第32話 「ウォータープルーフブロンド 1」
『これが日本の文化祭ってやつか。今迄見た事ないから新鮮だな!』
『アメリカではこういうのあんまりないからね。ゆっくり楽しまない?エルメェス』
文化祭、あたしはエルメェスと二人で展示をまわっていた。
『さっきのフリマもっかい見るか?』
『なに言ってんのよ。さっき散々冷やかししかしてなかったろ?』
『あれは楽しかったな!』
『じゃあ、この喫茶店なんてどう?』
『喫茶店〜〜〜?どーも嫌なんだよなぁ。素人丸出しでさぁ。あたしん家レストランやってるからそういうの気になんだよなあ』
『エルメェス……あんた接客なんてしての?ていうかできたの?』
『なんだよそれ。あ、なら映画はどうだ?あたし達が撮った画!』
あたし達が撮った映画はハルヒが強引に映画研究会に話を通し、上映会で上映させていた。みくるのファンが揃って観に行っているのと、あたし達の撮った映画が予想以上に出来がよく、それを目当てにした客によってそれなりに評判はいい。
『そうね……悪くないわね。あたし達が作った映画の内容は知ってるけどハルヒが作った映画の内容はしらないしな』
『んじゃ、きまりだな。こっちだ』
あたし達が上映会場につくと、人がそれなりに並んでいた。
『駄目だ。徐倫。人数制限でチケットが一枚しか手に入らねぇ』
『大丈夫よ。エルメェス、キッスでチケットを二つにして』
『………?』
シールで二枚にしたチケットを持ち、受付で二枚だす。
『おい!徐倫!チケットは一枚ずつ番号振ってるんだぞ!?バレるに決ってるだろ!』
「すいません……お客様……」
「チケットの番号のこと?ならよく見なさい」
「………え?あ、すいません!私が間違えました!」
チケットを受け取り、入場する。
『徐、徐倫!?どうしたんだ?』
『簡単よ。あたしの糸で受付にあった新品のチケットを盗ってすり替えたのよ。チケットをだしたら普通はそっちに気をとられるから助かったわ』
『……………』
あたし達の映画のあらすじはこうだ。あたしとエルメェスふんする街のチンピラの二人組が、のしあがろうと街を牛耳るギャングのボスであるアナスイ達と戦いを繰り広げるというありきたりなストーリーだ。
見ている観客もストーリーに感動するというより、画面内をところ狭しと暴れ回るアクションシーンに盛り上がっているという感じだ。……悪い気はしないな。
『あたし達の映画そろそろ終りだぜ』
『ハルヒか……ろくでもない事になってるんだろうな………』
ひどい。その一言しかでない映画だ。まずストーリー。目茶苦茶だ。SFだか、学園ラブコメだか分からない。次に演出。明らかに昼間のシーンを夜だと言い張られても観客としては反応に困る。他にも目茶苦茶な演出が幾つもあった。カメ
ラワークもなっていないし、(機材や裏方が映ってどうする!)何より芝居の下手さが目立つ。……古泉はまあましだけど。唯一救いなのはCGや音響はなかなか上手いことぐらいだろうか。……有希がしたのか?
『そろそろ終わりだな』
『えぇ』
そしてエンディングと共にスタッフロールが流れ、「完」の文字が現れた次のシーン。ハルヒがスクリーンに現れた。
「えーと、この作品はあらゆる企業、法則、人物など一切関係のないフィクションです。あ、CMは本当だからね!この映画のなかで似てる人とかがいても、それは関係ありません。他人の空似です……ってキョン、徐倫、これって当たり前
じゃない?なんでこんなの入れるのよ?……え?もう一回?……分かったわよ。この作品は………」
『しかし……あんなんで解決するとはな』
『あたしだってちょっと信じがたいよ。……上手くいったからいいけど』
『……だな。そうだ!次これ見よーぜ!』
『生物部の展示?へぇ……面白そうね。行ってみるか』
そしてエルメェスが歩きだした瞬間、誰かにぶつかった。
『あ……悪い………』
相手は180近い男で、白い髪を背中の半分辺りまでまっすぐに伸ばしている。目は右が赤、左が黒のオッドアイ。ルックスはイケメンと言って差し支えの無いレベルだが、白い髪のせいで年齢がよく分からない。なんだか神秘的な感じだ。カリスマ性っていうやつを感じる。
まだまだ暑いというのに白いロングコートに身を包んでいる。
「……………」
男は無言でいたが、暫くすると行ってしまった。
『感じ悪い奴だぜ』
『行くわよ。エルメェス』
生物部は壁に研究結果のレポートが何枚か張り付けてあり、部屋の隅でビデオ上映会、あとは幾つかの水槽に魚や蛙などが入っていた。あたし達以外は生物部の受付が二人と、一般客が三人いるだけだ。
『お!徐倫!メダカだぜ!……メダカって一塊で泳いで何が楽しいんだろうな?』
『さぁね。あ、鯉がいるわ』
『結構でかいな。……そうだ、徐倫鯉って食べたことあるか?』
『ないけど』
『あたしはザリガニを食ったことがあるぜ』
『う〜え』
『……なんだよ?海老みたいで結構いけるぜ』
『……エルメェス、どうでもいいけど手が濡れてるわよ』
『ん?そうだな。水槽が濡れてたんだろうな』
と、あまり生物部ですべきでない話をしながら時間を潰していたときだった。
『……!?エルメェス、その手………』
『手……!?な、なんだこりゃあッ!』
エルメェスの手にはいつつけられたのか、ドロドロのスライムが纏りついている。
『大丈夫か!?』
『あぁ……けどこいつ……段々でかくなってないか?』
相手にとりついてその相手を食らうスタンドとかだろうか。親父から聞いたイエローテンパランスみたいなスタンドだ。
『さっきからシール貼ったり殴ったりしてんだけどよ……とれねぇんだ』
『……本体を叩くしかなさそうだな………』
To Be Continued・・・
最終更新:2008年05月15日 11:27