第88話 「生徒会からの挑戦状 2」

翌日、SOS団の部室に集合させられた俺達は編集長という腕章をしたハルヒの前に集めさせられた。
「それで、結局どんなのを作るのよ?」
「うーん……色々考えたんだけど、ここはやっぱベタに小説にしようと思うのよ!小説ならかなり楽そうじゃない?」
世の小説家が聞いたら怒り狂いそうな台詞だな。
「というわけで……ハイ!くじ」
「は?」
「だから、くじ引きで書くジャンルを決めるのよ」
「待て待て待て待て待て待て待て待て待て」
「何よ、キョン?」
「適材適所っつう言葉を知らんのか?それぞれが一番書きやすいのにしねーとだな………」
「それじゃつまんないじゃん」
なんと俺のしごくまともな正論はつまんないの一言で一蹴された。
「できるだけミスマッチな組み合わせで突き抜けた物を書かせたいのよ!」
「新しすぎる意見ね……コケて全部さばき切れなくても知らねーぞ」
徐倫が反論する。が、ハルヒはあの100万ワットの笑顔を浮かべて言った。
「何言ってんのよ!あたしがやる限りさばけないわけが無いわ!」
「「やれやれだぜ」」

気を取り直してくじ引きをする。
「ちなみにどんなジャンルがあるんだ?」
「歴史小説、ミステリー、幻想SF、童話、恋愛小説、それとホラーよ」

うーむ……いくつかよく分からんのがあるな……だがまあ、恋愛小説以外ならなんとかなりそうだ。それ以外が来る事を祈ろう。
「はい、アナスイからよ」
「おう………」
アナスイがくじを引き、そこに書いてある文字をマジマジと見る。
「………歴史小説」
「んじゃ、お願いね」
「なあ……涼宮、アメリカを題材にした歴史小説でいいか?」
「駄目に決ってるでしょ?日本の歴史よ。じゃなきゃ歴史小説にならないじゃない」
「………俺、日本の歴史ほとんど知らないんだが」
「頑張って調べなさい」
次の瞬間、アナスイが地面に崩れ落ちる。
「だ、大丈夫ですか?」
「次、みくるよ」
「あッ!はい!……童話ですか?」
キョトンとした顔を浮かべる朝比奈さん。もしかしたら未来には童話が無いのかもしれない。
「みくるちゃんにピッタリねッ!さ、次は有希よ」
さっきミスマッチを狙うとか言ってなかったか?
「……………」
長門はくじを引いたものの、紙を暗号解読か何かのように凝視して、内容を話そうともしない。横からハルヒが覗き込み、読み上げる。
「幻想SFね?有希、よろしく」
長門は小さくうなずき、そのまま再び動かない置物とかしてしまった。

「それじゃあ……次は古泉君」
「はい」
例の爽やかイケメンスマイルを浮かべながらくじを引く古泉。
「おや……これはこれは」
「なんだ?」
「いえいえ、とても書きやすい物が来ましてね」
………ミステリーか。
「その通りですよ」
「……うーん……ま、一つぐらいはまともなのがないとね」
「ハルヒにしてはまともな感覚じゃない?」
「SOS団の存続がかかってるからじゃねえか?」
「なるほどな……いつもこうならいいんだがな………」
全くだ。
「次、キョンよ」
おう……待てよ?そういや残ってる二つは………。
「ホラーと……恋愛小説………」
うわぁ……どっちも当たりたくねえ………よし、徐倫に先に引かせるか。俺くじ運悪いからなあ………。
「徐倫、先に引けよ」
「いいのか?」
「残り物には福があるってな………」
「なるほどな。サンキュー」
おう。……あれ?なんでサンキューなんだ?……まさか!徐倫の顔を見ると邪悪な笑みを浮かべながらくじの箱に手を突っ込んでいる。
「や、やめろぉぉぉぉぉぉぉッ!」
が、時既に遅し、徐倫はくじを引き終わってしまった。そして徐倫が持つ紙には、ホラーの3文字が書かれていた。

「あたしが手品得意なの忘れてたのか?2枚の中から狙った方を引くなんて朝飯前だ」
……すっかり忘れていた。
「というわけで~~~……キョンは恋愛小説に決定ね!」
気のせいかハルヒは嬉しそうに、アナスイと徐倫は野次馬根性丸出しの目、古泉も興味深そうだし、長門までこちらをじっと見ている気がする。
「あのな、悪いが俺に恋愛小説なんて書けねーぞ」
「なんで?あんたの体験を元にしたらいいじゃん……あ、この前国木田から聞いたけど、あんた中学の時仲良かった女子がいたんだって?……変な奴らしいけど」
なんであいつの話が出てくるんだ。国木田の野郎。そういや中河も俺があいつと付き合ってたなんて勘違いしてたな。なんで皆そう誤解してるんだ?
「あいつとは何も無い。それと俺は恋愛なんてした事もされた事も無い」
「……………」
「……………」
「……………」
なんだその怪しむような目は。いくら睨んでも無い物は出てこないぞ。
「ま、いいわ……締め切りは1週間後!遅れたら………覚悟する事ね」
「やれやれだ………」
「あ、そうだ!SOS団のメンツだけじゃ何となくさびしいわね……よし!谷口と国木田も呼んで……鶴屋さんもでしょ?後は………」
ハルヒは指を折りながら何かを数えると満足した顔で部室を飛び出して行った。
「さてと……プロット考えるか………」
「そうだな」
恋愛小説……どうしたものか………。

To Be Continued・・・

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2009年09月22日 20:10