◆◆◆◆◆◆
彼女は、感動したような、心酔したような瞳で私を見上げていた。
―――今まで、数え切れないほど見てきた『表情』だ。
他者の懺悔や告白に耳を傾け、神父としての教えを説く。職業柄、こうゆう行いには慣れている。
あの刑務所で働くようになってから、常にやってきたことだ。
囚人達からもこうやって信頼や仰望の眼差しで見られてきた。
まぁ、さほど興味は無かったが…神父としての職務を全う出来ているのはいいことなのだろう。
かつての私ならばこうして誰かの力になれたことを喜ぶのだろう。
しかし、生憎だが今の私からすればこうして信用された所であまり心に響くものは無い。
他者を神の教えの下に諭すことは出来ても、真に救済することは出来ないからだ。
本当の意味で人を救うのは『天国』―――『未来への覚悟』だ。
口先の言葉だけで人は救われないし、変わることは出来ない。大切なのは確固たる意志と行動。
私はそれらを握り締め『天国』を目指しているのだ。
それに…彼らと人間が解りあえるかどうかなど、知ったことではない。
私とDIOには『引力』があったからこそ親友になれたのだ。
彼はそこいらの有象無象の妖怪“バケモノ”共とは違う。
人間は神の下に平等だ。だがあくまで平等なのは「人間」。
DIOのような崇高な存在以外の「人ならざるもの」は、所詮神に淘汰された悪しき種族に過ぎないのだ。
そんな種族と人間が解りあうなど、考えようとも思わない。
とはいえ、彼女の話そのものは興味深い。
他人の心を読む力を持っていたことで、人間からも妖怪から疎まれたという姉妹。
嫌われることに耐え切れず、己の心を閉ざした彼女。
そんな君と聖が出会ったことも、そうゆう疑問を抱くようになったのも。
それは一つの引力なのかもしれない。そう考えると面白いものだ。
だが、人間と妖怪が手を取り合えるかという話に関しては別だ。
解りあえるのは『引力によって導かれた者同士』だと私は思う。
とはいえ、この少女の信用を勝ち取れたならばそれはそれで良いことだ。
殺し合いに乗るかは兎も角、保身の為に使うことは出来るかもしれない。
『無意識を操る能力』…暗殺には最適かもしれないな。十分に利用価値がある。
まぁ…もう暫くは様子見と洒落込むつもりだけどな。
彼女の扱いをどうするかは、これから考えていけばいい。
きっと『手駒』以上の価値は無いであろう。
だが安心するといい。どんな悲惨な運命が待ち受けようと、覚悟を決めれば幸福になれるのだから。
◆◆◆◆◆◆
「……ところで、こいし。君は名簿を確認したかな?」
「うん。ちょっと前に一応見たよ。…私の知ってる名前が、何人もいた」
こいしの返答を聞き、神父は内心「やはり」と思っていた。
DIOに、空条親子、エルメェス・コステロ、フー・ファイターズ、ウェザー・リポート…
名簿には神父にとっても見覚えのある名前が幾つか見受けられたのだ。
そしてこいしにも姉や聖を始めとした親しき者たちの名が名簿に見受けられる、と…
どうやらあの主催者、幾つかの「関係者同士のグループ」をゲームに巻き込んでいるらしい。
確かに、全く見知らぬ者同士で殺し合いをさせるよりはそちらの方がいいのだろう。
神父やジョースター、こいしや地霊殿の住民…など。
因縁のある者同士の対立、親しき関係者同士の潰し合い。彼らが望んでいるのはそれかもしれない。
あくまで推測に過ぎないが…これが当たっているとすれば、奴らは紛うことなき悪趣味な連中だ。
「私も、この場に知り合い…いや。さっき話した、親友のDIOがいるらしいんだ。私は、彼を捜したい」
「…ねぇ、神父様。私も…着いていっていい?」
「ああ、構わないよ。独りでは心細いだろうからね。…君の知り合いにも、会えたらいいな。」
「うん。どうすればいいのか解らないけど…とにかく、みんなには会いたい。
でも、こんな殺し合いの場だし…独りだとどうしても不安だから…とりあえず、神父様に着いていきたいんだ」
妖怪と言えど、流石にこのような異常な状況下では不安感を抱く。
先程までのこいしの瞳は無感情に見えたが、神父に諭してもらったことで少しだけ光が籠ってはいるが…
その表情を見る限りでは、あくまで不安そのものは残っている様子。
殺し合いという状況において、独りでいることの恐怖を『無意識』に抱いていたのだ。
自分が信じられる、誰かの暖かさを求めていた。
「…解った、君の知り合いと会う時まで…この私『エンリコ・プッチ』が君の支えになろう。安心してくれ。
――では、そろそろ行くとしようかな?」
「…うん!」
神父の呼びかけと共に、こいしは立ち上がってすたすたと着いてくる。
太陽が並ぶような向日葵畑の中を、神父と少女は共に進んでいく。
――後ろから着いてくる少女を尻目に、神父は少しばかり思慮をしていた。
(…さて。あの少女…少なくとも、当分は私のことを信用するだろう。
どこまで『使える』かはまだ解らないが、まぁ同行させながらそれを見定めていけばいい。
もしもの時は、私のスタンド『ホワイトスネイク』を使わざるを得ないかもしれないが…
その時はその時だ…―――ともかく、今は早急にDIOと会いたい。)
彼の脳裏に浮かぶのは、数十年前に死んだ親友のこと。
邪悪の化身『ディオ・ブランドー』。
彼と再会し、共に天国を目指せるということがあれば…それこそ最上だ。
彼と共に理想を追えるだなんて、夢のような話だ。
知らず知らずのうちに、神父は内心高揚していた。
こいしのことなどさほど気にかけてはいない。今はとにかく…親友と会いたい。
―――向日葵畑を進みながら、彼はただ…そう思っていたのだった。
【E-6 太陽の畑/深夜】
【古明地こいし@東方地霊殿】
[状態]:健康、主催者への恐怖
[装備]:なし
[道具]:ナランチャのナイフ@ジョジョ第5部、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:死にたくないけど…私はどうするべきなんだろう…?
1:今は神父様に着いていこう。神父様は信じられそうだ。
2:地霊殿や命蓮寺のみんな、特にお姉ちゃんや聖に会いたい。
3:DIOってどんな人だろう…?
[備考]
※参戦時期は神霊廟以降、命蓮寺の在家信者となった後です。
※無意識を操る程度の能力は制限され弱体化しています。
気配を消すことは出来ますが、相手との距離が近づけば近づくほど勘付かれやすくなります。
また、あくまで「気配を消す」のみです。こいしの姿を視認することは可能です。
【エンリコ・プッチ@第6部
ストーンオーシャン】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:不明支給品、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:DIOを探す。『天国』へ到達する。
1:さて、どこへ向かおうか?地図には「DIOの館」という場所が記載されていたのが気になるが…
2:あくまで保身を優先。殺し合いに乗るかはまだ保留。
3:ジョースターの血統は必ず始末する。
4:古明地こいしの価値を見定める。場合によっては利用する。
5:主催者の正体や幻想郷について気になる。
[備考]
※参戦時期はGDS刑務所を去り、運命に導かれDIOの息子達と遭遇する直前です。
※緑色の赤ん坊と融合している『ザ・ニュー神父』です。首筋に星型のアザがあります。
星型のアザの共鳴で、同じアザを持つ者の気配や居場所を大まかに察知出来ます。
※古明地こいしの経歴を聞き、地霊殿や命蓮寺の住民について大まかに知りました。