アットウィキロゴ

…え?
『超能力』?
そう言ったんですか?
頭がマヌケなんじゃないですか、このアバズレ? …失礼。

『スタンド』ですよ。
いいですか?
『スタンド』能力と言うんですよ、それ?

理解しましたか、この売女?…失礼。

好きじゃあないんですよ、『女』って。
何でかは知りませんが…
生理的に受け付けない。
私は男性にしか興味を抱けない。
…え?『男じゃないのか』?
失敬な、このメスブタが。…失礼。
紛れもなく男ですよ、私はね。
所謂『ホモセクシュアル』ってヤツですよ。
よくあることです。

…え?何で『スタンド』と呼ぶかって?
失礼、話がそれましたね。
それは私にも分からない。
どういった意味なのか、誰がそう言ったのか。
以前渡航した際に、たまたま会った男が言っていたんですよ。
『立ち向かうもの=スタンド』ってね。
どうでもいいことじゃあないですか、ビッチ。…失礼。

よく見掛けますよ、『スタンド』使い。
隣町にも何人かいるんじゃないですか?
ほら、ちょっと話題にのぼったでしょう?
なんとかライダー。あの着ぐるみヤロウですよ。
ムーンライダー?
そうそう、そんな名前です。
あれは間違いなくそうだ。
一度見掛けましたよ。隣町で。
そのときは四人いたな…
何が?って?
信じがたい低能ですね、クソアマ。…失礼。
『スタンド』使いに決まってるでしょう?
ムーンライダー、液体使いのビッチ、銃を持ってるのもいましたね。
もう一人…アル中みたいなアバズレですね、能力は分かりませんでしたが。
間違いなくそうです。
分かるんですよ、なぜか。
結局、ムーンライダーはやられちゃいましたけどね。
結構好きな声だったのに…

ああ、昨日行った時も見ましたよ。
銀色の鎌を持った青年、蝶々を使う男。
あと…町の境の学校の…佐藤先生。
以前、生徒だったんですよ、彼の。
驚きましたよ。彼、トラックにはねられるんですから。

救急車を呼ばなかったのか?
呼ぼうとしましたよ。
彼は以前から私を理解してくれてましたから。

そしたら、蝶々が先生を…治してしまった。

驚きましたよ。うれしかったんですがね。
『スタンド』って、あんなこともできるんですね。

え?私は何かしなかったのかって?
しませんでしたよ、売女。・・・失礼。
私じゃあ何もできない。
私の『スタンド』ではね・・・

ところで・・・あなたは『スタンド』使いじゃぁないんですか、メスブタ?・・・失礼。

・・・・・違う?
面白いですね。
私の『スタンド』を見て声をかけてきたのでしょう?
『スタンド』は、『スタンド』使いにしか見えないと聞いたのですが・・・

まぁ、いいでしょう。
私が知っているのはこれだけです。
いきなり引き止めて・・・ただでさえ嫌いな女と喫茶店で長話までさせて・・・さらにまだ拘束する・・・なんて事はありませんね、このケツメド野郎?・・・失礼。

・・・まぁ、私の分の払いは済ませておいてあげましょう。
ふふ・・・では、ごきげんよう。
二度とお会いしないことを願ってますよ、尻軽女。・・・失礼。


ちりーん・・・

喫茶店員「ありがとうございました~」

「ふぅ・・・」

大きく息を吸う。
あのアバズレのせいで、息苦しかった。

「・・・さて、行こうか。『ブルース・ドライブ・モンスター
』。彼らは面白そうだ。」

最近頻発している『スタンド』使いが起こす「事件」。
それは、彼の中で並々ならぬ興味となって彼を行動させた。

「・・・ふふ」

鬱蒼とした曇り空のもと、彼は踏み出した。

【本体:ムトウタチバナ/スタンド:ブルース・ドライブ・モンスター】

「ふふ・・・楽しめそうだ」

そう呟いて、彼は雑踏に姿を消した・・・

 

******

 

「さて……面倒くさい事になってきた」

ムトウが出て行った喫茶店で一人ため息を付く女性。

(しかし、紳士的な奴だと思ったのに女嫌い……ましてや『ホモ』だったとはねぇ)

「ま、何にせよ色々と話を聞けただけでも良しとするか」

そうつぶやくと彼女はおもむろに席を立つ。
しかし、その足取りは出口に向かうものとは少し違っていた。

「きゃ……あ、ありがとうございます!」

転びそうになった喫茶店の店員に手が添えられる。
まるで、そこで店員が転ぶのを察知していたように……。

「ここ、少し濡れてるみたいだから拭いといた方がいいよ?」

店員の体勢を整えてあげると彼女は床を指して店員に微笑みかける。

「(もう少しで可愛い店員さんのパンツを拝めたのに……)」
「(だから、そんな事は止めとけって言ったんだよ……)」

なにやら隣の席でボソボソと男達が話しているが、気にせず彼女は会計へ向かった。

「ありがとうございました~」

彼女が会計を済ませた後、バツが悪くなったのか先ほどの男達が会計を済ませていた。

「エェーッ!?そんなに注文してたっけ!?」
「しかし端末にはしっかりと記録されてますし……」
「お前結構食べてたし…」

何やら会計が予想より高くなっていた事に驚く男。
そして、事実だと認めるその友人。

「女の子を転ばそう何て卑劣な事をするからよ……そう思わない?ワールド・ワイド・ウェブ」

その、奇妙な現象は彼女の能力によって引き起こされたものだった……。

【本体:コウ/スタンド/ワールド・ワイド・ウェブ】

「『立ち向かうもの』かぁ……無知を装って色々聞けたのだけれども……出来れば立ち向かいたくは無いものだわね……」

そう言いながら彼女は『情報』を求めに向かう。
戦いを『避ける』為に……。

 

******

 

ムトウタチバマという男、そしてコウという謎の女性が喫茶店を後にした、ちょうどその時


ピッ  ガガーーッ


「よし、退勤、、と。 じゃあ、先にあがりますー。」


先ほどの喫茶店からさほど遠くない、隣の繁華街にある別の喫茶店「CAFE DEUX MAGOTS」
オープンテラスのあるすこし洒落た店で、名物はチョコレートパフェ。
最近若者達に人気のこの店での仕事を終え、その男は店を出た。


「うーーん、今日はお客さんも少なかったし、結構暇だったなぁ。」

「あ、裕。もうあがり??」

「ああ、今日は楽な1日だったよ♪ じゃあ。」


そうやっていつもの様に差し障りのない会話を同僚達と交わし、裕の足は家ではなく、商店街の方へと向かう。


「まだ居酒屋のバイトまで時間あるし、、、本屋でも行こうかな。
そろそろ新しい本がでる頃だしな。」


_______________________________



「ん、、おお! コレ探してたやつじゃん!

あ、あの本は、、、、!!

くぅ、、やっぱいいなぁ、石波文庫は、、

あ、あれも、、、、、


げ、高ぇ、、、。」


ずらりと並ぶ本棚を前に、若者とは思えない食いつきで本を物色している。


裕は本屋で過ごす時間が好きだ。

幼い頃から父親の書斎に入っては、壁一面に敷き詰めれた本を何冊かとり、いつも時間を忘れて読みふけっていた。
やがて、彼は書斎の本を全て読んでしまい、次第に図書館にも足を運ぶ様になった。

だが、彼の1番の場所は本屋だ。


「やっぱ、本屋はさ、、新作が、こう、、ズラッて並んでるのがいいよなぁー。
人気売れ行きランキングとか、注目のアーティストとかさぁ。
買ってくれ! オレは面白いゾッ!!って本が訴えかけてくるんだよなぁ。

ネットでもたくさん情報は手に入るけど、あれじゃダメなんだよ。
好きな時に好きなページをゆっくり読めなきゃな。
やっぱ、この紙の質感、この香り、、!

図書館もいいけどさ、なーんかあそこは生気がないんだよなぁ。まぁ、内容量の深さは認めるけど、、、
やっぱ、自分のモノにしたいじゃん?返却日とかきにしないでさぁ。

んで、、ゆっくりお気に入りの本を読みながら酒を飲む、、、

あぁー、    最ッッ高、、、!」



そんな訳で今日も裕は本屋でニヤニヤしながら独り言をつぶやくのだった



「で、それ、、買うの??」

店の奥から店主が呆れて裕を見ている。


「、え!?  あ、ああ!すみません!!
えっと、、     あ。」

「??」

「、、、、すみません、この本お取り置き出来ないですか、、?」


財布の中身を確認し、裕は申し訳なさげにその本を店主に渡した



   『世界の超人達☆素晴らしきその肉体』




「、、、、、それ、そんなに人気でてないから、取り置きするまでもないけど。
まぁ、馴染みのお客さんだしね。 とっとくよ。」

「やった! ありがとうございますッ! あ、もうこんな時間だ!バイトに遅れちまう! それじゃ!!」


裕は慌てて店を出た。


「やば、、間に合うかな。
さっそく使うか、、。『アボガドスキー』ッッ!!」


とたんに裕のスピードが速くなる。

「さすが、、!世界の超人達はスゴイなッ♪
でも、こんどはめくるだけじゃなくて絶対買ってやるぞ!」


そういって彼は黒人の様なバネをもっているかの様に、颯爽と商店街を走り抜けていった。

 

******

 

怪人をブチノメシタあの後、シバミはどうしてもシルビアと仲良くなりたくて、熱烈アプローチを繰り返した。
ザキは片腕を失ってスタンド処か、全うに歩くこともできない体で入院しているが、そんなこともスッカリ忘れていた程だ。
シルビアは襲撃してきた時のことが嘘のように大人しかったが、襲撃の動機や、日本に来た目的など一切話してはくれなかった。
聞けたことと言えば、シルビアはあの夜にブチ猫と見知らぬ男に出会って以来、スタンド能力が失われてしまったということ…。
「シルビア、ショック受けてたな……見知らぬ男に、ブチ猫かぁ、猫はいたなぁ現場に…」
考えてもどうにもならん、ザキの怪我のことなど忘れて当然、シルビアは姿を眩ましてしまったし、むしろそっちが心配だ。
シバミは居酒屋で一人ブツブツ言いながらビールを飲んでいた、口に出さないと考えがまとまらないのだ。
「あ…忘れてたけど、行方不明になったザキの友達と関係あるのかな?」
注文していた手羽先が来たので頬張る、うまい。
ザキが「忘れてたって…任せろって言うから頼んだじゃないっスかぁ…」って男らしくないことを言ってる気がした。
「ああ、あんなお人形さんみたいな美少女と仲良くなりたいなぁ…シルビア、行く所あるのかな?」
ザキの友達のことより、とにかくそっちが心配なのだ。

スタンド能力が無くなった……。


ムトウタチバナは携帯で会話をしながら歩いていた。
「色々と見てきたけど、中には昔の恩師もいてね、及第点を付けられるのは彼くらいじゃあないかなぁ?」
電話をしながら肩に乗ったブチ猫ドルチの喉をなでる。
「解っているさ、他者を巻き込まないで済むならそれに越したことはない、キミの考えは私が一番に理解しているよ」
優雅過ぎるその歩き方は正直街には浮いてるくらいだ。
それはまるで宮殿を歩く貴族の様。

そこに正面から男が歩いて来た。
タチバナは衝突しないように避けようとしたが、ガラの悪い男が嫌がらせに道を塞ぐのを彼は感じ取る。
(「醜悪だな、私が避けてやる価値はない」)
彼はそういったゲスな精神がカンに触るタチだ。

ドン!

歩調を緩めず直進し正面から来る男の体を押す、すると男の体が両開きのドアの様に真っ二つに裂ける!?

ズバーン!!?

「ぎひぃやぁぁぁほほうっ!?」
男はその無残に裂けた自分の体を見ると、断末魔の叫び声を上げ絶命した。

……。

かのように見えたが、男の体はなんともない。
過ぎてみれば、タチバナが男の体をすり抜けたようにも見える。
だが、確かに彼の体は真っ二つに割れたように見えたのだ。

ゴゴゴゴゴ……。

そして、上げたハズの断末魔の叫び声は上がってはいない、何故なら今度は彼の下顎がゴッソリ無くなっているからだ。

「キミの汚らしい声で、小鳥のさえずりを掻き消して欲しくないんでね」
そう言ったタチバナの手の中には下顎が握られていた。

「慌てなくていい、私はキミの下顎を『分解』したが、これは破壊したのとは訳が違う、だから私の意思でまた元にもどすことができる。証拠に一度『分解』したキミの体は元に戻ってちゃんと機能しているだろう?」

あまりのことに男はすでに失神していたのだが、タチバナは男の頭を掴み、「静かにしていてくれよ」と言うと男の頭をウンウンとうなずかせた。
「よし、ならば顎を返そう、感謝したまえ」
下顎はタチバナの手を飛び出し、元どおりの位置に戻る。

 

そこでドルチがニャアと鳴いた。
なるほど、と言ってタチバナは携帯を取る。
「もしもし、つっかかって来る馬鹿がいたと思ったらスタンド使いだった、とは言っても知らずに片付けた後にドルチが教えてくれたんだがね」
ドルチがニャアと鳴いた。
「ろくなヤツじゃあなさそうだ、例によってコイツの能力も消してしまうよ」
タチバナが言うと、ドルチは動いた。ドルチの背後に現れたのは猫の姿をしたスタンド!

『ドルチ/スタンド名:ダイハード・ザ・キャット/能力:スタンド使いのスタンドの出し方を忘れさせる』

ドルチとタチバナはスタンド使いが不自然に増える街で、危険と思われるスタンド使いからスタンドを奪って廻っているのだ。
それを提案したのは電話の先の人物。
「今日のキミの声はとても美しいメロディーを奏でるんだね、作品の完成が近いのかい?だったら首から上をキミのアトリエに残してくれば良かった」
冗談ではなく、タチバナのはそれができる能力だ。
「え?体だけじゃあロクに動かないだろうって?いいのさ、キミの作品が見られるのならば、うん、とにかく私と小さな友人を信頼してキミは自分のことに集中していてくれよ、サトヨシ」
タチバナは通話を終え、ドルチは先行して歩き始める。
「さて友人、次は何を見せてくれるのかな?私はもう当たりを引いてくれても構わないよ、危険はサトヨシに及ぶ前に処理しておきたいからね」
タチバナはドルチを追いかけた。

スタンド使いが急増している、これは恐ろしいことが始まる前触れ。

 

******

 


「おはようございまーっ!」
居酒屋のバイトが元気良くシバミの横を通り過ぎて調理場に消えた。

バイト、祐は最近一流シェフ並みの腕前を手に入れたので、どうにもバイトがくだらなく思えていた。
先輩の手際があまりに悪いので、「やります、どいてください」と言ったら止められたので「僕の方がうまいので」と正直に言ったらキレられた、なんてつまらないんだろう。
朝は痴漢をみつけたので手を捻りあげたら、サブミッションをマスターしていたので、オジサンの手がポッキリ折れてしまって、何故か警察に怒られたんだ。
人より僕の方が優れているのに怒られるなんて変だな、コイツら全員僕より劣ってるのにな。なんでだろう、僕が凄いからみんな嫉妬してんのかな?

『完全他殺マニュアル』『凶悪犯罪者の心理状態』
祐の鞄から来る途中に読み終えた二冊の本が覗いていた。これは恐ろしいことが始まる前触れ。

 

居酒屋は客でいっぱいだった。
「黄金時間」と呼ばれるこの時間。
帰宅途中の人や、宴会、合コンする人で溢れていた。

「王さまだ~れだ?
……ヤッタバアアアアアア」


「馬鹿……そんなに頼むな!」
「え~。久々に依頼を達成したんだから良いじゃん!」
「ケッ……」


「いい加減就職しないとなあ……」
「働いたら負けだと思っている」

なんだか聞いたことのある声が多数あるが、物語とは関係無い。


「とりあえず生一つ頂戴」


なんだか食べてる所ばかりの描写ねぇ……誤解しないでね。私は大食漢なわけじゃないから。


注文通り運ばれてきた生を飲み、コウは一息ついた。


「でもあれだわぁ~。酒はやめられない……これは神が私に与えた最大の幸福!」

シバ美は相変わらず酔っていた。今はザキのことも、シルビアのことも忘れている。

「店員さ~ん~。生 5 つ 」
「はぁ!?」

店員が驚くのも無理は無い。三時間も前からシバ美はソロで飲んでいた。

「お客様……肝臓に毒ですよ……」
「良いのよぉ……水に戻すからぁ……」


水に?今そう言ったか?


このやり取りを聞いていたのは二人。

一人は店員の「祐」そして……


「あそこにアバズレのビッチ野郎は見たことがあるな……ムーンライダーと戦っていた……シバ美……」

「にゃ~ん」


正確には一匹も聞いていた……


「丁度良い機会だ。あの野郎もシルビアみたいにしましょうか。ね?ドルチ」

 

******

 

「ふむ・・・・」

シバ美を視界の端に置きつつ、ざっと店内を見渡す。

「ふふ・・・全く、何てことだ。ねぇ、ドルチ?」

―――にゃぉん。
あいずちをうつように、彼の足元で、ネコが鳴き声をあげた。

「ふふ・・・そうだね。『スタンド使いは惹かれあう』。店中、『スタンド』使いだらけじゃぁないか?・・・ふふ」

愉快そうに肩を揺らす。
―――にゃおん。

「あれ~?おにぃさん、やけに楽しそうじゃない~?」
「・・・・・む?」

声のするほうに目をやると・・・いや、というか、「それ」はタチバナによっかっかってきていたのだが。

「あははは~・・・どぉ?一緒に飲まない??」

ぴきぴき、と彼のこめかみに血管が浮き出す。

(こ・・・・このアル中のクサレビッチが・・・・!!!)

「ど~したのぉ??ほらほら、こっちこっちぃぃ~」
「・・・・・・・・・・この下品な尻軽売女が・・・失礼。」

タチバナの悪態に気づかずに、酔っ払いはカウンターへと彼を引きずってゆく。
もちろん、ドルチのことなどお構いなしである。

「いきなりごめんねぇ・・・・。私、シバ美ってのよ~」
「・・・・ムトウ、タチバナと申します。・・・・このアバズレ。・・・失礼。」
「あははは!面白い人!ほらほら、飲もうよ!」
「(しかたがないですね)・・・わかりましたよ、メスブタ。・・・失礼。」


怒りをこらえつつも、シバ美のソロに付き合うタチバナ。
その様子を、ドルチは他人事のように眺めていた。
―――にゃぉん。

「はぁい!お待たせしました!生中・・・5・・・つ・・・・?」

先ほど頼まれた生中をカウンターに運んできて、祐は声をなくした。
だって・・・

「お客様・・・「二名様」ですよね?」
「あぁ、それ全部私のよ~?」
「え!?」

驚いた視線の先には、シバ美。
そして、眉根を寄せてワインをたしなんでいる、ムトウタチバナ。べたべたとシバ美に触られたので、怒りは頂点に達している。

(この「女」は・・・!)
「あぁ・・・『水に変えれる』んでしたよね?お客様?」
「そぉよぉ・・・ほら、『シバミティア』!」

運ばれてきた生中が、ただの『水』に変化する。

「な・・・!」

思わず、タチバナは声を上げた。
(このアマ・・・!どれだけ低能なのだッ!?)
一般人に自慢げに『スタンド』を見せ付けるなど、彼からすれば狂気以外の何物でもない。

「・・・スゴいっすねぇ・・・」
気づけば、祐の表情が「凶悪犯罪者」のそれに、変わっている。
彼の『スタンド』能力。

「でもよぉ・・・・許せんよなぁ・・・」
(・・・この男・・・『スタンド』使い!)
「大事な『酒』をよぉォー・・・『水』にしちまうなんてよォ・・・」

持っていたトレイを振り上げる。
そして、それはシバ美の頭に・・・

ガシィッ!

直撃する直前。
ブルース・ドライブ・モンスターが、彼の腕を捕らえていた。

「・・・・『ブルース・ドライブ・モンスター』。・・・やめたまえ、君。美しくないな。」
「ッ・・・!はなせや!このダボがぁぁァッッ!!」
「ちょっと・・・!やめなさいよ!楽しく飲みましょうよぉ!」

急な展開に、シバ美が割って入る。
店の奥から、店長らしき人物も姿を現していた。

「酔わせて・・・眠らせるッ!『シバミ・・・』」
「こら祐ッ!やめないかッ!おとなしく俺の手羽先を食ってろ!『トップ・オ・・・』」

シバ美がタチバナの腕を掴み・・・
店長が祐を羽交い絞めに・・・・

――プッツン。

「私に・・・私に触れるなッッ!!この汚らしいアル中のクサレビッチがァァァァッ!!!」
「・・・・え?」

触れたはずのシバ美の腕が、肩から『分解』されていた。


「・・・・・・・・・取り乱してしまった。・・・・失礼。」

『分解』したシバ美の腕を持ち、ぼそり、とムトウタチバナはつぶやいた。


――――にゃぉん。

猫が鳴いた。

 

******

 

店内が騒然としていく中、一人目を閉じている女性が居た。

「……そろそろね」

彼女がそう呟くと店内が一気に暗闇に変わり非常ベルが鳴る!

「か、火事です!お客様速やかに店から出てください!」

同時に店員の叫び声が店内に響き渡る。
店内の人達は一斉に出口へと駆け出した。

「うおッ!」

その人波に弾かれ裕はムトウ達と距離が離れる。
目を閉じていたコウにはそれを確認する事が可能ですぐさま行動に移る。

「こっちよ!」

いきなりの暗闇の中困惑しているムトウに呼びかける聞き覚えのある声……。

(なんて名前だったか……。まぁ、ビッチでいいか……。)

などと考えつつもムトウは考えを巡らせていた。

(もしや、罠なんじゃあないか……?)

声の方向からは煙が立ち込めている。
そんな思いをドルチは見抜いたのかニャアと鳴き声の方へと歩き出す。

(フム……罠では無いようだな……)

ムトウは煙を吸い込まない様に胸ポケットからハンカチを取り出し、口に当て声の主を探した。

「その必要は無いわ、これは私の能力……」

煙の中には数時間前、喫茶店で話していた女性……コウが立っていた。

「……やはり『スタンド使い』だったのですね……しかしビッチ……失礼、能力を曝け出すのはいただけませんね?」

「能力を明かしたのは貴方を信用させる為、そしてこの危機を脱する為よ」

ムトウの見下す様な視線を物ともせず凛とした目で説明をするコウ。

「私はね……面倒事には関わりたくないの」

店内の人がすべて非難したのを確認してシャッターの操作パネルを操作しながらコウは続けた。

「でも、弱者を……ましてや女性をッ!いたぶる奴を無視する事などは出来ないわッ!」

そう言い終ると同時に店のシャッターが閉まる。

「私の『スタンド』は直接的な『攻撃』はできないわ……だから、『協力』して欲しいのだけど?」

煙が晴れてお互いの姿を確認する。
その時、コウは異変に気付く。

「ッ!?一緒に居た女の人は!?そ、その腕はもしや……」

黙って聞いていたムトウがため息と共に口を開く。

「アバズレにしてはなかなか『熱い想い』を持っている、嫌いじゃあ無いですね……」

ムトウは能力を解除する。
シバ美の身体を呼び寄せる為にッ!

「これが私の能力です……女性は嫌いなんですが、ビッチ……失礼、協力しましょう」

その瞳を見つめて確信したコウは笑顔を見せる。

「奇遇ね……私も男性は嫌いなのよ」

 

******

 

ジリリリリイリリイリイイリイリイリイイイイィィィィ


グァシャン!!!


「、、、、。」


裕は火災報知器を殴り、その音を止めた。が、まだ店内は暗闇のままだ。


「ち、、。煙は見えるが全然火の気が無いじゃぁないか、、。騙しやがってッッ!!」


いきなり店内が真っ暗になったと思えば、あの男が消えやがった。
、、、そういえば、あいつ、不思議な事をやってのけてたな。
いきなり、女の肩を、、、

そう、『取り外した』


あれは、、「能力」なのか、、?僕の、「アボガドスキー」の様な、不思議な能力。

それに、あの女も、、。酒を水に、、、、、。


いや、重要なのはそこじゃない。
あいつらが俺みたいに不思議な力を使えるとか使えないとか、そういうのは全然問題ない。

重要なのは、逃げられたという事!


男がいなくなったから、まずは片腕の取れた、、、あの、、俺が殺そうとしているにも関わらず、片腕がいきなり無くなったのにも関わらず、、!ボケっとしてるあの酔っぱらいを殺ろうって思ったのに!!

「割ったグラスでメチャメチャに刺し殺してよろうと思ったのによぉ!畜生!!どこ吹っ飛んでいきやがったッ!!」





不思議だ、、。

裕は自分の気持ちが異様に高まっているのに気付いた。最近読んだ本、、あれが関係してるのか?読んでみろっていきなり変わった奴に勧められて、、、、。
全然面白そうな本じゃ無かったけど、、むしろ、その手のジャンルはあまり好きではなかったし、、でも、ページをひらく度に、なんか、、どす黒いゾクゾクしたものが体中に入り込んできて、、
最初は確かにびびった。なんか胸がズキズキするし、、見ちゃぁいけないモノだって分かった。
だけど、、クセになるんだ、、!読む事を拒めば拒むほど、興味が、どんどん湧いてくる、、!!拒めない!!読むのを、止められないッッ!!!!!
新しいジャンルを発見した時、人は好奇心からすぐ夢中になるだろぅ?あれと一緒だ。そしてハマったらドンドン盲目的になる!続きが読みたくなる!『実践』してみたくなるッッッ!!!!


分からない、、。ただ、わかるのは、、、今!!


  気 分 が い い って事だ!!!!!



「逃げられた、、確かに逃げられた、、。

だがそれはつまり、これから追いかけて殺す楽しみが増えたって事だよなぁぁぁ。
楽しみだ、、追いかけて追いかけて、恐怖しやがれ、、。そして最期に、俺がその恐怖でひきつった顔をめちゃくちゃにしてやるぜ。もちろん、普通には殺さねぇ、、芸術的に、、なぁぁ。」


いけ好かない男、酔っぱらいの女、そして、逃亡を手引きした奴、、いるのは分かってるんだ。声がしたからなぁ。何人いるのかはわからないが、、いや、何人いても構いやしない。
能力を使えようと使えまいと、、俺は今気分がいいんだ。出てくる奴はみんな、、、皆殺しだ!!

 

******

 

コウとムトウがいる場所は飲み屋が入ったビルの裏口、火災報知器の効果で客や従業員は正面出口に集まっていることだろう。
実際に火災が起きた訳ではない以上、誤作動を疑いすぐに人がビルに足を踏み入れるに違いない。

彼女がこの能力を得たのはごく最近、スタンドなんていうこともムトウに聞くまで知らなかったくらいだ。
コウのワールド・ワイド・ウェブはあらゆるコンピューターの操作端末といえる能力、コウはそれを使い情報を集め、最近になって能力が関連してると疑わしい事件が頻発していることに気がつく。
そしてあの事件、『暴走族全滅事故』を調べている時にある想像が過ぎった。あの事故は人為的に起こされたもので、35名が死亡した中でたった一人生き残ったナガセはそれがきっかけで能力に目覚めたのではないか?
そう、この一連のスタンド使いの急増は誰かの差し金である可能性が高い!
そして、スタンド能力者同士の殺し合いが始まるにつれて、いずれ自分も殺される危険への不安を拭えずにいた。そこで他のスタンド使いとは違う目的意識を感じさせる行動をとる猫と男にたどり着き、コンタクトを取ることにしたのだ。
自分の身を守るために。

ムトウ「アナタの言う通りこの一連の騒ぎが誰かの思惑によるものであるとしたら少々軽率ですね、もし私がなんらかの目的で暗躍する首謀者であった場合、アナタみたいな人間を真っ先に消すでしょうからね」
コウ「とにかくほおっておけないのよ、ムーンライダー、殺人鬼、判断はつかないけど、増やすのが目的の割には減らすことを念頭においているような…」
ムトウ「増やしておいて、殺す…さっぱり要領得ませんね」
コウ「だから私は身を守る、戦わない為に誰か、少しでも事情を知っている人間の協力が必要だった」

当面、あのスタンド能力に過剰反応して『殺人の衝動』に駆られた少年も能力者で、その首謀者とやらの計画の一環である可能性は、「そうではない」ことよりずっと自然だ。

ムトウ「シャクですが、アナタがワタシに行き着いた手腕は確かなようですね。堕落した雌どもとは違い普段から美しくも訓練を怠らず、心身ともに美しく一流で、どんなことも一流のアスリート並にこなす、この美しい私に助力を頼むのは当然のこと」

ムトウは知らない、祐は今「黒人の瞬発力」「マニュアルのような格闘技術」「完璧な殺人術」「猟奇殺人犯の心」を持っていることを…。

「アナタは(人格的に問題があるけど)頼りになりそうだし、彼女なんでしょ?ムーンライダーを倒したのは…?」コウの言葉をムトウの舌打ちが遮る。
ブルース・ドライブ・モンスターで分解したものは、解除と共に惹かれあい接触することで元に戻る。シバミの腕を持ってきたムトウが分解を解除した時点で、シバミはこちらに引っ張られるハズなのだ。

ムトウ「くっ、あの豚!中で柱にでもしがみついているのか、どっかに引っかかっていやがるとでも言うのか!?愚かな!これだからアル中の雌はっ!!」
コウ「中に戻るしかないわね…」
ムトウ「このままではすぐに人が入ってきてしまいます。お手数ですがビッチ、このビルに火を放って大火事にしてください、人を遠ざけて消防車が来るまでにあのアバズレを回収します」
コウ「正気なの!?」
ムトウ「敵のスタンド使いとの戦いも人に見られたくはないのでね」

ムトウが壁を「分解」して中に入ると、まるですり抜けたように壁は元に戻る。
そこには一人残されたコウの姿。ドルチはいつの間にか姿を眩ませている。

コウ「ちょっと、一人にしないでよ、私のスタンドは直接攻撃能力無いんだから!?」

コウは慌てて裏口の扉へ向かい、ムトウを追いかける。
その様子を見ていた男がいた「聞いたぞ、聞いたぞぉ、能力を消して回ってるだって?そいつは許せんよなぁ?さて、居酒屋の彼に興味は無いけど、協力してやるかな。俺のこのカーペンターズは建築物内じゃあ、無敵だぜぇ」
『ヒデエモン/スタンド名:カーペンターズ/能力:建物内のどんな物でも、直したり、操る事ができる』

 

******

 

「どこにいやがる阿呆共……そして何故だ……どんどん道が変わっていく……」

居酒屋の内部はまるで侵入者を拒む意思を持ったように、次々と形を変えていく。
祐は居酒屋をさ迷っていた。しかし、それはムトウとコウも同じだった。


「まるで臓器だな……汚らわしい」
「なぜ私がここまで苦労しなければいけないのだ……いや、これも彼のためだ」
「あのビッチはどこだ?まさか殺されたのか?」

ムトウはひとしきり呟いた。右に曲がろうとしたら行き止まりになり、左に行こうとしたらいつの間にか右曲がりになる。
分解しようにも、分解した後の道まで変わってしまい、意味がなくなってしまう。

『黙っておこうかしら……私のWWWで調べたら……近くに【もう一人スタンド使い】がいる』
『でも敵意は無いみたい……』
『シバミを見つけてからのほうがいいかしら……』
コウは黙っていた。自問自答を繰り返しながら、黙っていた。


これはヒデエモンなりの配慮であった。いま出会えばシバミの一部を抱えるムトウは100%やられる。
実際、曲がっているように見えるが、全部まっすぐシバミへ進むように誘導していた。

逆に祐の方はどんどん遠ざけて行った。
彼今行っている方向は無い。厨房をグルグルと回っている。

「ったくよー。世話がかかりやがるぜ……。カーペンターズ、しっかり働けよ!」
「へイ!オヤカタ!」
「ガッテンダ!」
「マカセヤガレッテンダ!」
「オレタチニマカセトケバアンシンダ!」


そのころシバミはというと……

「片腕が無いと不便ねぇ……そういえばザキはどうやって生活してるのかしらぁ?」

シバミは懲りずにビールを飲んでいた。
これから起こることなどまったく考えていないシバミの姿がそこにあった。

 

******

 

「胸騒ぎがして来てみれば…」

シャッターをぶち破って入った居酒屋の中は、荒れ果てていた。

「タチバナは…無事なのか?」

仮にも彼の『生徒』であり『友人』なのだ。
心配しない要素などない。

―――ふみゃぁ。

「ドルチ?」
立ち込める埃の中から歩み寄って来る猫を見つける。
『スタンド能力を消す』猫。
数週間前。
そう、一例のスタンド事件が始まった頃、ふらりと現れた猫。

人為的な『スタンド使い』の増加で荒れそうなこの町を正常出来るかもしれない『鍵』。

「無事なようで何よりだよ、ドルチ。…タチバナは?はぐれてしまったのかい?」


―――にゃぁう。

一鳴きして、埃が舞う店の奥を振り返るドルチ。


「このドグサレがーッッ!!」
「この私への攻撃はッ!」

割れたビンやグラスを振り回す青年…いや、確か「裕」という名前だったか。
そして、流れるような動きと、スタンドによる『分解』で、攻撃を躱すタチバナ。

「ウバシャアアァァァッ!!」
「そんな醜い攻撃はッ!通用しないと認識していただこうッッ!!」

がむしゃらに攻める祐と、華麗に躱し続けるタチバナ。
それはまるで――

「―美しい」

舞踏会の一場面の様だった。
「…無事アトリエに戻れれば、描くことにしよう。」

思わず、佐藤は呟く。

「…うわぁ、驚いた」

尻餅をついたまま、シバ美はそう漏らした。
カウンターにしがみつきながら、なんとかビールを干していたとき、後ろから割れたグラスで襲いかかってきた裕と。
辛うじて避けた勢いで突っ込んだ壁から、突然現れたタチバナ。
…私を抱き留めて、「手間を掛けさせないでください、ビッチ。…失礼。」とか言ってたけど。

そうしたら、二人が争い始めたのだ。何故か守ろうとするタチバナと、何故か殺そうとする裕が。

「ん。先生か」

不意に、タチバナが呟く。
攻防は泥沼。
攻める祐、流すタチバナ。
流麗に、延々と繰り返す。

「クソッ!!大人しく死ねッッ!」
「いいタイミングです。…『ブルース・ドライブ・モンスター』」


タチバナにふりおろされた裕の両腕は身体から分解され、彼のスタンドの手の中で垂れ下がった。

「両腕がなくては、暴れようもないでしょう。そして…任せましたよ、先生。」

…呆然とする裕に、『オールラブ』の拳がめり込んだ。

 

******

 

オールラブに殴られた瞬間、裕の中にあったドス黒い感情が消えていく。

「オレは……なんて事を……」

ガクリと膝をつく裕。
正気に戻った裕は今までの行動を悔いた。
そんな裕に佐藤は優しく声をかける。

「いいんだよ……結果的には誰も傷付けなかった」

そして、優しく包み込む……。

「先生がすべて許そう」
「せ、先生ぇ……」

計り知れない佐藤の愛情にそのまま泣き崩れる裕。
いつの間にか迷路化していた居酒屋は元に戻っておりムトウを探していたコウも駆けつける。

「オヤカタァー!」
「ホットイテイインデスカイ?」
「ヤツラ『ノウリョク』ヲケストカ」
「イッテヤシタゼッ!?」

カーペンターズが立ち去ろうとするヒデエモンに聞いた。

「最初はオレっちも『悪者』だと思ったさ……でも、中を覗いてみりゃどうやら『悪者』はあっちの兄ちゃんだったみたいでな」

キシシシと笑いながらヒデエモンは続ける。

「そしたら、あの佐藤先生まで来るじゃねえか!一度学校で見かけたが、あんなにも生徒に好かれている先公はいねぇ……オレっちの出る幕じゃあねぇよ……」
「オヤカタ、シブイッ!」
「ソコニ」
「シビレルッ!」
「アコガレルッ!」

そう言うやり取りをしながらヒデエモンは居酒屋を後にした……。

「なんだ、、案外あっけなかったですね。まぁ一応、腕は元に戻しておいてあげましょう。」

そういうと、タチバナは分解された裕の腕を元に修復した。


「あ、、。」


手を、何度か動かして、両腕の感覚を確かめる

「よかったな、これでまた大好きな本が読めるぞ。」

「先生、、、!」

佐藤の暖かい言葉に裕は思わず泣きそうになった。なんて、素晴らしい人なんだろう。さっきまで、いくらスタンドの影響とはいえ、人を殺す事に快楽を覚えていた僕なのに、、!


感動し、目を熱くする生徒とその教師、、、まさに青春ドラマの1シーンのような完璧な構成だ。

が、割ってはいる影が1人


「、、、ちょっと!あんまり先生の顔をジロジロ見ないでもらいますか?」

「え?」


「確かにあなたは『オール・ラブ』で救われた。しかし、先生は私を心配して、この居酒屋にやってきたのですよ?その点を誤解してもらっては困ります。」

「え、、えーと」


「あなたは所詮、先生のスタンド攻撃を受けた一人、私の様に、『生徒』でも、ましてや『友人』でもない。思い上がりもいいところです。」

「、、、、。」


別に、そんなつもりじゃあないんだけどな、、

裕は、笑顔をひきつらせて応対するのがやっとだった。すると、佐藤は不思議な顔をしてタチバナに言った。


「何を言ってるんだ?私にとってはすべてが生徒達だぞ。」

「な、、だが、真の意味で言わしてもらえば私が、、、、、」

「、、、、。」
「、、、、、、!!」


タチバナと佐藤が『生徒』という解釈でしばしもめている間、裕はそれを呆然と見ていた。すると背後から猫の鳴き声、、。





   にゃあ






いつのまにか、少し離れたから裕をみつめる1匹のブチ猫。


「、、、、、、、そうでした、ドルチ。スタンドを消し去る用事が残ってましたね。」




「 「 「 「 「!!」 」 」 」 」




「タチバナ、、この子は別に自らの意思でスタンドを利用したんじゃない、むしろ、その特殊性を何者かに利用されたんだ、なにも彼のスタンドを消す必要は、、、」
「その男の言う通りよ、タチバナ。私のワールド・ワイド・ウェブで入手した情報でも、その男にもはや敵意はないわ。むしろ怪しいのはその本を提供した奴で、、」
「スタンド、、、、、『 消 す 』って、、、、言った?」
「そりゃねぇよ!途中から首つっこんでたが、そのあんちゃんもう悪さしねぇんだろ!?スタンド消すってぇのはいただけねぇよ!あんた、『悪者』かよ!」
「オヤカタッ!」「カエルンジャ」「ナカッタノ」「カヨ!!」
「しかし、また再びこのような事にならないとも限らない、、、サトヨシに危害が加わる可能性があるなら私は、、ちょっと、、、私の肩を持たないで頂きたい、ビッチ、、、失礼。」
「だが、この通り本は没収したし、、、」
「まずは情報を手に入れるが先よ。それからこの男の始末を考えたっていいんじゃないの?下手に動いて不利な状況になるのは嫌よ、私は。」
「、、、、、、、、、現場にいた、、、猫、、、。」
「止めとけって!そいつは将来有望な若者だぜ!?大工の本でも読ませりゃ俺んトコでいい職人になれるってもんよ!」
「オヤカタ!」「ソレ」「コイツ」「リヨウシテルッ!!」
「このアバズレッッ、、、!いいかげんに、私の肩から手を、、、」









「 あ な た が !   ス タ ン ド を 消 し た の ッ ッ ッ ッ??!!!」






辺りをつんざく様な、まさに白鶴の、、もとい、鶴の一声
自分たちの騒がしい会話をも飲み込むほどの、強い力と感情がこもったその声の方を、タチバナ達は見た。

そこには、先ほどまで酔っていたとは思えない程の、しっかりとした瞳で、こちらの方を見つめるシバミの姿があった。



  ナァー


猫は、彼らの事など気にもせず耳をかいていた。

 

******

 

「シルビアに何をしたぁ!」
激情に任せシバミはシバミティアでムトウに殴りかかる。
しかしシバミティアの拳はブルース・ドライブ・モンスターに易々と掴まれ地面に押さえ込まれた、片手でだ!?
スタンドの馬力、本体の戦闘力共に圧倒的な差があった。
「近距離型スタンドの割に平凡なパワーですね。水分を変質させる力も触れさせなければどうということもない、強敵をマグレで倒したくらいで思い上がらないでいただこう」
ムトウがシバミを冷たく見下す。
「うあああああっ!!」
瞬間シバミが叫ぶ、シバミティアがブルース・ドライブ・モンスターを振り切りムトウの腕を掴む!「なんだとっ!?」そのパワーとスピードにムトウは驚愕する。
自分の血液をアルコールに変える禁じ手を使ったのだ!後はヤツを倒した必殺の手で…「!?」
しかし、掴んだつもりの手は空を切る。あるハズの右腕はそこには無く!?ムトウの左手に握られていた。
「早トチルなっ!このボンクラがっ!!」
ムトウは左手で持った『切り離した自分の右腕』を鞭のように使い、2m先のシバミの横っ面をブチ殴り飛ばす!

「タチバナ!」佐藤が吹き飛ばされたシバミを空中で受け止め、クッションになった。
「相手は女の子なのよっ!」コウが咎めるが、ムトウが「差別はしない」と睨みつけ、戦慄させる。

ムトウ「ドルチ、アナタですね、先生を此処に呼んでしまったのは…」
ーーーにゃゃあぉ。
ムトウ「このムトウタチバナ、今この場の全員を同時に敵に回したとて、近距離戦闘により圧倒、殲滅し、能力を奪うことができる」

ゴゴゴゴゴ…。

ムトウ「しかし優しく説得してあげましょう、私は狂人ではないのだから」

佐藤、コウ(変態だけどな…)シバミ(ホモめ)ヒデエモン(てやんでぇ!)

ムトウ「私たちがスタンドを消す2つの理由。一つ、とても常人には解決できないような事件再発の危険を防ぐ為」

裕(もうしないよ…)佐藤(キミが一番危険なんだが…)ヒデエモン(てーやんでぇ!)

ムトウ「一つ、人為的に与えられた不自然な才能であること。それが先天的な物であれば個人の才能として黙認しよう、しかしこの青年のように読んだだけで何もかもを身につけられる能力、そんなものが誰かの意図により不自然に増え続ければ生態系のバランスは狂ってしまう」

コウ(ホモで生態系を乱してるくせに)シバミ(ホモめ!)ヒデエモン(てやんでぇ!てやんでぇ!)

ムトウ「そしてもっとも重要な一つ」

佐藤、コウ、ヒデエモン(3つ言った!?)シバミ(ホモめ…)裕(……あ、3つ目だ!?)

ムトウ「この一連の事件の首謀者の目的は『スタンド使いを増やす』こと、そしてその『スタンド使いを殺し合わせる』ことと推測できる」
コウ「あっ!?」
佐藤「スタンド使いはどういう訳か引かれ合う…スタンド能力を持っている限り命を危険に晒され続けるというわけか!?」
ムトウ「御明察です先生」
佐藤「この先、凶悪な敵を迎え撃つ覚悟と力量の無い者は、スタンド能力を手放して日常に帰るべきだ」
佐藤は最近心を通わせた二人の生徒のことを考えていた。あの殺人鬼にしてもサシでやっていたら勝てたか怪しかった、それくらい強敵だったのだカンベエは。もしそれ以上の敵に遭遇した場合とても助かるものではない。あの二人も説得する必要がある、愛する生徒を命の危険にさらしてはおけない。

ムトウはコウを振り返る「そこのビッチ…失礼、アナタも心配していた身の危険から解放されます」
コウ「……」
ムトウ「いつもだれかが助けてくれるとは限らない、私の見立てではこの先自分の責任で身を守る胆力を持っているのは佐藤先生くらいのものですが?本来ならさっさと消してしまう処ですがね、今回に限り先生の顔を立てて個人の意志を尊重しましょう」

ムトウは考えていた、サトヨシは「人を危険に巻き込みたくない」と言っている、ムトウは自分だけがサトヨシの助けになりたいと思う、しかしこれから方々で起きるであろうスタンド使いによる事件を鎮圧するのに二人と一匹では手が足りないのもたしか、佐藤先生には協力を頼みたい。
今回の件に先生の能力は向いている気がするし、何よりドルチが連れてきたという事は資格があるということだ。
『スタンド使いを殺す』ことが何者かの目的たるならば、一人でも多く『死なせてはならない』ムトウはそう考える。
「能力を手放して日常に戻り、当初の夢や目的の為に生きるのか?あるいは能力を持つ以上は納得いく回答を聞かせていただきたい」
ムトウは全員に選択を迫る。

シバミ、佐藤、コウ、裕、ヒデエモン、それぞれの未来を決断する時だ。

 

******

 

シバミの脳裏にはナガセと、彼女の仲間達、そしてザキの顔が浮かんだ。
『彼らは、首謀者のせいで命を落とした……ナガセに至っては私が殺した。そして私だけが生きのこった……』

だが……断る


シバミは沈黙を破った。全員がシバミの方を向く。

「私は……平穏なんて望まない。首謀者がいる限り、私も、ザキにも、ナガセや、その仲間にも、平穏なんて無い。だから……」

シバミは一息溜めて、言い放った。覚悟の言葉を……

「私は首謀者を倒す!!」

強い光が彼女を支配していた。それを表現するとしたら、これしか無い。


黄金の精神


「私は絶対に砕けない。ムトウ、どうするの?私のスタンドを消すの?」

ムトウは表情を作らない。じっとシバミを見ている。

「てやんでい!ここでシバミの姉御だけを行かせるなんざ、大工の恥じの恥じよぉ!」
「オヤカタカッコイイー!」

「あっしは着いて行くぜ、シバミの姉御!」
ヒデエモンの発言にカーペンターズは賞賛を送る。
また1つ、覚悟が生まれた。


「コウ、祐、貴方達はどうします?」

感情を感じさせない、金属のような声。祐はその声に震えてしまった。

「ぼ……僕は本を読めればいい!いいんだ!」

祐は思った。【もう、嫌だ】。それが彼の出した結論だった。

「私は命令されるのが嫌いなの。特に、男にはね」

コツコツとコウはシバミに向かって歩いて行く。

「だったら、女のリーダーの方が良いわ。これが決断よ」

シバミ、ヒデエモン、コウ、この3人に覚悟と、精神が生まれた。

「先生は……聞くだけ野暮ですね。貴方はどうせ、生徒を守るためにスタンドを残すのでしょう?」

ムトウは少し残念そうな顔をして、言い放った。

「私はもう貴方達には構いません。死ぬなり何なりと勝手にしてください。行きますよ。先生」

ムトウは足早に立ち去った。

『以前のムトウは、私にでさえスタンドを消しにかかったただろう。まさか……ムトウの中で何かが変わっているのか?』

『それを見守るのも教師である私の仕事だ』佐藤先生は小走りにムトウの下へと走って行った。


「シバミの姉御!どうしやす?」
「私のWWWなら情報を掴めるかも……」


「まあ待って」
シバミは二人を制す


「まずは親睦を深めるために飲み会よ!もちろん て つ や ♪」

2人は早くも後悔し始めた。



第3話『始まりのワルツ』
To Be Continued...   外伝『after koh』

                                                                               ・外伝『地球最後の日』

                             外伝『3話外伝』

最終更新:2008年01月31日 13:27