第93話 「ファイアーハウス アゲイン 2」
日吉とのにらみ合いは続いていた。あたりは大火事だが野次馬はいない。
「火がかなり周っていますね……早く決着をつけないと巻き込まれますよ?」
「そうだな……森さん、鉄球で煙を飛ばしてくれ。あたしが近付いて奴を叩く」
「はい……ハァッ!」
森さんが投げた鉄球は気流を作り煙を吹き飛ばしていく。と、日吉の姿が見えた。
「オラァッ!」
右のフック、ガードされるが続け様に左で小さくアッパー、ガードしようとした所をいきなり軌道を変えてボディに鋭い一撃を叩き込む。
「フグッ………」
日吉は少し足が止まるが、持ち直すと追撃の右ストレートをかわした。
「これでもくらいなあッ!」
日吉が左足で炎の蹴りを繰り出す。後ろに飛び退いたと同時に、
「ハァッ!」
森さんの鉄球が間を縫って飛んで来た。
「チイッ!」
日吉が蹴って叩き落とした隙を見逃さず、詰め寄りラッシュを仕掛ける。
「オラオラオラオラオラオラオラァッ!」
「ぬぐっ………」
ラッシュは少し遅れたらしく、ガードされてしまった。
「しぶといわね……でも2対1よ……このままじゃ勝てないわよ」
「そんな事ぐらいはなから分かってるわ……わたしが何もせずにここに来たとでも?」
日吉はそう言うとポケットから携帯を取り出した。
「わたしはある所に電話をかけといた……何処だと思う?」
「………どういう事だ?」
「ほら、音が聞こえてきたわよ」
すると日吉の言葉通り聞き慣れたサイレンの音が聞こえてきた。そう、火事現場には必ず現われるあの車の音だ。
「消防車かッ!」
「徐倫さん、マズいですッ!あの人たち今から消火を始めるようです!」
何がマズいんだ?森さん。どうせ水だ。水圧が高くても死にはしない………。
「違うのよねえ……消防車は水じゃなくて、消火剤をまくのよ?」
「………消火剤?」
「火を消す粒子状の薬です、消火器に入ってるあれですよ……まいった事に人体には有害ですッ!」
「何ッ!?」
「さあーどうするのかしらあ?」
「森さんッ!鉄球で何とかならないのかッ!」
が、森さんは焦った顔でこちらを見た。
「体を硬質化させて呼吸を止めれば切り抜けられるでしょう……ですが今手元に鉄球が一つしか無いんですッ!」
もう一つはどうしたんだ?
「分かりません……徐倫さんッ!」
「間に合わないッ!早くガードしろッ!」
次の瞬間、あたりを白い煙が覆った。
「………さーて、奴等は死んだ……かな?」
「誰が死んだだ」
「空条徐倫ッ!?何故……鉄球はわたしが拾って一つしかなかったはず………」
「ああ、鉄球が無かったのはそういう事ですか」
森さんが体の硬質化を解除して立ち上がる。
「返してもらえますか?」
「徐倫は……一体………」
「ここよ」
「……い、糸ッ!」
あたしは口と肺を糸にして空気が絶対に入らないようにして消火剤を防いでいた。
「さて、頼みの綱も無くなったわね……おとなしくしなさい………」
糸を元に戻して話しかける。が、日吉は驚いた顔を消すと再び大胆不敵な表情を浮かべた。
「残念ね……まだあるわよ………」
「何がだ」
「切り札よ……高音で熱せられた物が急激に冷えるとどうなるか知ってる?」
「……割れる」
「その通りッ!そしてここは地面の下に何が通ってるか知ってる?」
知るか……ん?なんか変な匂いがするな……これは………。
「ガスですね……まさかッ!」
「その通りよッ!ここにはガス管があった!今の放水でアスファルトにはひびが入っている……わたしのスタンドがガス管を破壊してガスを漏れさせたッ!」
「てめえまさか………」
「くたばりなさいッ!ファイアーハウスッ!」
ヤバい、野郎ガス爆発を起こす気だッ!
「森さんッ!」
その時森さんが鉄球を投げた。
「フフ……安心して下さい。もう大丈夫ですよ?」
鉄球は日吉には当たらず、横を通りすぎていった。
「ノーコンじゃない……それじゃあねッ!」
日吉がスタンドを出すとガス管に向けて振り降ろす。と、その瞬間、日吉とスタンドの動きが止まった。
「あれ?……なんで体が動かないんだ?」
「徐倫さん、今のうちです。奴から離れて安全な場所まで行きましょう」
「……奴が拾った鉄球はまだ回転してたのか………」
「はい。ですからさっき投げた鉄球で回転を変えました。彼女の動きを止める回転にね」
「……それじゃあな」
「ま、待ちなさいよッ!」
その瞬間、日吉のスタンドがいきなり動き、ガスに火を付け、爆発が起こった。
「ゲブウッ」
「前は炎に包まれて……今度はガス爆発か……ろくなやられ方しないな、あいつ」
「……徐倫さん」
森さんがうつむいて困ったような表情を浮かべた。
「今ので鉄球が一つ無くなりました……それとバイクも爆発に巻き込まれたようです」
まいったな……こんなド派手にやったら敵に居場所を教えてるようなものだ。ここにすぐにも敵が集まってくるかもしれないのに移動手段まで無いとはな………。
「やべえな」
「そうだな。お前の考えた通りだ」
後ろから男の声が聞こえる。振り返るとそこにはフード付きパーカーを着た男がいた。
「敵か………」
「その通りだとも」
To Be Continued・・・
最終更新:2009年11月10日 02:23