それぞれ戦いに備えていく。 街頭に飛び出す直前、ざわつく仲間たちの背中にプロシュートは小さく言った。 「犬死にするんじゃねーぞ、てめェら」 ◆ 「おい、ムーロロ。お客様はお疲れのようだぞ」 「琢馬ーッ! 琢ッ馬―! いねェのか、おいッ!」 「いや、僕は……―――」 宮本は青白い顔で何事かをもごもごと呟いた。ムーロロの声でそれは遮られ、誰の耳にも届かなかった。 そうしているうちに扉が開き、琢馬がのっそりと姿を表した。扉を半分ほど開くと部屋に入らないまま顔だけを覗かせた。 宮本以上に不健康で、不機嫌そうだった。ムーロロはそんな迷惑そうな表情を無視して一方的に話を進めた。 「お客さんだ。宮本輝之輔と吉良吉影さんだ。お客さんはどうやらお疲れのようなんでな、部屋に案内してやってくれ」 宮本は琢馬の背後から現れた三匹の恐竜を見て、たちまち反論することを諦めた。どうにでもなれ、といった気持ちだった。 諦めと疲れで体を引きずりながら扉へと向かう。琢馬はほんの少しだけ脇に避けると宮本が通れるように道を開けてやった。 琢馬は部屋をぐるりと見渡した。煙が充満し、荷物が散乱し、机の上には地図と何かを表すピンのようなものが転がっているのが目に映った。そして不愉快そうに立ちすくむ一人のサラリーマンがいることも。 最後にほんの少しだけ地図に目をやると、琢馬は扉を閉め、部屋から出ていった。直前に一匹の恐竜が入れ替わるように部屋に滑り込んだ。 そうしてそこにはディエゴ、ムーロロ、吉良吉影が残された。 「まぁ、立ち話もなんだ。座ってくれよ、吉良吉影」 ムーロロの言葉を無視して、吉良は一直線に窓に向かっていった。部屋中にある窓を全開にして、煙を追い払う。 続いてジャケットを脱いで角に置いてあったハンガーにかける。椅子に座る前にハンカチでタバコの灰を落とすと、ようやく腰を下ろした。 匂いと汚れにたいそう迷惑そうな表情を吉良は浮かべていた。出迎えの準備をするには急だったもんで、とディエゴが見え透いた嘘で茶化したがぴくりとも眉を動かさなかった。 ムーロロは温め直しておいたポットからお湯を注ぐと吉良の前に茶を注いだ。吉良は黙り込んだままだった。 「毒は入っちゃいやしねぇよ」 吉良のカップから一口飲むと、カップを手元に押してよこす。吉良は干からびた鼠を差し出されたかのような目でカップを見た。 無言のままポットに手を伸ばすと、違うカップに茶を改めてついで、飲んだ。ムーロロは舌打ちをした。ディエゴはクスクス笑いを堪えられなかった。 それから吉良は時間をかけてネクタイを緩め、肩を鳴らした。もう一口茶を飲むと、目の前に座る二人の顔を眺めた。 「それで?」 反応はない。ディエゴは人を小馬鹿にした笑みを貼り付け、ムーロロはむっつりとしまま吉良を睨んでいる。 恐竜たちに囲まれ、半ば強引にここまで連れてこられた吉良のイライラは相当なものだった。 カップを下ろすと、ガチャン、と危なっかしい音がした。苛立ちを自覚していたが吉良はそれを堪えられなかった。 「それで? 君たちは随分と私たちのことを知っているようだが、いったいどういう目論見で私たちを―――私をここに呼んだんだね」 部屋に残されたのが自分一人という点も気に入らなかった。部屋に案内されたかったのはむしろ自分だ。 交渉事は宮本に任せたかった。シャワーが浴びたい。ベットで一晩とは言わないが、数時間仮眠がとりたい。 平穏を求めて体が一斉に抗議している。煙の残り香がむっと吉良の鼻をくすぐった。吉良は額を両手でこすると、机の上に荒々しく手をおろした。野蛮な音を立てないように意識しなければならなかった。 ディエゴは組んでいた足をほどくと前のめりになって、ゆっくりと話し始めた。そののろまさが吉良の神経を逆撫でにする。 「アンタと手を組みたい。おっと、握手をする気はないぜ。アンタの手がどれだけ綺麗だろうと触れるつもりはない」 吉良はもう我慢しなかった。青筋がぴくぴくと動くのが自分でもわかった。 気に入らない。自分の能力がバレているのが気に入らない。優位を振りかざして自分の自由を侵されているのが気に入らない。 いっそのことここで戦ってやろうかとも思った。平穏なあの世界なら迷わずそうしただろう。自分の能力がバレることは決してあってはならないことなのだから。 吉良はハンカチで手首についた汚れをおとし、右の爪をまじまじと見た。ぼそぼそと噛み殺した声で返事をする。 「そこまでわかっているのなら、私がどれだけプライベートを大切にするかもわかっているはずだ」 「今のところアンタのスタンド能力をべらべらしゃべろうって気はこれっぽちもない」 「通帳を盗んでおいて金に手をつけてないと言われたら君は信用できるのか? とんだお人好しだな」 ディエゴの笑い声は場違いに部屋に響いた。隅にいた恐竜が顔を上げ、まるで賛同するように鼻を左右に降った。 ムーロロは帽子をかぶりなおすと二人の会話に割って入った。 「まァまァ、ミスター・吉良……俺たちはアンタと対立する気は一切ないんだ。それどころか、ひょっとしたら俺たちと組む必要すらないかもしれない。  アンタに望んでいることは、ぶっちゃけた話だ、ある時間までここにいて欲しい、ただそれだけのことだ」 吉良が鼻を鳴らした。不信感が体中からにじみ出ている。このままではマズイな、とムーロロは思った。 対立することが考えになかったわけではない。だが今はまずい。近距離でのキラー・クイーンの強さは充分観察済みだ。 今戦いが起きれば三人の中で真っ先に自分が始末される。ムーロロは横目でディエゴを眺めた。ディエゴの両手は頭の後ろで組まれ、足は机の上だ。 援護は期待できない。あるいは自分は試されているのだろうか。舌打ちの代わりにもう一度帽子をかぶり直した。使いぱしりが板についてしまいそうだった。 「もちろんただとは言わないさ。俺たちが差し出せるもんはそれ相応のものを用意してある。  アンタが望む平穏と安心とやらを俺たちは提供するつもりだ」 ムーロロは情報のカードを切った。地図に広げられた現状を吉良に余すことなく伝えていく。遺体については伏せたままだった。 ヴァレンタインについて、ジョースター一族について、そしてカーズについて。 トランプたちから情報が入ればリアルタイムで駒をさりげなく動かした。吉良は姿勢を正した。少なくとも興味は引いたようだった。五分ほどで話が終わったが、その間、吉良は一言も話を挟まなかった。 「ナンセンスだ」 ムーロロが話を終えた直後、吉良はバッサリ話を切って捨てた。冷え冷えとした視線が二人に向けられた。ディエゴは小さく、鼻で笑った。 「海外には捕らぬ狸の皮算用という言葉がないようだな。  それになにより気に食わないのが、結局のところ直接カーズと対峙するのは私だけじゃないか。  君たちはぬくぬくと安全地帯から配下を使って『サポート』とやらをするだけだ。それで労を惜しまない、というつもりなら―――私を舐め腐るにもほどがある」 風が窓辺のカーテンをゆっくりと揺らしていった。部屋にかかっていた靄はすっかり去り、熱もいつの間にか失われていた。 三人は黙り込んだままだった。誰も視線を合わせようとしなかったし、話を始めようともしなかった。諦めと気だるさが部屋に充満していった。 吉良は席を立つと扉まで向かった。一度だけ二人に視線を送り、そのままドアノブを掴む。背中から投げかけられたムーロロの声が、吉良を最後の一瞬で引き止めた。 「くれてやるよ」 振り返ってみれば机の上には干からびた『なにか』が転がっていた。 吉良は黙ってそれを見つめた。自分を引き止めるほどの価値がそんなものにあるとは到底思えなかった。 ムーロロは手札を切り尽くした、と言わんばかりに椅子に身を投げ出し返事を待っている。吉良はムーロロの隣に座ったディエゴに目をやった。 平静を装っていたが、驚きを噛み殺そうと頬が神経質そうに震えていた。あの余裕ぶったディエゴの表情は、一欠片も残っていなかった。 吉良は手元に目線を落とし、ゆっくりと扉を占めた。そのまま扉に寄りかかり、腕を組む。ムーロロの視線が刺すように吉良に注がれていた。吉良は黙ってどちらか―――ムーロロか、ディエゴか―――が口を開くのを待った。しばらく無言が続き、ムーロロが口を開いた。 「身につければ―――身に付けるって言葉が適当かは俺にはわからんが―――少なくとも『平穏』の一部は手に入るぜ」 そういってムーロロは首をなでた。吉良は話が飲み込めず、無表情のまま二人を見返した。だが『平穏』の意味を理解したとき、吉良は思わず扉から腰を浮かした。 ムーロロはもう一度首元をなで、隣に座るディエゴの方を顎でしゃくった。ディエゴは首をすくめた。同意か、諦めかはそこからは読み取れなかった。 吉良は少しの間ためらったが、ゆっくりとテーブルに近づいた。椅子には座らなかった。机の上の遺体に目をやり、しばし考え込んだ。ムーロロは吉良の言葉を待った。 「この館に水は通ってるのかね」 考えあぐね、ひねり出したのはそんな問いだった。吉良のその言葉を聞き、ムーロロはニヤリと笑いを浮かべた。 遺体に手を伸ばすと、そのまま吉良の方へと押しやった。吉良はまだ手を伸ばさなかった。だが視線は遺体に向けられたままだった。 「もちろん」 「君がさっき言った『ある時間』というのはおおよそ何時までの事なんだ」 「そうだな、ざっと見積もって今から二時間ってところか」 「なるほど」 なるほど、の言葉の裏に込められた同意。吉良が目線を遺体から離せないうちに、ムーロロとディエゴはさっと視線を交わしあった。 駒はどうやら思い通り動いてくれたようだった。カードと恐竜から入った情報によると、カーズは計算通り東の遺体に惹きつけられ、集団と戦いに入るようだった。 そして仮にカーズが戦いに勝利しても―――二人の手元には少なくとも『エース』が残った。 あとは現状から目を離さず、対処を誤らなければ盤上がひっくりかえることはない。もしも、このまま、何も起こらなければ―――。  ―――突風が部屋を通り抜け、窓をガタガタと大きく揺らした。 「興味深い話ですね」 吉良は驚いたように顔を上げた。ディエゴとムーロロは凍りついた。ありえない第四の声が部屋の隅から聞こえてきた。 ムーロロはゆっくりと席から立ち上がると、後ろを振り返った。腕がブルブルと震えて、それをごまかそうと帽子をかぶり直したがうまくいかなかった。 危うく帽子を取り落としそうになったので、そのまま顎をなでて、それをごまかそうとした。 ディエゴはやれやれと小さく呟き、皮肉な笑みを浮かべた。振り向いた先には……一人の少年がいた。 「カーズ討伐同盟―――僕もぜひ一枚かませて欲しいと思います」 やたらと朗らかな声がこの場には場違いだった。月が背後からさし、その顔に影を落としていた。 だがムーロロは知っている。この耳をくすぐる心地よい『彼』の声を知っているッ! 春になり、花が一斉に芽吹くように、安心感と光が部屋中に咲き誇っていった。ジョルノ・ジョバァーナは控えめな笑みを浮かべ真っ直ぐな視線を三人に向けた。 その足元にはぺしゃんこになった恐竜の皮がうずくまっていた。それもムーロロが見つめている間にゆっくりと姿を変え、最後には可愛らしい華が咲いた。 ディエゴはしばらくの間窓枠に腰掛けた少年を見つめていたが、のろのろと時間をかけて動き出すと、吉良とジョルノが座れるように椅子と机をきれいにしてやった。そうして諦めたように、どさりと椅子に身を投げ出した。 ジョルノは控えめにその様子を眺めていた。ディエゴが動きを止めたのを見て、窓枠から腰を上げる。二人の元に近寄り、一礼してから椅子に座った。 吉良は混乱した表情を浮かべていたが、同じように最後には席に着いた。机の上にはまだ遺体が転がっており、吉良はそれに手を伸ばしたいという欲望と必死で戦っているようにも見えた。 ディエゴもムーロロも何も言えないうちに、ジョルノはさっと手を伸ばした。机の上の遺体が吉良の手元からズズズ……と音を立ててジョルノの方へと引き寄せられた。三人は―――めいめい驚きを必死で隠そうと努力を払い―――黙ってそれを見つめた。 すっかり手元に遺体の脊椎を動かすと、ジョルノは耳元へと手を伸ばし、ゆっくりと『それ』をおろした。 ジョルノは『遺体の左耳』を机の上に転がし、三人の顔をそれぞれ眺めた。そして落ち着いた、はっきりとした声で問いかけた。 「僕の話を聞いてもらっても?」 誰も返事も反論も用意していなかった。ジョルノはさわやかな笑みを浮かべ、それでも誰かが口を開いてくれるのを待っていた。 ◆ 頭上では誰も観るはずのない信号機が、黙って赤いライトを照らしていた。 数秒するうちにそれは青いフラッシュに変わり、トリッシュの隣に立つ男の顔に光を投げかけた。 二人は十字路の交差点、そのど真ん中に立ち、敵を待った。時々恐竜たちの叫びが聞こえて、トリッシュの中で不安が膨らんだ。 「ギャングには怯えないくせに、古代生物にはビビるのか」 プロシュートは真正面を向いたまま、そう話しかけた。トリッシュは流し目で男を見て、表情を変えないようにしながら返事をした。 「アタシ、こう見えて臆病なのよ。父に会う時もそうだった。足が震えて立てなくなるぐらい、怖かった」 「父親は父親でしかない。怖いとか怖くないとかどうこう心配するってのは……親子らしくはないな」 「あの人も同じことを言ってたわ」 ブチャラティも―――その言葉を聞いたプロシュートは眉をひそめ……返事をする前に、現れた影に目を凝らした。 道路の突き当たり、T字路を曲がって一人の影がこちらに向かってきていた。急いではいない。隠れてもいなかった。 ひたひたと柔らかい足音を立てながら、着実に二人のもとへ近づいてくる。左手には死にかけの恐竜がぶら下げられていた。刀で貫かれ、断末魔の痙攣を上げている。 街灯がカーズに光を落とした。長い髪が顔半分を覆うように、怪しく揺れている。トリッシュにはカーズが笑っているようにも見えた。 カーズが左の刃を引っ込めると、つられて恐竜の体がカーズの体に引きずり込まれていった。来るぞ、と低い声でプロシュートが言った。 二人の頭上で信号が赤に変わった。カーズの体が沈み、そして素早い動きで二人にせまった―――赤い余韻がカーズを追った。 捉えきれない影が、二人の間に割って入るように飛び込む。プロシュートがトリッシュを突き飛ばし、カーズの前に立ちはだかる。 刃が振り上げられた。赤いフラッシュが三人の顔を照らした。プロシュート、とトリッシュの叫び声が道路に響いた。 グレイトフル・デッドの腕をかいくぐり、カーズの刃が振り下ろされる。 ◆ 遠いどこかで雷鳴が轟いたような―――嫌な空気の震えをジョセフは感じ取った気がした。 しばらくそのまま耳をすませたが、何も聞こえなかった。ジョルノのやつ、大丈夫なんだろうなと思わずひとりつぶやいた。 振り返って見れば、黒く崩れた空条邸がジョセフにむかって倒れこむように立っていた。何かしら不吉な感じがする光景で、向かいの道路に場所を移した。 「承太郎はなし、おじいちゃんもなし―――いやァァアな感じだぜ~~~~~」 ジョセフは頬を引っかきながら左手からスタンドを出した。紫色の茨が地面を撫で回すように伸びていった。 待つのが自分の役割だと分かっていたが、のんびりするのも性には合わない。ガンバルのも気合を入れるのも大嫌いだが、みずみすチャンスを逃すのはもっと嫌いだった。 ジョセフは右耳に手を伸ばすと、そこから『遺体』を引きずり出した。出現した地図を辿り、ナヴォーナ広場でみつけたものだ。 『ジョセフ、僕はあなたを信頼しました。だからあなたも僕を信頼して欲しい。  この遺体、片方をあなたに渡します。これをもってあなたは承太郎と合流してください。  はぐれてしまっても僕たちには血の繋がりがある。加えてこの遺体の感覚をたどってもらえれば必ず会えます。  大丈夫、僕には策がありますから―――」 「お前を信頼するのはいいけどよォ~~、もうちょっとかっちょよく会う方法ってのはないもんかね」 改めて見ると少し……いや、かなり気色が悪い。誰のとも知れない朽ちない遺体。人の体に自由に出入りする遺体。 指先でつまんで匂いを嗅いだが、かすかにかび臭いだけで特別なにがあるってわけでもなかった。 気持ちわりィ~~! と一人でふざけてみせたが、反応してくれる仲間がいるわけでもなく……ジョセフは虚しくなって仕事に取り掛かることにした。 遺体を手の中に収め、神経を集中する。目には見えないがたしかに感じる遺体の呼吸―――或いはそれが持つパワーを探った。 そしてそれを茨の先へと流し込んでいく。なかなかうまくはいかないが、時間はある。ゆっくり、ゆっくりと時間をかけていく。 自然と使い慣れた―――いつもの波紋の呼吸が戻っていた。 「釣れたぜ! 大漁、大漁!」 地面に浮かんだのは会場全体を表す地図。そこに浮かんだ遺体全ての在り処。 ジョルノに信頼された、と大見得切られた以上大人しくするってのが大人な態度だろう。 だが残念なことにジョセフは大人になった気もないし、いつまでも子供心を忘れらないタイプだ。 少なくとも年をとってもそうありたいと思ってる―――60になってもアラビアのロレンスに憧れてるようなそんな男になりたいと密かに願っている。 ならば空条邸でとどまっているなんていうのは無理な話だった。ようするに承太郎と合流すればいいんだろ、とジョセフは勝手に納得した。 「ど・れ・に・し・よ・う・か なァ~~~?」 DIOの館に反応が四つ、その西に二つ。東の市街地にも四つ。南の方に残り二の反応が記されている。 ジョセフはニンマリと笑った。暗闇の中で白い歯がキラリと光った。疲れてはいたが気分はいい。 やってやろうじゃないか―――前進と希望はジョセフの胸いっぱいに広がっている。 【D-3 DIOの館/一日目 夜中】 【ディエゴ・ブランドー】 [スタンド]:『スケアリー・モンスターズ』+? [時間軸]:大統領を追って線路に落ち真っ二つになった後 [状態]:健康 [装備]:遺体の左目、地下地図、カイロ警察の拳銃(6/6) [道具]:基本支給品×4(一食消費)、鉈、ディオのマント、ジャイロの鉄球     ベアリングの弾、アメリカン・クラッカー×2、シュトロハイムの足を断ち切った斧     ランダム支給品7~12、全て確認済み    (ディエゴ、ンドゥ―ル、ウェカピポ、ジョナサン、アダムス、ジョセフ、エリナ、犬好きの子供、徐倫、F・F、アナスイ、織笠花恵) [思考・状況] 基本的思考:『基本世界』に帰り、得られるものは病気以外ならなんでも得る。 1.ムーロロを利用して遺体を全て手に入れる。 [備考] ※DIOから部下についての情報を聞きました。ブラフォード、大統領の事は話していません。 ※承太郎の支給品(1つのみ)、花京院の支給品(1つのみ)、仗助の支給品(2つ)を開封しました。  それぞれ順にSBR第一レース後のシャンパン、リサリサのタバコ、レコードプレーヤーと90年代ベストヒット!レコード集でした。 【カンノーロ・ムーロロ】 [スタンド]:『オール・アロング・ウォッチタワー』(手元には半分のみ) [時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』開始以前、第5部終了以降 [状態]:健康 [装備]:トランプセット、フロリダ州警察の拳銃(ベレッタ92D 弾数:15/15)、予備弾薬15発×2セット、恐竜化した『オール・アロング・ウォッチタワー』一枚 [道具]:基本支給品、ココ・ジャンボ、無数の紙、図画工作セット、川尻家のコーヒーメーカーセット、地下地図、遺体の脊椎、角砂糖     不明支給品(2~10、全て確認済み、遺体はありません) [思考・状況] 基本行動方針:自分が有利になるよう動く。 1.ディエゴを利用して遺体を揃える。ディエゴだってその気になればいつでも殺せる……のだろうか。 2.琢馬を手駒として引き留めておきたい? [備考] ※現在、亀の中に残っているカードはスペード、クラブのみの計26枚です。  会場内の探索はハートとダイヤのみで行っています。 それゆえに探索能力はこれまでの半分程に落ちています。 ※ハートとダイヤの何枚かが恐竜化しています。 【吉良吉影】 [スタンド]:『キラークイーン』 [時間軸]:JC37巻、『吉良吉影は静かに暮らしたい』 その①、サンジェルマンでサンドイッチを買った直後 [状態]:左手首負傷(大・応急手当済) [装備]:波紋入りの薔薇、空条貞夫の私服(普段着) [道具]:基本支給品 バイク(三部/DIO戦で承太郎とポルナレフが乗ったもの) 、川尻しのぶの右手首、     地下地図、紫外線照射装置、スロー・ダンサー(未開封)、ランダム支給品2~3(しのぶ、吉良・確認済) [思考・状況] 基本行動方針:優勝する 0.自分が優位になれるよう立ち回る 1.宮本輝之助をカーズと接触させ、カーズ暗殺を計画 2.宮本の行動に協力(するフリを)して参加者と接触、方針1の基盤とする。無論そこで自分の正体を晒す気はない 3.機会があれば吉良邸へ赴き、弓矢を回収したい [備考] ※宮本輝之助の首輪を爆弾化しました。『爆弾に触れた相手を消し飛ばす』ものです(166話『悪の教典』でしのぶがなっていた状態と同じです) ※波紋の治療により傷はほとんど治りましたが、溶けた左手首はそのままです。応急処置だけ済ませました。 ※吉良が確認したのは168話(Trace)の承太郎達、169話(トリニティ・ブラッド)のトリッシュ達と、教会地下のDIO・ジョルノの戦闘、  地上でのイギー・ヴァニラ達の戦闘です。具体的に誰を補足しているかは不明です。 ※吉良が今後ジョニィに接触するかどうかは未定です。以降の書き手さんにお任せします。 ※宮本と細かい情報交換は(どちらも必要性を感じていないため)していません。 【ジョルノ・ジョバァーナ】 [スタンド]:『ゴールド・エクスペリエンス』 [時間軸]:JC63巻ラスト、第五部終了直後 [状態]:体力消耗(中)、精神疲労(小)、両腕に対する違和感大 [装備]:遺体の左耳 [道具]:基本支給品一式、地下地図、トランシーバー二つ、ミスタのブーツの切れ端とメモ [思考・状況] 基本的思考:主催者を打倒し『夢』を叶える。 1.この場を丸く収め、『夢』実現に向けて行動する。 2.ジョセフ・承太郎と合流する。 【蓮見琢馬】 [スタンド]:『記憶を本に記録するスタンド能力』 [時間軸]:千帆の書いた小説を図書館で読んでいた途中 [状態]:健康、精神的動揺(大) [装備]:遺体の右手、自動拳銃、アヌビス神 [道具]:基本支給品×3(食料1、水ボトル半分消費)、双葉家の包丁、承太郎のタバコ(17/20)&ライター、SPWの杖、     不明支給品2~3(リサリサ1/照彦1or2:確認済み、遺体はありません) 救急用医療品、多量のメモ用紙、小説の原案メモ [思考・状況] 基本行動方針:他人に頼ることなく生き残る。 0.??? 1.自分の罪にどう向き合えばいいのかわからない。 [備考] ※参戦時期の関係上、琢馬のスタンドには未だ名前がありません。 ※琢馬はホール内で岸辺露伴、トニオ・トラサルディー、虹村形兆、ウィルソン・フィリップスの顔を確認しました。  また、その他の名前を知らない周囲の人物の顔も全て記憶しているため、出会ったら思い出すと思われます。  また杜王町に滞在したことがある者や著名人ならば、直接接触したことが無くとも琢馬が知っている可能性はあります。 ※ミスタ、ミキタカから彼らの仲間の情報を聞き出しました。 ※スタンドに『銃で撃たれた記憶』が追加されました。右手の指が二本千切れかけ、大量に出血します。何かを持っていても確実に取り落とします。  琢馬自身の傷は遺体を取り込んだことにより完治しています。 【宮本輝之輔】 [スタンド]:『エニグマ』 [時間軸]:仗助に本にされる直前 [状態]:左耳たぶ欠損(止血済)、心臓動脈に死の結婚指輪 [装備]:コルト・パイソン、『爆弾化』した首輪(本人は気付いていない) [道具]:重ちーのウイスキー、壊れた首輪(SPW)、フーゴの紙、拡声器 [思考・状況] 基本行動方針:柱の男を倒す、自分も生き残る、両方やる 0.??? 1.柱の男や死の結婚指輪について情報を集める、そのためにジョセフとシーザーを探す 2.1のため、紙にした少年を治療できる方法を探す 3.吉良とともに行動する。なるべく多くの参加者にカーズの伝言を伝える 4.体内にある『死の結婚指輪』をどうにかしたい ※フーゴをシーザーではないかと思っています。 ※思考1について本人(ジョセフ、シーザー)以外に話す気は全くありません。  従って思考1、2について自分から誰かに聞くことはできるだけしないつもりです。  シーザーについては外見がわからないため『欧州の外国人男性』を見かけたら名前までは調べると決めています。 ※第二放送をしっかり聞いていません。覚えているのは152話『新・戦闘潮流』で見た知り合い(ワムウ、仗助、噴上ら)が呼ばれなかったことぐらいです。  吉良に聞くなど手段はありますが、本人の思考がそこに至っていない状態です。  第三放送は聞いていました。 ※カーズから『第四放送時、会場の中央に来た者は首輪をはずしてやる』という伝言を受けました。 ※死の結婚指輪を埋め込まれました。タイムリミットは2日目 黎明頃です。 ※夕方(シーザーが出て行ってからルーシーが来るまで)にDIOの館を捜索し、拡声器を入手していました。  それに伴い、サン・ジョルジョ・マジョーレ教会の倒壊も目撃していました。 【パンナコッタ・フーゴ】 [スタンド]:『パープル・ヘイズ・ディストーション』 [時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』終了時点 [状態]:紙化、右腕消失、脇腹・左足負傷(波紋で止血済)、大量出血 [装備]:DIOの投げたナイフ1本 [道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、DIOの投げたナイフ×5、 [思考・状況] 基本行動方針:"ジョジョ"の夢と未来を受け継ぐ。 1.……(思考不能) [備考] ※フーゴの容体は深刻です。危篤状態は脱しましたが、いつ急変してもおかしくありません。  ただし『エニグマ』の能力で紙になっている間は変化しません。 ※第三放送を聞き逃しました。 【備考】 ※D-4南西にスーパーフライの鉄塔が建ちました。大きさとしては目立ちますが、カオスローマなので特別おかしくは見えないかも。  原作通り中に入った誰かひとりだけを閉じ込めます。  現在サヴェジガーデン一羽が居残っていますが、何故これで居残りが成立しているのかは後の書き手さんにお任せします。 ※D-3の路地、フーゴが眠っていた位置にカーズの伝言(第四放送時、会場の中央に来た者は首輪をはずしてやる。カーズより)が書かれた紙が置かれています。  シーザーたちはまだ気が付いていません。 【D-6 中央部 市街地/1日目 夜中】 【プロシュート】 [スタンド]:『グレイトフル・デッド』 [時間軸]:ネアポリス駅に張り込んでいた時 [状態]:健康、覚悟完了 [装備]:ベレッタM92(15/15、予備弾薬 28/60)、手榴弾セット(閃光弾・催涙弾×2) [道具]:基本支給品(水×6)、双眼鏡、応急処置セット、簡易治療器具、露伴のバイク、打ち上げ花火     ゾンビ馬(消費:小)、ブラフォードの首輪、ワムウの首輪、 不明支給品1~2 [思考・状況] 基本行動方針:ターゲットの殺害と元の世界への帰還 0.カーズをぶっ殺す。 1.大統領に悟られないようジョニィに接触する 2.育朗とワムウの遺志は俺たち二人で"繋ぐ" 3.残された暗殺チームの誇りを持ってターゲットは絶対に殺害する [備考] ※支給品を整理しました。基本支給品×3、大型スレッジ・ハンマーがB-4の民家に放置されています  また育朗の支給品の内1つは開けた事になっていて、本物はプロシュートが隠し持っています ※支給品のうち、一つは「ヘルメット」でした。千帆に譲りました。また所持していたワルサーP99とその予備弾薬も玉美に譲りました。 【トリッシュ・ウナ】 [スタンド]:『スパイス・ガール』 [時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』ラジオ番組に出演する直前 [状態]:健康 [装備]:吉良吉影のスカしたジャケット、ウェイトレスの服、遺体の胴体 [道具]:基本支給品×4 [思考・状況] 基本行動方針:打倒大統領。殺し合いを止め、ここから脱出する。 1.今の声……ルーシー!? 2.フーゴとジョナサンを探しに行きたいけど、DIOの館に行くべき? 3.地図の中心へ向かうように移動し協力できるような人物を探していく 【イギー】 [スタンド]:『ザ・フール』 [時間軸]:JC23巻 ダービー戦前 [状態]:健康 [装備]:なし [道具]:なし [思考・状況] 基本行動方針:ここから脱出する。 0.現状に興味なし。死なない程度に頑張る。 1.あいつ(フーゴ)、どこ行きやがった!? 2.コーヒーガム(シーザー)と行動、穴だらけ(フーゴ)、フーゴの仲間と合流したい 3.煙突(ジョルノ)が気に喰わないけど、DIOを倒したのでちょっと見直した 【小林玉美】 [スタンド]:『錠前(ザ・ロック)』 [時間軸]:広瀬康一を慕うようになった以降 [状態]:健康 [装備]:H&K MARK23(0/12、予備弾0)、ワルサーP99(04/20、予備弾薬40) [道具]:なし [思考・状況] 基本行動方針:トリッシュを守る。 1.トリッシュ殿は拙者が守るでござる。 2.ナランチャは気に食わないが、同行を許してやらんこともない 【ナランチャ・ギルガ】 [スタンド]:『エアロスミス』 [時間軸]:アバッキオ死亡直後 [状態]:健康 [装備]:なし [道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、不明支給品1~2(確認済、波紋に役立つアイテムなし) [思考・状況] 基本行動方針:主催者をブッ飛ばす! 0.カーズ討伐に協力するが、トリッシュの身を第一優先。 1.早くフーゴとジョナサンを探しに行こう 2.玉美は気に入らないけど、プロシュートはもっと気に入らない 【双葉千帆】 [スタンド]:なし [時間軸]:大神照彦を包丁で刺す直前 [状態]:健康、強い決意 [装備]:万年筆、スミスアンドウエスンM19・357マグナム(6/6)、予備弾薬(18/24)、遺体の心臓、遺体の胴体 [道具]:基本支給品、露伴の手紙、ノート、地下地図、応急処置セット(少量使用) 、顔写真付き参加者名簿、大量の角砂糖 [思考・状況] 基本行動方針:ノンフィクションではなく、小説を書く 。その為に参加者に取材をする 0.カーズ殺害に少しでも協力する。 1.大統領に悟られないようジョニィに接触する 2.主催者の目的・動機を考察する 3.次に琢馬兄さんに会えたらちゃんと話をする [ノートの内容] プロシュート、千帆について:小説の原案メモ(173話 無粋 の時点までに書いたもの)を簡単に書き直したもの+現時点までの経緯 橋沢育朗について:原作~176話 激闘 までの経緯 ワムウについて:柱の男と言う種族についてと152話 新・戦闘潮流 までの経緯 188話 風にかえる怪物たち のくだりはプロシュートが書きましたがホッチキスで留められて読めない状態です [備考] ※トリッシュとプロシュートからそれぞれ遺体を譲り受けました。 【シーザー・アントニオ・ツェペリ】 [能力]:『波紋法』 [時間軸]:サン・モリッツ廃ホテル突入前、ジョセフと喧嘩別れした直後 [状態]:胸に銃創二発の傷跡 [装備]:トニオさんの石鹸、メリケンサック、シルバー・バレット [道具]:基本支給品一式、モデルガン、コーヒーガム(1枚消費)、ダイナマイト6本    ミスタの記憶DISC、クリーム・スターターのスタンドDISC、ホット・パンツの記憶DISC、イギーの不明支給品1 [思考・状況] 基本行動方針:主催者、柱の男、吸血鬼の打倒。 1.カーズと戦う。 2.フーゴを探し、保護する。 3.ジョセフ、シュトロハイムを探し柱の男を倒す。 [備考] ※DISCの使い方を理解しました。スタンドDISCと記憶DISCの違いはまだ知りません。 ※フーゴの言う『ジョジョ』をジョセフの事だと誤解しています。 【D-5 空条邸/1日目 夜中】 【ジョセフ・ジョースター】 [能力]:『隠者の紫(ハーミット・パープル)』AND『波紋』 [時間軸]:ニューヨークでスージーQとの結婚を報告しようとした直前 [状態]:全身ダメージ(中)、疲労(大) [装備]:ブリキのヨーヨー [道具]:首輪、基本支給品×3(うち1つは水ボトルなし)、ショットグラス [思考・状況] 基本行動方針:殺し合いを打破し、幸せに末永く生きる。 1.遺体の回収を目指す。 2.承太郎、ジョルノと合流する。 *投下順で読む [[前へ>かつて運命になろうとした『あの方』へ]] [[戻る>本編 第4回放送まで]] [[次へ>]] *時系列順で読む [[前へ>かつて運命になろうとした『あの方』へ]] [[戻る>本編 第4回放送まで(時系列順)]] [[次へ>]] *キャラを追って読む |前話|登場キャラクター|次話| |192:[[unravel]]|[[ジョセフ・ジョースター]]|:[[]]| |184:[[さようなら、ヒーローたち]]|[[カーズ]]|:[[]]| |193:[[To Heart]]|[[シーザー・アントニオ・ツェペリ]]|:[[]]| |193:[[To Heart]]|[[イギー]]|:[[]]| |193:[[To Heart]]|[[宮本輝之輔]]|:[[]]| |193:[[To Heart]]|[[吉良吉影]]|:[[]]| |192:[[unravel]]|[[ジョルノ・ジョバァーナ]]|:[[]]| |186:[[ブレイブ・ワン]]|[[ナランチャ・ギルガ]]|:[[]]| |186:[[ブレイブ・ワン]]|[[トリッシュ・ウナ]]|:[[]]| |193:[[To Heart]]|[[パンナコッタ・フーゴ]]|:[[]]| |195:[[かつて運命になろうとした『あの方』へ]]|[[プロシュート]]|:[[]]| |194:[[キングとクイーンとジャックとジョーカー]]|[[ディエゴ・ブランドー]]|:[[]]| |194:[[キングとクイーンとジャックとジョーカー]]|[[カンノーロ・ムーロロ]]|:[[]]| |194:[[キングとクイーンとジャックとジョーカー]]|[[蓮見琢馬]]|:[[]]| |195:[[かつて運命になろうとした『あの方』へ]]|[[双葉千帆]]|:[[]]|
恐竜に追われること早十数分。奴らは蛇のようにしつこかった。 襲いかかってくるようならば返り討ちにしてみせる。だらだら追いかけるようなら一気に加速して振り切ってみせる。 だが恐竜たちは姑息で、賢く、狼のように統率の採れた集団だった。[[プロシュート]]と千帆の乗ったバイクを追いかけて、回り込んで―――とにかくうっとおしかった。プロシュートがいらいらを表情に出さないようにするのに苦労するほどだった。 サイドミラーの中で三匹のうち、二匹が細い路地裏へと飛び込んだ。プロシュートは頭の中で地図を思い描いた。西への逃げ道を塞ごうって魂胆らしい。 以前ギアは3にいれたままで、速度計は40キロに届くか届かないかをさまよっている。プロシュートは顔をしかめ、もどかしい思いをアクセルに変えた。 いい加減追いかけっこにはうんざりした頃だった。 「あっ」 ヘルメット越しに千帆がくぐもったつぶやきを漏らした。同時にプロシュートはバイクのハンドルを右に切ろうとして―――間に合わない、と思った。 路地裏から突然身を投げ出した小柄な男の体にバイクが迫る。プロシュートは三人全員が無傷でいられることを諦めた。中でも一番優先順位の低かったのは、ようやく馴染み始めたバイクそのものだった。 バイクすべてをめちゃくちゃにする必用はなく、そうする時間もパワーも足りなかった。右ハンドルを思い切り握り、前輪を止めた。二人の体が前に投げ出されると同時にバイクの横っ面に一撃をぶちかました。 「『グレイトフル・デッド』!」 金属がひしゃげる音、息を呑む音―――宙に投げ出され、ぐるりと世界が大きく回った。頭上の街灯が空を横切り、目の中でアーチを描いた。 千帆を抱きかかえるようにかばい、スタンドで着陸の衝撃を和らげた。かばいきれなかった左肩に大きな傷みが走り、プロシュートの息が止まった。 衝撃の余韻が道路の端々に広がっていった。 横っ面に投げ出されたバイクは歩道をフラフラとさまよったあと、力なく民家に激突した。 空に向かってかしあげられたタイヤが風車のように大きく回っていた。エンジンの熱がむわっとアスファルトを撫で、痛む体にじわじわと染みこんだ。 「立てるか?」 「……だいじょうぶ、です」 千帆に傷はなかった。ヘルメット越しに目を白黒させながら、必死に冷静さを取り戻そうとする。プロシュートは頷くとそのまま伏せていろ、と小さく言った。 腰を落としたまま振り返り、跳ね飛ばしかけた男の影に目を向けた。影は路地裏に体半分入れたまま、こちらをじっと見つめていた。あちらにも怪我はないようだった。 影はこちらの安否を気遣うでもなく、大声で悪態をつくでもなく、惑わしげに体を揺らしていた。 プロシュートは千帆に合図を出し、ついてくるように指示を出す。 千帆は慣れない様子で拳銃を取り出すと、それを両手で握り締め、背後を警戒しながらプロシュートの背中に張り付いた。 プロシュートの中では怒りが渦巻いてた。それは突然飛び出してきた男への怒りでもあったが、どちらかといえば自分のマヌケ具合に向けられた怒りだった。 運転に100%集中できていたか? ノー。周りへの警戒を100%怠っていなかったか? ノー。 遺体の気配に気を取られていなかったか? ノー。 宮本と名乗る少年がもたらした情報が常に目の端でちらついていた。情報不足の中、いくら考えても結論は出ないとわかっていたはずなのに、現状戦力も情報も足りなさすぎるという杞憂がプロシュートの判断をにぶらした。 これで『足』も失った。抱えるのは傷ひとつつけたくない妹分と拳銃二丁、残るは育朗が残した『甘ったれ精神』だ。 最も捨て去るべきものがプロシュートの足を絡みとり、そして今不安要素となって現れた。 プロシュートは甘く生き慣れていない。これまでずっと苦味と痛みだけが信用できると言い続けてきたのだ。そう簡単には変われない。 プロシュートは足を早め、最後の十歩を大股で詰め寄ると、男の胸ぐらをつかみんだ。 後ろで千帆が止めるように何かを言ったが、プロシュートには何も聞こえなかった。ただ目の前にあるチンピラ風情の男がひたすら気に入らなかった。 プロシュートはその襟首を掴むと力任せにひねり上げた。男は怯えたように、短い呼吸を繰り返した。 「いいか、二秒だけやる。質問に答えろ。イエスもノーも要求しちゃいねェ。これはれっきとした事実になる。そうだろ、エエ?」 手触りがやけに軽く、柔らかいことが気になったがプロシュートは尋問を進めた。スタンドを呼び出すと男が腕の中で小さくうめいたのが聞こえた。 「名前は?」 「こ、[[小林玉美]]」 「仲間は?」 「ほかに二人……近くにいる。多分ここから見える範囲に」 怒りと混乱がプロシュートの腕の力を強めた。 罠にハメられた―――隣で千帆が息を飲む。プロシュートも同じ気持ちだった。奇妙な広がりが代わりに手を覆ったことに気がつくまでは。 玉美の首はプロシュートが意図したより、強く曲がってしまっていた。その首はまるでゴムのように柔かく、ねじ曲がった。 プロシュートは玉美の顔が見えなかった。隣に立つ千帆と死んだ男の視線が結びついた。千帆の目の中で怯えが揺らいだ。首を曲げたまま、死んだはずの男が呟いた。 「『ザ・ロック』……発動したってことは、アンタたちは信用できる……ってことだなァ~~~!」 「てめェ、スタンド使い……ッ!」 「お、重い……ッ!」 千帆の体に錠前が浮かび上がった。グレイトフル・デッドの拳がわずかに早く、玉美の体に叩き込まれていた。 玉美の体はゴムまりのようにはずみ、対面の民家の窓を突き破った。砕かれた窓に血はつかなかった。 バイクの前に身を投げ出したのも、姿を隠さなかったことも、こうして尋問されることも全て玉美の計算内。 玉美の言葉は真実だった。協力者が二人いる。 千帆にスタンド攻撃を仕掛けたもの、玉美の体にスタンド能力を発動させたもの、プロシュートたちの接近を感知したもの。 (野郎……うかつだった! マンモーニだったのは……ほかでもない、この俺だッ!) 足を失い、千帆は動けない。あたりがざわつく雰囲気をプロシュートは感じた。もはや一刻の猶予もない。 千帆が立ちあろうと足掻いてるうちに、辺りをさらに薄暗くする霧が満ち溢れていた。 満月は滲んで、形を失った。千帆がプロシュートの背中に手を伸ばしても、あたりの風景は変わらなかった。 「いいか、千帆……これは俺が『勝手』にやることだ。てめェの敵だとか、貸し借りだとか、そんなものはどうでもいい。  俺が俺の納得と怒りを鎮めるために、俺は今からやる……! 止めたとしても無駄だぜ……、いいなッ!」 「プロ、シュート……さん」 「『グレイトフル・デッド』! 半日ぶりの全力全開だッ! たっぷり浴びせかけてやれッ!」 街灯の光が消える。頭上の月も星も消え去り、湿った空気が一斉に流れ込んだ。 直後……、東と西―――周りの方向全てから鶏を絞め殺したような奇妙な鳴き声が聞こえた。 霞越しにフラフラと揺れる影が、二人に近寄り、少し離れた場所でどうっ、と音を立てて倒れた。最後に断末魔と痙攣を残して、その四本足は動くのをやめた。 千帆とプロシュートは影に近づいて、その死体を見下ろした。そこに横たわっていたのはチンピラではなく、小型のバイクほどある、一匹の恐竜だった。 「プロシュートさん、これって……?」 千帆にかけられたスタンドはまだ解けない。状況は複雑を極めていく。 わかっているだけで四人、この状況を引き起こしたスタンド使いがいる。プロシュートは一息吐くと、千帆の手をつかみ、杜王駅の方向へ向かって歩き出した。 今は逃げることが懸命だ。怒りは収まってはいないが、一発ぶちかまして頭が冷えた。全部自分の責任だ。今ならそう判断できる。 「スタンドには射程距離がある。歩けるだけ歩け。無理なら言え」 細い路地裏をゆっくりと駆けていく二人。 その二人の向こうからの光が突然途切れた。少し小柄な―――さっきよりは大きいから別の人間だ―――影が二人の足元まで伸びた。 千帆を庇うように後ろに隠し、プロシュートはポケットからベレッタを取り出した。銃口を向けるのと、女の声が聞こえてきたのは同時だった。 「待って!」 プロシュートは狙いをぴたりとつけたまま、自分が驚きのあまり銃を落とさなかったことに感心した。体は長年の習慣を忘れてはいなかったようだ。 覆った影で顔ははっきりとしない。だがプロシュートがその顔を見間違えることはありえなかった。 穴があくほど見つめたのだ。写真がすり切れるほどに見返して、焼き付けて―――何より絶対にやりとげるという覚悟があった。だから見間違えるはずがない。 目の前に立っているのは……ボスの娘、[[トリッシュ・ウナ]]だ。黒くて大きな目が二人を見つめていた。 「誤解させてしまったのは謝るわ……。でもアナタたちは『信頼できる』。その子の鍵がその証拠。だから力を貸して欲しい……ッ! 今、この状況を切り抜ける力が……ッ!」 遠く、西の方から馬の嘶きが聞こえた。背後で千帆が大きく、息を沈めるようように呼吸を繰り返した。プロシュートは拳銃のトリガーに指をかけた。 薄い皮膚の下で突然、遺体がうねるのがわかった。共鳴している。プロシュートは力でそれを押さえつけると、拳銃を握り直した。 ◆ トランペットの音、力強い男性ボーカルの叫び、リズムを刻むドラム音。 誰だってじっとしてはいられない。膝を小刻みに揺らしていたが、ついには広いフロアに飛び出し、思うがままに体をくねらせた。 ムーロロはそんなディエゴの姿を煙越しに見つめた。咥えた紙タバコがジジジ……と音を立てて、口先で灰に変わっていった。 部屋はタバコの煙、アルコールの匂い、レコードが流す音楽の音でいっぱいだった。 ムーロロはワイングラスにタバコをつっこみ、また意味もなくタバコに火をつけた。ディエゴは変わらず踊り続けている。 曲が終わり、ムーディーな音楽に変わったところで、ディエゴはようやく満足したようだった。 ソファに放り投げた酒瓶を片手にムーロロのいるデスクに戻ってくる。瓶から直接酒を煽ろうとしたが既に空になっていた。ディエゴは唇を曲げ、瓶を放り投げた。ムーロロが代わりにデスクの上の瓶を差し出してやった。 「上機嫌だな」 ディエゴの顔色はいい。頬は上気し、口元にはだらしない笑みが浮かべられていた。 酒を半分ほど煽ったディエゴは一息つき、意味もないニヤニヤ笑いを机越しによこした。 ムーロロはタバコを差し出すと、ディエゴが咥えたのを見てから、火をつけてやった。煙を溶かすように一瞬だけ火があたりを照らした。 ディエゴはゆっくりと煙を吸い、吸った時の倍の時間をかけて煙を吐き出した。ムーロロは顔にかけられた煙を手で払い、顔をしかめた。 「程々にしておいて欲しいもんだ」 「自分も楽しんでおきながらどの口が言うんだ、ええ?」 「俺はほとんど飲んでいやしない」 ムーロロが指さした先には半分ほど減ったグラスと、そこに突っ込まれた何本もの吸殻があった。 ディエゴは自分のタバコもそこに突っ込むと、椅子を傾け、二本足でバランスをとった。 前後に揺するたび、木製の椅子がきい、きい……と浅く鳴いた。いつの間にか音楽も止み、屋敷中にその鳴き声が伝わっていくようだった。 「祝い酒だ。二人の今後の発展を願って!」 「実務は俺だけに任せておいて、その言い草か?」 テーブルには酒とタバコに紛れて、二人の支給品とムーロロの用意した地図が置かれている。その脇には紙とハサミが置かれていた。その様子からついさっきまでムーロロが作業していたことが伺えた。 ディエゴは地図に目線をやった。七つの赤いバツ印、27つの白いコマ(几帳面な文字でそれぞれ名前が書かれている)―――ディエゴは指先で目元をこすると椅子に座り直す。ムーロロは共犯者がようやく会話をする気になったことにほっとした。邪魔なガラクタをどけて、立ち上がる。 「現在生存者は27名、そのうち殺し合いに乗り気なものは限られている。はっきりと打倒を目指している組はジョースター一族を中心に各地に分散していて……」 「その話、長くなりそうか?」 あくびを噛み殺し、ディエゴが呻いた。 「さっさと本題に入ろうじゃないか。もはや俺たちは殺し合いから『降りた』ことなんだしな」 首輪をつつきながらそう続けた。ムーロロは露骨に嫌な顔をすると、椅子に座りなおした。 「俺たちの目的は遺体の総取りだ。誰が死のうが何人くたばろうと知ったことじゃない。  たとえ遺体を総取りにすることがヴァレンタインの計画の一端であったとしても、今はこれが最善手だ」 「一人一人に頭を下げてお伺い立てて来いとでも言うのか。俺たちは対等なはずだぜ、ディエゴ」 「対等―――ほう、対等ねェ」 ディエゴは地図を眺め、遺体を持ったコマの数を数えた。七つのコマ越しにムーロロと目を合わせる。ムーロロは突然帽子の裏地に興味を持ったようで、視線が合うことはなかった。しばらくそうした時間が流れたが、ディエゴは鼻を鳴らし、話を進めた。 「俺はそんなお利口さんじゃないぜ、ムーロロ。奪い取る……カスどもたちには犬のエサでもくれてやれ、だ」 そう言いながらディエゴは緑色の紙とハサミを取りあげ、何物かを作り始めた。ムーロロの目の前で緑のコマが次々と積み上がっていく。 その緑のコマは地図のあちこちに一見無造作に配置されていった。十はあるようだった。ディエゴはそれらを自由自在に動かしながら、言う。 「お伺いはしなくていい。ただ狩りには参加してもらうぜ。いや、猟か。追い込み猟だ」 「銃の腕前には自信がない」 「司令官としての技量を見込んでの採用だぞ、[[カンノーロ・ムーロロ]]君」 「前線に立たなくていいと聞いてほっとしたよ」 ムーロロはディエゴが動かしたコマをじっと眺めた。しばらくしていくつかのコマを持ち直し、ほんの少しだけ手直しを加えた。 「現状一番の問題は[[カーズ]]だ。ジョースター一族をはじめとしたお利口さん方は厄介だ―――厄介だが対処の仕様はある。  恐竜たちの物量作戦で押しつぶすことも不可能じゃあない。混乱を引き起こし、各個撃破を狙ってもいい。  流石に全員大集合となったら手がつけられないが情報網では俺たちが上だ。進路を見張って妨害工作を繰り返せばいい。  だがカーズ、やつにはこれが効かない。俺のスタンドもお前のスタンドも、柱の男には敵わない。だから―――」 柱の男を意味する黒のコマは盤上に一つ。その存在は太く、逞しく……なによりも大きい。 ムーロロは東にいた参加者をまとめ―――トリッシュ、玉美、ナランチャ、プロシュート、[[双葉千帆]]の文字をディエゴは読み取った―――中央にいたいくつかの参加者もそこに加えた。七つのコマの周りに恐竜たちを配置して足止めをする。 そこに南南西からまたも恐竜を使い、黒いコマを誘導、一団とぶつける。黒いコマが集団に飛び込みいくつかのコマをなぎ倒した。ムーロロは顔を上げ、ディエゴの様子を伺った。 「漁夫の利狙いだ」 「消耗を狙って横からかっさらう―――いいじゃないか。最終直線まで集団を利用して足を休め……刺して、奪い取る。俺好みだ」 ディエゴはムーロロからカーズのコマを受け取ると、そのまま群がっていた周りのコマ全てを横倒しにした。そこには柱の男一人だけが立っていた。 「だが―――『こうなったら』……どうする?」 七つのうち二つのコマが持っていた遺体がカーズのコマに加わり、カーズが持つ遺体の総数は三つになる。相対する集団は周りに存在しない。 今度はムーロロが様子を伺われる番だった。ディエゴはカーズのコマを指で弾き飛ばし、ムーロロの方へよこした。 「消耗したカーズ―――本当に消耗していればの話だが―――相手でも、俺とお前じゃ相性が悪い。  やつは稀代の大食いだ。油断したらカードでも恐竜でもなんでも食われるぜ」 しばらくの間、二人は無言のまま見つめ合う。保身と策略が言葉もなく二人のあいだを飛び交った。 部屋の真下でごそごそと誰かが動く気配がした。ムーロロは黒いコマを取り上げ、やれやれと小さく呟いた。 「作戦は弾切れか、司令官」 「いや、あるぜ。ただリスクがある。懐柔に自信は?」 「イタリアマフィアを一人手懐けたという実績はあるが」 「よっぽどお人好しなんだろうな、そいつァ。それかお前が知らんうちに裏切ってる可能性もあるぜ、気をつけな」 ムーロロは緑のコマを二つ作ると中央の参加者二人の傍に動かした。そのまま二人を挟み込み、四つのコマが北へと向かう。 ディエゴはその一団がDIOの館にたどり着くのをじっと眺めていた。ムーロロは視線をコマに向けたまま、小さく言った。 「コイツは文字通り、俺たちにとっての爆弾になるぜ、ディエゴ」 「爆弾ならもうすでに一つ抱えているさ」 ディエゴはムーロロが持つコマにかかれた名前に目を落とす。不安と疑いを覆った、皮肉な笑みが浮かんでいった。 「対カーズ最終兵器―――『キラ・ヨシカゲ』、か……」 ◆ その一室は膨らみきった風船のようであった。 「周りに敵は?」 正面の壁にもたれたナランチャは興味なさげに発言者―――プロシュートを見つめ返した。しばらく待ったが答えは帰ってこなかった。 ナランチャ、とトリッシュがたしなめるように言ったが、ナランチャは黙ったままだった。トリッシュの目線から隠れるように顔をうつむかせた。 トリッシュが間を取り持つかのように、プロシュートに目線を向けた。プロシュートはソファに座りなおすと肩をすくめた。 「俺がアンタに危害を加えることを恐れているらしい」 「そんな気はないのよね?」 「顎先の餌より背後の虎の方が気になるたちでね。シーザー、もう一度説明を頼む」 風が唸りをあげると、ガタガタと建物全体が震えた。シーザーは窓の外を一瞥すると向き直り、出会ったばかりの仲間たちを見た。 緊張感と不安が部屋の中に漂っている。かつて相対していたギャングの二人がその中心にいた。 机をはさんで傾きかけた混乱を支えていたのは二人の少女たちだった。トリッシュは背後に立つナランチャをたしなめ、千帆は隣に座る男の自制心をつっついた。 シーザーは唇を噛み、細ばった隙間からゆっくりと息を吐きだした。足元で[[イギー]]が眠たげにあくびをひとつした。 「トリッシュたちと合流したのはほんの偶然だったんだ。  フーゴ―――はぐれた俺たちの仲間のひとりで、トリッシュの仲間でもあるらしい―――を探して東に向かってる途中、気づいたら恐竜たちに囲まれてしまっていた。  とにかく数が多かった。埒があかないと思って強引に包囲網を切り抜けたら……」 「私たちと出くわした、ってわけ」 トリッシュがあとを引き継ぎ、そう付けくわた。隣で玉美が大きく、励ますように頷いていた。 「私たちがアナタたちと会ったのはその直後。恐竜に襲われて、最初にナランチャがスタンド攻撃をくらってしまった。  恐竜化が始まってしまうと戦いはジリ貧で―――玉美のスタンドは戦闘向きじゃないし、一人でも仲間が必要だと思って……」 「それであの茶番か」 プロシュートの声は抑えていたが、皮肉げだった。ナランチャは壁から背を離すとトリッシュを庇うように前に進んだ。プロシュートにむかって凄んでみせる。典型的な威嚇の態度だった。 そんな態度をプロシュートは鼻で笑った。慌ててシーザーがその場を取り繕った。二人の間に割ってはいると、説明を引き継いだ。 「俺が柱の男―――カーズを見かけたのはだいたいそれぐらいの時だ。  俺とイギーはしんがりを引き受けていたんだ。トリッシュたちのために時間を稼ぎながら戦っていたら、恐竜たちが突然方向を変えはじめた。  追いかけた先で、カーズは五匹程度の恐竜に囲まれていた。それほど苦戦しているようには見えなかった」 「カーズについて、もう少し詳しく教えてくれ」 「柱の男たちは不老不死、驚異的な柔軟性と筋力をもった種族だ。太陽の光とこの俺が持つ技術―――波紋以外弱点はない。  力でも能力でも奴らを押し込むのは至難の業だ。奴らは速く、強く、固く、鋭い――― 一対一で戦えば死を覚悟して挑むしかない」 「で、そんなカーズやら恐竜やら波紋使いやら―――そんな戦いのど真ん中に俺たちはノコノコ迷い込んじまったってわけだ」 プロシュートは一息をおくと、頬の筋肉を強ばらせた。 「これが誰かに仕組まれたものじゃなければな」 なにか大きなものを切り崩したような音が聞こえた。地面が揺れて、窓枠がやかましく鳴いた。 トリッシュは時計を一瞬見つめ、それからナランチャを振り返った。 ナランチャは固く結んでいた腕をのろのろとほどいた。相変わらず席にはつかず、立ったままだった。 壁に背中をもたらせたまま、目の前にレーダーを展開し状況を報告する。左目は暗く、しつこいくらいにプロシュートから離れなかった。 「―――この家の周りをうろつく反応が五つ、西に大きな反応が一つ。その大きな反応を中心に衛星みたいに動いてる奴が全部で六つ。  数が減ったり増えたりしてるから、きっと戦闘中なんだろう。じりじりとこっちに寄ってきてる。このままいけば十分もしないうちに俺たちとかち合う」 「……遺体が反応する方向と一緒、ですね」 千帆が不安げにプロシュートの顔を見た。部屋の隅でシルバー・バレットが首を振り、低く嘶いた。 しばらく沈黙が続いた。風が窓を揺する音、地面が震えて花や椅子が擦れる音―――どんな音でも不安をわき起こさないものはなかった。 冷たい空気が低いとろこにたまり込むように、そこにいた六人(と一匹)の胸の内に暗い気持ちを渦巻かせた。 なし崩しに築かれた、やわな同盟がぐらついている。同盟でありながら協力する目的が霧で覆われていた。 本当に協力する必要はあるのか。協力して解決できるものなのだろうか。 ぴしゃりと膝を叩く音で皆が我に返る。全員の視線を集めると、プロシュートは一人一人と目線を合わせながら話を続けた。 「できすぎた結果はこの際脇においておくとしよう。  誰かが恐竜を使って俺たちをカーズとぶつけようが、ぶつけまいが、どっちにしろやつはほうっておけない脅威だ。  逃げようにもヤツの―――柱の男のスピードじゃいずれ追いつかれる。遺体という『レーダー』を互いに持っていることだしな。  だからここは逃げずに立ち向かう―――! 今ッ! ここでッ! カーズを……―――ぶッ殺す!」 プロシュートの言葉が部屋と男達に染み込んでいった。ナランチャはほんの一瞬だけ男のことを警戒することを忘れた。 固く覆われた殻の中に強引に割り込んでくる男……ナランチャはブチャラティのことを思いだした。そしてそんなことを考えた自分に驚き、嫌になった。 自分の恩人であり、尊敬する人とトリッシュの命を狙う暗殺チームの男。 その二人を対等のように扱いかけた自分が嫌になった。ナランチャはプロシュートを睨みつけたまま、爪先を手のひらに食い込ませた。 違う、コイツはトリッシュを狙う『悪』なんだ―――それでもナランチャの耳に、プロシュートの言葉は力強く響いていた。 「前に立つのは俺とイギーと……アンタだ、ボスの娘」 「トリッシュよ。名前で呼んでもらっても構わないわ」 トリッシュは素早く返し、微笑んだ。シーザーはその美しい横顔を眺め、ため息を漏らした。気を抜けば恋に落ちてしまいそうだった。 プロシュートの顔に奇妙なシワが浮かんだ。強引に笑おうとしたところを無理やり止めたかのような、不自然な表情だった。千帆は隣で物珍しそうに、そんな男の顔を眺めた。 「俺と、イギーと―――……トリッシュ。  シーザーの言うとおり、柱の男たちは相当にタフだ。だが奴らに弱点がある。  シーザーの素敵な波紋以外にひとつだけ……それも致命的な奴がな」 「馬鹿な、やつらは千年も生きる超生物だぞ……!」 「その超生物とやらを平気でここに呼びだしたんだ輩がいるんだぜ?」 プロシュートは喉元に手を伸ばすと、ゆっくりと首輪をなでた。そして左手でもったベレッタの先をそこに押し当てた。 「こうすれば例え波紋使いでなくても、スタンド使いでなくても……千帆みてーなガキにだってカーズは仕留められる」 シーザーはプロシュートをじっと見つめ、ゆっくりと頷いた。同意はしたものの、以前険しい顔付きのままだった。 「奴がそう簡単に接近させてくれるとは俺には到底思えない」 「そのためにアンタがいるんだ、シーザー」 「……話の筋が読めんな」 「マフィアが人を殺すとき、わざわざターゲットを薄暗い森の中に呼び出したりするか? ただでさえ厄介な柱の男を身構えさせ、わざわざことを複雑にする必用はない。  大切なのはヤツが予想もしない方向から鉛玉をぶち込んでやることだ。恐竜相手に奴も苛立ってる頃だ。俺たちは可能な限りやつを挑発する。  ダメージを与えることが目的じゃあない。だから交戦回数はできるだけ少なくする。足止めして状況把握に務め……焦らせるだけ焦らし上げる。  シーザー、アンタが最初前に立たないのはそのためだ。俺たちの戦い次第でアンタが一番負担を負いかねない」 シーザーは頷き、拳を握った。 「ナランチャはレーダーで周囲の確認、不安要素の排除に務める。恐竜たち、ほかの参加者たち―――できるだけ俺たちが戦いに集中できるように、頼む」 「私と玉美さんは……?」 「ナランチャと一緒に行動してくれ。お前たちの役割は遺体の死守。お前たちが遺体を守るんだ。いいな、信頼してるぜ」 言い残したことは何もないように思えた。時間も、危機も迫っていた。玉美が揉み手をしながら不安げにナランチャを仰ぎ見た。 ナランチャは何も言わず壁から背を離すと、武器の点検をし始めた。プロシュートはそれを見てソファから立ち上がった。それが仲間たちへの合図になった。 プロシュート、トリッシュ、イギー。シーザー、ナランチャ、玉美、千帆。二つに分かれたチームが、それぞれ戦いに備えていく。 街頭に飛び出す直前、ざわつく仲間たちの背中にプロシュートは小さく言った。 「犬死にするんじゃねーぞ、てめェら」 ◆ 「おい、ムーロロ。お客様はお疲れのようだぞ」 「琢馬ーッ! 琢ッ馬―! いねェのか、おいッ!」 「いや、僕は……―――」 宮本は青白い顔で何事かをもごもごと呟いた。ムーロロの声でそれは遮られ、誰の耳にも届かなかった。 そうしているうちに扉が開き、琢馬がのっそりと姿を表した。扉を半分ほど開くと部屋に入らないまま顔だけを覗かせた。 宮本以上に不健康で、不機嫌そうだった。ムーロロはそんな迷惑そうな表情を無視して一方的に話を進めた。 「お客さんだ。[[宮本輝之輔]]と[[吉良吉影]]さんだ。お客さんはどうやらお疲れのようなんでな、部屋に案内してやってくれ」 宮本は琢馬の背後から現れた三匹の恐竜を見て、たちまち反論することを諦めた。どうにでもなれ、といった気持ちだった。 諦めと疲れで体を引きずりながら扉へと向かう。琢馬はほんの少しだけ脇に避けると宮本が通れるように道を開けてやった。 琢馬は部屋をぐるりと見渡した。煙が充満し、荷物が散乱し、机の上には地図と何かを表すピンのようなものが転がっているのが目に映った。そして不愉快そうに立ちすくむ一人のサラリーマンがいることも。 最後にほんの少しだけ地図に目をやると、琢馬は扉を閉め、部屋から出ていった。直前に一匹の恐竜が入れ替わるように部屋に滑り込んだ。 そうしてそこにはディエゴ、ムーロロ、吉良吉影が残された。 「まぁ、立ち話もなんだ。座ってくれよ、吉良吉影」 ムーロロの言葉を無視して、吉良は一直線に窓に向かっていった。部屋中にある窓を全開にして、煙を追い払う。 続いてジャケットを脱いで角に置いてあったハンガーにかける。椅子に座る前にハンカチでタバコの灰を落とすと、ようやく腰を下ろした。 匂いと汚れにたいそう迷惑そうな表情を吉良は浮かべていた。出迎えの準備をするには急だったもんで、とディエゴが見え透いた嘘で茶化したがぴくりとも眉を動かさなかった。 ムーロロは温め直しておいたポットからお湯を注ぐと吉良の前に茶を注いだ。吉良は黙り込んだままだった。 「毒は入っちゃいやしねぇよ」 吉良のカップから一口飲むと、カップを手元に押してよこす。吉良は干からびた鼠を差し出されたかのような目でカップを見た。 無言のままポットに手を伸ばすと、違うカップに茶を改めてついで、飲んだ。ムーロロは舌打ちをした。ディエゴはクスクス笑いを堪えられなかった。 それから吉良は時間をかけてネクタイを緩め、肩を鳴らした。もう一口茶を飲むと、目の前に座る二人の顔を眺めた。 「それで?」 反応はない。ディエゴは人を小馬鹿にした笑みを貼り付け、ムーロロはむっつりとしまま吉良を睨んでいる。 恐竜たちに囲まれ、半ば強引にここまで連れてこられた吉良のイライラは相当なものだった。 カップを下ろすと、ガチャン、と危なっかしい音がした。苛立ちを自覚していたが吉良はそれを堪えられなかった。 「それで? 君たちは随分と私たちのことを知っているようだが、いったいどういう目論見で私たちを―――私をここに呼んだんだね」 部屋に残されたのが自分一人という点も気に入らなかった。部屋に案内されたかったのはむしろ自分だ。 交渉事は宮本に任せたかった。シャワーが浴びたい。ベットで一晩とは言わないが、数時間仮眠がとりたい。 平穏を求めて体が一斉に抗議している。煙の残り香がむっと吉良の鼻をくすぐった。吉良は額を両手でこすると、机の上に荒々しく手をおろした。野蛮な音を立てないように意識しなければならなかった。 ディエゴは組んでいた足をほどくと前のめりになって、ゆっくりと話し始めた。そののろまさが吉良の神経を逆撫でにする。 「アンタと手を組みたい。おっと、握手をする気はないぜ。アンタの手がどれだけ綺麗だろうと触れるつもりはない」 吉良はもう我慢しなかった。青筋がぴくぴくと動くのが自分でもわかった。 気に入らない。自分の能力がバレているのが気に入らない。優位を振りかざして自分の自由を侵されているのが気に入らない。 いっそのことここで戦ってやろうかとも思った。平穏なあの世界なら迷わずそうしただろう。自分の能力がバレることは決してあってはならないことなのだから。 吉良はハンカチで手首についた汚れをおとし、右の爪をまじまじと見た。ぼそぼそと噛み殺した声で返事をする。 「そこまでわかっているのなら、私がどれだけプライベートを大切にするかもわかっているはずだ」 「今のところアンタのスタンド能力をべらべらしゃべろうって気はこれっぽちもない」 「通帳を盗んでおいて金に手をつけてないと言われたら君は信用できるのか? とんだお人好しだな」 ディエゴの笑い声は場違いに部屋に響いた。隅にいた恐竜が顔を上げ、まるで賛同するように鼻を左右に降った。 ムーロロは帽子をかぶりなおすと二人の会話に割って入った。 「まァまァ、ミスター・吉良……俺たちはアンタと対立する気は一切ないんだ。それどころか、ひょっとしたら俺たちと組む必要すらないかもしれない。  アンタに望んでいることは、ぶっちゃけた話だ、ある時間までここにいて欲しい、ただそれだけのことだ」 吉良が鼻を鳴らした。不信感が体中からにじみ出ている。このままではマズイな、とムーロロは思った。 対立することが考えになかったわけではない。だが今はまずい。近距離でのキラー・クイーンの強さは充分観察済みだ。 今戦いが起きれば三人の中で真っ先に自分が始末される。ムーロロは横目でディエゴを眺めた。ディエゴの両手は頭の後ろで組まれ、足は机の上だ。 援護は期待できない。あるいは自分は試されているのだろうか。舌打ちの代わりにもう一度帽子をかぶり直した。使いぱしりが板についてしまいそうだった。 「もちろんただとは言わないさ。俺たちが差し出せるもんはそれ相応のものを用意してある。  アンタが望む平穏と安心とやらを俺たちは提供するつもりだ」 ムーロロは情報のカードを切った。地図に広げられた現状を吉良に余すことなく伝えていく。遺体については伏せたままだった。 ヴァレンタインについて、ジョースター一族について、そしてカーズについて。 トランプたちから情報が入ればリアルタイムで駒をさりげなく動かした。吉良は姿勢を正した。少なくとも興味は引いたようだった。五分ほどで話が終わったが、その間、吉良は一言も話を挟まなかった。 「ナンセンスだ」 ムーロロが話を終えた直後、吉良はバッサリ話を切って捨てた。冷え冷えとした視線が二人に向けられた。ディエゴは小さく、鼻で笑った。 「海外には捕らぬ狸の皮算用という言葉がないようだな。  それになにより気に食わないのが、結局のところ直接カーズと対峙するのは私だけじゃないか。  君たちはぬくぬくと安全地帯から配下を使って『サポート』とやらをするだけだ。それで労を惜しまない、というつもりなら―――私を舐め腐るにもほどがある」 風が窓辺のカーテンをゆっくりと揺らしていった。部屋にかかっていた靄はすっかり去り、熱もいつの間にか失われていた。 三人は黙り込んだままだった。誰も視線を合わせようとしなかったし、話を始めようともしなかった。諦めと気だるさが部屋に充満していった。 吉良は席を立つと扉まで向かった。一度だけ二人に視線を送り、そのままドアノブを掴む。背中から投げかけられたムーロロの声が、吉良を最後の一瞬で引き止めた。 「くれてやるよ」 振り返ってみれば机の上には干からびた『なにか』が転がっていた。 吉良は黙ってそれを見つめた。自分を引き止めるほどの価値がそんなものにあるとは到底思えなかった。 ムーロロは手札を切り尽くした、と言わんばかりに椅子に身を投げ出し返事を待っている。吉良はムーロロの隣に座ったディエゴに目をやった。 平静を装っていたが、驚きを噛み殺そうと頬が神経質そうに震えていた。あの余裕ぶったディエゴの表情は、一欠片も残っていなかった。 吉良は手元に目線を落とし、ゆっくりと扉を占めた。そのまま扉に寄りかかり、腕を組む。ムーロロの視線が刺すように吉良に注がれていた。吉良は黙ってどちらか―――ムーロロか、ディエゴか―――が口を開くのを待った。しばらく無言が続き、ムーロロが口を開いた。 「身につければ―――身に付けるって言葉が適当かは俺にはわからんが―――少なくとも『平穏』の一部は手に入るぜ」 そういってムーロロは首をなでた。吉良は話が飲み込めず、無表情のまま二人を見返した。だが『平穏』の意味を理解したとき、吉良は思わず扉から腰を浮かした。 ムーロロはもう一度首元をなで、隣に座るディエゴの方を顎でしゃくった。ディエゴは首をすくめた。同意か、諦めかはそこからは読み取れなかった。 吉良は少しの間ためらったが、ゆっくりとテーブルに近づいた。椅子には座らなかった。机の上の遺体に目をやり、しばし考え込んだ。ムーロロは吉良の言葉を待った。 「この館に水は通ってるのかね」 考えあぐね、ひねり出したのはそんな問いだった。吉良のその言葉を聞き、ムーロロはニヤリと笑いを浮かべた。 遺体に手を伸ばすと、そのまま吉良の方へと押しやった。吉良はまだ手を伸ばさなかった。だが視線は遺体に向けられたままだった。 「もちろん」 「君がさっき言った『ある時間』というのはおおよそ何時までの事なんだ」 「そうだな、ざっと見積もって今から二時間ってところか」 「なるほど」 なるほど、の言葉の裏に込められた同意。吉良が目線を遺体から離せないうちに、ムーロロとディエゴはさっと視線を交わしあった。 駒はどうやら思い通り動いてくれたようだった。カードと恐竜から入った情報によると、カーズは計算通り東の遺体に惹きつけられ、集団と戦いに入るようだった。 そして仮にカーズが戦いに勝利しても―――二人の手元には少なくとも『エース』が残った。 あとは現状から目を離さず、対処を誤らなければ盤上がひっくりかえることはない。もしも、このまま、何も起こらなければ―――。  ―――突風が部屋を通り抜け、窓をガタガタと大きく揺らした。 「興味深い話ですね」 吉良は驚いたように顔を上げた。ディエゴとムーロロは凍りついた。ありえない第四の声が部屋の隅から聞こえてきた。 ムーロロはゆっくりと席から立ち上がると、後ろを振り返った。腕がブルブルと震えて、それをごまかそうと帽子をかぶり直したがうまくいかなかった。 危うく帽子を取り落としそうになったので、そのまま顎をなでて、それをごまかそうとした。 ディエゴはやれやれと小さく呟き、皮肉な笑みを浮かべた。振り向いた先には……一人の少年がいた。 「カーズ討伐同盟―――僕もぜひ一枚かませて欲しいと思います」 やたらと朗らかな声がこの場には場違いだった。月が背後からさし、その顔に影を落としていた。 だがムーロロは知っている。この耳をくすぐる心地よい『彼』の声を知っているッ! 春になり、花が一斉に芽吹くように、安心感と光が部屋中に咲き誇っていった。[[ジョルノ・ジョバァーナ]]は控えめな笑みを浮かべ真っ直ぐな視線を三人に向けた。 その足元にはぺしゃんこになった恐竜の皮がうずくまっていた。それもムーロロが見つめている間にゆっくりと姿を変え、最後には可愛らしい華が咲いた。 ディエゴはしばらくの間窓枠に腰掛けた少年を見つめていたが、のろのろと時間をかけて動き出すと、吉良とジョルノが座れるように椅子と机をきれいにしてやった。そうして諦めたように、どさりと椅子に身を投げ出した。 ジョルノは控えめにその様子を眺めていた。ディエゴが動きを止めたのを見て、窓枠から腰を上げる。二人の元に近寄り、一礼してから椅子に座った。 吉良は混乱した表情を浮かべていたが、同じように最後には席に着いた。机の上にはまだ遺体が転がっており、吉良はそれに手を伸ばしたいという欲望と必死で戦っているようにも見えた。 ディエゴもムーロロも何も言えないうちに、ジョルノはさっと手を伸ばした。机の上の遺体が吉良の手元からズズズ……と音を立ててジョルノの方へと引き寄せられた。三人は―――めいめい驚きを必死で隠そうと努力を払い―――黙ってそれを見つめた。 すっかり手元に遺体の脊椎を動かすと、ジョルノは耳元へと手を伸ばし、ゆっくりと『それ』をおろした。 ジョルノは『遺体の左耳』を机の上に転がし、三人の顔をそれぞれ眺めた。そして落ち着いた、はっきりとした声で問いかけた。 「僕の話を聞いてもらっても?」 誰も返事も反論も用意していなかった。ジョルノはさわやかな笑みを浮かべ、それでも誰かが口を開いてくれるのを待っていた。 ◆ 頭上では誰も観るはずのない信号機が、黙って赤いライトを照らしていた。 数秒するうちにそれは青いフラッシュに変わり、トリッシュの隣に立つ男の顔に光を投げかけた。 二人は十字路の交差点、そのど真ん中に立ち、敵を待った。時々恐竜たちの叫びが聞こえて、トリッシュの中で不安が膨らんだ。 「ギャングには怯えないくせに、古代生物にはビビるのか」 プロシュートは真正面を向いたまま、そう話しかけた。トリッシュは流し目で男を見て、表情を変えないようにしながら返事をした。 「アタシ、こう見えて臆病なのよ。父に会う時もそうだった。足が震えて立てなくなるぐらい、怖かった」 「父親は父親でしかない。怖いとか怖くないとかどうこう心配するってのは……親子らしくはないな」 「あの人も同じことを言ってたわ」 ブチャラティも―――その言葉を聞いたプロシュートは眉をひそめ……返事をする前に、現れた影に目を凝らした。 道路の突き当たり、T字路を曲がって一人の影がこちらに向かってきていた。急いではいない。隠れてもいなかった。 ひたひたと柔らかい足音を立てながら、着実に二人のもとへ近づいてくる。左手には死にかけの恐竜がぶら下げられていた。刀で貫かれ、断末魔の痙攣を上げている。 街灯がカーズに光を落とした。長い髪が顔半分を覆うように、怪しく揺れている。トリッシュにはカーズが笑っているようにも見えた。 カーズが左の刃を引っ込めると、つられて恐竜の体がカーズの体に引きずり込まれていった。来るぞ、と低い声でプロシュートが言った。 二人の頭上で信号が赤に変わった。カーズの体が沈み、そして素早い動きで二人にせまった―――赤い余韻がカーズを追った。 捉えきれない影が、二人の間に割って入るように飛び込む。プロシュートがトリッシュを突き飛ばし、カーズの前に立ちはだかる。 刃が振り上げられた。赤いフラッシュが三人の顔を照らした。プロシュート、とトリッシュの叫び声が道路に響いた。 グレイトフル・デッドの腕をかいくぐり、カーズの刃が振り下ろされる。 ◆ 遠いどこかで雷鳴が轟いたような―――嫌な空気の震えをジョセフは感じ取った気がした。 しばらくそのまま耳をすませたが、何も聞こえなかった。ジョルノのやつ、大丈夫なんだろうなと思わずひとりつぶやいた。 振り返って見れば、黒く崩れた空条邸がジョセフにむかって倒れこむように立っていた。何かしら不吉な感じがする光景で、向かいの道路に場所を移した。 「承太郎はなし、おじいちゃんもなし―――いやァァアな感じだぜ~~~~~」 ジョセフは頬を引っかきながら左手からスタンドを出した。紫色の茨が地面を撫で回すように伸びていった。 待つのが自分の役割だと分かっていたが、のんびりするのも性には合わない。ガンバルのも気合を入れるのも大嫌いだが、みずみすチャンスを逃すのはもっと嫌いだった。 ジョセフは右耳に手を伸ばすと、そこから『遺体』を引きずり出した。出現した地図を辿り、ナヴォーナ広場でみつけたものだ。 『ジョセフ、僕はあなたを信頼しました。だからあなたも僕を信頼して欲しい。  この遺体、片方をあなたに渡します。これをもってあなたは承太郎と合流してください。  はぐれてしまっても僕たちには血の繋がりがある。加えてこの遺体の感覚をたどってもらえれば必ず会えます。  大丈夫、僕には策がありますから―――」 「お前を信頼するのはいいけどよォ~~、もうちょっとかっちょよく会う方法ってのはないもんかね」 改めて見ると少し……いや、かなり気色が悪い。誰のとも知れない朽ちない遺体。人の体に自由に出入りする遺体。 指先でつまんで匂いを嗅いだが、かすかにかび臭いだけで特別なにがあるってわけでもなかった。 気持ちわりィ~~! と一人でふざけてみせたが、反応してくれる仲間がいるわけでもなく……ジョセフは虚しくなって仕事に取り掛かることにした。 遺体を手の中に収め、神経を集中する。目には見えないがたしかに感じる遺体の呼吸―――或いはそれが持つパワーを探った。 そしてそれを茨の先へと流し込んでいく。なかなかうまくはいかないが、時間はある。ゆっくり、ゆっくりと時間をかけていく。 自然と使い慣れた―――いつもの波紋の呼吸が戻っていた。 「釣れたぜ! 大漁、大漁!」 地面に浮かんだのは会場全体を表す地図。そこに浮かんだ遺体全ての在り処。 ジョルノに信頼された、と大見得切られた以上大人しくするってのが大人な態度だろう。 だが残念なことにジョセフは大人になった気もないし、いつまでも子供心を忘れらないタイプだ。 少なくとも年をとってもそうありたいと思ってる―――60になってもアラビアのロレンスに憧れてるようなそんな男になりたいと密かに願っている。 ならば空条邸でとどまっているなんていうのは無理な話だった。ようするに承太郎と合流すればいいんだろ、とジョセフは勝手に納得した。 「ど・れ・に・し・よ・う・か なァ~~~?」 DIOの館に反応が四つ、その西に二つ。東の市街地にも四つ。南の方に残り二の反応が記されている。 ジョセフはニンマリと笑った。暗闇の中で白い歯がキラリと光った。疲れてはいたが気分はいい。 やってやろうじゃないか―――前進と希望はジョセフの胸いっぱいに広がっている。 【D-3 DIOの館/一日目 夜中】 【[[ディエゴ・ブランドー]]】 [スタンド]:『スケアリー・モンスターズ』+? [時間軸]:大統領を追って線路に落ち真っ二つになった後 [状態]:健康 [装備]:遺体の左目、地下地図、カイロ警察の拳銃(6/6) [道具]:[[基本支給品]]×4(一食消費)、鉈、ディオのマント、ジャイロの鉄球     ベアリングの弾、アメリカン・クラッカー×2、シュトロハイムの足を断ち切った斧     ランダム支給品7~12、全て確認済み    (ディエゴ、ンドゥ―ル、[[ウェカピポ]]、ジョナサン、アダムス、ジョセフ、エリナ、[[犬好きの子供]]、徐倫、F・F、アナスイ、[[織笠花恵]]) [思考・状況] 基本的思考:『基本世界』に帰り、得られるものは病気以外ならなんでも得る。 1.ムーロロを利用して遺体を全て手に入れる。 [備考] ※DIOから部下についての情報を聞きました。[[ブラフォード]]、大統領の事は話していません。 ※承太郎の支給品(1つのみ)、花京院の支給品(1つのみ)、仗助の支給品(2つ)を開封しました。  それぞれ順にSBR第一レース後のシャンパン、[[リサリサ]]のタバコ、レコードプレーヤーと90年代ベストヒット!レコード集でした。 【カンノーロ・ムーロロ】 [スタンド]:『オール・アロング・ウォッチタワー』(手元には半分のみ) [時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』開始以前、第5部終了以降 [状態]:健康 [装備]:トランプセット、フロリダ州警察の拳銃(ベレッタ92D 弾数:15/15)、予備弾薬15発×2セット、恐竜化した『オール・アロング・ウォッチタワー』一枚 [道具]:基本支給品、ココ・ジャンボ、無数の紙、図画工作セット、川尻家のコーヒーメーカーセット、地下地図、遺体の脊椎、角砂糖     不明支給品(2~10、全て確認済み、遺体はありません) [思考・状況] 基本行動方針:自分が有利になるよう動く。 1.ディエゴを利用して遺体を揃える。ディエゴだってその気になればいつでも殺せる……のだろうか。 2.琢馬を手駒として引き留めておきたい? [備考] ※現在、亀の中に残っているカードはスペード、クラブのみの計26枚です。  会場内の探索はハートとダイヤのみで行っています。 それゆえに探索能力はこれまでの半分程に落ちています。 ※ハートとダイヤの何枚かが恐竜化しています。 【吉良吉影】 [スタンド]:『キラークイーン』 [時間軸]:JC37巻、『吉良吉影は静かに暮らしたい』 その①、サンジェルマンでサンドイッチを買った直後 [状態]:左手首負傷(大・応急手当済) [装備]:波紋入りの薔薇、空条貞夫の私服(普段着) [道具]:基本支給品 バイク(三部/DIO戦で承太郎とポルナレフが乗ったもの) 、[[川尻しのぶ]]の右手首、     地下地図、紫外線照射装置、スロー・ダンサー(未開封)、ランダム支給品2~3(しのぶ、吉良・確認済) [思考・状況] 基本行動方針:優勝する 0.自分が優位になれるよう立ち回る 1.宮本輝之助をカーズと接触させ、カーズ暗殺を計画 2.宮本の行動に協力(するフリを)して参加者と接触、方針1の基盤とする。無論そこで自分の正体を晒す気はない 3.機会があれば吉良邸へ赴き、弓矢を回収したい [備考] ※宮本輝之助の首輪を爆弾化しました。『爆弾に触れた相手を消し飛ばす』ものです(166話『悪の教典』でしのぶがなっていた状態と同じです) ※波紋の治療により傷はほとんど治りましたが、溶けた左手首はそのままです。応急処置だけ済ませました。 ※吉良が確認したのは168話([[Trace]])の承太郎達、169話(トリニティ・ブラッド)のトリッシュ達と、教会地下のDIO・ジョルノの戦闘、  地上でのイギー・ヴァニラ達の戦闘です。具体的に誰を補足しているかは不明です。 ※吉良が今後ジョニィに接触するかどうかは未定です。以降の書き手さんにお任せします。 ※宮本と細かい情報交換は(どちらも必要性を感じていないため)していません。 【ジョルノ・ジョバァーナ】 [スタンド]:『ゴールド・エクスペリエンス』 [時間軸]:JC63巻ラスト、第五部終了直後 [状態]:体力消耗(中)、精神疲労(小)、両腕に対する違和感大 [装備]:遺体の左耳 [道具]:基本支給品一式、地下地図、トランシーバー二つ、ミスタのブーツの切れ端とメモ [思考・状況] 基本的思考:主催者を打倒し『夢』を叶える。 1.この場を丸く収め、『夢』実現に向けて行動する。 2.ジョセフ・承太郎と合流する。 【[[蓮見琢馬]]】 [スタンド]:『記憶を本に記録するスタンド能力』 [時間軸]:千帆の書いた小説を図書館で読んでいた途中 [状態]:健康、精神的動揺(大) [装備]:遺体の右手、自動拳銃、アヌビス神 [道具]:基本支給品×3(食料1、水ボトル半分消費)、双葉家の包丁、承太郎のタバコ(17/20)&ライター、SPWの杖、     不明支給品2~3(リサリサ1/照彦1or2:確認済み、遺体はありません) 救急用医療品、多量のメモ用紙、小説の原案メモ [思考・状況] 基本行動方針:他人に頼ることなく生き残る。 0.??? 1.自分の罪にどう向き合えばいいのかわからない。 [備考] ※参戦時期の関係上、琢馬のスタンドには未だ名前がありません。 ※琢馬はホール内で[[岸辺露伴]]、[[トニオ・トラサルディー]]、虹村形兆、[[ウィルソン・フィリップス]]の顔を確認しました。  また、その他の名前を知らない周囲の人物の顔も全て記憶しているため、出会ったら思い出すと思われます。  また杜王町に滞在したことがある者や著名人ならば、直接接触したことが無くとも琢馬が知っている可能性はあります。 ※ミスタ、ミキタカから彼らの仲間の情報を聞き出しました。 ※スタンドに『銃で撃たれた記憶』が追加されました。右手の指が二本千切れかけ、大量に出血します。何かを持っていても確実に取り落とします。  琢馬自身の傷は遺体を取り込んだことにより完治しています。 【宮本輝之輔】 [スタンド]:『エニグマ』 [時間軸]:仗助に本にされる直前 [状態]:左耳たぶ欠損(止血済)、心臓動脈に死の結婚指輪 [装備]:コルト・パイソン、『爆弾化』した首輪(本人は気付いていない) [道具]:重ちーのウイスキー、壊れた首輪(SPW)、フーゴの紙、拡声器 [思考・状況] 基本行動方針:柱の男を倒す、自分も生き残る、両方やる 0.??? 1.柱の男や死の結婚指輪について情報を集める、そのためにジョセフとシーザーを探す 2.1のため、紙にした少年を治療できる方法を探す 3.吉良とともに行動する。なるべく多くの参加者にカーズの伝言を伝える 4.体内にある『死の結婚指輪』をどうにかしたい ※フーゴをシーザーではないかと思っています。 ※思考1について本人(ジョセフ、シーザー)以外に話す気は全くありません。  従って思考1、2について自分から誰かに聞くことはできるだけしないつもりです。  シーザーについては外見がわからないため『欧州の外国人男性』を見かけたら名前までは調べると決めています。 ※第二放送をしっかり聞いていません。覚えているのは152話『[[新・戦闘潮流]]』で見た知り合い([[ワムウ]]、仗助、噴上ら)が呼ばれなかったことぐらいです。  吉良に聞くなど手段はありますが、本人の思考がそこに至っていない状態です。  第三放送は聞いていました。 ※カーズから『第四放送時、会場の中央に来た者は首輪をはずしてやる』という伝言を受けました。 ※死の結婚指輪を埋め込まれました。タイムリミットは2日目 黎明頃です。 ※夕方(シーザーが出て行ってからルーシーが来るまで)にDIOの館を捜索し、拡声器を入手していました。  それに伴い、サン・ジョルジョ・マジョーレ教会の倒壊も目撃していました。 【[[パンナコッタ・フーゴ]]】 [スタンド]:『パープル・ヘイズ・ディストーション』 [時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』終了時点 [状態]:紙化、右腕消失、脇腹・左足負傷(波紋で止血済)、大量出血 [装備]:DIOの投げたナイフ1本 [道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、DIOの投げたナイフ×5、 [思考・状況] 基本行動方針:"ジョジョ"の夢と未来を受け継ぐ。 1.……(思考不能) [備考] ※フーゴの容体は深刻です。危篤状態は脱しましたが、いつ急変してもおかしくありません。  ただし『エニグマ』の能力で紙になっている間は変化しません。 ※第三放送を聞き逃しました。 【備考】 ※D-4南西にスーパーフライの鉄塔が建ちました。大きさとしては目立ちますが、カオスローマなので特別おかしくは見えないかも。  原作通り中に入った誰かひとりだけを閉じ込めます。  現在サヴェジガーデン一羽が居残っていますが、何故これで居残りが成立しているのかは後の書き手さんにお任せします。 ※D-3の路地、フーゴが眠っていた位置にカーズの伝言(第四放送時、会場の中央に来た者は首輪をはずしてやる。カーズより)が書かれた紙が置かれています。  シーザーたちはまだ気が付いていません。 【D-6 中央部 市街地/1日目 夜中】 【プロシュート】 [スタンド]:『グレイトフル・デッド』 [時間軸]:ネアポリス駅に張り込んでいた時 [状態]:健康、覚悟完了 [装備]:ベレッタM92(15/15、予備弾薬 28/60)、手榴弾セット(閃光弾・催涙弾×2) [道具]:基本支給品(水×6)、双眼鏡、応急処置セット、簡易治療器具、露伴のバイク、打ち上げ花火     ゾンビ馬(消費:小)、ブラフォードの首輪、ワムウの首輪、 不明支給品1~2 [思考・状況] 基本行動方針:ターゲットの殺害と元の世界への帰還 0.カーズをぶっ殺す。 1.大統領に悟られないようジョニィに接触する 2.育朗とワムウの遺志は俺たち二人で"繋ぐ" 3.残された暗殺チームの誇りを持ってターゲットは絶対に殺害する [備考] ※支給品を整理しました。基本支給品×3、大型スレッジ・ハンマーがB-4の民家に放置されています  また育朗の支給品の内1つは開けた事になっていて、本物はプロシュートが隠し持っています ※支給品のうち、一つは「ヘルメット」でした。千帆に譲りました。また所持していたワルサーP99とその予備弾薬も玉美に譲りました。 【トリッシュ・ウナ】 [スタンド]:『スパイス・ガール』 [時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』ラジオ番組に出演する直前 [状態]:健康 [装備]:吉良吉影のスカしたジャケット、ウェイトレスの服、遺体の胴体 [道具]:基本支給品×4 [思考・状況] 基本行動方針:打倒大統領。殺し合いを止め、ここから脱出する。 1.今の声……ルーシー!? 2.フーゴとジョナサンを探しに行きたいけど、DIOの館に行くべき? 3.地図の中心へ向かうように移動し協力できるような人物を探していく 【イギー】 [スタンド]:『ザ・フール』 [時間軸]:JC23巻 ダービー戦前 [状態]:健康 [装備]:なし [道具]:なし [思考・状況] 基本行動方針:ここから脱出する。 0.現状に興味なし。死なない程度に頑張る。 1.あいつ(フーゴ)、どこ行きやがった!? 2.コーヒーガム(シーザー)と行動、穴だらけ(フーゴ)、フーゴの仲間と合流したい 3.煙突(ジョルノ)が気に喰わないけど、DIOを倒したのでちょっと見直した 【小林玉美】 [スタンド]:『錠前(ザ・ロック)』 [時間軸]:広瀬康一を慕うようになった以降 [状態]:健康 [装備]:H&K MARK23(0/12、予備弾0)、ワルサーP99(04/20、予備弾薬40) [道具]:なし [思考・状況] 基本行動方針:トリッシュを守る。 1.トリッシュ殿は拙者が守るでござる。 2.ナランチャは気に食わないが、同行を許してやらんこともない 【[[ナランチャ・ギルガ]]】 [スタンド]:『エアロスミス』 [時間軸]:アバッキオ死亡直後 [状態]:健康 [装備]:なし [道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、不明支給品1~2(確認済、波紋に役立つアイテムなし) [思考・状況] 基本行動方針:主催者をブッ飛ばす! 0.カーズ討伐に協力するが、トリッシュの身を第一優先。 1.早くフーゴとジョナサンを探しに行こう 2.玉美は気に入らないけど、プロシュートはもっと気に入らない 【双葉千帆】 [スタンド]:なし [時間軸]:大神照彦を包丁で刺す直前 [状態]:健康、強い決意 [装備]:万年筆、スミスアンドウエスンM19・357マグナム(6/6)、予備弾薬(18/24)、遺体の心臓、遺体の胴体 [道具]:基本支給品、露伴の手紙、ノート、地下地図、応急処置セット(少量使用) 、顔写真付き[[参加者名簿]]、大量の角砂糖 [思考・状況] 基本行動方針:ノンフィクションではなく、小説を書く 。その為に参加者に取材をする 0.カーズ殺害に少しでも協力する。 1.大統領に悟られないようジョニィに接触する 2.主催者の目的・動機を考察する 3.次に琢馬兄さんに会えたらちゃんと話をする [ノートの内容] プロシュート、千帆について:小説の原案メモ(173話 無粋 の時点までに書いたもの)を簡単に書き直したもの+現時点までの経緯 [[橋沢育朗]]について:原作~176話 激闘 までの経緯 ワムウについて:柱の男と言う種族についてと152話 新・戦闘潮流 までの経緯 188話 [[風にかえる怪物たち]] のくだりはプロシュートが書きましたがホッチキスで留められて読めない状態です [備考] ※トリッシュとプロシュートからそれぞれ遺体を譲り受けました。 【[[シーザー・アントニオ・ツェペリ]]】 [能力]:『波紋法』 [時間軸]:サン・モリッツ廃ホテル突入前、ジョセフと喧嘩別れした直後 [状態]:胸に銃創二発の傷跡 [装備]:トニオさんの石鹸、メリケンサック、シルバー・バレット [道具]:基本支給品一式、モデルガン、コーヒーガム(1枚消費)、ダイナマイト6本    ミスタの記憶DISC、クリーム・スターターのスタンドDISC、[[ホット・パンツ]]の記憶DISC、イギーの不明支給品1 [思考・状況] 基本行動方針:主催者、柱の男、吸血鬼の打倒。 1.カーズと戦う。 2.フーゴを探し、保護する。 3.ジョセフ、シュトロハイムを探し柱の男を倒す。 [備考] ※DISCの使い方を理解しました。スタンドDISCと記憶DISCの違いはまだ知りません。 ※フーゴの言う『ジョジョ』をジョセフの事だと誤解しています。 【D-5 空条邸/1日目 夜中】 【[[ジョセフ・ジョースター]]】 [能力]:『隠者の紫(ハーミット・パープル)』AND『波紋』 [時間軸]:ニューヨークでスージーQとの結婚を報告しようとした直前 [状態]:全身ダメージ(中)、疲労(大) [装備]:ブリキのヨーヨー [道具]:首輪、基本支給品×3(うち1つは水ボトルなし)、ショットグラス [思考・状況] 基本行動方針:殺し合いを打破し、幸せに末永く生きる。 1.遺体の回収を目指す。 2.承太郎、ジョルノと合流する。 *投下順で読む [[前へ>かつて運命になろうとした『あの方』へ]] [[戻る>本編 第4回放送まで]] [[次へ>]] *時系列順で読む [[前へ>かつて運命になろうとした『あの方』へ]] [[戻る>本編 第4回放送まで(時系列順)]] [[次へ>]] *キャラを追って読む |前話|登場キャラクター|次話| |192:[[unravel]]|[[ジョセフ・ジョースター]]|:[[]]| |184:[[さようなら、ヒーローたち]]|[[カーズ]]|:[[]]| |193:[[To Heart]]|[[シーザー・アントニオ・ツェペリ]]|:[[]]| |193:[[To Heart]]|[[イギー]]|:[[]]| |193:[[To Heart]]|[[宮本輝之輔]]|:[[]]| |193:[[To Heart]]|[[吉良吉影]]|:[[]]| |192:[[unravel]]|[[ジョルノ・ジョバァーナ]]|:[[]]| |186:[[ブレイブ・ワン]]|[[ナランチャ・ギルガ]]|:[[]]| |186:[[ブレイブ・ワン]]|[[トリッシュ・ウナ]]|:[[]]| |193:[[To Heart]]|[[パンナコッタ・フーゴ]]|:[[]]| |195:[[かつて運命になろうとした『あの方』へ]]|[[プロシュート]]|:[[]]| |194:[[キングとクイーンとジャックとジョーカー]]|[[ディエゴ・ブランドー]]|:[[]]| |194:[[キングとクイーンとジャックとジョーカー]]|[[カンノーロ・ムーロロ]]|:[[]]| |194:[[キングとクイーンとジャックとジョーカー]]|[[蓮見琢馬]]|:[[]]| |195:[[かつて運命になろうとした『あの方』へ]]|[[双葉千帆]]|:[[]]|

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: