第51話 「涼宮ハルヒは合宿がしたい」

「冬休みに合宿するわよ!」
「「ハァ?」」
ハルヒが高らかに宣言した。その時あたし達はハルヒ特製の鍋クリスマスパーティーの真っ最中だった。
周りの奴はまたか……という反応で驚いているのはあたしとアナスイと鶴屋さんの3人だけだ。
「ああ、徐倫達は知らなかったわよね……今年の冬のSOS団は雪山山荘ミステリーツアー第2弾!場所は鶴屋さんの別荘よ!」
なあ、キョン。そのミステリーツアーってなんだ。
「夏休みにやった古泉による下手な寸劇だ」
「詳しく言え」
キョンの話によると前回は古泉がハルヒを楽しませようとドッキリを仕掛けたが、見事に見破られてしまいグダグタに終わったという出来事だったらしい。
「今回は最初から芝居と明かした上で皆さんに推理をしてもらいます……なかなかいいできですので楽しみにしてくださいね」
「………それならあたし達もやろうか?」
途端に全員が驚いた顔をする……おい、キョン、なんだその露骨に嫌そうな顔は。
「いや……だってさ………」
「いいじゃない!問題数は多い方がいいに決ってるわ!それじゃ、期待してるわよ!」
そう言って上機嫌になったハルヒは再び鍋をつつき始める。
「……んな事言って大丈夫か?」
「大丈夫よ……あたし達にはスタンドがあるからな、いざとなったらそれでトリック作ってもいい」
「反則だろ……それ」
うるせぇ。

一週間後の出発日の早朝の駅前、ハルヒとSOS団の愉快な面々+鶴屋さん、仕事の関係でついてくる事になったウェザー……とここまでは予想の範囲内だったが、
「わぁい」
キョンの妹がいる。そういやあたしやアナスイは初めて会うな。映画に出てたから顔は知ってるが。
「なんでいるんだ?」
「いいじゃん、ついて来ちゃったんだから……それにキョンとは似ても似つかないくらい素直ないい子だし、シャミセンの遊び相手にもなりそうだし」
キョンの飼い猫であるシャミセンは何故いるかと言うと………
「トリックに必要なんですよ……そういえば徐倫さん達の方はできましたか?シナリオ」
「ばっちりだ」
と、返事をした瞬間、足に何かがぶつかった感じがした。
「うわーお姉ちゃんおっきいー!それに髪の毛金色ー!」
キョンの妹だ。
「ねえねえお姉ちゃん外国人ってほんと?後キョンよりおっきく見えるよー」
随分とハイテンションな子だ。どっかの無気力仏頂面男とは大違いだな。
「うるせぇ………」

雪山行きの特急内でも妹ハリケーンは衰えず、ハイテンションだった。あたし達女組(ちなみに野郎軍団はしみったれた顔をしながらババ抜きをしている)
の中を飛び回っていた。そのテンションの高さはあの有希も読書を諦める程だった。
「また負けたーッ!徐倫強すぎよ!」
「うーんその通りだねぃ……勝負所を見極めてるねぇ」
「どうやったらそんなにトランプやUNOが強くなるんですか?」
「残念ながら企業秘密だ」
と、かっこよく決めながらカードを配っていた瞬間、
「………イカサマ」
そう言った有希が目にも止まらぬ速さであたしの腕を掴んだ。
「………何の事だ?」
有希は返事をせず、あたしの袖を振った。すると、
「………カードが山程出てきたわね」
「むぅ……このあたしにも見破れないイカサマとは……徐倫もやるにょろ!」
「イ、イカサマだったんですか……全然分かりませんでした」
「あ……アハハハ………」

電車が到着した駅から降りると二台の四駆がやってきた。中からはメイド服を完璧なまでに着こなした女とロマンスグレーとしか言いようのない男が降りてあたし達へと向かってくる。
「執事の新川です」
「メイドの森です」
そう言って深々とおじぎをした。
「……例の偽メイドと偽執事か……にしても本物にしか見えねーな」
「実際は古泉の機関の一員らしいぜ」
横を見るとみくるが熱心に森さんを見ている。……SOS団のメイド担当として色々と学ぼうとしているのだろうか。
「ほいじゃあたしの別荘へ出発するさッ!」

「でかいわね………」
「でけえな………」
「アメリカでもそうそうねーぞ……こんな別荘……」
もうそんな感想しか出てこない程鶴屋さんの別荘は立派だった。全面木造、ペンションとしてオープンしても良さそうなのに、鶴屋家の別荘の中では一番こぢんまりしているという。
部屋割りはキョンの妹の扱いが一番困ったが、みくるの部屋に落ち着く事となった。そして部屋でゆっくり過ごそう……等という事をハルヒが許すわけがなく、
「スキーをするわよ!」
ハルヒの鶴の一声によってあたし達は鶴屋家の元プライベートゲレンデでスキーをする事になった。用具は古泉が手配していたのだが、
「……あたしはお前に靴や服のサイズを教えてねーぞ」
「あまり気にしないで下さい」
大方機関とやらが調べたんだろうが、個人情報を勝手に調べられていい気がするわけがない。
「その点はすいません、謝ります……ところで徐倫さんやアナスイはスノーボードなんですね」
古泉の言葉通り、あたしとアナスイはスノボで、後は全員スキーだった。ちなみに全員のスキーの腕は
「き、キャーーーーッ!止まれませんーーーッ!アナスイ君助けてーーーッ!」
「だからスキーを内股にしろって言ってるだろ朝比奈ッ!……って待てェ!こっちくんな!ぶつかるだろッ!」
「うわー……みくる!アナスイ君!大丈夫にょろ~~?」
と、スキーの腕が壊滅的なみくるはアナスイと鶴屋さんに教えてもらっているが、上達する気配が一向に見えない。そしてキョンの妹とハルヒは………
「いい!スキーは気合いよ!足を揃えてストックをガーンてやってドワーっていって気合いで止めるのよ!」
が、キョンの妹は1m進んでコケた。……駄目だな、上達するわけがない。横を見るとキョンと古泉がいた。
「おっ……とと……危ねえ……コケるところだったぜ………」
「おや?なかなか上手いじゃないですか………」
「そんな見事に滑ってるお前に言われると嫌味にしか聞こえねーよ」
……問題無さそうだ。アナスイと鶴屋さんはみくるの危ない滑りの横で見事なテクニックを披露しながら教えているし、有希はウェザーと速くもレースじみた事をしている。
「うーん……速く頂上に行きたいのに……これじゃあねぇ………」
ハルヒが呟いた。
「んじゃあたし達がみくるとまとめて面倒見てあげるさッ!」

「……そうね……みくるもまだ下手だし……鶴屋さん、それじゃアナスイと一緒にみくるとキョンの妹の事頼んだわよ」
「いや……俺は徐倫と一緒が………」
が、アナスイの言い分はやっぱり無視される。
『……俺も残ろう』
「……ウェザーさん?一緒にレースしないの?」
『こんな年寄りがいたら迷惑になるだけだろう……若い奴だけで行ってこい』
「年寄りって……ウェザーさん……20後半じゃねえのか?徐倫」
ウェザーは40ちょっと前だぞ。
「………マジか……白人は年齢分かりにくいがそんなだったのか………」
「……それじゃメンバー決ったわね……有希!行くわよ!」
有希は無言で見事な滑りを見せながらキョンの横についた。

「……ここに涼宮ハルヒがいるのか………」
「ボスゥ~~あなたがァ出る程ではないと思うんですがァ……」
「………今迄何人もの刺客を送り込んだ……だが全員失敗した」
「……………」
「奴等は強い……空条徐倫やナルシソ・アナスイ、ウェザー・リポート……今はいないエルメェス・コステロ……奴等は優れたスタンド使いだ……戦闘能力でいえば長門有希もスタンドこそないものの、奴等に匹敵する………」
「でしょうねェ」
「だが……我々の敗北はそれだけが原因ではない……あの涼宮ハルヒの取り巻き……長門有希以外はタダの雑魚だと思っていたが違う……奴等も微力ながら力がある………」
「つまりィ、私達の敗北はSOS団をォ……軽んじたから………」
「その通りだ………」
「しかしィ、それでは今回もォ……一緒ではァ」
「……それは無い」
「………?一体どういう事ですかァ?」
「天蓋領域……奴等と手を組む事にした」
「!しかしィ……それは………」
「……危険は承知だ……だがあれを手に入れる事ができれば……奴等など恐れるに足りない………」
「……………」
「何としても手に入れる……涼宮ハルヒと……あれを………」

To Be Continued・・・

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2008年11月02日 23:02