「な?な?な?ナンダAAAAAAAA!?テメェェェェEEEEEEWAAAAA!!!?」
突然の事態に骸骨が狼狽した。
ブチャラティは、女の中から抜け出すと、地面に突っ伏した骸骨を見下ろした。
「な、ナ、NA・・・テメ!!ど、どうやったAAAAA!?た、確かNI・・・」
「確かに消滅させたはず・・・か?」
「だはぁAA!?」
「貴様の能力・・・敢えて能力と言わせて貰おうか。つまり、あの光は浴びせたものを
まるで電子レンジのように急激に温めるものらしいな。まあ、完全にそれと同じ原理では
無いのだろうがな。そして、光を集約させればより早く温めることが出来るようだ。
流石にさっきの光は、いきなりだったので、俺も完全には交わせなかった」
そう言うと、ブチャラティは僅かに火傷を負った手を見せた。
「だが・・・、いくら何でもあそこまで範囲を広げた光じゃ、一瞬で、人を完全に消滅させる
ってところまでは行かないみたいだな。せいぜい、この火傷で精一杯ってとこか。
まあ、長く浴びていたら、どうなったかは俺にも分からんが・・・。
なので、この“スティッキィ・フィンガーズ”の力でこの女の中に隠れさせてもらって
貴様がノコノコ近づいて来るのを待たせてもらったぞ」
ブチャラティは自信たっぷりの表情で、骸骨に近づいていった。
「どうした?殺したと思ってた奴が実は生きていたことが、そんなに驚くことか?」
ブチャラティは、最初にこのフィールドに閉じ込められた時に感じた体の重みを、
最早微塵も感じていなかった。
この時、ブチャラティが思っていたのは、早くこの面倒くさいことを片付けて、
カプチーノでも楽しもう。ということだけだった。
「行け、“スティッキィ・フィンガーズ”」
ブチャラティのスティッキィ・フィンガーズは地に伏した骸骨目掛けて拳を次々と振り下ろした。
すると、骸骨は見る見るうちにバラバラになっていった。
「!!?・・・・・・HYAAAAHHAHHAHHA!!そんなことしても無駄だと言ったろおおおおがAAAA!!
・・・・・・アレ?」
元に戻ろうとした骸骨は、急な違和感に戸惑った。
「な、なんだAAAAAAAAこれはAAAAAA!!?」
いつの間にか、バラバラになった骸骨の体の至るところに、ジッパーが出現していた。
「俺の“スティッキィ・フィンガーズ”はジッパーで人体や物体を切断、接着し
中に空間を作る事が出来るスタンド・・・どうやら、他人の能力が干渉すると
いくら貴様でも、簡単には元に戻れないみたいだな」
「グググググ・・・ガガガGAGAGAGA・・・」
「貴様みたいな心底下衆な野郎なら、例え落とした財布を拾ってくれたとしても、
殺すことに、何のためらいもいらないな」
「や、やME!!」
「安心しろ、徹底的に粉々にしてやる」
「UWAAAAAAAAAAAA!!!!」
「アリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリアリ!!!!!」
“スティッキィ・フィンガーズ”は繰り出す拳でバラバラになった骸骨を、さらに細かく、文字通り粉々にした。
「アリーヴェデルチ(さよならだ)」
ブチャラティがそう言うと、粉々になった骸骨はそれっきり、一切の活動を停止した。
やがて、ブチャラティの目に、あの清清しいまでの青空が戻ってきていた。
「ふう・・・本当に体が軽くなったな・・・」
青空はまるで今までのことが嘘のように澄み切っていて、心地の良い風が吹いていた。
ブチャラティは各筋肉を誇張させ、体のあちこちをパキパキと鳴らした。
その後、何かを思い出したように振り向くと、倒れたままの女に手を差し伸べた。
「・・・フン」
女は不満そうにブチャラティの手を取ると、何とか立ち上がった。
その様子をやれやれといった感じで見ていたブチャラティは懐から、何かを取り出した。
「お前のものだろ・・・返すぞ」
「うえぇぇぇ、てめえ!もっと大事に扱いやがれ!!」
それは、女が持っていた喋る本であった。
「マルコ・・・!」
「お前があの骸骨にだまし討ちされた瞬間にな・・・。ほらっ」
ブチャラティは本を女に投げ渡した。
「・・・・・・」
女は敵意を持った目でブチャラティを見つめていた。
「・・・アンタ、一体・・・」
「それ以上はストップだ」
ブチャラティは女が何か言おうとしたのを止めた。
「俺はもうこれ以上、お前らとお前らのいざこざに、関わりあいたくはない!
こっちだって、色々と面倒くさいことをいくつも抱えているんでね・・・。
それに、こんな目に遭ったのは初めてだが、どうもお前らがこの街に来たのが主な原因みたいだ。
奴の・・・あの骸骨の目的はよく分からんが、どうもお前らを追っていたってのは間違いない。
つまり、お前らさえいなくなれば、もうこんな目に遭うことは無い・・・。
少なくとも、起こる可能性自体は低くなる筈だ。今までのようにな。
俺はもうお前のことを知りたくも無いし、お前も俺のことはこれ以上知らない方がいい。
お互いのためにな・・・」
そう言うと、ブチャラティは女に背を向けた。
女は何か言いたげ感じだったが、ブチャラティが振り向くと既に女の姿は無かった。
まるで、最初からそんな女などいなかったように。
ふと、自分の手を見てみると、いつの間にか火傷が消えていた。
だが、ブチャラティはもうそんなことは気にしていなかった。
今、ブチャラティが気にしていたのは、食事代を払わずにあのカフェから出てしまったこと、
それだけであった。
ブチャラティの奇妙な“ユメ”・・・・・・END
「我が悲しみの百合、マージョリー・ドー、今日はいいとこ無しだったじゃねえか」
「・・・フン」
「しっかし、奴は一体何だったんだろうな?」
「・・・あの、人型の“何か”・・・只者じゃないわ・・・。でも、もういいわ。もう会わないもの」
「ハーッハッハッハ、そうだな!・・・で、次は何処へ行くんだ?」
「“屍拾い”のいる場所へ・・・」
最終更新:2007年05月22日 19:53