出会いは文芸部の部室だった。
ハルヒが部室を探し当てたとき、こいつは最初から窓際に座り、本を読んでいた。
ハルヒが部室を貸して欲しいといったときも、二つ返事で承認した。
出身中学や入学理由、家族構成、何一つわからない。
部室に通い続けてわかったことは、いつも違う本を読んでいるということだけだ。
それも極端なもので、数百ページはあるようなハードカバーのSF小説を読んでいたかと思うと動物図鑑を読んでいたり、
手芸入門を読んでいたかと思うとナチスドイツ指導者の自伝を読んでいたりという感じだ。
面白いのか、と聞くと「ユニークです」とだけかえし本を読み続ける。
ハルヒとは違うタイプの取り付く島もない人間である。

一昨日の放課後のことだった。
こいつはいきなり本を突きつけてこういった。
「面白いので、良ければ読んでみてください。」
渡されたものは日本一有名であろうSF小説家の長編小説であった。
元来小説というものを読まない性質の俺はぱらぱらと一二ページ捲っただけでその本を読むまでには至らなかった。

先ほどのことだ。
借りていた本を何気なく捲っていると一枚のしおりが挟んであった。
黒い背景に星の様な記号をあしらった、いかにもあいつらしいしおりだった。
裏の模様を見るためにひっくり返してみるとそこには綺麗な形をした文字でこう綴ってあった。
「話したいことがあります。今夜八時、○○公園で待っています。」
今夜八時、現在の時刻は七時四十六分。時間にはまだ余裕はある。
しかしこれは『今夜』が『今日の夜』を指していれば、だ。
渡されたのは一昨日。つまり四十八時間の遅刻になる。
俺は家族にちょっと出てくるとだけ伝えて、自転車にまたがった。

八時十三分。俺は指定の公園に到着した。
そこには部室と変わらない姿で、こいつがたたずんでいた。
こいつは怒ろうとするわけではなく「遅かったですね。」とだけ言って俺に

笑いかけ、マンションの中に入るように促した。

入れてもらったお茶をすすりながら尋ねてみる。
話って言うのはなんなんだ。
「よくぞ聞いてくれました。実は私、宇宙人なんです。」


続く?

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最終更新:2008年06月24日 16:09