第43話 「空条徐倫の消失 4」

「………お前らはどうだ?」
「……はっきり言って本当の事とは思えね~がよ~~~~」
エルメェスが少し間をおく。
「徐倫の事を信じてみるぜ!嘘をついてる目と汗には見えねーからな」
どこのジッパーギャングだよ。
「ウェザーは……どうだ?」
「……………」
駄目だったか……そうあたしが思っていると、
「信じてみよう……それにアナスイではないがその世界の方が俺にとっては幸せそうだ」
「ウェザー………」
ありがとな。声には出さず、心の中で言う。
「だがよお……その……“鍵”ってなんだ?」
「……さあ………」
ここに来てずっと頭を痛めている問題に再度ぶつかった。……そうだよな、ヒントも何も無しに鍵なんだ。シャーロックホームズやドルリイレーンでもこの謎は解けないぜ。と、その時携帯が鳴った。
「もしも………」
『パソコンだ!徐倫!』
「………ハ?」
『だからパソコンだ!それが“鍵”だ!』
「……なんだかよく分かんねーけど分かった」
『今からハルヒとSOS団の部室に向かう。そっちは頼んだぜ』
言うだけ言うとキョンは電話を切った。……あいつ、ハルヒにのりうつられたのか?テンションがハルヒと同じだったぞ………。


「パソコンに向かうのか……?」
「ああ……そこが“鍵”らしい」
あたしは向かおうとし、肩を掴まれた。
「なんだよ……とっとと行かないとマズいんだ」
が、肩を掴んだエルメェスは手を放そうとしない。
「……徐倫……今この刑務所は警備レベル3だ。見つかっただけで懲罰房送りだ」
それがどうした。あたしは行かなきゃいけないんだ。
「………一人で行っても捕まるだけだ」
「じゃあどうしろっていうんだッ!ここで待てって言うのか?」
「誰が駄目だと言った?……全員で向かうぞ。一人じゃ無理でもスタンド使いが4人なら行ける」
「………なんだよ、行くんなら先に言いやがれ」
「行くぞ。善は急げだ」

あたし達は警備員が行き交う廊下を隠れるように進んでいた。曲がり角にさしかかったところでウェザーに聞く
「……空気の流れに反応は?」
「………3つだ。こっちに向かってくる」
「どうすんだよ……普段ならエンポリオの能力で隠れる事ができるけど今いねーぞ?」
「………実力行使はどうだ?」
アナスイが提案するが、光の速さで却下される。
「バレたら面倒な事になる………」
が、その間に警備員がこちらに来る。
「オラァッ!」
3人を殴って気絶させる。
「なんで俺の時は駄目なのに徐倫はOKなんだ?」
が、アナスイのぼやきは無視される。

「こいつらの服を奪うってか?」
「こうなりゃ仕方ないだろ………一人分足りねーな」
「………ならば誰かが囮をするのはどうだ?」
ウェザーがなかなか良い提案をする。……問題は誰がやるかだが………自然とアナスイに目がいく。見るとウェザーやエルメェスも同じだった。
「………なんで俺なんだ?」
「……あんた、この騒ぎの張本人だろ?」
「警備員も騒ぎの本人を追うだろうしな」
「けじめだぜッ!アナスイ」
アナスイは反論しようとしたが諦めたらしくがっくり肩を落とす。
「やればいいんだろ……チクショオ………」
「その前に一つ頼みたい」
「なんだ?」
「この警備員達の顔をあたし達に整形しとけ、エルメェスのシールで服を増やして着せてあたし達に見せかける」
「なるほどな………」

囮作戦が功をそうしたのか、アナスイと分かれてからはすんなりパソコンのある部屋にたどり着いた。と同時に見計らったようにパソコンの電源が入り、ディスプレーに文字が表情される。
YUKI.N>現在あなたがどのような状況でこれを読んでいるのかは把握できない。しかし、あなたは通常と異なる事態に巻き込まれているだろう。
画面に音もなく文字が流れていく。この無機質な文は絶対に有希だ。
「……こいつがその宇宙人か?」
「多分な」

YUKI.N>鍵はこのメッセージそのもの。あなたはこの鍵にたどり着いた。
……一人じゃ無理だったろうがな。キョンやエルメェス、ウェザーや死んでしまったアナスイの助けが無ければたどり着けなかったぜ。
「俺は死んでねぇよ………」
そんな声が聞こえた気がしたが気にしない。
YUKI.N>これは緊急脱出プログラムである。起動させる場合はエンターキーを、そうでない場合はそれ以外のキーを選択せよ。
起動させた場合、あなたは時空修正の機会を得る。ただし成功は保証できない。また帰還の保証もできない。
「……随分とあぶなかっしい内容じゃあねーか」
「大丈夫なのか………?」
いいから黙ってろ。
YUKI.N>このプログラムが起動するのは一度きりである。実行ののち、消去される。
非実行が選択された場合は起動されずに消去される。なお、北校においては起動された。
Ready?
「………実行すんのかよ?」
エルメェスが聞いてくる。
「もちろんだ」
「……だが成功の保証は無いんだぞ」
「……その程度の事恐れてどうなる?……やるかやらないかじゃねえ、やると思った時にはもうやりおえてるんだ」
ウェザーは黙っている。
「覚悟はできている……『刑務所』の中以上の………」
ウェザーは口元にすこし笑みを浮かべて言った。
「なら俺は止めない………行ってこい、徐倫」
「向こうについたら向こうのあたし達にもおごるんだぜッ!」
エルメェスが豪快に叫びながらあたしの肩を叩いた。
「んじゃ、行ってくる」
そしてあたしはエンターキーを押した。

To Be Continued・・・

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最終更新:2008年07月29日 13:36