おてんば少女、出会う

 「うーん……」
ここは地図で言うところのE-6にある、タイガーバームガーデン。
ギンギンの色彩で彩られた彫像が所狭しと並ぶ、悪趣味にも見れるその場所に、一人の少女が腕組みをしながら座っていた。
青を基調にした、ゆったりとしたワンピースを身にまとい、水色のフワフワした髪の毛にまだ幼さが残ったあどけない顔立ち。
背中から生えている六本の羽根は、まるで氷柱のようだ。
彼女の名前はチルノ。
『冷気を操る程度の能力』を持つ、幻想郷最強の妖精だった。
そんな彼女は、このタイガーバームガーデンで彼女なりに何が起こったのかを、必死に考えていた。
 
 
 
チルノ自身、何故自分が今この場にいるのか、どうも思い出せないでいた。
記憶をさかのぼってみても、幻想郷でカエルを凍らせて遊んだり、霊夢や魔理沙に突っかかっては返り討ちにあったりと言った記憶が浮かぶだけで、
なぜあの場にいたのかが思いだせないでいた。
無論、そこにいた荒木、太田といった男もチルノは今まで見たことも聞いたこともない。
そしてその先の記憶を呼び起こそうとしたのだが……
 
「……うえ、思い出すんじゃなかった。」
 
チルノの脳内にリピート再生されるのは、秋穣子の無残な死。
死という現象は幻想郷においてはそんなに珍しいものではないが、ああいう風に『殺される』件については、
さすがのチルノといえど耐性がそこまであるわけではなかった。
 
「うーん……うーん……どうしよう……」
 
吐き気にも似たよく分からない未知の感情を抱えながら、チルノは必死に考える。
普段からバカと称される彼女であるが、それでもチルノは特に理由もなく自らの意思で死に急ぐようなバカではない。
だがその他思考力洞察力がほんの少し――ほんの少し、足りないだけなのだ。
それでも、チルノは必死に考える。
「……殺しあえって言われても、そう言うのはあたいの趣味じゃないし……でも下手なことしたらさっきみたいに頭がパーンってなっちゃうし
 ……あーもうどうしたらいいのよ本当にもう!!」
まるで子供が癇癪を起こすように、近くにあった彫像の一つを蹴飛ばしても、チルノよりも大きい彫像はぐらりと揺れる事もない。
それどころか脚にしびれるような痛みすら覚え、チルノの機嫌はますます悪くなっていく。
 
 
 
と、その時チルノは何者かがやってくる気配を感じた。
 

 
 
 
(……これは、一体どういうことだ……?)
ジャン=ピエール=ポルナレフは現状にただただ困惑していた。
自分は先程まで、ジョースター一行を倒すために香港にいたはずなのに。
ジョースター一行の一人、モハメド・アヴドゥルを倒すために店から出て、決闘の場をタイガーバームガーデンに選び、いざ決闘を始めようとしていたはずなのに。
 
気がついたら、殺し合いをしろと荒木と名乗る謎の男に言われていた。
 
そして、それに反抗した少女の頭が破裂し、荒木から殺し合いの説明を受けたと思ったら、またタイガーバームガーデンにいた。
 
自分でも何が起こっているのかさっぱり分からない。
あの荒木という男と、彼と一緒にいた太田という男は何者なのか?
対峙していたはずのジョースター一行はどこに行ったのか?
ジョースター一行と決闘しようとしていた時には燦々と日が照っていたはずなのに、何故今は月が出ているのか?
――――何が何やら、さっぱりわからない。
 
(これは、一体……)
 
いくら考えても、どういうわけなのかがさっぱり分からない。
ただポルナレフに分かるのは、何やらとんでもないことに巻き込まれたという事だけだった。
 
(……む?)
 
その時、ポルナレフは彫像の森の中に何者かの気配を感じた。
さてはジョースター一行か、そう思ったポルナレフは意識を集中させ直すと気配の方へと向き直った。
 
「おい、そこに隠れている奴、出てこい。」
「隠れてなんかないわよ!!」
 
その声と同時に飛び出てきた少女の姿に、ポルナレフは思わず目を丸くした。
 
かなり小さい、見た目には愛らしいながらもその顔には不機嫌さをこれでもかと言わんばかりにため込んだその姿はまさしく少女、
いや幼女と言っても差し支えない。
てっきりジョースター一行の誰かと思ったポルナレフは拍子抜けしてしまった。
 

 
 
 
「……なんだ、君は?」
「あたい?あたいはチルノ!げんそーきょーさいきょーの妖精だよ!!そう言うあんたはいったいなんなの?」
「……確かに、名乗りも上げずに名前を聞くのはいささか無礼だったな、私は……」
「あーもうめんどくさいから、ホウキ頭で良いよね?」
「ほ、ホウキ……まあ良い、チルノとやら、ここに誰か来はしなかったか?少しばかり因縁のある相手を探しているんだがね……」
「ううん、あたいはここにきてからあんた以外誰にも会ってないわよ。」
「そうか……だとするとジョースター達め、どこにいるんだ……」
 
チルノと名乗る少女の心ない言葉に若干傷つきながらも、どうやらこのタイガーバームガーデンにはジョースター一行はいないと判断したポルナレフは、
その場から立ち去ろうとした。
 
「ちょっとちょっと!!何しれっと帰ろうとしてんのよ!!」
 
しかし、そのポルナレフをチルノが不機嫌そうに呼びとめた。
ポルナレフが振りかえると、そこにいたチルノは両頬を膨らませた怒りの形相でポルナレフをキッと睨みつけていた。
「ム?」
「ム?じゃないわよ!!あんた一体何しにここに来たのよ!?」
「……さっきも言っただろう。私は人を探している、と。そしてその相手はここにはいないようだから、別の所を探しに行く……それが何か?」
「むむむむ………」
 
現に、チルノがポルナレフを引きとめる理由などそこには一片も存在していない。
それでも、非常に機嫌の悪いチルノにとってこのポルナレフの言動は、チルノの神経を逆なでするのに十分すぎるものだった。
 
「では、失礼するよ、お嬢さん。」
「……待ちなさーいっ!!」
 
 
 
堪忍袋の緒が切れたチルノは、立ち去ろうとしているポルナレフに一斉に弾幕を叩き込んだ――――そのはずだった。
 
だが、チルノの目の前に広がった光景は、弾幕を受け倒れ伏すポルナレフではなかった。
突如ポルナレフのそばに現れた、甲冑姿の謎の男。
彼の持つレイピアによってチルノの放った弾幕は軌道を反らされ、弾かれ、ポルナレフは完全に無傷であった。
 
「……やれやれ、随分おてんばなお嬢さんだな。」
「なっ……あ、あんた、何者なの!?」
「……ジャン=ピエール=ポルナレフ。そして俺の『スタンド』は戦車のカードをもつ……」
 
そう言いながら、レイピアを持った男が、近くにあった彫像を眼にもとまらぬ速さで刻み始めた。
そして文字通り、あっという間にそこに鎮座していた彫像はまるでチルノを模したかのような彫像に彫りかえられていた!!
 
「『銀の戦車』。」
「……くっ。」
さっきまでとは違うポルナレフから放たれる殺気に、チルノは一歩も動く事が出来ないでいた。
霊夢や魔理沙とも違う、次元の違う『強さ』や『凄み』。それらがチルノの身体を動かさせない。
まるで蛇に睨まれたカエルのようなチルノの姿を確認すると、もう話す事もないと判断したポルナレフはまた後ろを向き歩きだした。
そしてその場には、ただ呆然としているチルノと、シルバーチャリオッツによってチルノを模した姿に彫りかえられた彫像だけが取り残された。
 

 
 
 
 
 
【E-6 タイガーバームガーデン/深夜】
 
【チルノ@東方紅魔郷】
[状態]:健康、不機嫌、ほんの少し恐怖
[装備]:なし
[道具]:不明支給品、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:まだはっきりとどうしようとは考えていない。
1:……なんなのよ、あのホウキ頭。
2:これからどうしよう?
3:『スタンド』ってなんだろう?
[備考]
※参戦時期は未定です。
※支給品を確認していません。
 
【ジャン=ピエール=ポルナレフ@第3部スターダストクルセイダース】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:不明支給品、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:ジョースター一行を探し、始末する。
1:ジョースター一行はどこだ?
[備考]
※参戦時期は香港でジョースター一行と遭遇し、アヴドゥルと決闘する直前です。
※肉の芽の支配下にあります。
※支給品を確認していません。
 
遊戯開始
遊戯開始
 

 

最終更新:2014年02月06日 00:57