第76話 「未来からの第3、第4指令」
「あー……昨日もひどい目にあった………」
敵スタンドに襲われた翌日、俺は放課後、SOS団の部室へと向かっていた。部室の扉を開けると、
「宝探しよッ!」
涼宮がいつもの如くふん反り返っていた。よく見ると今日は右手に古ぼけた紙を持っている。
「なんだそれ?なんかの地図か?」
「俺が鶴屋さんに渡されたんだ」
「……おいキョン……あんな物涼宮に見せたらどうなるかは分かるだろう」
「無理矢理奪われたんだ。全力で抵抗はしたがな」
二人でヒソヒソと愚痴っていると涼宮が睨んでくる。
「そこ!コソコソしない!」
「………はぁい」
「鶴屋さんによるとこれは御先祖様が残した地図らしいのよ!」
「へー……でも鶴屋さんの家ならそういう宝が一つか二つぐらいあってもおかしくないわね」
「さっすが徐倫!話が分かるじゃない!」
徐倫、頼むからハルヒのテンションを上げないでくれ。
「それで、いつ行くんでしょうか?」
「明日よ!持っていくのは男子はスコップ!あ、つるはしでもOKよ……遭難した時の為に発煙灯もいるかな、お弁当や飲み物もいるわね………」
あそこはそんなでかい山じゃねえぞ。……まあ口に出したらなんで知っているのか問い詰められるだろうから言わないけど。
「それじゃ、時間は厳守よ!一番遅かった奴が交通費を払う事!いいわね!」
次の日、案の定最後になったキョンに交通費を払わせ、俺達は例の山へと到着していた。
「さ、掘りなさい!」
「……どこをだ」
「あたしが指示した場所をよ!グズグズしていないでサッサとする!」
「……はいはい」
ところがこれがなかなか辛い。結構地面が硬くて掘りにくい上、掘った穴は埋めなければならない。これがしんどい。いつもにこやかスマイルの古泉はよく分からないが、キョンはもうへばっている。
「なあ……アナスイ……お前……よく平気だな………」
「元々体を鍛えてるからな……後スタンドを時々使ってる」
「………ずりい」
「そこォ!サボらないッ!」
「………あいつが一番ずりいけどな」
涼宮は俺達男組の苦労など何処吹く風。上から指示だけ出してるいい御身分だ。
「はあ………やれやれだ」
「全くだ」
その後1時間程俺達はあちこちを掘らされ、昼休みとなった。
「なあ、これって確か何にも出ないんだよな………」
「朝比奈からはそう聞いてる」
そう、この宝探しは無駄な努力なのだ。報われるのが分かっているならまだやる気も出るが、報われないと分かっていてやる気が出る程人間は出来ていない。
「少しいいでしょうか?」
「なんだ?古泉」
「その何も見つからないという未来……おかしいですよ」
「ハ?」
「何も見つからないというのは有り得ません……例え地図が真実で無いとしても涼宮さんが真実だと思えばそうなるのですから」
………なるほど。
「つまりハルヒはあの地図を信じて無いって事か?」
「恐らくは」
「……涼宮らしくもねえな」
「確かにそうです。ですが、ここで変に勘ぐっても仕方ないでしょう……ただまあ、涼宮さんが能力を使って奇想天外な事態を起こす可能性はゼロに近いですが」
なうほどな。そう言えば……今迄の未来からの命令もおかしかった。何故か指令を受けて向かった先には敵のスタンド使いがいた。まるで俺達の情報が筒抜けみたいだったな。まさか未来人の中にスパイがいんのか?それとも………
「どうしたアナスイ?何考えこんでんだ?」
「何でもねえよ」
その後一日中涼宮に連れ回され、あちこち掘り返したものの、結局お宝は出て来なかった。ちなみに例の石の場所でも特に変わった事はなかった。知っていたとはいえやはりヘコむ。
「そかッ!お宝は出て来なかったのかいッ!」
「そうなのよね……絶対あると思ったんだけどなぁ」
「まぁイタズラ好きの御先祖様だったんだろッ!気をおとすなよッ!ハルニャン!」
「うん、そうねッ!……あ、明日は不思議探索!駅前よ!時間は今日と一緒だから!」
そう言うと涼宮は嵐のように去って行った。
「んじゃ……帰るかな」
そのキョンの言葉を合図に全員が解散する。が、俺はキョンの肩を掴んで止めた。
「なんだ?」
「頼みがある」
「なんだよ………」
「明日明後日の不思議探索のくじ……長門に頼んでイカサマをしてくれ」
「………なんでだ?」
俺は返事をせずにそっと封筒を見せる。
「未来からの指示か」
「昨日届いた。朝比奈(未来)にはもう見せてある」
「………分かった。どう分ければいい?」
「明日の午後と、明後日の初めだ。俺と長門を二人にしてくれ」
「……頼んどくよ」
キョンが去って一人になった帰り道、俺は再び指令を眺めていた。3と4、そして6という数字がプリントされた封筒だ。ちなみに6はまだ見ていない。まず、3
『明後日、土曜日。夕方までに指定された歩道橋に行ってください。そこにあるパンジーの植え込みに落ちている物を拾って以下の住所に匿名で郵送して下さい。落ちているものは小型の記憶媒体です』
封筒にはもう一枚紙が入っており、そっちには何処かの住所と地図がある。4の方は
『川沿いの桜並木のあるベンチに日曜日。午前十時四十五分までに行き、五十分までに亀を川に投げ込んで下さい。亀の種類は何でもいいです』
という物だ。
「しっかし意味不明だな………」
ひとつはガキの使い。もう一つはやる意味があるのかすら分からない謎の行為だ。ちなみに両方とも朝比奈と二人でやれとの事だ。ちなみに長門と二人と指示したのは朝比奈の未来情報からだ。
「考えても仕方ねえな……やるか」
To Be Continued・・・
最終更新:2009年04月25日 01:20