Qが買い物から戻るとちょうど男が事務所から出てくるところだった。
その男の頬はこけていて、30代後半くらいの年齢にもかかわらず、残っている髪の毛はほとんどなかった。
ジョエル「Q、依頼だ。
××病院を調査しに行くぞ。」
Q「え・・その病院って・・・まさか」
ジョエル「1夜で病院内の人間が1人を除いて全員死んだらしい。」
Q「そ・・そんなの引き受けるな!」
ジョエル「かわいそうに、あの依頼人。
呪われた病院と噂されてるせいで誰もあそこで働こうとせんらしい。」
Q「(あぁ・・・あの姿には心労で・・・)中間管理職のつらいとこだね。
でもな、あの病院、『月刊・ガチであった怖い話』の日本No.1心霊スポットなんだよ?」
ジョエル「それがどうした。
困っている人を助けるのが我々の仕事だろう。」
そういうジョエルの前には札束がぎっしり置かれていた。
Q「いや・・・でも外、雨バーバーやし風ビュンビュンだよ?」
そう言って外を指差す。
さっきまで晴れていた外は、
今は嵐が吹き荒れていた。
ジョエル「心配するな。5m向こうは晴れている」
Qがあーだこーだ駄々をこねてると、
事務所の扉が開いて男が現れた。
Q「いらっしゃぃ・・・ってあんたッ!」
男の顔を見た瞬間Qはジョエルの机の上に飛び乗る。
Q「なにしにきたッ!」
ジョエル「Q、ここは探偵事務所だ。」
ジョエルは来客用のソファに腰掛ける。
どうぞ。
そう言って現れた男・・・MADにも席を勧めた。
ジョエル「依頼に決まっているだろう。」
へ?
ジョエル「気が効かんな。タヲルを持って来い。」
MADの方をみると、彼は全身びしょ濡れだった。
マーズヴォルダ「ASSHOLE(クソヤロウ)。ザマーミヤガレ。」
Q「へ・・・ちょぉ何言ってるの?
・・・どうぞ。私は何にもしてないですよ。」
白々しく弁解する。
ジョエル「目が泳いでるぞ。
で、依頼というのは?」
私の・・・家族を調べてもらいたい。
そうMADは言った。
ジョエル「ムリです。」
MAD「金ならいくらでも出す。」
ジョエル「申し訳ありません」
そうか・・・
そう言うとMADはQにタヲルを返し、事務所から出て行ってしまった。
Qは唖然としていた。
Q「(ジョ・・・ジョエルが断った・・・いくらでも出すって言ってるのに・・・
とうとう彼にも名探偵としての自覚が・・・?!!!)
というかなんで家族の調査なんか?」
ジョエル「さぁな。ヤツは家族に痛い目にあわされてたらしいからなぁ。」
もしかすると・・・もしかするかもなぁ
そうジョエルが意味深につぶやくと
Qはあわてて事務所を後にした。
Q「ちょ・・・ちょっとそこのお兄さん・・・?いくらなんでも・・・」
そうQが言いかけるとMADはQに詰め寄った。
Q「な・・なに?」
ついてきてくれるか?
そう言うとMADは1人で先に歩き始めてしまった。
Q「ま・・・まって!!」
マーズ「アノヤロー アヤシイデスネ。ブッコロシマスカ?」
Q「いや、そんなことせんけどもさ・・・」
しばらく歩くとMADは立ち止まった。
Q「?なに?」
MADの視線の先に目をやると
幸せそうな夫婦が手をつないで笑っているのが見えた。
横に目をやると、MADの目には涙が溜まっていた。
MAD「・・・よかった。」