第58話 「フラッシュポイント 2」
『ウェザーリポートッ!』
ウェザーは雪を凍らせて氷柱を何本も作り始めた。が、氷柱のできるスピードが遅く、かわされ続けている。
「……なんでだ?」
「恐らく奴が赤外線を強くしたんでしょう、作った氷柱が少しずつ溶けています」
見事なステップで攻撃をかわし続けた男がウェザーを射程距離内に捕らえた。
「終わりだ……ウェザーリポート」
『それはどうかな?』
ウェザーが横へ動くとウェザーの背後には既に巨大な氷柱ができていた。氷柱がさらに伸び、男の心臓目掛けて襲いかかる。が、
『グッ……フ………』
突如氷柱が光に貫かれ、ウェザーの胸へと突き刺さる。
「ウェザーッ!?」
「急所は外れたか……運が良いな」
今、何が起こった?光が突き刺さるなんて……。
「レーザーです……あれは間違いなくレーザーです」
「だ、だけどよ……レーザーは光の発振でできるものだろ?波長を変えただけじゃあ………」
男は倒れたウェザーを足で押さえ付けると俺達に向かって話し始めた。
「確かにそうだ普通ならできない……しかしウェザーリポートの能力を利用すればできる」
……どういう意味だ。
「水滴は時に光を反射する事もある、ウェザーリポートが作った氷柱を溶かし、その水滴を鏡にしてレーザーを作り出したというわけだ」
男はそう言うと話は終わったとばかりにウェザーへトドメを刺す体勢に入る。
「……待て、てめぇらに聞きたい事がある」
「なんだ……?」
「てめぇらの目的だ……なんでハルヒを狙う?」
男は鼻で笑うと返事をした。
「何故答える必要がある?お前達はこれから私に始末されるだけだというのに」
「冥途の土産ってやつ………」
「嘘だな」
バレたか。いくらなんでも露骨過ぎたか。
「時間稼ぎだろう?その間に策を練ろうという魂胆だな……生憎だがそんな隙は見せない」
「いえ、それだけベラベラ喋ってくれたら十分です……ハァッ!」
こっそり鉄球を回収していた森さんが再び投げ付ける。
「怪我をして威力が落ちているのに無駄だ……ガードするまでもない、かわすので十分だ」
男は落ち着き払った様子でかわす。
「ハァッ!」
気にせず森さんが二発目を投げる。
「何をしているッ!可能性の無いわるあがきなどするな……素直に負けを認めればよいものを………」
「そうだな……てめーの負けだ」
「何を言って…グブッ」
その瞬間、神原がさっきかわしたはずの鉄球が後ろから命中した。その鉄球に気を取られた男は2発目の鉄球もかわせずにくらってしまう。
「馬鹿な……私はかわしたはずだ……何故………」
すると鉄球が飛んできた辺りから一人の女が姿を現わした。
「あたしが糸で鉄球の回転を受け流して跳ね返らせた……柔よく剛を制す、あたしの好きな言葉の一つよ」
「徐倫さんッ!」
「空条徐倫……そうか、柳は負けたのか………」
男はどこか悲しそうな顔で呟いている。
「お前の負けだ、そのまま何もしないんなら再起不能ですませてやるわよ」
神原は徐倫のその言葉を聞くと不敵な笑みを浮かべた。
「負けか……なるほど確かにそうかもな……だが、私はそれでおとなしく引き下がる程利口では無いのでね、フラッシュポイントッ!」
すると凄まじい速さで日焼けが進み始めた。
『道連れというわけか……ウェザーリポートッ!』
ウェザーがオゾンで紫外線から俺達をガードする。が、その層のせいで俺達も身動きが取れなくなった。
「これを待っていた……確かに私は戦いには負けた。だがまだ捕まったというわけでは無い………」
神原はそう呟くと逃げ出した。
「追え!徐倫ッ!ウェザーッ!」
「言われなくても分かってるわよ、ウェザーッ!能力を解除しろ!」
『もうしているぞ』
徐倫が男の逃げた方向へスノボで追いかけ始めた。
「こちらです!徐倫さんッ!」
待機していた古泉は林道コースを指さして言った。徐倫は林道コースに入り、急なカーブを曲がった。すると、
「グッ………!?」
突如強烈な光が徐倫を襲った。
「光を操作して一点に集中させカメラのフラッシュのようにした……めくらましだ……」
徐倫の目が慣れ、神原の姿が見えるようになると、
「さらばだ、また会える時を楽しみにしていよう」
神原はスノーモービルで林道コースを下から上ってきていた。滑り降りている徐倫に追いかける事はできない。
「ちくしょお………」
当然怪我をした俺達やスキー初心者のキョンでは捕まえられない。
「逃げられた……か」
神原仁 フラッシュポイント 逃走‐依然生存
To Be Continued・・・
最終更新:2008年12月08日 15:26