第50話 「シーズ・ア・ミステリー 2」

「ど~~~なってんだよ~~~~」
「うるせぇぞッ!そのジュースは俺んだ!てめー俺の顔も忘れたのかッ!」
「うるせぇッ!だったら名前を言えやあッ!」
あたし達は客席でも起り始めたパニックを掻き分けながら進んでいた。
『しかし……こいつの能力、触れた相手に発動するのかと思っていたが………』
「どうやら射程内に入った奴全部って事みてーだな……キョン、奴のスタンド見つかったか?」
俺がスタンドの見えるカメラを回してあたりを眺める。
「いたぞ………」
『何処だ』
ウェザーさんが尋ねてくる。
「反対側だ……ハルヒがあっちにいるのか?」
「マズいぞ……ここから反対側に行くにはたっぷり10分近くはかかる……間に合わない………」
早くも万事休すか……そう思っていると、
『ウェザーリポートッ!』
次の瞬間、雨が降ってくる。携帯を取り出し何処かにかけていた徐倫が悪態を吐いたがウェザーさんは無視した。
『雨が降れば涼宮ハルヒは屋根のある場所に向かうだろう……グラウンドの横手に体育倉庫がある……あそこならすぐに行ける。
彼女達が避難するには一番の場所だ』
だが肝心のハルヒの見分けがつかないからな………。
『気にするな……多分向こうから話し掛けてくる』
「どういう意味だ?」
『俺達は服装が変わっていない……涼宮ハルヒ……彼女の性格なら俺達だと認識したら間違いなく話し掛けてくるだろう』
なるほどな。……それからどうすんだ?
『無駄な戦闘は避けよう……涼宮ハルヒを連れて脱出する』
なかなかいい案だ。……逃げ帰るってのがなんだか嫌だが仕方ないだろう。相手の名前も顔も分からないんだ。
君子危うきに近寄らず、昔の偉い人もそう言ってるしな。

俺達が体育倉庫についたのは3分程してからだった。……ハルヒは……何処だ?
「あれ?キョン、こんなとこにいたの?」
ハルヒの声だ。目の前にはリボン付きカチューシャをつけた女がいた。
「ハルヒ……だよな?」
「当たり前でしょ?バカキョン……それより聞いてよ、さっきいきなり古泉君とみくるちゃん、有希とアナスイを見失ったのよ……変だと思わない?」
お前が迷子になったという可能性は無視か。
「何言ってんのよバカキョン!あたしが迷子なんかになるわけないでしょ!」
言葉では否定しているが視線を逸らすあたりどうも自分が迷子になったという可能性を捨て切れなかったようだ。
「ところでよ………」
徐倫が話を切り出す。
「………もう帰ろうぜ」
「何よ、折角有希が告白された相手を見に来てるのに」
「……見て分かんねーのか?周りのこのパニック………」
「……そういやそうねえ……さっきは焦ってたから気付かなかったけど」
ハルヒは少し迷ってから、
「しょうがないわ……帰るわよ」
……本当か!?
「……何そんなに驚いてんのよ?」
いや……お前の事だから散々ごねるだろうと思ってたが……こうもあっさりすると……な……等と言えるわけがなく、
「そうか」
言いたい言葉を飲み込み、返事をする。
「それじゃ行くわよ……あの世にね」
「え?今なんつった?」
「離れろキョンッ!そいつはハルヒじゃないッ!」
徐倫がそう叫ぶと同時に何か……多分スタンドだ……に殴られ吹き飛ぶ。
「考えが足らねーな……服装じゃ分からないから声だけで誰か判断するたあ間抜けだぜ」
ハルヒの声だろ……てめぇ………。
「最近の機械は便利な物だな……合成音声だよ。涼宮ハルヒの声を作っていたんだ……普段なら間違いなく気付かれるがこんなパニックが起ってうるさいなかじゃ分からなかったろ?
ちなみに服はあらかじめ用意しておいた……女物着てるこっちの身にもなってみろ」
『ウェザーリポートッ!』
ウェザーさんが殴りかかる。が、男はカチューシャと上着を脱ぎ捨て人込みに飛び込んだ。
「マズい……このままじゃ逃げられるんじゃねえのかッ!?」
『いや……おそらく奴はここで決着をつける気だ……奴がどんな姿に化けているか分かれば……なんとかなるかもしれないが………』
だが……あるのか?そんな方法………?と、その時徐倫が携帯を何処かにかけた。5分程して切ると徐倫は顔をあげた。
「………いや、ある」
『徐倫、なんだその方法は?』
「それはな……スタンド使いはタバコの煙を吸うと鼻の横に血管が浮き出る」
『……………』
「……………」
そんなのに引っ掛かるような馬鹿なら苦労しないと思うぞ………。それにタバコ吸ってる奴なんて一人もいないぞ。
「引っ掛かってたら……どうする?」
なんだと?慌てて見回すと……いた、鼻の横を調べている男が。
『しかし……何故奴が引っ掛かると分かっていたんだ?』
「タバコよ……あいつ、タバコを吸うみたいだからな……引っ掛かる可能性は高いと思ったんだ」
いつあいつがタバコ吸ってたんだ?俺は覚えてないぞ?
「あたしも覚えてねーよ」
『なら何故分かった………』
「古泉だ」
古泉……?
「実はこの攻撃をくらってから暫くしてから古泉の機関に頼んで上空からあたし達の監視を頼んだんだ……あの機関ならそれぐらいはできそうだからな……ハルヒに化けて奴が接触してきた時に奴のこれまでの一連の行動と居場所が特定できたのよ」
「あのさ……だったら最初から分かってたんだろ?さっきのあれ……いらないんじゃなかったのか?」
「一回言ってみたかったんだ……おっと、もう逃げられないわよ」
徐倫が客席の男の肩を掴む。
「な……なんなんだよ~~あんた達……だ、誰なんだよ~~~」
「しらばっくれるな……とっくにバレてるんだ………」
「な、何を………」
「………じゃあな……オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!」
「おがぐっ!」
男が大怪我を負って吹き飛び、気絶した。
『……なるほど、確かにこういう顔の奴だったな』
……周りの奴がパニクってて気付かれなかったのは幸運だったんだろうな。
「そういえば………」
なんだ?徐倫?
「こいつの名前、聞いてなかったな」
その後、長門の告白騒動は意外な結末を迎えた。……ま、それは機会があったら話す事にするよ。
真柴啓一朗 シーズ・ア・ミステリー 再起不能

To Be Continued・・・

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最終更新:2008年11月09日 19:13