2007年、Japan(日本)
ニュース番組はある大事故の話題で持ち切りになっている。その、暴走族が全滅するほどの交通事故の原因は暴走中の一団に射られた「矢」だ。
凶器の「矢」は回収されなかったが、少年たちの体には矢で射られた傷後が確かにあったのだ。
死者35名、軽傷1名。
ゴゴゴゴゴ……。
軽・傷・1・名!?
「ヒーロー見参!」
偶然見かけたオカルト雑誌のバカげた見出しをナガセは鼻で笑った。
ナガセが毎月購読している単車の雑誌の横になければ、そんな暇な雑誌に彼が興味を示すこともなかったのだが、表紙を飾る写真に彼は雑誌を手に取らずにはいられない。
紙面には、ヒーローが戦った形跡だというコンクリの残骸、叩き割られた道路、そして怪人が遥か遠くを跳躍する姿。
その姿はナガセが小さい頃に憧れたスーパーヒーローの姿に告示していて、月夜に映えるその怪人を記者は「ムーンライダー」と呼んだ。
ムーンライダーはコンクリートを拳で砕き、三階建てのビルより高く跳躍し、彼の乗るバイクは時速300キロで走ると書いている。
そして彼が戦ったらしき痕跡が見つかった後には、いくつかの怪奇事件が起きなくなったという偶然を雑誌はしきりに結びつけていた。
誰が見てもヤラセ臭のプンプンする内容だ。
「こんなもの、誰が本気にするかね?」
イカレてるぜ、そうこぼしてナガセは単車の雑誌だけを購入すると、バイクに跨り街を疾走する。
「馬鹿らしい記事だよなぁ」それでもネーミングは気に入っていた。
「ムーンライダー…せいぜい250キロくらいしか出しちゃあいないぜ」
『ナガセ/スタンド名:ムーンライダー』
ナガセは仲間を皆殺しにしたあの事故、それを起こした犯人である矢の持ち主を探して毎晩街中を走り廻っていた。
復讐を誓って、それを必ず成し遂げる。
怪奇事件が起きなくなった?
ちげぇねぇ、オレのスタンド…いいだろう、ムーンライダーは特定の条件を満たした人間を始末する。
特定の条件、そう、スタンド使いをぶっ殺す。
ムーンライダーは今日もスタンド使いを始末する。
泣いて命ごいをする相手の胴体にライダーキックでブチュリと風穴を空け、腕を千切り、首をもぎ取り、内臓を引き吊り出してグチャグチャ食らう!
爪の先も残さずグチャングチャンに食らい尽くすっぜっ!!
怨みはねぇ、殺したスタンド使いが悪者か良い者かも関係ねぇ、ただ、ムーンライダーはオレの意思じゃあ止まらねぇ、見つけたスタンド使いはブチ殺しさ。
ヒーロー見参っ!だっ!!
その頃、次にムーンライダーと接触する運命の女は怒り狂っていた。
「畜生っ!あのヤブ医者、禁酒をしろだとっ!この私に禁酒をしろって言いやがったのか!?」
つい数時間前に病院で診察を受けた女の肝臓は、絶え間なく流し込むアルコールのせいでズタズタになっていたため、
「禁酒してください、でないと命にかかわりますよ」と医者は厳しく念を押した。
命という言葉に驚いた女は「先生、助けてください!私、死にたくありません!」と泣き喚きながら懇願し、
「禁酒します!もう二度と酒は飲みません!ええいっ、この恐ろしい悪魔の水めっ!!」
と言って、一生分の覚悟と勇気を振り絞って、心に強く禁酒を誓ったのだが、
「なんで…なんで、このvolvicのボトルの中身がテキーラに変わってんだよぉ!!」
『シバミ/スタンド名:シバミティア 能力:触れた水分を酒に変える』
「なんて、なんて意思が弱いんだ…死にたくなるぜ!」そう言いながら女はテキーラを胃に流し込むと、「うまいっ!神の水よっ!幸せすぎるわっ!」と叫んだ。
女は大学生で、飲みすぎで死の宣告をされたことと、就職活動に嫌気がさしている以外には順調な人生を歩んできた。
スタンド能力にしても自分だけに与えられた才能だと気に入り、研究を重ね、完璧に使いこなせている。
しかし、彼女は知らない、似た才能を持つ存在がこの世界には自分以外にもいることを、そして中でも危険な存在が自分に近づいていることを。
すでにその影はシバミの背後に迫っていた。
この直後に出会うことになるムーンライダーとは違う、その前に出会う厄介ごと。
「見ぃぃつぅけぇたぁ~っ」
******
不気味な声が響く。
聞く人の神経を逆撫でするような、軽蔑のこもった声。
「誰よ……私の聖なる時を邪魔しないで……」
「アル中が何言ってるのぉ~?ここは貴方だけの場所じゃあ無いでしょお~?」
いちいちイライラする言葉の響き。
思わずシバミは言ってしまった。
「貴方には分からないでしょう。この甘美な味、淫らな香り、全てガキの貴方には分からないでしょ……」
「分からなくて良いわょ~。だぁけどぉ……」
水がシバミの足元を満たしていく。
「な……何なのこれ!?」
「あはははははは。溺れ死んじゃえ!!」
<シルビア/スタンド名:マンガニーズ・ブルーノーバ>
「やだ……酒にできない……何なのこの水……痛ッ」
シバミの足元にエビの群れがいる。足に群がり、どんどん肉を千切っていく。
「何なのよぉ!?一旦何なのよ!?」
「クスッ……そろそろシャコガイの出番かしら……」
水位は膝まで達している。エビの群れの他に貝まで集まって来た。それぞれがシバミに攻撃を加えている。
「嫌だぁ!!まだ飲んで無い酒が有りすぎる!!ポートエレン、レモンハート、シュタインベルガ……」
「天国で飲みなさぁい。」
水位は胸元まで達している。シバミが見たのは、映画ジョーンズで良く見て、恐怖した悪魔のセビレ。
『私……死ぬんだ……最後に呑みたかったなぁ……ボンベイサファイア……薬草の匂いが……』
「ショット!!」
「!?」
シバミの持っていたボトルを“弾”のような物が貫いた。
「な……何なの」
「離すなそこの人!!」
離すわけがない。シバミにとって命より大切な酒を離すわけが無い。
「るおおおおお!?」
シバミの体が引っ張られ、あっと言う間にマンガニーの射程距離から出てしまった。
「これで多分逃げれただろ」
つまりワイヤー両側に弾を付けて、ボトルに当てた後、くくりつけたもう一発の弾を撃ったのだ。
〈ザキ/スタンド名:N.A〉
「そこを俺が……キャッチ!!」
予め場所を予想していたザキは上手くシバミをキャッチした。
「大丈夫ですかお嬢さん?お怪我は無いですか?」
『決まったぜぇ!今の俺はコブラよりかっちょいいぜ……』
「私の……酒になんてことをしてくれるの……」
「へ?」
「貴方のせいで、私の酒が台無しになったのよスカタン!」
『そりゃあ無いよ……!?』
ザキは感じ取った。鋭い殺気を……
怒りに燃えるナガセの姿を
******
ナガセ「こんなところにいやがったかぁ……ウジ虫ども……」
赤いオーラを体に纏い正義の味方が空を舞う。
ザキ(か、仮面ライダー??)
シバミ「お酒ぇ…」
ザキ(また酒か!
ってあのライダーこっちに…)
空中で回転し
ナガセ「ライダァァァキィッックッ!!」
高速でナガセの方に降ってくる
ザキ「こっちにくるのか!」
シバミ「お酒かえしてぇ…」
ザキ「力強っ!押さえ込まないで下さい!
避けられないっ!」
シバミ「…え?」
シバミが振り向くと同時に
ムーンライダーは地面を揺らし砂煙を立てる
ゴゴゴゴゴゴゴゴ…
ナガセ「…ウジ虫如きが生意気によけてんじゃねぇ!」
ザキ(…よけてる…、この人が助けてくれ)
シバミ「お酒ぇ…」
シバミの目には涙が溢れそうな程たまっていた
ザキ(…………そんなわけないか)
ザキは顔を上げた、見れば見るほど正義の味方にしか見えない姿がそこにある
しかし、そいつは
ゴゴゴゴゴゴゴゴ…
ザキ(…敵だな
だが、まずはこの人を…眠らせる!)
“ショット”!!
超至近距離で放った睡眠効果付きのショットをシバミはかわしてカウンターを叩き込んだ
ザキ「なにするんですかっ!」
シバミ「あなたが何するつもりよ!そんなの頭に撃たないでよ…私はお酒が飲みたいだけなの!痛いことしないで!」
ザキ「痛くないです!
お酒もあげます!
だからおとなしくして下さい!」
シバミは満面の笑みを浮かべ
シバミ「は~い♪」
ショットを受けた
そして寝た
******
クズだクズだと思ってがよぉ・・・。
お前。オレの攻撃を避けさせてくれた、『女』を・・・。」
「いわば『命の恩人』を・・・ッ。」
「その蛙の小便にも劣る『ドグサレ弾丸』でッ!
眉間目掛けて『 ぶ っ 放 し や が っ た 』ってぇええーのかぁああ あ あ あ ? ?」
ナガセは雄叫んだ。
其処に『正義の憤り』があったからだ。
だが、ナガセは『 勘違い』をしていた。
ザキがシバミに打ち込んだ『スタンド弾(ガン)』は、
シバミに、危険が及ばぬように行った『善意』の処置であるのだ。
パニくりがちなシバミに眠って貰う事で、
目の前の現れた害敵たる『ナガセ』に、対抗を試みようとしている訳なのである。
だがッ!
そんな事を知らぬナガセとって、ザキの姿は『 正 に 外 道 ッ ! 』
しかも、女は『酔っていたッ!』
酔ってる女にどうこうするってヤツにぃー?
良いヤツなんて、居るかぁ~~~?
常識的に考えて、痴漢とかの類じゃあねぇーのぉおおーー??
だからこそ、ナガセは雄叫んだのだ!!
「聞こえなかったかッ!この『 うじ虫分際』めがッッ!
俺はお前を! 『クズ』だと言ったんだぜぇええええええーッ!!
『 このドクサレがぁあああ あ あ あ あ あ あ ! ! ! ! 』」
こ・このオマッ!!?
ッッッ!!!
ッッ!!
ワ・ワナワナして来たぞ!
ワナワナしてきたぞ、このトンチキがッ!!
ワナワナワナワナワナワナッッッ!!
ザキは憤りを覚えたッ!!
スタンドの攻撃で、ピンチに喘(あえ)ぐ、女を見・・。
オレはアメリカンヒーローの如く、ジャジャーンと現れ、女を助け・・。
『俺って、コブラみてぇーにカッコ良い!!』と調子こいてた事は認めよう。
ああ・・、認めてやろうッ。
ついで言うと、『女は俺に惚れちゃったり』して、
あわよくば、『 夜のお付き合い 』も行けちゃうんじゃね・・・?
とか、考えて事も『 この際、認めようッ!』
だがな・・・。
だがなぁ・・・ッ!!
『これって、 あ ん ま り じゃないのぉ~~~?』
ここまで言われて黙ってられるぅ?
俺はァー今!熱した鉄よりも熱く燃え盛る、『 ムカっ腹と言う憎悪』を持って!
このライダー風情と戦う『決意』をしたぞ!!
思い切り、凄まじい程に『決意をしたからなぁああああああああ!!!』
ザキは、熱した鉄の如きに『熱き瞳』で持って!
ナガセを強くに見据え、憎んだッッ!!
そして・・・。
そんな状況を見つめるモノが・・・。
一つ。
「・・・・。」
「あれは特殊なんだと思っていたんだ。」
「のっぴきならない状況だったし、1個のケモノとして、
そうそう間違った行動じゃあない。」
「だから、特殊だと思ってたんだ。」
「だが・・・。これは。」
「俺の主人もそうだったが・・・。」
そいつは確信したッ!
「『人間って 馬 鹿 か ! ! ? 』」
「『 馬 鹿 しか居ないのかぁあああ あ あ あ あ ! ! ? 』」
パンクな洋服に、身を包むブチ猫。
そう。彼こそは、船上の窮地から、必死の思いで、本土に戻った『スーパーキャット』。
『ドルチ』と言う名の『猫』であった。
******
―――しばらく前。
俺は、飼い主である一級建築士・愛子雅吾(あやしまさご)とヨットでのクルージングに出ていた。
その日、雅吾は上機嫌だった。
俺の知らない、人間からすれば美人らしい女がついてきたからだ。
だが、ヨットは暗礁に激突し、遭難。
俺と雅吾は死と隣り合わせの時間を過ごしたが、とうとう雅吾がおかしくなりやがった。あろうことかこの俺のグレートな毛並みを、人間なんぞと同じような衣装で包み(しかしながらセンスは悪くない。今では結構気に入っている)、さらにはこの俺様を取って食おうとしやがった。
…世の中ってやつは弱肉強食だ。人間だって動物だからな。行動として間違ってたわけじゃない。ひとつだけ雅吾が間違いを犯したとすれば、それは相手が俺だってことだ。
雅吾のやつを返り討ちにした俺は、甲板に降りてきたウミネコの背中に乗って、どうにか港までたどり着いた。
腹が減っていた俺は、何か食うものがないかと港町をぶらついたが、あのクソ雅吾の作ったくそったれな服のせいで目立って仕方がない。この際残飯でも食えればいいか、とレストランの裏路地に入ったときに、俺は出会ったんだ。
あの奇妙な男に。
男は、サトヨシと言った。
サトヨシは俺に魚を放って投げた。
俺がサトヨシを見上げると、食っていいぞ、と言ったが、人間なんてものは信用できない。食わずにクンクンやっている俺を、心配そうにサトヨシが見る。
「なんだ? 腹減ってないのか?」
「フゥゥゥッ」
そんな俺を見て、仕方ねえなあ、と言いながら、投げた魚をつまみあげ、地面についていなかった方を少しかじった。
「ほら、大丈夫だからお前も食え」
再度魚をこちらに寄越すサトヨシ。
俺は迷わずかぶりつく。
「何だよ、腹減ってるんじゃねーか。これ一匹じゃ足りねーかな。食い終わったらうちのアパートに連れてくか。まだ昨日買ったサンマがあるしな。ってでもコイツこんなの来てるし飼い猫かなー?」
魚からいったん顔を離し、首を振る俺。
「違うの? って頭いいなお前。じゃあ俺は…」
ごみ箱に腰かけるサトヨシ。カバンからスケッチブックと鉛筆を取り出す。
「お前の絵でも描いてることにするよ。次のサークルの展示会で何出すか迷ってたからな」
―――
シルビアは迷った。
先ほど邪魔をしたあの男を、今消すべきか否か。
だが、あいつは私の能力を戦いの外から見ていた。
つまり、幻覚だということを見破られる。
いくら『恐怖』さえ与えれば仕留められるといっても、最初から幻覚だとバレているのは流石に分が悪い。
さらに、もう一人の怪人。
ヒーロー気取りの馬鹿である可能性もあるが、正面切って出てきたことと、漂わせている殺気から、かなりの腕であることは間違いない。
ここは引いた方が得策ね…。
そう思い、退散しようとするシルビア。
そして、それを見つめるドルチ。
ドルチは思った。
人間とは馬鹿しかいないんじゃないか、と。
だが、ドルチは思う。
それでも、いい馬鹿と悪い馬鹿ってのはいるものだ、と。
サトヨシがスタンドと呼んでいた、心の中の宝石。
それを、怪人と対峙している男は見せた。
そして、あの男は、今は眠っている女を助け、今は色々間違ってはいるが、また女を助けようと命を張って怪人と戦う覚悟を決めている。
…だが、眠っている女を最初に襲ったあの女は、この機を逃すまいと逃げ出そうとしている。
ドルチは動いた。
世の中の人間が「いい馬鹿」達であってほしいと。だから今は、あの女を逃がすわけにはいかない。
「ニャァァァァウ」
鳴き声に、ナガセとザキは首は動かさずドルチを見た。そして、その視界の端で逃げようとしていたシルビアの姿を。
三人の視線が交錯する。
ザキ「あ、てめえ逃げる気か!?」
ナガセ「…お前もスタンド使いか?」
仕方ない、といった素振りのシルビア。
シルビア「質問は順番にしてもらえますかぁ~? でも、答える必要は多分ないですねぇ~。海はすべてを消してくれますから…」
******
ナガセ、ムーンライダーは動く、「宣言する、皆殺しだ」
シルビアは身構えた、二人が同時にスタンドの射程に入る必要がある。
ザキは身震いしていた。
(確かにオレにはコブラみたいにシブく女の子を助けたい願望はあった、だがそんなことで突然戦いに巻き込まれたわけじゃねぇ。ここ連日のスタンド使いの行方不明事件で友人が姿を眩ませたからだ。そしてその裏にスタンド使いの敵がいることを直感して調査していた時に、スタンド使いが女の子を襲撃していた、どうやら辿り着いたな、どっちだ?一連の事件の犯人は?)
ナガセはまず、ザキを狙う。
「くっ!?」
(N.Aは一発づつ弾を込め直さなきゃいけない欠点があるが、弾丸を自由に変形させ打ち出す万能のスタンドだ。そして射撃じゃ誰にも負けねぇ。
しかし、コイツはマズイぜ!相手は超人の身体能力と反射神経を持ち合わせていて、すでに近距離にいるのだ、奴が三歩踏み込んでオレを殴る前に、弾を込めて、銃口を向けて、発砲するスリーアクションができるか?いや、できない!断言する!)
ザキはすぐ近くの物陰に駆け込む、追いかけられたら絶対に追いつかれる。しかし、奴は追ってこない。
「もう一人に気を取られたのか?とにかく今のうちに弾を込め…!?」
瞬間、ザキの体を激しい衝撃が遅いザキは空中に投げ出された。バイクに跳ねられたのだ、それも無人の。
「オレのムーンサイクロンは、遠隔操作できる。時速300キロで走り、スタンド使いを見つけ出すレーダーがついている。ムーンライダーから逃げ出すことは、無意味、無意味、無意味ぃぃぃぃぃぃっ!!」
そしてムーンライダーは跳躍した、それは周囲のビルよりも高く、しなやかで美しい軌跡を描く。
「ラ・イ・ダァァァァァァァァァ…」
「やべぇ!?」(ちくしょう、コイツは想像してたよりずっとずっと邪悪な、危険なやつだ!生かしておけば犠牲者は増え続ける!だが、敵わねぇ!!)ザキは慌てて逃げようとしたが、足が重い。
いつの間にか回りは海だ!?水が腰まで来ていて動きを束縛していた。シルビアのスタンド攻撃だ。
幻覚だと解っていたハズなのに、焦りや恐怖に支配されてる部分をつかれた!?
ザキは叫ぶ、ナガセは急降下してザキに迫る。「ちくしょぉーっ!」ザキはN.Aに込めた最後の弾丸を放つがそれはナガセを捉えず、あらぬ方向へ飛んでいく。
「キィィィィィィィィィィィック!!」
ライダーキックがザキを貫き、ムーンライダーの着地地点は衝撃で捲り返り、ザキの姿は跡形もなくなっていた。
そこには飛び散った血液で咲く花が残る。
『ザキ リタイア』
******
シルビアは驚愕した、彼女がスタンドで攻撃したのはザキではなかった、範囲内のこの恐ろしい怪物を捉え始末するつもりだったのだ。しかし、奴は平気でコチラへ近づいてくる、効いてない!?
マンガニーズ・ブルーノーバは相手の恐怖に応じて水位の上がる海の幻覚を見せるスタンド、しかし、ムーンライダーには恐怖は無い、よってスタンド能力は発動しない!?無力!!
アタシはこの怪物に殺される。「ああああっ」怪物が近づいてくる恐怖でシルビアは腰が抜けてしまった。ナガセはシルビアを見下ろす。
「おい、テメェのせいで拳銃使いが死んだぜ、テメェは悪だな?」ナガセは言った。
「殺したのはオマエじゃないか!」と反論しようとしたが、恐怖で声がでない。ナガセはシルビアの腕に噛み付く。
「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」すると、シルビアは跳ね上がるように直立し、まるで空に引っ張られるように手をバンザイし、体の自由を奪われる。
「オレの牙に噛まれたものは、血液を月に吸い上げられる!つまり、立ったままの逆立ち状態さ!すぐに血が逆流して脳に溜まり、頭が水風船みたいに破裂するぜぇ!」
ァオォォォォォォン!!ナガセは絶頂だ。
「おい」
背後からの意外な呼びかけにムーンライダーは振り向く、快楽に身悶えするナガセの顔面をシバミティアが殴りつけ、ナガセは転倒した。
ザキの最後の弾丸は、自分の身を守るものではなく、「逃げろ」という思いを込めてシバミを狙った覚醒弾だった。
ザキの意思は逃げることや戦うことより、彼女の無事を願ったのだ。
「理解したわ、アンタたちは私と同じような特殊能力の持ち主、そして私に危害を加える敵」
ナガセは起き上がりシバミに襲い掛かる、シバミティアはシバミとナガセの間に入り込むが、ナガセはそれを弾き飛ばしシバミに噛み付いた。
「はっはーっ調子にのりやがって!無意味、無意味、無意味ぃぃぃっ!ァオォォォォォォン!!
ドンガメのケツメド野郎が!オレがこのチビガキに気を取られてる間に逃げるべきだったぜ、オマエはなぁ!もっとも、逃げてもこのサイクロンで追い付いてぶっ殺すまでだがなぁ!」
シバミの血液はナガセの能力で上に引っ張り上げられる。
「すぐにオマエの頭は破裂する!」
しかし、そうはならなかった。シバミの姿に変化は起こらない。そしてシバミのスタンドが先程と比べ物にならないスピードでナガセを殴りつけ、その圧倒的なパワーで吹き飛ばす。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……。
「何故だっ!?なぜ平然と立っていられる!?」ナガセは困惑し、シルビアを縛っていた能力が開放される。
シバミは答える「逆流する血を酒に変えて内臓に吸収した、上級者の私だからこそできる最低の技だ。そしてワタシのシバミティアは飲めば飲むほど強くなる!」
今、シバミは人生で摂取したことのない量の酒を吸収している、シバミティアの能力は限界まで引き上げられた。
「そして殴ると同時にオマエの血液をスピリタスに変えてやったわ!」
ナガセの視界が突然ブラックアウトする。アルコールで目が潰れたのだ!その上ライダーの足腰はもう立つことができなくなっていた。
(でも貧血と酔いで私も、もう意識が……はぁ…限界だわ、もう禁酒、生きて帰れたら…二度と飲まない…)
「さあ、エセヒーロー、テメェはぶっ殺す!そしてそっちのガキんちょには私を襲った理由やこの能力のこと、知ってること全部吐いてもらうからな!」
まだだ、まだここで死ぬ訳にはいかない、ライダーは叫ぶ。
「サイクローン!サイクローン!ァオォォォォォォン!! 」
******
バイクが唸りを上げ、主人の下へと駆けつける。
『まだ死ねない……私は殺すの!スタンド使いを殺すの!!』
バイクにしがみつき、窮地を脱しようとした。しかし、ナガセは気づいていない。
「スピリタスのアルコール度数は96℃。もう完全に燃料ね。マキロンの代わりにもなるわ」
「……」
「酒は麻酔が無い時代は飲ませてから手術したそうよ(うらやましい)」
「……」
「それを血管から、直でやったらどうなると思う?(私でさえ今キツい!)」
ドゥッ
ナガセは倒れる。
血中にアルコールが約0,50%以上あれば人間は昏睡し、最悪死を迎えるという。シバミはそれを利用した。
「貴方に捧げる酒は……“クルレフスカ”。
スピリタスより56℃も低いけど、ラベルにある教会にでも祈りなさい。」
ナガセ/ムーンライダリタイア
「あとは……あの憎たらしいガキ……!?」
そこにシルビアの姿は無かった……が!?
******
シルビア「…頭の痛みが引いていく」
(あの女がアイツをヤッたんだな)
シルビアは戦いのあった場所に歩む
シルビア「あの女なら、楽に逝ける…憂いの種は取り除かなければ…………ん?」
猫がいた、場に合わない服を着た猫が
ゴゴゴゴゴゴゴゴ…
シルビア「猫は猫でも…ただの猫じゃないといいたげだね
でもね、どんな生き物にも恐怖はある。
野生に近ければ近いほど恐怖の種は多くなるものよ………」
ドルチ「んニゃぁぁ~ぉ」
***********
力がなくなったかのように膝から―ストン、とシバミは落ちる
シバミ「あ~、効くわぁ…」
これほど酔うのは初めての事だった
普通の人間ならば“酔う”では済まされないレベルだが
シバミ「あ~、すごいぃ…死んだ人が見える」
ザキ「…………それ俺の事スよね」
右腕を吹き飛ばされ、血を失った青白い顔の男が立っていた
ザキ「…ひどいんしゃないすかぁ?勝手に殺さないで………って酒くせぇっすよ!」
シバミ「…ほっといてよぉ、もう死ぬ~」
シバミは話した
自分の能力の事
就職難で困ってる事
今の私は幸せだと言う事
ザキ「…水を酒にできるんなら、酒から水もつくれるんじゃないすか?」
シバミ「やぁだぁ私はこのまま死ぬの、幸せなの~」
ザキ「…………今度新しい酒でますよ」
シバミ「…………シバミティア……」
ザキ「どっすか?」
シバミ「戻りましたよ……」
ザキ「良かった…ってなんで泣いてるんすか」
シバミ「…お酒もったいなくて……」
ザキ「また飲めばいいじゃないですか」
シバミ「あ、それもそうね」
ザキ「じゃ、俺は病院に…って離してくださいよ」
シバミ「…飲みに行く約束でしょ」
辺りの暗さと静かな場所から騒がしい音が聞こえていた
今男が折れたようだ…
シバミ「…永久就職かぁ」
ザキ「何か言いました?」
猫は二人を見ていた
******
魂(スタンド)・・・・か。
直面した危機を『勇気』で持って立ち向かう者達。
そして、勇気ある者達はおそらく・・・。
「ニャァァァァウ・・・。」
それは置いてけぼりは『嫌』だよ・・・。
と、言わんばかりの鳴き声であった。
そう。
それは『誰か』の気持ちを、代弁するかのように・・・。
二人は鳴き声の先を見つめた。
それは見たザキは、ハッっとして。
「怪我人の俺が説明するのは、少しばかりキツイけど。」
「薄々気付いてるとは、思いますが・・・。」
「あそこに居る子は・・・。」
「貴方を。」
ザキが言い終える前に、
シバミは『その子』に駆け寄った。
その子は『誰か』であった。
誰かは『シルビア』であった。
少し離れたトコロで。
身の安全を確保したその時。
迫り来るナガセの恐怖が、思い出され・・・。
全てを飲み込んで、そして消してくれる『海』と言う言葉を、
ブツブツと呟いて、力無く座り込んでいる女性。
シバミは、そんなシルビアに語りかけた。
「アンタ酔っ払いでしょ~~?
かなり痛飲したみたいね、解るわ~~~。それ。
『全てを飲み込んで、消しさってしまいたい時』ってあるのよねぇ。」
ピクリ。
シルビアは、その言葉に我を取り戻した。
全てを飲み込んで、消しさってしまいたいって・・。
え!ち・ちょっと、貴方は!!!?
シルビアが深く考える前に、シバミは言い放つ。
「でも、今は『人助け』。
酔い醒まし変わりに『救急車』でも呼んでくれないかな?
ほら、あそこに居る人、片腕を失けてる。
私、笑い上戸の泣き上戸だし、この場所どの辺かちょっと解らないから、
上手く伝えられる自信無い。
どうかな?お願いして良いかしら・・・?」
・・・・。
ちょっと・・。
頭オカシイの・・・?
だって、私を貴方をだし。
貴方だって・・・。
シルビアはそう思った。
だがそれ以上に、シルビアは受け止めていた。
その視線は『同情や見下したもの』では無かったのだ。
切なる願い・・・。
そして、シルビアは理解ができていた。
『 片 腕 を失った父親の辛さ』を。
・・・。
やっぱり良い仕事が見当たらない・・・。
今日のオカズは、これだけなの・・・。
知ってらっしゃる?あそこの父親は。
可哀想・・。
口ではそう言うのよね。
シルビア、貴方だけは幸せを掴むのよ。
忘れたい。忘れたい。
でも、忘れちゃいけない・・・。
だって、私のお父さんとお母さんなのだから。
だから海・・。
海は生命の源。お父さんとお母さんみたいなの。
海は全てを・・・。
・・・。
感情が湧き上がる。
考えるよりも早くに口が出た。
「私、酔ってなんかいません。」
あれれぇぇ~?
困った顔をするシバミ。
シルビアは『口を止められなかった。』
「でも、して欲しい事は理解できました。」
「待ってて、今連絡を入れます。」
シバミは微笑んだ。
その笑顔には『全てを飲み込んで、そして消してくれる感覚』があった。
シルビアは悪い気がしなかった。
「記憶が飛ぶ程、酔っていた?」
「いや。野暮で無粋か。」
「俺がチキンで、トラブルを背負い込みたくなかったって事で良い。」
「あぁー、痛ッ、早く救急車来ないかなぁ~。」
一人言を言うのもキツイので、ザキはこのまま気絶した。
「ニャァァウ。」
ドルチはその場を後にした。
第1話『俺は馬鹿と出会った。』
To
Be Continued...