第95話 「ジェット 2」
八嶋と名乗った女はスタンドを出すと自分から仕掛けてこようとはしなかった。
「そちらからどうぞ………」
「なめられたもんだな……ダイバーダウンッ!」
スタンドでの右ストレート、が、八嶋のスタンドが足でパンチを受け止め、そしてそのまま蹴りを繰り出す。
「ウグッ!」
蹴りをもろに食らった俺は凄まじい勢いで吹き飛ばされた。
『凄まじいパワーだな……ならばこれでどうだッ!』
ウェザーが竜巻を巻き起こして本体とスタンドを吹き飛ばそうとする。が、なんとスタンドは吹き飛ばず、本体もスタンドに掴まり無事だった。
『パワーだけじゃなく重いのか………』
「強すぎだろ………」
「それでおしまい?ならこちらからいかせてもらうわ……ジェットッ!」
すると敵スタンドが大砲をこちらに向けて、機銃掃射をしてくる。
「マシンガンまであんのかよ!」
『かわせッ!』
とっさに飛んでかわす。が、
「まだ終わらないわよ?ジェットッ!」
続け様にレーザーが飛んでくる。少し狙いがずれたらしく、紙一重でかわしたが。
「クソッ!ウェザー!これじゃいつか当たっちまうぞ!」
『分かっている!任せろ……ウェザーリポートッ!』
するとその瞬間、辺りに濃い霧が立ち始めた。
『これである程度は撹乱できる……今のうちに近付くぞ』
「俺が左側から回り込む……ウェザーは逆から頼むぜ」
『分かった』
が、その瞬間女の声が霧の中から響いてきた。
「こっそり近付いて挟み撃ちのつもりですか?甘いですね………ジェットッ!」
すると姿は見えないが何かが発射される音がした。
「さっきの追尾式のミサイルか?」
『いや、姿が見えもしないのに追尾出来るはずが………』
暫く動けずに周囲を警戒して立ち止まる。その時だった。
「アナスイ君ッ!後ろです!」
朝比奈の言葉を受けて振り返る。なんとそこには八嶋自身がいた。
「んなッ!」
「さっきのは空砲よ……いくらスタンドが強くても不意打ちにはどうかしら?」
八嶋が突き出してきたナイフを後ろに飛んでかわす。が、飛んだ瞬間、背中を何かに打ち付けた。
「さっきのスタンドかッ!」
「踏みつぶせッ!ジェットッ!」
ヤバい、かわせそうにない。終わったか………?
『ウェザーリポートッ!』
その瞬間、ウェザーが凄まじい突風を起こして霧を吹き飛ばすと一緒に俺を吹き飛ばした。
「なかなか良い判断です」
「ウェザー……助かったぞ………」
『アナスイッ!朝比奈みくるが危ないぞッ!』
「え?」
起き上がって八嶋を探すと、彼女は俺達を無視して車へと向かっていた。
「先に弓と矢を探す気か………」
車を調べられるのはマズい。朝比奈自身の安全もあるが、囮作戦の事がバレるのも避けたい。
「朝比奈ッ!そこから逃げろッ!」
車に向けて走りながら叫ぶ。
「ふ、ふえッ!?はい!」
朝比奈は車から飛び降りて逃げ出した……のは良かったのだが、なんと弓と矢を車の中に置き忘れている。
「………マズいぞ」
必死で走り、八嶋が開けるより前に回収しようとする。が、間に合わない。
「これが弓と矢ね?もらったわ………」
「そう来ると思ってましたッ!」
八嶋がアタッシュケースに手をかけた瞬間、車の影に隠れていた朝比奈が八嶋に飛び掛かった。
「しまったッ!くっ………」
運動能力では八嶋の方が上のようだが、不意をつかれて朝比奈に押さえ付けられてしまった。……ただまぁ、朝比奈もそう長くは押さえられなさそうだ。
「ダイバーダウンッ!」
スタンドで攻撃を仕掛けた瞬間、朝比奈を突き飛ばした八嶋はなんとか攻撃をかわした。
「くっ……油断したわ」
「観念しなッ!ダイバーダウンッ!」
朝比奈を突き飛ばして体勢が崩れている隙に攻勢に出る。スタンドで猛ラッシュを仕掛ける。
「グッ………」
八嶋はなかなかの身体能力の持ち主で、スタンドのラッシュを生身でさばいていく。が、流石にさばくのにも限界がある。段々と動きが悪くなっていく。
「フンッ!」
崩れかけてきたガードにチョップを叩き込むと、遂に崩れてしまった。
「トドメだッ!ダイバーダウンッ!」
「そうはいかないわ……ジェット!」
するとさっきまで沈黙していた大砲スタンドがこちらを向いた。が、弾を撃ってこない。
「何をするつもりだ?」
すると八嶋は何も言わずこちらを押さえ付けてきた。暫く取っ組み合って時間がたつと、大砲がミサイルを発射してきた。さっきの誘導ミサイルだ。
「しゃらくせえ……ウェザーッ!打ち落とせッ!」
「それは止めておきなさい……今度のミサイルは発射に時間がかかる代わりに威力が上がってるわ……爆発させたらあなた達もタダじゃすまないわ」
「……朝比奈、アタッシュケースを貸せ」
「ふぇ?は、はい」
俺は朝比奈からアタッシュケースを受け取るとそれを頭の上に掲げる。
「じゃあ……これがどうなってもいいんだな?」
「なッ!あなた一体何を………」
「フンッ!」
八嶋の静止を聞かず、俺はアタッシュケースをミサイルに投げ付けた。
「ほらほらどうする?ミサイルの追尾を解除しねーと弓と矢が吹き飛ぶぜ?」
「くっ……ジェットッ!解除しろッ!」
そう言った瞬間、ミサイルの動きが止まる。
「今だッ!ウェザーッ!」
『ウェザーリポートッ!』
ウェザーが突風を起こし、ミサイルを八嶋に向けて叩き付ける。
「しまっ……クソッ!」
敵は慌ててスタンドそのものを解除してしまった。
「そう来るだろうと思ったぜ」
スタンドを解除すると読んでいた俺は八嶋の懐へと突っ込んでいた。
「あばよッ!トドメだッ!ダイバーダウンッ!」
スタンドで防御する間も無く、八嶋はボディに強烈な一撃を食らって吹き飛び、のびてしまった。
「……てこずらせやがって……車は無事か?ウェザー」
『大丈夫だ……壊れてはいない』
「そうか……朝比奈、弓と矢を拾え」
「あ、はい」
が、その時だった。
「そうはいかないわッ!」
なんとのびていたように見えていた八嶋の野郎は朝比奈が拾う前にアタッシュケースを奪っていた。
「あの野郎……てめえッ!分かってんのかッ!さっきの攻撃であばらが折れてんだぞッ!動いたら重傷になるぞ!」
「そんな事知らないわ……私はボスにこれを届ける……選ばれし者達の世界を作り上げる為にッ!」
「ウェザーさんッ!」
『ウェザーリポー………』
「ジェットッ!」
ウェザーが攻撃するより早く、八嶋はスタンドから催涙弾を放った。白い煙が立ち込め、八嶋の姿が見えなくなる。
『………仕方が無い、奴等に囮作戦がバレた……アレをやるぞッ!』
「ウェザー……?まさかッ!アレをかッ!おい、止めろッ!朝比奈ッ!早くウェザーを止めろ!」
「ふ、ふぇ?」
が、既に遅かった。それは発動された。そう、ウェザーリポートの最も恐ろしく、最も強力な能力………
『ヘビーウェザーッ!』
「……その通りだな……まさにヘビーな状況だ………」
To Be Continued・・・
最終更新:2009年11月10日 02:38