第47話 「空条徐倫の消失 8」
朝倉とあたしは北校の校門前で睨み合っていた。
「こいよ………」
朝倉は返事をせず、ナイフを数本投げる。あたしははじかずにナイフをスタンドでキャッチし、投げかえした。
「チッ………」
飛んできたナイフを朝倉が叩き落としている隙に一気に距離を詰め、殴りかかる。
「オラァッ!」
左のフックから右のストレート、右のニーキック、が、全てかわされる。すかさずラッシュを叩き込もうとし、顔面をかすめたナイフに防がれる。
「クソッ………」
ナイフを逆手に持ち替えた朝倉は首に切りかかる。かわすと続け様に突きを繰り出す。伸びてきた腕を弾くと朝倉は左手にナイフを逆手に持ち、右手のナイフは順手に持ち替え、狂ったような速さで切りかかってくる。
「大丈夫かッ!?徐倫!?」
「あたしの心配はいいッ!さっさと再修正プログラムを撃ち込めッ!」
キョンが慌てて落とした拳銃に手を伸ばそうとする。が、
「させない」
朝倉のナイフが飛んできたのにビビったキョンが手を引っ込める。……チャンスだ。朝倉に隙ができた。
「オラァッ!」
渾身の右のボディーブロー。が、
「くらうかッ!」
朝倉が体をねじり、ナイフを心臓に向けて突き出す。咄嗟に手で防ぐ。
「ふふ……まず左手を封じた………!?」
朝倉の目が驚愕と戸惑いをはなつ。
「な……何故……何故刺さっていないッ!」
朝倉の言葉通り、ナイフはあたしに刺さらず、まるでコンクリートにつきたてたように人差し指で止められている。
「波紋だ」
「あなたは波紋使いでは無いはずよ………」
「まあな……だが有希が一時的に波紋を作れるようにしてくれたんだ………」
朝倉はナイフをあたしから離そうとする。が、
「は、離れないッ!?」
「波紋は弾くだけじゃねえ、くっつける事もできるんだ」
「ぐ……うッ……」
「そしてくらいな……ストーンフリー+波紋ッ!」
スタンドの右腕に作れる限りの波紋を集める。
「幽波紋疾走(スタンドオーバードライブ)ッ!」
もったいぶった名前だがただの波紋をまとった強烈なアッパーカットだ。
「がッ………」
「波紋はスタンドという才能に近付くための技術だという考え方があったが……どうやら波紋とスタンドは相性が良いみたいだ。普段よりも数倍のパワーが出る」
「まだ……まだよ……わたしはこの程度では………」
「いや……お前はここで終わりだ……行くぜェェェェェェェッ!」
「く……う………」
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!」
吹っ飛んでいった朝倉は体が崩れ、赤い小さな結晶になって風に飛ばされていった。
朝倉が消え去るとそこに残ったのは眼鏡をかけた有希が座り込んで怯えている光景だけだった。
いざ撃つとなると後悔が来たのかキョンが銃を撃てずに困っていると、
「かして」
有希が銃を手に取り、眼鏡付きの有希に撃った。
「………………」
次の瞬間、眼鏡付き有希はゆっくりと立ち、眼鏡を外した。
「同期を求める」
「断る」
………なんだと?有希の性格ならまず間違いなくするはずだ。
「なぜ」
「したくないから」
感情だけで否定している。今迄の有希では考えられない。隣の未来のキョンを見ると何か分かっているような顔を浮かべている。
「お前……なんか有希にしたのか?」
「いや……特には」
未来から来た有希は
「あなたが実行した世界改変をリセットする」
「了解した」
すると過去の有希は躊躇したような声で、
「情報統合思念体の存在を感知できない」
「ここにはいない……私は私が現存した時空間の彼らと接続している。再改変は私主導で行う」
「了解した」
「再改変後、貴方は貴方が思う行動を取れ」
……妙だな……有希はこんな感傷めいた事は普通しないはず………やはり……
「キョン、てめーが噛んでんのか」
「多分な」
「ま……何があったのかは聞かないでおくよ」
すると未来の有希があたしに話し掛けてくる。
「ここであったことは私と彼には言わないで欲しい」
………分かってるぜ。あたしだってそう簡単に未来の事をばらしちゃいけないのは分かってる。
「そう」
タイミングを見計らっていたのか、有希が返事すると同時にみくる(大)が声をかけてきた。
「キョンくん、この子……わたしをお願いできますか?」
みくる(大)が声をかけてくる。
「もうすぐさっき長門さんが起こしたものより大規模で複雑な時空震が発生します……まともに目も開けてもいられないはずです」
「なんでですか?」
「最初は過去と現在を変化させただけ、でも今回は時間を正しい流れに戻す作業も加わるから」
「なるほど」
「徐倫さん」
なんだ?
「わたし達は帰ります……徐倫さんはわたし達が帰ったらそっちの長門さんの指示に従ってください」
ああ……言われなくてもそうするぜ。
「それでは、また会える日まで」
そう言うと不意に凄まじい波のようなもの……多分時空震とかいう奴だ……があたしを襲い、不意をつかれたあたしは意識を失った。
目を覚ますと見慣れたあたしの部屋だった。……やっぱり自分の家ってのは落ち着けるな。
「徐倫、起きてたの?熱はもういいかしら?」
ママが部屋に入ってきて聞いてきた。どうやらあたしはずっと風邪で寝込んでいたらしい。
「もう大丈夫よ……それより今いつ?」
「12月の21日よ」
その後ママは二言三言話してから部屋を出ていった。ふと携帯を見ると、
「………げ」
大量のメールが届いていた。ハルヒからだ。半分ぐらいがあたしを心配するメール、もう半分がキョンの事を書いていた。
どうやら階段で転んだキョンは病院で3日間意識不明だった……らしい。そしてついさっき目を覚ましたとの事だ。………あたしも見舞いに行かなくちゃな。
To Be Continued・・・
最終更新:2008年11月09日 19:01