[[ディアボロ]]の動揺④

「世界は一巡している。あなたの知っている親友の遺体と娘は居ない」

公園に着いた瞬間、長門は言い放った。
それは突き放すような言いぐさ

「エンリコ・プッチ。
 彼のスタンド能力が事の発端となり世界はリセットされ、結果一巡した」

「一巡って……なんだ?」

「一週すること。一巡前の世界の記憶を持ち
 一巡後の世界に存在しているのは、エンポリオと貴方の二人だけ」

「お、お前の言っている事は理解できないが…
 それならトリッシュはもう居ない…つまり死んだのか?」

「生存している。けれど一巡前の記憶は持ち合わせていないので貴方の記憶はない、そして環境も違う」

「意味が分からない」

「……私も説明のしようがない組織も気づかなかったから」

一巡ってゲームじゃないんだ。
一回クリアしたからもう一週なんて……じゃあ、他の奴等はどうなった?

「あなたを裏切ったブローノ・ブチャラティはイタリアで国語の教師をしている
ポルナレフは妹と一緒に暮らしている。リゾットは日本に転勤中。家族は居ない
 あなたを終わりのない死の連鎖に突き落としたジョルノはアメリカからイタリアに一人留学」

「……教師に留学生」

「そう。変わったから
 ……私も一巡したから変わったかもしれない」

長門は消えるように呟いた言葉の真意は分からないが落胆しているようにみえる
きっと一巡前のことを考えているんだろう。
俺も記憶が無かったらそんなことが言えるのかもしれない

「じゃあ、俺は一巡したのに
 どうして記憶を持ち合わせて過去も変わってないんだ?」

「それはジョルノのゴールドエクスペリエンスレクイエムのせい」

「あいつのスタンド?」

「そう。ゴールドエクスペリエンスレクイエムによって死に続けたけれど、
移動するのではなく作られた世界に飛ばされた仮想空間‥‥そこで死に続けていた」

じゃあ、俺は今まで仮想空間で死に続けてたのか?
確かに知っている場所に行っても、知っている奴には遭遇したことがない仮想空間だったからか?

「その仮想空間に居たため貴方は記憶を持ち、一巡後の世界に到達できた。
しかし、彼のスタンド能力は消えていない
 本人は気づいていなくてもスタンドは“居る”ものだから、
本当なら貴方は一巡後の世界でも死に続けてた。でも凉宮ハルヒは阻止した」

「ハルヒが?」

「凉宮ハルヒは、きっと助けたかった。
 一人で痛みに耐えながら泣いている貴方を
 間違いをやりなおそうと凉宮ハルヒが呼び寄せた。一巡後の世界に」

頭を落ち着かせよう。
整理してまとめるんだ……移動しているように思えて仮想空間で死に続けていた。
世界は一巡しても俺の現象は変わらない、ジョルノのスタンドが“居る”からだ。
なら俺のスタンドも“居る”のだろう。
ハルヒは俺を救いたくて呼び寄せた……か、泣いてないがな

「ここで貴方を知っている人は誰もいない、
 罪を償った。あとは謝罪をしたら、
 貴方は新しい人生を歩める娘と暮らし幸せな人生になる事を許される」

後頭部がジィンと痛みだした。
許されるなんて考えてこなかった。俺が幸せになる事が許されるなんて

「イタリア随一のギャングのボス」

心臓が大きく跳ねた。
背中に嫌な汗が伝わる……なんで知っている?
長門は凄い速さで口を動かすと、景色がノイズとともに変わり
赤やら青やらが混じり歪んだ空間が辺りを覆う

「子供にも麻薬を渡し、自分の正体がバレそうになったら娘でも殺す。
 貴方は邪悪で醜悪で外道すぎる。私は……凉宮ハルヒみたいに信用できない」

長門はまた凄い速さで口を動かすと、
今度は金槌があらわれ俺に向かってブン投げてくる。よけると二本、三本と増え
また俺のもとに回転して向かってくる。しゃがんでなんとか避ける

「謝罪しても許される事と、そうではない事がある。それは貴方が一番知っていること……違う?」

そう言うと、いつの間にか斧を手に持ち俺めがけて突っ込んできた
反射的に後ろに飛びのけるが、正体を知られ動揺したせいか体勢を保てられず
バランスをくずし左に少しだけよろけてしまった。
それを見逃す相手ではない、長門は片足に重心をかけ大きく飛んだ
斧では攻撃せず、くるんと一回転して遠心力で威力を高めてから
かかとで俺の首を攻撃した。強烈な一撃だった

「あぐっつ!?」

戦いに長い間身を置いていなかったせいか弱くなってしまった。
油断していたとはいえ、なんて失態だ!!

「貴方は私達を殺すかもしれない、その危険性がある回避しないといけない」

長門は地面に倒れていた俺の首をつかみ、壁に押し付けた
ここは公園だったはずだ。壁など存在しない
俺が死に続けていた世界もこんのなのだったのだろうか?
長門は首を絞める力を強めた。しかし呼吸するのにも話すのも辛くはない

「俺は死んでも生き返るぞそれでも殺るか?」

「貴方を一定回数殺したら死ぬ可能性がある。私はそれをやる」

長門はやけに落ち着いている。
俺も自分の正体がバレた時には驚いたが、今は冷静さ取り戻した。
右手に持っていた斧を頬にあてた。冷たい感触が伝わる
長門はまるで業務連絡かのように機械的に告げた

「貴方の生命を停止する」


to be continued...

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最終更新:2009年03月20日 13:36