第80話 「未来からの第5指令 1」

日曜日、いけ好かない未来人野郎と会った翌日、俺達は再び駅前に集合していた。
「さ、速くくじを引きなさい」
くじ引きの結果、朝比奈、涼宮、古泉の班、キョン、徐倫、ウェザーの班、そして俺と長門となった。……イカサマしていたので結果は分かりきっていたが。
「な~んか変ねぇ………」
「なんだよ、涼宮」
「いや……あんた達が二日連続で一緒になったってのがね………」
確かにこの人数でのくじ引きだ。確率はかなり低いだろう。が、俺はしらばっくれた。
「たまたまだろ」
「……まあいいけど。ちゃんと不思議探索するのよ?図書館でサボるなんて言語道断だからね!」
相変わらず妙なところで勘の良い奴だ。

長門に図書館で留守番を頼み、朝比奈(未来)とは決めておいたホームセンターで待ち合わせておいた。
「アナスイ君ッ!」
「朝比奈か」
「すみません……ちょっと遅れちゃって……待ってましたか?」
「いや、そんなには待ってねえな」
「そうですか………」
実際は30分近くも待たされた。……まあそんな事を口にすれば朝比奈の事だ。俺に向かって土下座でもしかねない。………別に下心があるわけじゃないぞ……絶対、うん、そう……絶対だ。
「……アナスイ君?何を呟いて………」
「……………ナンデモナイ」

俺達はホームセンターの隅にあるペット屋で手頃な亀を探していた。大きすぎず、小さすぎず。
「にしてもなんでホームセンターとペット屋は大抵セットなんだろうな………」
「うーん……多分、砂とかケージとか、ペット用品がホームセンターに置いてるからじゃ無いでしょうか?」
「全部ペット屋に置けば済むじゃねーか」
「お店の大きさとか……でしょうか」
「考えても結論でねーな」
そんな感じに亀を物色していると
「あ、これ良さそう!」
「ミドリガメか………」
それは手で掴めるぐらいの大きさのミドリガメだった。値段も手頃だ。
「んじゃ、出してやる……」
「あ、いえ……いいです……必要経費で出ると思いますから」
未来人にも必要経費はあるらしい。ならお言葉に甘えるか。
「でもアナスイ君って結構簡単におごろうとしますよね………」
「徐倫や涼宮にたかられてるうちになんか癖になったんだ」
「………早く治した方がいいですよ」
「………分かってはいるんだがな………」
「アナスイ君って結構ヘタ………」
「それ以上は言うな、朝比奈」
それを言われたら俺の男としての何かが崩れさりそうだ。
「もうほとんど崩れ………」
「朝比奈……お前意外と毒舌だな」

ホームセンターで亀を買い、俺達は指定された川へとやってきていた。ベンチがある例の川沿いだ。
「亀を川の中に放り投げるんだったな………どれくらいにすりゃいいんだ?」
「あんまりキツいと亀さんが可哀相ですしね」
誰かに見せる必要があるなら強く投げた方がいいだろう。しかし、誰にも見せずに、ただ亀を投げるだけというなら弱く投げるべきだ。
「分かんねえなぁ………」
「もう好きに投げたらどうですか?」
「それもそうか……デヤアッ!」
スタンドは使わずに自分の腕力だけで投げる。
「結構飛んだな………」
「10mは越えましたね……キツくないですか?」
「うるせぇ」
投げられた亀は川に落ち、水面に波紋を浮かべながら流れていく。
「やべえ……泳げないのか?あの亀」
「た、大変ですッ!助けないと!」
すると河辺にいた少年が亀を拾いあげた。
「あ……てめぇはあの車に轢かれかけた………」
「あ………あの時はありがとうございます」
そして俺達のデートまがいの行動を涼宮に報告してくれていたあのガキだった。……思い出したら腹立ってきたぞ。
「車とかには気をつけてる?お姉さんとの約束は守ってる?」
朝比奈が天使の笑みを浮かべながら問い掛けた。
「はい、気をつけてます」
やっぱりえらく礼儀正しい奴だ。

「ところで……その亀もらえますか?」
「俺は飼ってもよかったんだが……朝比奈はどうだ?」
「わたしも別に……あげるよ」
「ありがとうございます」
ガキは深々と礼をした。朝比奈がそれに応じるように深々と礼しかえす。ほんと礼儀正しい奴だ。
「それでは塾があるので………」
そう言ってガキは小走りに去ってしまった。
「最近のガキは忙しいな」
「ですね」
「ところでこれで任務は完了……なのか?」
「多分………そうです」
今回やってる事全てに言えるが、意味不明なのが多すぎる。そろそろ誰かに説明して欲しいね。

任務も終わって暇になった俺達は、とくにする事も無しにうろついていた。
「暇ですねえ………」
「暇だな」
そんな風に緩い空気でいた時だった。横断歩道を渡ろうと信号で止まった瞬間、猛スピードの黒いワンボックスカーが俺達の目の前に止まり、朝比奈を車の中に引きずりこんだ。
「んなっ!?」
あまりに突然の出来事で唖然としたが、なんとか持ち直した俺は、スタンドを出す。
「ダイバーダウンッ!」
ギリギリ車にスタンドを潜行させ、そのまま車の天井に跳び移る。
「こいつら……何故朝比奈を?」
その時、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「アナスイさんッ!」
「森さんッ!?」
森さんは猛スピードで追いかけてくるタクシーから身を乗り出して叫んでいた。
「離さないで下さいッ!私達がその車を止めますッ!」
「分かってるぜェ!」
何処のどいつだが知らねーが、このお礼はたっぷりさせてもらうぜ……すぐにな。

To Be Continued・・・

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最終更新:2009年06月28日 18:48