第46話 「空条徐倫の消失 7」

「ところで……後どれぐらいで世界は改変されるんですか?」
「5分程です」
そうか……あたし達は校門が見える曲がり角で待ち伏せる。横を見るとみくるが寒そうにしている。
……ミニタイトとブラウスじゃあ当然か。
「貸しますよ、どうぞ」
キョンが上着を貸す……こんな時にアピールしてどうする。
「お前はどうだ?」
「コートがあるからいい」
その時みくるが緊張した声を出す。
「そろそろ……です」
校門を見ると誰かが出てくる……有希の言った通りの奴だ。そいつは校門前までくると不意に手をあげ空気を掴み取るような動きをする。
「凄い……強力な時空震だわ……こんな力があったなんて………」
キョンは何がなんだか分からない顔だが、あたしはビリビリするような……そう、ちょうど波紋が伝わるような感覚がする。
……さっきの有希のパンチのせいか?本来ならあたし達も巻き込まれるはずだが、有希のナノマシンのお陰で何も影響は無い。するとそいつは手を下げ、こっちを向く。
「終わりました……わたしたちの出番です」
その声を合図にキョンを先頭に、あたし、みくるの順に続く。
「よう……俺だ。また会ったな………長門」
眼鏡をかけた有希……あたしはあんまり見た事がない姿だ。
「お前のしわざだったんだな」
「……なぜ……ここに……あなたが………」
「お前こそ、なんだってここにいるのか自分で解ってんのか?」
「……散歩」
あたしはそんな有希を見ながら3年前の有希の言葉を思い出していた。
『わたしのメモリ空間に蓄積されたエラーデータの集合が、内包するバグのトリガーとなって異常動作を引き起こした。それは不可避であり、エラーの原因は私には不明。
よって対処法はない。私は必ず、3年後の12月18日に世界を再構成するだろう』
そう有希は言っていた。
「徐倫は……こうなるって気付いてたのか?」
「薄々な……」
キョンの表情はよく分からない。
「……俺は馬鹿だよ……お前みたいに気付けなかった……ついつい長門任せにして……迷惑ばっかかけて……
長門が疲れてるかもしれねぇって考えもしなかった……最低のクズだよ」
あたしだってそうだ。薄々感づいてたのに何か気の利いた事をしてやれなかったんだ……あたしも同じだよ。
「世界を変えちまうぐらい疲れてイカれてたってのに……長門は……俺達に判断を任せてくれたんだな………」
「お前はこの世界を選んだな……あんなに嫌がってたのにか?」
「当たり前だ……楽しかったに決ってるじゃねえか。面白くないって言う奴がいたら半殺しにしてやるぜ」
「……そうか……なら最後までついていってやるよ……仲間だしな」
「ああ……よろしく頼むぜ」
そしてキョンは有希に向き直った。
「そういう事だ……やっぱりアッチの世界のほうがいい。この世界はシックリこねえな……すまない……………」
キョンが何かを喋っているが、あたしは途中からろくに聞いていなかった。……何か……ヤバい………。今迄の戦いの中で培われた勘がそう言っている。
「………とりあえずクリパで鍋食って………」
気配だ……気配を探れば………
「……今度はお前が名探偵を………」
……後ろのみくる……前のキョン……さらに向こうの有希………なんだ?物陰に誰か……いるのか………?
「……ってのはどうだ、そ………」
……動いた!?しかも速いぞッ!?
「危ねえッ!キョ………」
が、間に合わず、
「あ……朝倉ッ!?」
「長門さんを傷付ける事は許さない」
キョンが黒い長髪の女に刺されていた。
「オラァッ!」
スタンドで殴りかかるがかわされる。……なんでだ?スタンドは見えねえはずだろ?
「あら……あなたは……誰かしら?……でもあなたも長門さんを傷付けるつもりかしら……なら消えてもらわないと………」
そう言った朝倉とかいう女はナイフで切りつけてくる。咄嗟に飛びのき次の攻撃に身構える。
が、朝倉はあたしを無視してキョンの方を向いた。……マズい。さっきのは牽制で、最初からキョンにトドメをさすつもりだったらしい。
「させるかよ………」
突進する。が、その瞬間飛んできたナイフに進むのを阻まれる。クソッ……マズい………。
キョンにナイフが振り下ろされようとした瞬間だった。有希がナイフを掴んだ。
593 名前: アメリカの人 [sage] 投稿日: 2008/07/23(水) 08:42:02 ID:???
「な、何故あなたがここにッ!?」
それはあたしも同感だ。後ろを見るともう一人のキョンとみくる(小)がいた。みくる(小)はみくる(大)の膝枕で眠っているが。
「この子にわたしの姿を見られるわけにはいかないから」
……みくる(大)は全部知ってたって事か……当たり前だな。怪我をしたキョンにもう一人のキョンが声をかけている。
何を言っているのかは聞こえんが。と、眼鏡無し有希があたしの側に投げ飛ばされた。
「大丈夫かッ!?」
「はっきり言って予想外だったけど……何の問題も無いわ……今のあたしに情報操作は利かないわ」
どういう事だ?
「朝倉涼子は涼宮ハルヒの時空改変能力を一部受け継いでいる。私の情報操作は通用しない」
「………分かったぜ……任せな、肉体労働はあたしの専門だ……有希、キョンの怪我を頼む」
朝倉は人を殺す事をまるで毎日3食するのと同じように当たり前の事と思っているような笑顔を浮かべている。
「殺す順番が変わったけど……問題は無いわね」
「誰がてめーに殺されるか。あたし達は帰ってみせるぜ……誰一人欠けないでな」

To Be Continued・・・

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最終更新:2008年11月09日 18:59