ブチャラティにとって、大抵の不思議なことは不思議ではなかった。
それは自分自身、スタンドなどというこれ以上不思議とは言えないようななものを
持っているから、というのもある。
だが、流石にこの状況はブチャラティにとっても新鮮過ぎた。
(あの女ッッ!!確かさっきの!?それにあの骸骨・・・これは一体・・・?
ッッ!大体、骸骨はともかく、あの女は何で動ける!?・・・俺以外の奴は皆静止していた。
そこから考えれば、少なくともあの女がこの状況に何らかの形で関わっている・・・
ということになるが・・・しかし、空飛ぶ本・・・ふざけてるとしか思えないが―――)
ブチャラティがこの状況を彼なりに整理していると、その女と交戦中の骸骨がこちらを向いた。
「んNNNNNN?何で封絶の中で動いてる奴がいるんだァAAA?」
(ちっ!!気付かれたッッ!!)
だが、ブチャラティはスタンドを出して迎え撃とうとはしなかった。
(このまま奴をぶちのめすことは可能だろう・・・。だが、俺は敢えてこのまま何もしない!)
ブチャラティは出来るだけ観念した・・・という感じを出すように力を抜いて、その場に座り込んだ。
出来るだけ、こちらの情報は見せずに、相手を探りたかったのである。
骸骨は気色の悪い音をカゥタカゥタ鳴らしながら笑った―――ように見えた。
「よっしゃァAAAA!!ちょっと補給ゥUUUUUUU!!」」
意外なほど速く骸骨が迫ってくる。
ブチャラティはその骸骨の落ち窪んだ目の部分を睨みつけるように見つめ、目を離さない。
一応、いざという時のためにスタンドを何時でも出せるようにはしていたのだが、
その必要は無くなった。
「そこォォォォ!!」
金髪の女が何かを発した。
骸骨はそれをまともに食らい、吹っ飛んでいった。
女はブチャラティの元にスーッと近づいて来ると、憤慨した、というよりも興奮した感じで
畳み掛けるように喋りだした。
「アンタ、何やってるのッッ!?死にたいのッッ!?つーか、何で動けるのッッ!?」
あまりの剣幕に、流石のブチャラティも圧倒されそうになる。
(・・・・・・やはりヒステリックな女だな)
ブチャラティは今考えたことを敢えて口に出してみたら、どんな反応をするだろう?と
興味を持ったが、それをしてみるほど余裕があったわけでも無いので、止めておいた。

「・・・・・・アンタ一体何なの?封絶の中で動けるなんて、よっぽどのことよ」
女は、多少落ち着きを取り戻したみたいだった。
「封絶?何だそれは?」
封絶とは、ここいら一体を覆っている変なフィールドのようなものだろうと
ある程度までは想像出来ていたが、それでも何も知らない素振りで聞いてみた。
「ここいら一体を覆っている変なフィールドみたいなもんよ!それだけ分かればいいでしょ!?」
自分の想像とそのまんま同じの答えが返ってきたことに、ブチャラティは多少失望した。
また、適当にあしらわれた感じが鼻についた。
「今度は私の質問に答える番よ!あなた、何で封絶の中で動けるわけ!?」
「自分でも分からないものを答えられるわけ無いと思うが」
ブチャラティは苛立ちながらも、素っ気無く答えた。
「ヒャーッハッハ、我が麗しの酒盃マージョリー・ドー!そりゃあ、そこのオカッパの言うとおりだぜ!」
急に、その女の所持している本が口悪く喋りだした。
普通なら驚くところだが、ブチャラティはそんなことじゃ驚かなかった。
だが、そのことがその女に疑問を抱かせたみたいである。
「こいつ―――ッ、何でこの状況でそんなに落ち着いていられるの?
第一、封絶の中でこうしてまともに動けるってだけでも只者じゃないわね
何なのよアンタは!」
見た目よりは鋭いな、とブチャラティは思った。
「まともに動けるわけじゃない。体がいつもよりは重い」
ブチャラティがそう返すと、女が苛ついたのが見て取れた。
「いちいち、下らない反論するんじゃないわよ!」
「ヒャーッハッハ、面白い奴じゃねーか!俺は気に入ったぜ!」

「五月蠅い!バカマルコ!!・・・兎に角!!」
漫才のような会話の後に、女はキツイ視線をブチャラティに向けた。
「得体の知れない奴・・・・・・どちらにせよ、徒ってわけじゃ無さそうね
徒ならば、さっきの奴がアンタに襲いかかろうとする筈が無いからね。
かといって、フレイムヘイズの類でも無し、それでいて完全に無害と言うわけでもない」
そう言うと、女の表情は更に険しくなった。
「こういうややこしい奴は、放っておいていいことがあるわけでもないしね
手っ取り早く消してしまおうかしら」
「何だと?」
ブチャラティは瞬時に臨戦態勢を取った。
女はそれを見ると、感心したのか、それとも馬鹿にしているのか、パチパチと拍手した。
「アンタ・・・随分と戦い慣れてるようね?一瞬で雰囲気変わったわよ」
この女、思ったより馬鹿では無いな・・・とブチャラティは思った。
ブラフだったのか、それとも本気で殺すつもりだったのかは分からないが、
それでも、この女の一言に妙な説得力があったのは事実で、思わず身構えてしまった。
少なくとも、敵を殺すことに対して、それ程抵抗を持ってはいないんだろう、
ということは察せられた。
あの骸骨と敵対しているようだが、だからといって、この女が自分にとって味方である保障はない。
ならば、今すぐにぶちのめした方がいいのか?
自分が只者ではないことは悟られていても、スタンドのことまでは知られていない。
ブチャラティは早急な決断を迫られていた。

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最終更新:2007年05月22日 19:50