第94話 「ジェット 1」
side of アナスイ
「野郎ッ!スタンドを出しやがった!」
車のドライバーは二本の足が四角い箱の側面からのび、箱から巨大な大砲がついたスタンドを繰り出してきた。スターウォーズとかに出てきそうだなあれ。
『そんな呑気な感想を言ってる場合か……それにスターウォーズならあれは………』
「飛び道具主体……だろうなあ」
俺が呟くと同時に敵スタンドの大砲が火を吹いた。
「やっぱりかよッ!ウェザーかわせッ!」
ウェザーが前輪をロックしドリフトをかけて飛んできたエネルギー砲を回避する。なんとかかわした直後、さっきまでいた場所が爆風に包まれた。
「ひええ……地面に穴がいきなり開いちゃいました………」
「あんなもん食らったらひとたまりもねーぞ………」
『真正面から相手をするのは難しそうだな……ここは徐倫達に連絡して挟み撃ちにでもしよう。今は逃げるぞ』
ウェザーの言葉を聞いて電話をかける。が、
「繋がらねーな」
『向こうも敵と戦っているのか?……とにかく俺達で相手するしかなさそうだな』
「ひええぇぇぇぇ………」
「ウェザーッ!奴の車にかましてやれよッ!」
『勿論だ……ウェザーリポートッ!』
ウェザーがスタンドを発動すると、敵の車がスコールのような大雨に見舞われた。
「ふああ……雨で車って動きが止まるんですねえ………」
朝比奈の言葉通り敵のワンボックスカーは道路の真ん中で立ち止まっていた。
『周りのドライバー達には悪いが、トドメといこう……ウェザーリポートッ!』
すると凄まじい突風が街路樹を襲い、耐えきれなくなった木々が抜け始め、車を襲い始めた。
「あわわ……車が串刺しです………」
「ありゃ死んだな……助かっても重傷か………」
が、次の瞬間だった。敵のスタンドが再び現われた。
「んだとぉ!?」
『あれを食らって生きているのか?』
敵スタンドは大砲をこちらに向けると何発か何かを発射した。
「今度はミサイルだッ!かわせッ!」
ウェザーがハンドルを切り、車をほぼ180度回転させてミサイルの軌道をそらす。
『行くぞ、このまま奴の車に突っ込む……多少のダメージは与えられるだろう』
「待てウェザーッ!ミサイルがこっちに戻ってきてるぞッ!」
『何だと!?』
ミサイルをよく見ると何かセンサーのような物がついている。
「追尾式って訳だな……ウェザー、叩き落とせないか?」
『勿論そのつもりだ……ウェザーリポートッ!』
すると雷が後ろのミサイルに落ち、ミサイルが爆発する。凄まじい爆風にあおられ車はスピンして電柱に激突して止まった。
「おい、もうちょいなんとかならなかったのか?」
『黒焦げになるのとどっちがいいんだ?』
「うぅ………」
朝比奈が顔をうつむけて真っ青になっている。どうした?
「………酔いました」
「ここにいろ。どっちみち車の中じゃ不利だ。出て戦う……行くぞ、ウェザー」
『ああ………』
車に朝比奈を残し、道路の真ん中で止まったワンボックスカーに近付く。敵のスタンドは見当たらない。
「ウェザー……近くに動いている奴は?」
『いないな』
「こっちからも……見えません……ウプッ………」
朝比奈も起き上がって車の中から敵を探しているようだ。まあ、程々にな……女の子が吐くのを見るのは相当キツいぞ。
『となると……まだ車の中に隠れているのか?』
「そうかもしれねえ……俺がダイバーダウンで車を攻撃する。援護頼むぜ」
『気をつけろよ』
車に用心深く忍び足で近付き、ドライバー席の扉の側に立つ。
「いるとしたらここだな……ダイバーダウンッ!」
車に潜行させ、中にいるはずの敵を思いっきり殴ろうとした………が、
「いないだとッ!?」
『アナスイッ!後ろだッ!敵スタンドがいるぞ!』
「何ィ!」
振り返るとそこにはさっきの大砲スタンドが俺に照準を向けていた。
「ダイバーダウンッ!」
敵スタンドの巨大な二つの足にパンチを叩き込む。が、少しぐらついただけで大砲の発射を止められそうには無い。
『ウェザーリポートッ!』
ウェザーが竜巻を起こして近くの電柱を倒し、敵スタンドにぶつけた。さすがに効いたらしく、動きが鈍くなった隙に後ろに飛び退く。その瞬間、さっきのレーザー砲が発射され、串刺しにしたワンボックスカーの前半分が消し飛んだ。
「なんつう威力だ……それ以上に奴の防御力もかなりのもんだが」
『あれだけの攻撃を食らっても変わらず動いている……本体へのヒィードバックが小さいのか?』
「ア、アナスイ君……ウェザーさん………」
朝比奈が弱々しい声で話しかけてくる。
「おい、無理すんな………」
「わたし、見ました……トランクです……ウプッ……敵は多分トランクの中に……ウッ……オェッ………」
そう言うと朝比奈は再び車の中に戻っていった。ワンボックスカーを見るとなるほど、後部座席に巨大な穴が空いている。
「あそこからトランクの中に逃げ込んだのか………」
「ばれたのなら仕方がありません」
トランクの中から高めの女の声が聞こえ、トランクの扉が吹っ飛んだ。
「私の名前は八嶋優理香……組織の幹部です」
眼鏡をかけた黒い長髪のパンツスーツを着た女がトランクの中から出てきた。
「自分から出てくるとは良い度胸だな……覚悟はいいか?」
「それは私のセリフですよ………」
To Be Continued・・・
最終更新:2009年11月10日 02:34