第41話 「空条徐倫の消失 2」

翌日、19日
昨日は部屋に籠り一日中考えていたが、結局結論はでなかった。……当たり前か、なんでこうなったのかも分からねーんだ。
原因が分からないのに対策を考えていても意味は無い。すると、あたしの思考を中断する声が響いた。
「ね〜え、ジョリ〜ン〜」
「やかましゃああああああああ!話しかけんなクソアマッ!」
グェスだ。……何故か腹が立つ。生理的に受け付けないという奴だが何故なんだろうな。前世でこういう感じの奴とあたしは何かあったんだろうか。
「そろそろ朝ご飯だって言いにきただけなのに………」
急にシュンとしたグェスを見ていたたまれなくなったあたしは、
「………悪い」
「徐倫……やっぱりあたし達友達よね!」
………やっぱ謝んなきゃよかった。

騒がしい食堂で朝飯を昨日よりは落ち着いた感じで食っているとエルメェスがやってきた。
「徐倫………」
「何?」
エルメェスが少し悩んだ顔をしたが、決心したらしく口を開く。
「昨日の話だけどさ………」
「……忘れてもらっていいわよ」
するとエルメェスは意外そうな顔をした。
「いいのか?あんたの父親と関係ある話とかだと思ってたんだが………」
親父だと?聞き慣れない単語が聞こえてきた。
「どういう意味だ?」
「覚えてねーのか?」
怪しむ様な顔をする。あたしは誤魔化す事にした。
「いや……覚えている……少し確認しとこうと思ってな」
「そうかよ……ならいいんだけどな」

エルメェスは話を続ける。
「あんたの父親の記憶のDISCだよ。スタンドの方は取り戻せたがそっちはまだだろ?」
どうやら親父は誰かと戦って負け、ヤバい状況のようだ。それを救う為にあたしはこの牢屋にいるようだ。
状況は分かってきたが……親父が負けるなんて想像できないな。
「ハルヒはこんなメロドラマが好きだったのか……?」
「誰だ?そいつ」
「気にしなくていいわよ」
「そうか………」
そう言うとエルメェスは話すのを止め、朝飯にかぶりつき始めた。……悩みが無いってのは羨ましいわね。

朝飯が終わり、礼拝堂で再び今迄の出来事を思い出しながら考え事をしているとあたしは声をかけられた。
「徐倫……少し聞きたい事がある」
「なんだ?ウェザー?」
ウェザーがあたしの隣の席に腰を降ろす。
「お前……何故アナスイの事を知っている?」
「………ハ?」
もしかして……この世界ではあたしとアナスイは知り合いじゃないのか?
「いつ会ったんだ?」
「悪い……見当もつかない……」
ウェザーは少し混乱したような顔をした。
「お前はアナスイと話した事は無い筈だろ?」
そうなのか………。
「……昨日から少し気になっていたが……お前、何処か様子がおかしいぞ?」
……そりゃそうだろ。朝起きたらいきなり別の場所にいたんだ。……等言えるわけが無い。
言ったところで頭がおかしいと思われるだけだ。……いや、もう思われてるかもな。

「………何があったのかは知らないが……口出しはしない」
あたしもその方が有り難い。が、口には出さない。……言ったらよけい心配させるだけだろうしな。
「それはそうと………」
「何かあんのか?」
「お前宛の荷物が届いていたぞ」
荷物?刑務所にも宅配便は届くのか………。
「もちろん中身は検査される。……多分お前のも検査されてるだろう」
「おう……ところで何処で受け取れるんだ?」
「………徐倫……お前、記憶障害にでもなっているんじゃないのか?」
「いいから教えろ」

荷物の受け取り場所に来ると、あたしは自分の荷物を頼んだ。すると受付が、
「……囚人番号FE40536か……えーと……伝票は……見つからねーな………」
なかなか見つからない。イライラしながら待っていると、受付があたしの顔をチラチラ見てくる。……あたしの顔に何かついてんのか?
「も〜〜ちょっとで見つかりそうなんだがなあ〜〜〜見つからないなあ〜〜〜〜〜」
また受付がチラチラ顔を見てくる。探す気あんのか?文句を言ってやろうとした瞬間だった。
「徐倫……ねぇ………」
「なんだ?グェス?」
少々うんざりしながら返事をする。
「その……看守はさ……多分……これだよ。これ………」
そう言うとグェスは親指と人差し指で円を逆さに作る。……もしかして……賄賂って事か?
「そうよ……ほら、早く出しなさいよ。そうじゃないと荷物受け取れないわよ」

ポケットを探る。が、いくら探ってみても1セントも出てこない。……おかしいな。部屋に忘れたか?
「見つからね〜〜〜な〜〜〜届いてないんじゃあないのか?てめー」
……そろそろヤバくなってきた。………しょうがない、最後の手段だ。
「ストーンフリー………」
糸をこっそり伸ばして看守のコーヒーの入ったコップに結び、それを倒す。
「うおッ!ヤベッ!こぼれ………」
看守が驚いている隙にスタンドの腕を伸ばし、金庫から少々金を拝借する。
「大変ですね……でもあたしは荷物を受け取りたいのよ」
そう言いながらこぼれたコーヒーを拭く振りをしながら拝借した金を出した。
「ん……ああ……そうか……おッ!見つかったぞ。お前当ての荷物だ」
その荷物はハードカバーの本ぐらいの大きさをしている。包まれているせいで中身はよく分からない。サッサと受け取り部屋に帰ろうとした瞬間、
「ねぇねぇそれ見せてよ徐倫〜〜〜」
あたしは無視して部屋に帰った。

「本………?」
部屋で包みを開けると出てきたのはハードカバーの一冊の本だった。アメリカの有名なSF大作だが、何故か日本語訳だ。読めるからいいけど。
送り主は書いていない。何かないかとページをパラパラめくっていると、一枚のしおりが落ちた。花のイラストの書かれたしおりだ。拾って裏を見ると文字が書いてある。
“プログラム起動条件・鍵をそろえよ 最終期限・ニ日後”
この無機質な明朝体の文は……有希か?恐らくこれが元の世界に帰るヒントに違いない。……だが……鍵ってなんだ………?

To Be Continued・・・

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2008年06月24日 15:51