「君に聞こう」
「なんでしょうか?」
暗い部屋の中、二人の男性が話している。
一方の男性は痩せ型で身長が高い。
もう一人は……暗すぎて分からない。
「この世で一番強いスタンドは何だと思う?」
「……」
「君の言いたいことは理解できる。スタンドに“弱い”“強い”は無い。だが子供が遊びで……」
「私です」
背が高い男が話を遮る。
「では聞こう。一番弱いスタンドは?」
「それも私です」
「ほう……面白い。何故だね?」
「貴方に言うまでもない……と思うのです」
「そうか……」
ゆっくりと質問していた男は立ち上がる。
「君ならやってくれそうだ……」
「……」
「先日、旅館で戦闘があった。私の部下が二人とも重症になるほどの傷を負った」
オペラのように優雅な声、ダンサーのようなしなやかな動き。
ここが会場で、お客がいたら拍手喝采物だ。
「君に行って欲しい。」
「やだ……と言った……「言えないさ」
今度は逆に言葉を遮った。痩せている男の顔に少なからずあせりと怒りともとれない表情を見てとれる。
「ターゲットは“るぱん”。スタンドの能力はこの封筒の中に記されている。」
「分かりました……」
そういうしか無かった。少なくとも、痩せている男、いや「くぼ」には……
******
くぼはある場所へ向かった。
『俺のスタンドは一人だと絶対に不利。だから“味方”が必要だ。』
そこはアパートだった。古くも無い……だが新しくも無い。そんな所にやつはいる。
「おーい。俺だ」
「だ……誰だ!?」
『こいつ……同級生だった俺に“誰だ!?”だってよ……』
「ふぁん汰。俺だよ。く……」
「貴様!俺俺詐欺だな!許さねぇ……」
「待て……勘違いするな!」
くぼが急いで部屋に入ろうとした。刹那!
「な……体が!」
吹っ飛ぶ!
くぼは道路にしこたま体を打ってしまった。
「馬鹿野郎……こんな所で発動させんなよ……ウゼエ野郎だ」
唾を吐き出すとくぼは精神を集中し始めた。
「フラットオブフラット!ドアを狙え!」
┣゛━━━ ン
ミサイルは正確に、かつ派手に扉を破壊した。
「ノックして……ってもうドアは無いか」
悠々とくぼは破壊された玄関から家に侵入し、布団に丸まっている“塊”を見つけだした。
「丸まって無いで人の話を聞けよ……」
「無理無理無理無理。金なんか無いぞ!出ていけ!」
『ウゼエ……』
「俺だよ。くぼだよ。同級生だった。」
「くぼ……!?くぼなのか!?」
「その“くぼ”に間違いは無いと思うぜ」
******
「で……何の用だい?」
「ああ……手伝って欲しいことがあるんだ」
俺が買ってきたお菓子の詰め合わせ(¥1400)がどんどん消えていく。半分、それ以上やつに食われてる。
「ふーん」
食いながら布団からファン汰が出てきた。興味を持ったのだろうか?
「何だい?手伝いって?」
「人殺しだ」
「○×△!?」
漫画のあわてんぼキャラのようなやつだ。
最も、そんなキャラみたいに“可愛さ”という物がまるで無いが。
「安心しろ。証拠は残さないし、報酬もたんまりだ」
「お……俺の性格知ってるだろ!?」
ふぁん汰は再び自分の城(布団)に潜り込む。
「嫌か?」
「あ……当たり前だろ!?仮に成功したとしても、俺は罪悪感に耐えられない!」
「なら“少し眠れ”」
「何言って……眠い」
お菓子の詰め合わせには睡眠薬が仕込んである。
あとは“あのお方”の出番だ。
******
夢の中
「ファン汰君……ファン汰君……」
「だ……誰だ!どこにいる!?」
「私は“君自身”だよ。」
「俺……自身……」
「そう……僕はファン汰だ」
「俺……俺…僕自身……」
「君は嫌じゃないか?こんなアパートに引き籠る生活」
「や……だ」
「他人に怯える人生」「や…だ」
「そんな君自身」
「やだ!」
………………
「君は変われる素質がある。サナギから蝶になるんだ」
「はい……」
「それを邪魔しているやつがいるんだ」
「許さない……」
「よく言った」
「誰……だ。そいつは……」
「るぱんだ!るぱんというやつだ。殺せ。そして蝶になれ!」
「 殺 す ! 」
「はっ……」
「起きたか?」
「うん……」
幻聴?夢?いや違う。
あれは僕の声。
「くぼ……殺すのは誰だ?」
「……急にどうした?」
「 誰 だ ! ?」
「る……るぱんだ……」
『あのお方は何をしたんだ?ここまで性格が変わるなんて……』
「るぱん殺す!蝶になる!」
「とりあえず引き受けるんだな……まぁいいか」
そして二人は指定された場所へ向かう……
******
「や~んなっちゃうねぇ」
るぱんはこの所稼業である泥棒が不調だった。
原因は旅館でのダメージ。相当の深手を負い、体がなまってしまっている。
******
るぱん「だが・・・ダメージがあるからって、稼業をやめる訳にはいかねぇ・・・・
背に腹は変えられない・・・ってヤツだ」
一人ごちながら、人気のない館に忍び込む。。。
るぱん「いやに・・・ダダッ広い家だ・・・」
・・・・かつん・・・
館に響く足音ッ!!
カッ!
るぱん「うぉッ・・・!(なんだッ!まぶしいッ!!)」
神威「お前が・・・『るぱん』・・・
ようこそ・・・神威のフィールドへ・・・・」
意外ッ!そこは体育館ッ!
******
るぱん「こーりゃ失礼しました~じゃあこれでおいとまさせていただきま…
…アンタ…今俺の名前を呼んだな…?なぜ知っている…?」
神威「『あの方』に邪魔になる者の情報は知っていて当然だろう…?」
るぱんはチッと小さく舌打ちをした
るぱん「ま~た『あの方』か…」
神威「のこのこ我がフィールドに現れてくれるとはな…るぱん…今回は私は任務を受けてはいないが…これは『チャンス』だな…
るぱん…ここを今夜お前の墓場にしてやろう…」
るぱん「(まずいな…まだ傷も癒えてないのによォ~…『バ・ガ・ブー』で隙を作って逃げる…しかないか…)神威さんとやらよ~…そう簡単に俺はやられね~ぜェ?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
******
るぱんは神威に見えないようにバ・ガ・ブーを発言した。
そして自分の動きを限りなく。遅くした。
るぱんの動きが、相手に悟られないように。
悟られることなく、「完全な逃走体制」を作り出したのだ。
ゆっくりだが、確実にるぱんの筋肉は走り出す為のバネを縮めていた。
神威は「バ・ガ・ブー」の空間に全く気付いてはいない。
るぱん「よーい…ドンだ。」
るぱんは能力を解き、一気に走り出した。
完全なるフライング・ロケット・スタート。
追いつけるはずはなかった。
るぱん「・・・え?」
神威は手にクリスタルを持つ。
神威「『逃げた』という事実を保存した。」
るぱんは逃げることができなかった…
******
るぱんは意味が理解できていなかったが、一つだけわかることがあった。
…こいつは自分の「スタンド」を知っている…
そして未知なる能力の前にるぱんはすこし震えた。
るぱん「しょーがねーなぁ…ならよォ…ぶったおして道をあけてもらうしかねェよなぁ…!!」
神威「わかったようだな・・・!行かせてもらうぞ…」
るぱん「おまえを「遅く」す・・・!!」
神威の手にもう一つクリスタルが光る。
神威「お前が私を「遅くする」事を保存した。」
るぱん「あ・・・ああ・・・?」
神威はスタンドを発現させる。
神威「クリスタル・ソリッド・・・おまえの「思考」と「生命活動」を「保存」する。」
るぱん「・・・」
ばた・・・
るぱんは力なく倒れた。生命活動・思考を保存されて体はただの抜け殻となってしまったのだ。
神威「フフ・・・「あの二人」の慌てふためく顔が目に浮かぶ・・・。」
るぱん・リタイア!
******
神威はあるく。るぱんを保存したクリスタルを持ちながら。
そこに導かれるかのように くぼ ふぁん汰が現れた。
くぼ「お前…神威…何してる…?」
神威「お前達の仕事はもうない。俺がもらったよ。」
ふぁん汰は無言で近づいた。
ふぁん汰「飛んでけー…」
神威「!?!?!?!?」
ドッヒュゥゥゥゥゥゥゥ!!!
突然の事で「保存」すらできなかった神威は、クリスタルを一つ開放した。
神威「俺を「遅く」するッ!」
先ほど葬ったるぱんの能力である。
神威の体にかかる「G」が弱まり、体制を立て直す。
******
くぼ「テメェ~~~~ッッ!!!なんてことしやがるッ!!」
るぱんを倒すのは俺達が受けた任務だッッそれを…」
神威「ふん…我が聖域に入ってきた者を始末しただけのこと…」
くぼ「それじゃあこっちのプライドが許さねェーんだよぉぉぉぉぉッッッウゼェッッ!!!!」
神威「ではどうする…?この俺を倒してみせるか…?」
くぼ「…ッッ!(いや…あいつの能力は最強の部類に入る…なんせどんな攻撃も『保存』されちまうからな…俺一人で戦うのは分が悪すぎるぜ…だが…このまま引き下がれるほど人間できちゃいねえ!!!)くそッやってやるぜッ!!だがなァ…こっちは一人じゃねえ!!ふぁん汰!!!!」
ふぁん汰「るぱんいない…るぱん…いない…」
神威「ほう…あのふぁん汰を引きずりだすとは…
だが…二人がかりだって俺を倒すことはできまい」
くぼ「(いや!奴がクリスタルメソッドを出す前に俺の『フラットオブフラット』をぶち込む!!!)
ふぁん汰ァァ!!俺が射撃体勢にはいったら、お前の能力で俺に近づく脅威をすべて『引き剥が』せッ!」
******
くぼ「フラットオブフラット!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
神威「・・・お前の技はこんな近距離で使えないだろう、血迷ったか!!
クリスタルメソッド!!」
くぼ「ふぁん汰!」
ふぁん汰「吹き飛ばせ、ラスティア!!」
神威(まずい!!両方よけることはできねぇ・・・!!
ふぁん汰にるぱんの”思考”を!!)
フラットオブフラットは神威に直撃した。
******
神威「…」
神威は意識を失っていた。同時にクリスタルも全て消えていた。
ふぁん汰「フフーン…」
ふぁん汰はしゃあしゃあと近づく。
くぼ「ふぁん汰!よせッ!!」
ふぁん汰「月までぶっ飛べ~…」
ばッヒュウウウウウウウウウウウン!!!
神威・月へ…リタイア!
るぱん・体が死んでいる為、生命活動・思考は消滅…
******
神威の気絶、そしてリタイアによりふぁん汰にはるぱんの思考が残ることはなかった。
そして、今タッグを組んでいた二人だけが残ったのだ
これ以上の争いは無意味……どころか、理由がない。
くぼ「よし!ふぁん汰!帰るか。報告しなきゃな。・・・おい、ふぁん汰?」
ふぁん汰「るぱん いない るぱん いない るぱん いない るぱん!いない!るぱん!殺さなきゃ!」
ふぁん汰暴走!
******
ある者と合流しろ。
合流地点は体育館。
るぱんの潜伏先を絞り、現地へと二人が赴く道中の事。
人垣の中、すれった内の一人がぽつりと耳元で囁いて行った。
くぼ「…?!」
突然の出来事に驚き咄嗟に後ろを振り向くも、声の主は既に人々の喧騒の中に呑まれ判別がつかない。
くぼ「…うぜぇ」
ふぁん太「なにが?」
くぼ「なんでもねえよ」
説明すらも面倒だ、うざい。そんな態度
ふぁん太「なっ、なんなんだよ? はっきりしてくれないと不安じゃないか!」
ふぁん太がくぼの腕をとり、激しく振る。まるで、今聞いておかないと生死に関わると言わんばかりに。
しかし、疑問を投げかけられている当人はといえば。
体は進行方向へ以前変わりなく向けられたまま、無視。
しかし、腕を振る力によって首と視界は"してん"が定まらずさながら幼児向けのおもちゃのようだ。
くぼ「……お前もうぜぇ」
くぼは、ふぁん太を振りほどき歩き始める。
目的の地は当初と大差無い。
元々くぼにやる気は無く、"あの方"への恐怖が彼の動く理由。
今までと変わりは無い。
ふぁん太「ま、待ってくれよ! 教えてくれよ! 俺は蝶になるんだよぉぉぅ!」
くぼ「…うぜぇ」
打倒るぱんを旨に抱く、ふぁん太。
正直早く終らせて帰りたいくぼ。
目的の地、体育館へと両名は歩を進める。
******
くぼ「いい加減にするんだッふぁん汰ァ!!
お前はいつもそうだ…何かに『依存』するッナニが蝶だッ!
芋虫だってさなぎだって強く生きてんだッ!!
お前はッその芋虫にも劣るッ!!!」
そう言いながらくぼはふぁん汰を殴った。
ズガァッ!
ふぁん汰「くぼ…痛いよ…」
ふぁん汰は倒れこみ、うつむいた。
それからしばらく沈黙が続き…少しずつ…喋りだした
「神威が…死ぬ間際…僕の中にるぱんが入った…
その時…感じたんだ…」
くぼ「ふぁん汰…?」
ふぁん汰「なんて言うのだろ…あれが『黄金の精神』とでもいうのかな~~~…
僕はいつも何かに怯えていたんだ…それじゃあだめなんだよね…『蝶』にはなれない…くぼの言うこと…すごくわかるんだ…
でも…夢の中で『もう一人の僕』が言ったように、誰かを殺すことでも、『蝶』にはなれない気がする…
るぱんの…誰になびくでもなく、自分の信念を貫く『勇気』…
命への『敬意』…それがあってこそ…
僕は『蝶』になれるんじゃあないかな…」
くぼ「お前…」
ふぁん汰は立ち上がった。
そこには、猫背になって何かに怯えるふぁん汰の姿はなかった。
******
くぼ「お前、あのお方を裏切るつもりか?」
ふぁん汰「・・・裏切る?そんなつもりはないよ、もともとオレはおれ自身という強さを手に入れるために利用していたに過ぎない・・。と今なら言える。」
くぼ「お前がそういうのならば、お前は・・・オレの敵ということだな」
ドドドドドドドドドドドドドド
ふぁん汰「お前の敵、というわけではない。
なぜならオレのスタンドだと、お前のスタンドは、敵ですらありえない・・・。
黄金の精神、その1だ
自分を信じる。
全てを受け入れた先にこそ、光り輝く”黄金”がまっている」
******
「許せない。組織の人間以外のスタンド使いを倒すなんて!
僕は君を、君の組織を許せない!」
ゴゴゴゴゴ・・・
「な・・・なに言ってるんだ」
くぼはふぁん汰の気迫に押されていた。
「人を殺して何かを得ようなんて、許せない!
僕は!弱虫だった自分を、引き剥がした!!!
くぼ、君に選ばせてやる。2つの道を!!」
くぼ「う・・・うるせぇ!
弱虫のてめぇがよぉ・・なにカバみてぇな大口叩いてやがんだ。」
「僕と共に"あの方"を倒すか
今、ここで僕に倒されるか!」
くぼ「ぅぅぅるっせええって言ってんだよォ!
フラットオブフラットォォォ!!!!」
******
ふぁん汰は身構えた。
しかし、まもなくくぼはフラットオブフラットを消してしまった。
くぼ「はッ…な~にが黄金の精神だよッ!うぜぇーッ」
ふぁん汰「…」
くぼ「今回の任務…お前は参加しなかった。
お前は途中で結局家に戻ってしまったッ」
ふぁん汰「…くぼ…何を言っている…?」
くぼ「お前は腰抜けヤローだからよォ~今回の任務には参加しなかったし、これからの任務も参加しない。
なぁ、そういうことだ。俺はそう報告する。」
ふぁん汰「くぼ……お前…」
くぼ「俺は…ダメなんだ…もしかすると…芋虫より劣るのは俺かもしれない…俺は『あの方』を恐怖している…
とてもお前のようのは…なれない…
ふぁん汰…俺はどっちの道も選ばない。
その代わり…お前がお前の『道』を…行くんだ。」
******
ふぁん汰「くぼ…さん、今のあなたにも、間違いなく宿っていますよ、『黄金の精神』…」
くぼ「うぜえんだよ…、お前は任務に参加しなかったんだぜ? 俺とこんなところにいちゃまずいだろうが。さっさと帰り…ッッ!! まさか…あのお方…が…」
******
ふぁん汰「くぼ…」
ステュンッ
一瞬の出来事だった。
ふぁん汰は、何が起こったのか理解できなかった。
くぼの頭に、穴が開いている。
硝煙の臭いが鼻をついた。
ふぁん汰「く…ぼ…?」
くぼ「これだから………『あの方』はこえーよなー…」
そう言ってくぼは前のめりに倒れ、絶命した。
ふぁん汰「そんなバカな…そんなァァァァーーーーッ!」
ふぁん汰は走り出した。
このままでは自分も狙われる。
人ごみにまぎれれば安全になるだろう。
夜の街を、とにかくふぁん汰は走った。