第92話 「ファイアーハウス アゲイン 1」

「なるほど……物体を自然発火させる能力ですか」
「以前戦った時に炎の中に叩き込んで再起不能にしたはずなんだがな………」
日吉はなるほど、顔の半分に包帯を巻き、腕にも所々火傷の跡が見える。
「あの後組織に助けられたのか?」
「いいえ……自力で脱出したわ……組織はあたしを死んだと思ってるんじゃない?」
「なるほどな……知りたい事は全部分かった。オラァッ!」
一気に間合いを詰め、右のフックを繰り出す。日吉もそれに応じてスタンドでガードした。腕を掴もうとしてきたスタンドをかわし、間合いを取る。
「どうした?怪我のせいで動きが鈍ったんじゃないのか?」
「フン………」
すると日吉はスタンドでは無く、本体で突っ込んできた。左足でハイキックを放ってくる。スタンドで受け止めて、カウンターを叩き込もうと身構えたその時だった。
「足から火がッ!?」
日吉の左足が突如炎をまとった。自分をスタンド能力で燃やしたのかと考えたが、それならば全身に火がすぐにまわる。何故だ………。
「だが、今はそれ以上に……こいつの攻撃を交わさないとな」
ガードしたらあの火で火傷するだろう。致命的では無いが、それでも余計なダメージは増やしたくない。

防御の体勢を解き、後ろに飛んでかわす。が、
「そうすると思ったわよッ!行けっ!ファイアーハウスッ!」
敵のスタンドが飛び掛かってきた。ヤバい、かわせそうにない………。
「ハァッ!」
次の瞬間、鉄球が日吉を吹き飛ばした。つられて敵スタンドも一緒に吹き飛ぶ。
「森さん………」
「一人では危なかったですね……それより見て下さい、奴の左足です」
「……義足?」
日吉の左足はなんと金属製の義足だった。普通の義足とは違い、何故か溝が掘られており、油で汚れている。
「潤滑油か何かか?」
「違うと思いますよ……ほら」
次の瞬間、日吉の左足が火を放ち始めた。
「なるほど……あの油をスタンド能力で燃やしてたのか」
「鉄の足なら本体にも燃え移りませんしね」
「その通りよ……あんたに左足を焼かれたお陰でね?感謝の意でも表しとく?」
「いらねーよ……オラァッ!」
右ストレートで殴りかかる。もちろん考え無しではない。
「はッ!さっきと同じ失敗するつもり?ファイアーハウスッ!」
「ハァッ!」
日吉が殴りかかると同時に森さんが鉄球を投げる。
「ちいッ!」
日吉は突進を止め、後ろに飛んだ。
「今だッ!森さんッ!」
「ハァッ!」

森さんが2投目を放つ。すると1投目が日吉を追いかけるように直角におれ曲がった。
「何ィ!」
「ザ・ミュージック……鉄球の音波で軌道を曲げました………」
が、日吉は一瞬焦った直後、落ち着きを取り戻した。
「音波?……なるほど、良い事聞いたわ……ファイアーハウスッ!」
次の瞬間、街路樹やアスファルトの間からはえる草、さらにはガソリンスタンドの車からも火が出始めた。
「こうすればいいのよ………」
「しまったッ!」
森さんが慌てると同時に鉄球が大きく逸れた。
「なんだ?何が起こった?」
「音波ってのは熱によって揺らぐんだ……空気の揺らぎにつられてな?音で鉄球を操ってるんなら、音が揺らげば軌道が揺らぐとふんだだけよ」
「図星です……まさかこんなに早く見抜かれるとは思っていませんでしたが………」
「にしても野郎……ますます周りを火事にしやがって………」
正直かなり熱くなってきた。煙もかなり増えてきている。
「ヤバいな。このままだと煙にまかれるぞ………」
火事において一番怖いのは火よりも煙で息が出来なくなる事だ。
屋外ではそうそうないが、ガソリンスタンドが燃やされてる今、ゆっくりしていたらマジで煙にやられかねない。

「ハァッ!」
森さんが鉄球を投げると回転によってまき起こる気流によって、煙の中に道が出来る。
「こちらから逃げましょう!」
森さんの後に続き、脱出しようとする。
「させないわよッ!」
日吉が左足で蹴りを繰り出してくる。煙のせいで姿はろくに見えないが、足に着いた火のせいで蹴りの軌道は丸見えだ。余裕でかわしたと思った時だった。
「かかったわねッ!ファイアーハウスッ!」
煙でスタンドを隠していたらしく、背後から風切り音が聞こえてきた。
「徐倫さんッ!」
「マズいわね……だけど対処しきれない訳じゃあ無い」
ストーンフリーの糸を全身に巻き付かせる。それと同時に敵スタンドの右ストレートを食らった。
「グウッ………」
勢いよく吹き飛ばされるが、糸がクッションになりダメージはかなり少なくてすんだ。
「……なるほどね、吹き飛ばされて煙からも逃れられるか。だけど私のスタンド能力を忘れたの?ファイアーハウスッ!」
それと同時に糸が燃え上がる。が、
「もちろん忘れてないわよ……この糸、よく見た?」
糸は日吉の左足に巻き付けられていた。義足の為か燃えはしない。
「あらかじめ切ってさっきの蹴りの時に巻き付けておいた……右足に巻き付けられ無かったのが残念だがな」
「なんか前もされたわね、こんな事………」
日吉は余裕で糸を切り、体勢を立て直した。
「……なかなかやるじゃない………」
「………フン」

To Be Continued・・・

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最終更新:2009年11月10日 02:22