[[パンナコッタ・フーゴの消失]]
   [[第一話]]

「我々SOS団の活動目的は宇宙人や超能力者や未来人を見つけ出して一緒に遊ぶ事。
そうだったわよね?」
大いなる時の流れの一こま。SOSのいつものメンバーはいつもの様に文芸部の部室で活動なんてお世辞にも言えないばらばらな行動をしていた。
俺と古泉は囲碁。
朝比奈さんはメイド姿で給仕。
長門は鈍器といって差し支えないハードカバーに視線を固定している。
そんな中我らが団長、涼宮ハルヒは文庫本を広げながらこの団体の存在意義を否定しかねない珍妙な疑問をメンバーに投げかけたのであった。
俺は黒の碁石を右手で玩びながら答えた。
「なんだ、ついに自分のやってる事に自身が無くなってきたのか?」
ついでにそのままその唐変木な力を意識することなく普通の女子高生になっちまえ。
だが俺の考えはココアに砂糖三杯くらいに甘かった。
「そういうわけじゃないの。私達の活動内容は同じ目的を持つどんな団体よりも的を射ているわ」
近所をほっつきまわることがか?
「理屈を捏ね回すより体を動かして探す方がずっと簡単で効率いいじゃない」
まあ簡単ではある。
効率的かどうかは疑問だが。
「うーん……なんて言ったらいいのかしら。前に私火星人はきっと地底でひっそり暮らしていて奥ゆかしくて友好的だ。
って言ったと思うんだけど、その逆のこともありえるかなーって考えが浮かんだのよ。つまり私達に正体を気取られたくない後ろ暗いところがある連中ね。
そういう奴らはきっと私達のことを良く思ってなくて、あわよくば私を倒そうとするんじゃないかと思うんだけど……」

何を言いたいのかが良く分からない。これは別に俺の脳みそのスペックが低いからというわけじゃないだろう。
現に他の二人も困惑をほんの少しブレンドしたような顔になっている。
長門は相変わらず顔すら上げないが。
それと同時に俺の中である疑問が膨れた。
この、色んな意味でトンでいるハルヒという人間は自分の言動に絶対の自信を持っている。

そして頭の回りも悪くない。
そんなわけでこいつが「言いよどむ」というのはそれなりの事情がある時に限られる。
だが今のセリフが果たして言いよどむようなことだろうか?普段俺達をこき使っているこいつなら、スパッと言うに違いないのだが……
なんだかもやもやした気分の中、ハードカバーが閉じられる音と共にSOS団の活動はお開きになった。
今日は用事がある、という事で早々と帰ったハルヒを横目に、碁盤を片付けている古泉に聞いてみた。
「今日のあれ……あいつは結局何言いたかったんだ?」何を言いたいのかが良く分からない。これは別に俺の脳みそのスペックが低いからというわけじゃないだろう。
現に他の二人も困惑をほんの少しブレンドしたような顔になっている。
長門は相変わらず顔すら上げないが。

「僕も最初は首を捻ってしまいましたが、そんな難しいことじゃありません」
イラつく微笑を浮かべながら、超能力者は片付けの手を止めず続ける。
「つまり涼宮さんは少々焦っているんですよ。痕跡すら見つけられていない、ということでね。それでとにかくそうした超常の存在との接触を渇望しているわけです。接触さえできるなら例え相手が敵意を持っていても構わない。そう考え始めているわけです」
「それは、すごくまずいんじゃないのか……」
俺は「ワレワレハ、ウチュウジンダ」とか言いながら光線銃片手に侵略してくるインベーダーを想像して背筋が寒くなった。 
「まあ完全に無視していいことでもありませんが、涼宮さんも別に殺されたがっているわけではないですから、常識外の存在からいきなり攻撃されるという可能性は極めて低いでしょう。今のところ彼女は自分がそうした存在と渡り合えるとは思っていないみたいですし」
本当か? 奴なら喜び勇んでエイリアンの大群に突っ込んでいきそうだが……
俺は相槌を打ちながら後の二人にも一応聞いてみた。
「わ、わたしも……そう深刻になることでもないと思います。普段通り過ごしていけばそうした考えは自然となくなるかと……」
「涼宮ハルヒが危険分子を呼び込む可能性は0・1%以下。無視して構わないレベル」
そう、か。それなら大丈夫、かな?

そうした楽観視が後になって後悔することになるとは、その時の俺達には分かっていなかった。
ハルヒが読んでいた本が「宇宙戦争」だったと知っていたら、あるいはもっと真剣になっていたかもしれないが、そんなことを言ったってもう遅い。
長門を責めるつもりも無いが、0・1%の確率なんてものは奴の前では本当になんの問題にもならないのだ。
事件は3日後に起きる。

〜イタリア・ネアポリス〜

「悪いな、折角の休日なのに」
休日の昼下がり。僕はいつものレストランの席に座っていた。
「構わないですよ。僕も丁度暇でしたし。それでブチャラティ、任務というのは……?」
「あ、ああ……そうだな」
何故か歯切れが悪い。
この前、麻薬から守ってくれと街の人に泣きつかれた時の表情に似ていた。
これだけでもある程度の察しはつく。
「任務は暗殺だ。本来なら暗殺チームが担当するんだが、奴ら何か問題を起こしたらしくてな。それでポルポさんのところに回ってきたらしい」
「暗殺……ですか、でもそれならミスタが……」
「ああ、これはあいつにうってつけの任務なんだが、あいつ今拳銃を定期点検に出してるみたいで今は都合が悪いらしい。だからお前に頼もうと思ったんだ。確かお前、日本語堪能だったよな?」
「まあ堪能というほどでもありませんが……一応しゃべれます。それでターゲットは? 日本人ですか?」
「情報チームの調査で、そいつは組織にとって害のある危険なスタンド使いであるらしい。
ここに簡単なデータがある」
そう言うとブチャラティは紙の束を僕に渡した。
そして何か踏ん切りをつけるように、諦めるように、僕に言った。
「それじゃフーゴ、頼むぞ。……『涼宮ハルヒ』の暗殺を」
「任せてください」
顔写真を見ていれば、こんな即答したりはしなかったかもしれない。
それが今では……悔やまれるばかりだ。

To Be Continued・・・

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最終更新:2009年03月20日 12:43