第36話「イン・ザ・シティ 2」
俺達は逃げ込んだ建物の陰で話し合っていた。
「どうすんだ?この包囲網……逃げ切れるもんじゃないぞ………」
「あぁ……さっきは気付かなかったが、奴は車やヘリのレゴも使ってるみたいだな」
「何処にあんだ?それ?」
徐倫は返事をせずに外を指差す。と、車が通っていった。
「多分今の体のサイズじゃ轢き殺されるな」
「……………」
「……万事休すか……?」
「………いや、一つ作戦がある」
「なんだ?徐倫」
「今から説明するぞ……いいな………」
と、徐倫が説明しだした直後だった。
「作戦会議?悪いけど……させない」
女はそう言うとレゴの建物を一つ手にとり、バラバラに崩す。
「ま、まさか野郎………」
「行くぞッ!さっき言ったように行動しろッ!」
俺達が全員とも別々の方向に走り出したのと同時にさっきまでいた場所にレゴが降ってきた。
「勘がいいな……けれど空条徐倫だけは逃げ切れなかったのかしら……姿が見えないわね。いや、隠れてるだけかも………」
そういう女の声をしり目に俺達は走り出す。
「……三手に分かれて追手を分散させるってわけね……いいわ、のってあげるわよ」
‐side of アナスイ‐
「やべぇな………」
俺達は徐倫の作戦に従い、それぞれが単独行動をとることになった。
「しかし……こんなに敵の包囲網がきついとは……」
どうやら敵は戦闘能力を有する俺と長門をターゲットにしたらしい。多分キョンの方は手薄だ。……まあそれもそうだ。俺や長門を外にだしたら奴の負けは目に見えている。が、キョンならば外に出しても何とでもなる。妥当な判断だ。
「………上だな」
ダイバーダウンを建物に潜行させ、壁をつたって進む。……うむ、なんだか蜘蛛になった気分だ。レゴのビルの最上階近くに達し、下を見る。すると長門の姿が見えた。
「……あっちも苦戦してるみたいだな」
長門は何処からだしたのか、赤い結晶のようなものでできた、装飾が無くシンプルな槍を手に群がる敵を蹴散らしている。
槍なのは周囲を敵に囲まれている状況を打破するのにはリーチのある武器が適しているからだろう。
襲いかかってきた敵を槍で一突きした後すぐさまひき、槍をまわして囲もうとした敵を押し返す。そのまま横の敵を突き、後ろにひいて槍の尻で後ろのレゴの顔を打つ。
「向こうは大丈夫だな………」
その様子から判断した俺はビルの屋上へと登った。と同時にいきなり爆撃される。
「ちっ!」
前転をして爆撃をかわす。
「軍用ヘリってわけか?たいそうな事してくれるぜ………」
正直言うと今の状況はかなりマズい。レゴでできた建物の為、屋上には隠れる場所はない。広めに作られていたのは幸運だったが、今の俺は格好の的だ。
「早くなんとかしねぇとな……」
そう呟いて上を見た時だった。ヘリから何体ものレゴが降ってくる。
「ちくしょおッ!」
後ろから迫ってきた敵に後ろ蹴りを繰り出し、続いて両側から挟み撃ちをしてきた敵の肩に飛び乗り上へと逃げる。すると上から降下している途中の敵とぶつかり体勢を崩して落ちてしまう。再び敵の中に戻ってきちまった。
「やるしかないな……ダイバーダウンッ!」
突撃してきた敵に右の裏拳。続いて左右から迫ってきた奴等にまわし蹴り、後ろに立った敵を背負い投げし、周囲から敵を引き離す。
暫くしのぎ続けていたが、敵は業をにやしたのか、ヘリからの爆撃に切り替えた。爆風を避けるのに気を取られ、その隙に俺は地面にうつぶせに押さえ付けられた。
見ると長門も壁に背をつけ両手を頭の後ろにまわし、ホールドアップの状態だ。
「てこずらせてくれたが……これで終わりね」
女の声が聞こえる。
「さあ、始末………」
「待ちやがれ!」
見上げるとそこにはキョンがいた。どうやら切り抜けたらしい。
「あら、出てきたの……けど一体あなたに何ができる?スタンド使いでもないあなたに………」
その時、
「そうね、確かにキョンには無理ね………」
徐倫の声がした。
「く、空条徐倫!?ど、何処だ!?」
「ここよ」
そう徐倫の声がすると、キョンのブレザーがほどけ、再び絡み合い徐倫の姿になっていく。
「ストーンフリーの能力よ……自分の体を糸にしてキョンの服に化けていた……三手に分かれればあんたはきっとキョンにはそんなに注意を払わなくなるだろうからな……
少し賭けだったけど、問題なかったわね」
「ち、ちくしょ……ガポッ………」
「罠にはめて敵を倒すスタンドは大概接近戦に弱い……ここまでよ……それじゃあね」
「くそおッ!」
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!」
「プッグギアャ!」
女が吹っ飛び、窓の外に落ちる。するとレゴのあった場所から長門とアナスイが転がり落ちてきた。
「いてて……やったか?」
「……………」
「みたいね」
四人でほっとしていると
「こらーーーーッ!あんた達!何散らかしてんのよ!」
一番散らかしている奴が自分の事を棚にあげ、俺達に向かって怒鳴っている。
「今すぐ片付けるのよ!これは団長命令だからね!拒否権は無しよ!」
ハルヒが凄まじい剣幕でまくし立てている。キョンと徐倫は顔を見合わせて、いつもの言葉を呟いた。
「やれやれだわ」
「やれやれだぜ」
山崎保之香 イン・ザ・シティ 再起不能
To Be Continued・・・
最終更新:2008年06月12日 11:46