第33話「ウォータープルーフブロンド 2」
あたしとエルメェスは、生物部の展示会場にいた。
『だけど徐倫、このスタンド……遠隔操作かもしれねーぞ』
『いや……多分近距離パワー型だ。遠隔操作型でもそれをつけるときにはエルメェスに近付かなきゃいけない……
どうせ近付くのなら相手の様子が見える位置をとるのが普通だ』
『と……なると本体はここにいる誰かってことだな………』
部屋には制服を着た暇そうな生物部員が二人、一組で揃いの服を着たカップル、帽子を被ったジャージの男と一般客は三人いる。
『……で、誰か分かるか?徐倫』
『見当もつかない………』
『こうなりゃ全員ぶちのめすか?』
『駄目だ最初で外すと逃げられる』
『……どうすりゃいいんだよ。あたしのスライムもなんかでかくなってきてるぞ』
エルメェスの腕を見るとなるほどでかくなってきている。……これからどうなるか予測できない分怖いな。
『とりあえずあの受付に聞いてみるか』
受付に行き、質問をし始める。
「悪いんだけどさ……今日怪しい人とか来てない?」
「怪しい……人?一体なんでそんなことを………」
「あ、あーあたし、風紀委員なのよ!文化祭とか他校の奴とかいっぱい来るでしょ?」
「あ、そういう事ですか。で、どういった人ですか?」
「んー例えば……展示をいじくってる奴。水槽を触ったとかさ」
「今のところいませんね」
「やっぱそうよね……じゃあ、何かおかしな事とかは?」
「うーん……特には………」
「ねぇねぇ」
もう一人の受付が声をかけてくる。
「さっき交代の時………」
「交代?」
「あ、はい。実は私代理なんです」
「代理?」
「はい。受付は何回か交代してるんですけど……その時に本来の当番の子が帰ってしまって……四十五分ぐらい前でした、暫く誰もいない時間があったんです」
「それはどれくらい?」
「十五分間ぐらい……だったと思います」
『徐倫……!』
エルメェスが手掛かりを見つけた刑事のような笑顔を浮かべながら話し掛けてきた。
『十五分もありゃスタンドを仕掛けておくのに十分すぎる時間だぜッ!』
『ああ、少しだけ敵の姿が見え始めたな』
『早くしてくれよ。こいつ、もう肘を通り過ぎた』
あたしは更に質問を続ける。
「その十五分の間に来た客とかは?」
「さあ……あの帽子の人はその十五分の間に来たようです。カップルのお二人は二十分程前に」
『あの帽子が怪しいな……この部屋は狭い。受付に見つからないように何かするのは困難だぜ』
『次はあいつに聞いてみるか………』
二人で帽子の男に詰め寄ると、さっそくエルメェスがいかつい顔でドスの聞いた声をかける。
『てめぇ……スタンド使いか?』
『ちょ、ちょっと待てぇぇぇぇぇ!エルメェェェェェス!』
『なんだよ?徐倫?』
『そんなふうに聞いて教えてくれる訳ないでしょ!それにこいつがスタンド使いじゃなかったらどうするんだ?』
『じゃあどうすんだよ!』
『まあ見ときなさい』
ストーンフリーをだし、殴りかかる。が、男は全く気付かず、パンチがモロに当たりそうになった瞬間に、ストーンフリーを糸にほぐし、衝撃を軽減する。
「……なんかくすぐってえな………なんすか?あんたら?」
「いえ、もういいわ。それじゃ」
二人で急いで男から離れる。
『はずれみたいだ』
『クソッ……一体……』
エルメェスがそう言った瞬間だった。いきなり何かがあたしの頭に向かって飛んで来た。
「なッ!?」
とっさにかわすと後ろにいたカップルの男に当たった。
「ん?グ……ガボッゴヴォゲ!」
と、男に当たったスライムが男の鼻と口に入っていった。
『徐、徐倫!』
『エルメェス、その腕のそれ……何処まできてる?』
『肩………』
やばい……早く本体を叩かないとエルメェスが……だが、本体は……と、そこであたしの脳裏にある仮説がひらめいた。
『エルメェス、さっきの攻撃……どこから来たか見えたか?』
『あっちの部屋の隅だ。けどあっちに人はいないぜ。他の奴が騒ぎ始めた。さっさと全員ぶちのめ………』
『エルメェス、よく見て。本当に誰もいない?』
『徐倫……何を……まさか………』
『そう。いない。人はいない。けど………』
そしてストーンフリーをだし、
「オラァッ!」
水槽を叩き割る。中から鯉が出て床をピチピチ跳ね始めた。
『スライムが消えた………こいつが本体かッ!』
『スタンド能力は何も人間だけの能力じゃない、生物なら大体が身に付けられる。
ここは生物部だ。スタンドを持った生き物を紛れ込ませるなんて朝飯前だろう』
そう言ってから鯉を踏んづけて、トドメを刺す。
『死んだか?』
『みたいだな』
部室を見回すと、さっきスライムを撃たれた男も無事なようだ。
『これで一件落着………じゃないみたいね』
見ると生物部の受付が鬼気迫る表情を浮かべ近付いてくる。
『どうする?エルメェス?』
『どうするってなあ………』
その瞬間、
「徐倫、いるか?」
アナスイとみくるが現れた。
「それじゃアナスイ、後よろしく」
『元気でな』
「は?」
そう声をかけるとあたし達は逃げ出した。
「お、おい徐……え?こっち来い?あの、俺一体何………」
鯉 死亡 スタンド消滅
ナルシソ・アナスイ こっぴどくしぼられ、承太郎にもしぼられた
To Be Continued・・・
最終更新:2008年05月15日 11:29