第97話 「サイレントフォース 2」

有希とあたしは男と睨み合っていた。
「……来ないのか?ならこっちから行くぜ」
「フン」
まずはあたしが男に向けて突進する。が、男は先程からの超スピードで回避をした。
「狙い通りだ………」
「どういう……何ッ!?」
男があたしの後ろに回り込むと、そこには有希が待ち構えていた。
「あたしじゃお前には追いつけない……だが有希なら追いつくのは可能だ……これで2対1、お前の方が不利だ」
男は有希の猛スピードのラッシュをこれまた人間離れした動きでさばいている。まるで格闘漫画を見てるみたいだな。ただまぁ、あたしは悠長に眺めているほど優しい人間じゃない。
「オラァッ!」
男の横に回り込み、蹴りを繰り出す。男はバク転で後ろにかわした。
「……回避行動に隙が生じた」
有希がバク転の隙に突っ込み、右の掌底を叩き込む。
「ぬぐう………」
男はそのまま反対側の車線にまで吹き飛ばされた。
「諦めな……今なら再起不能で済ませてやるわ」
「諦める?生憎だが物分かりが悪くてな」
「そうかい、ストーンフリーッ!」
近くに落ちていた焼けた木の枝を槍のように男に投げ付ける。と、同時に有希が猛スピードで男に突っ込んでいく。
「かわしたら有希にやられる、かわさなくても槍で御陀仏……さあどうする?」
「フン」

男は起き上がって手のひらを前方に突き出した。スタンドで受け止める気か?
「ハァッ!」
男は気合を入れて腕を前方に突き出した。すると途端に木が空中で停止し、浮かんだ。
「何ッ!?」
スタンドで掴んだのかと思ったが、動きが何となく違う。
「有希、危ないぞッ!」
「………!」
あたしが叫ぶと木は突進している有希の顔面を殴ろうと回転した。とっさに有希はガードし、ダメージを抑える。
「大丈夫か!?……しかしなんつう動きだ………」
「無事」
有希は大丈夫そうだ。だが、今の木の枝の動き……有り得ないぞ?
「恐らくスタンド能力」
「何かは分かるか?」
「まだ分析中、未知の概念が含まれている為時間がかかる」
今迄に無いスタンド能力って事か。注意してかからないとな。
「のんびりお喋りか?ピクニック気分だな………」
気がつくと男はあたし達の背後にいた。鋭い右フックが襲いかかってくる。
「クソッ!」
とっさの事で、かわせそうにない。マズいな、直撃したらダメージでかそうだ。
「………フッ」
が、パンチが当たると思った瞬間、有希があたしを掴んで投げ飛ばした。
「有希ッ!」
有希の機転であたしは攻撃をかわせたが、有希はかわせない。パンチを食らった有希は吹き飛び、電柱に鈍い音を立てて頭をぶつけた。

「有希、大丈夫かッ!」
有希に駆け寄る。が、倒れた有希はピクリとも動かない。しかも頭を打った際に怪我をしたらしく、おびただしい血が流れている。
「運の悪い奴だ……打ち所が悪かったか?」
「ゆ、有希?冗談よね……こんなあっけなくやられるなんて……有希、返事しなさいよ……有希?有希ィ!」
「………諦めろ」
「う、嘘だ……嘘だろ?いつもみたいに何にも無かったみてーに………」
が、やはり有希は全く動かない。手は固く握り締められ、体温も下がってきている。即死では無かったようだが、意識が完全に無いようだ。
「マズい……このままじゃあ間違いなく………」
「安心しろ。お前もすぐにそうなる」
気がつくと男がかかと落としを繰り出そうとしていた。とっさに横に飛んでかわす。
「……有希はもしかしたら助かるかもしれない」
「なるほど。確かにそうかもな……そいつはそのままにしておいたら間違いなく死ぬ……だがすぐに手当てすれば……後5分以内といった所だな」
なら、5分以内にお前を倒せばいいわけだ。話が早い。
「スタンド能力を見破れてもいないのにか?」
「……………」
確かにそうだ。1対1で勝ち目が無いのは明白だ。こいつの能力の糸口は………。
その時だった、後ろで瀕死の有希から何かの物音が聞こえた。

「気のせいか?」
有希は意識が無くて動けないはずだ。やはり聞き間違いだな。
「よそ見をするな」
気がつくと男が蹴りを繰り出していた。スタンドでガードしようとする。
「無駄な事を」
「それはどうかな」
男の蹴りがガードに当たる。前は吹き飛ばされた。が、今回は一つ違う点がある。
「何ッ!?足に糸がッ!」
「さっきガードした時に結び付けた……いくら速く動けよーが捕まえちまえば関係無い……いくぜェッ!」
片足を固定されて男は思うように動きがとれない。
「クソッ!放せッ!」
「誰が放すか……オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!」
「ゴプクウッ!」
男は派手に吹き飛び、近くに止まっていた車に扉を破って突っ込んだ。
「有希ッ!今手当てしてやるぞ……残り3分か……結構マズかったな」
「……いいや、まだ3分付き合ってもらうぞ!」
男の声が後ろから響いた。驚いて振り返ると、男が満身創痍で立っていた。
「馬鹿な……効いていないはずが………」
「いや、かなり効いたぞ……立っているのがやっとだ……だが、それで十分だッ!」
男が手のひらをこちらにかざす。すると、周りに止まっていた空車が次々と浮かび、こちらに飛んできた。
「んだとおッ!?」
どうやら奴のスタンド能力のようだ。やはり能力の正体を見破らない限り勝ちは無さそうだ。
「だが……一体何の能力だ?」
「お前には永遠に分かるまい………」

To Be Continued・・・

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最終更新:2009年11月10日 02:43