第30話 「ダービー・ザ・ゲーム 2」

SOS団の部室。いつもはハルヒや徐倫達とダラダラ過ごしているだけの部屋で、俺は椅子に座り、バービーだかオービーだかいう奴と向き合っていた。
「勝負は何でするんだ?」
「これだよ」
そう言ったダービーは麻雀の牌をだしてくる。
「俺は麻雀なんてできないぞ」
「別に麻雀をしてもらう気はないよ。そうだ、麻雀の起源を知ってるかい?」
知らねぇな。古泉はどうだ?
「麻雀は1850年代、中国の上海近辺が起源といわれています。日本には明治末期に入り、関東大震災後にひろまり始めたそうです。
その後この麻雀は太平洋戦争後、アメリカ式の麻雀にとって変わられますけどね」
「ご名答。……さすがの君も麻雀の牌の種類は分かるよね?」
「確か……東南西北白發中と………」
「今のは字牌だね。あとはマンズ、ピンズ、ソーズがそれぞれ1から9まである。読み方があるんだけど君は知らなさそうだからそうは言わないでおくよ。
花牌とか特殊な牌は幾つかあるけど基本はこの34種類の牌だ」
「……それで?どんなゲームをするんだ?」
「ナインだよ」
………ナイン?
「ルールは簡単。互いに数牌を1から9まで持ち、それぞれ1枚ずつ出して大きさを競う……それだけさ」
簡単だな………。
「9回勝負で獲得した得点で勝敗は決まる」
「………得点?」
「このゲームでは勝った時、自分と相手の数字の差がそのまま点になる。8で2に勝てば六点だけど、8で5に勝ったら三点っていう具合だ」
「つまり、いかに自分の強い数字で相手の弱い数字に勝ち、自分の弱い数字はなるべく相手の強い数字にあてないようにする……そういうことですね?」
「その通り。……でも、普通のルールじゃつまんないから特別ルールを入れさせてもらうよ」

「………特別ルール?」
「普通このゲームはピンズ、マンズ、ソーズのうち一つだけを使うゲームだけど……今回は全部使おう」
ちょっと待て。それじゃゲームにならないんじゃないのか?
「それを防ぐために一回だした数は二度とだせないとしておくよ。例えばマンズの9を使えばピンズの9もソーズの9も使えなくなるってことだ」
「それで?三つとも使う意味はなんだ?」
「ジャンケンさ。マンズはピンズに勝ち、ピンズはソーズに勝ち、ソーズはマンズに勝つ。
たとえ1に9をだしたとしてもこの組み合わせにあわなければ負けだ。逆に言えばどんなに弱い数字でも、勝つチャンスがあるってことだ」
「……………」
「この三すくみで勝ったら入る点は数字の差にかかわらず三点だ。ルールは分かったかい?」
「ああ」
「牌は用意しておいた。揃ってるか確認してくれ」
目の前の牌を古泉と二人がかりで確認する。
「………古泉」
「なんですか?」
「イカサマとかはどうだ?」
「………僕は長門さんではありませんので保証は無理ですが……僕の見た範囲ではイカサマはありませんね」
「……………」
確認を終え、牌をダービーに返す。
「これでいいのかい?」
「あぁ」
「そうか……ゲームを始める前に一言言って欲しいことがある」
「……俺の……魂を賭ける」
「GOOD!」

「さて、勝負を始めようか」

1回戦 キ 0‐0 ダ
俺は牌を前に考え始める。こういう序盤はでかい牌や小さい牌は危険だ。相手の出方がまだ分かんないからな。ここは無難に4ぐらいだろう。
「……決めたかい?」
「まあな」
俺はピンズの4、ダービーはソーズの6だった。
「ちっ………」
「俺に三点か………」

2回戦 キ 3‐0 ダ
さて、次は何でいくか?まだ序盤だ。大きな賭けはしたくない。
「……今、君は大きな賭けをしたくない……そう考えてるね?」
「………え?」
「そんなに驚くことはありませんよ。初歩的な心理学です」
「……………」
古泉のいうとおりだろう。こんなゲーム、誰だって慎重になる、俺だってそーなる。序盤にでかいのがでてこないのは当然のながれだ。そして互いに牌をだし、同時に開く。俺がソーズの6、ダービーがマンズの3だった。
「3点か………」

3回戦 キ 6‐0 ダ
「ふむ……僕はここまで負け続けている……ここらで勝ちたいな……5点ぐらいの勝ちが一番か………」
「……………」
多分、挑発だ。この誘いに乗ってでかいのをだすのは危ない。特別ルールがあるせいで、3点にされちまうかもしれねぇ。……待てよ?だったら相手の挑発に乗ってやるのも手じゃないか?……いや、むしろここは裏をかこう。そして俺は牌をだす。
「決めたかい?じゃ、僕はこれにしよう」
開けた結果、俺がマンズの2、ダービーがマンズの7だった。
「まだまだ君も甘いね………」
「一点差か………」

4回戦 キ 6‐5 ダ
「ふふふ……少しだけながれが僕に傾いたようだね……君がこのまま沼にハマった馬のようにジワジワ追い詰められていく様が見えるようだよ………」
「ただの挑発です。落ち着けば大丈夫ですよ」
ああ、勝負は始まったばかりだ。………よし、こいつにしよう。そして俺は牌をだした。それからダービーもだす。
「………その牌はソーズの7……ですね?」
「………な!?」
「運が悪かったですね。僕のだした牌は………」
そう言ったダービーが表にした牌は
「ピンズの……2………」
「僕の勝ちだな」
「ま、待て!まだ俺は牌を開けていないぞ!」
「………ソーズの7を……かい?」
「………ぐ」
「ださないということは僕の読みが当たったということだ……フフ………」
クソッ……なんでこっちの牌が分かったんだ?俺は絶対に見せてなんかいないはずだ。
「……まさか……」
イカサマか?スタンドを使えばわけもないことだろう。だが……スタンドをイカサマに使われていたらどうやって見破るんだ?いや、そもそもこいつはイカサマをしているのか?案外カマをかけただけだったのかもしれない。
「……………」
「その目……なかなか怖いね。君は一見無力だが、実は相当な実力を持っている……さ、次はどうでてくるんだい?」

4回戦終了時 キョン 6点‐8点 ダービー ダービーが2点リード

To Be Continued・・・

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最終更新:2008年05月01日 16:06