「ぽえ~ん。すたんどつかい さんにん」
どせいさんは一部始終をしっかり『観察』していた。
「すたんど ほんたい みつけた」
『死者を操るスタンド』の本体に辿り着いていた。
レッド/LA'rcーenーciel
「貴様もスタンド使いか…。『花葬』に処した後に『侵食』される快楽を味わうがいい・・・」
「ぽえ~ん」
ド ド ド ド ド ド ド ド ド !
どせいさんは3対1であったが、「勝つ見込み」はある程度見出せていた。ある程度は『危険な賭け』ではあるが…
「ぐんまけん」
「群馬県だとぉッ!?わけの分かんねえことを言ってんじゃあねえ、のっぺり顔!」
土星に気付いたジャンケルビッチが叫ぶ。
「ぽえ~ん」
その間にも、着実にレッドに歩み寄る土星さん。
ジャンケルビッチ、土星さん、レッド。その間、実に5メートル弱。
ザ・シャイニングワールドの能力ならば、一瞬で詰めることの出来る距離。
(あいつをやられりゃあのガキも共倒れだ…)
(さすがに3対2じゃ勝ち目は薄くなっちまう)
迷う間もなく、能力を発現する。
光にも迫る速度で、土星さんに走り寄り…
「こっちに くる あぶな…」
(訳:不用意に近付くと、危な…)
「うぉぉぉあッ!!」
「ぎゃうッ!」
新たな死者を呼び出さんとしていたL'Arc-en-Cielと共に、ジャンケルビッチの腕が干からびていた。
「…ぽえ~ん…」
(訳:だから言ったのに…)
すでに、土星さんの周辺には幾つもの透明な球体がふわふわと漂っていた。
「すたんど からから ぽえ~ん」
(訳:僕のスタンド能力、『サターン・バーレー』。それに触れれば、水分を吸収され、干からびる。)
「意味わかんねえぞ…!」
「だが…」
毒づくジャンケルビッチ。
既に周囲をガス球に囲まれている。
対して、レッドは平静を保っている。
「グッド!グッド!グゥゥーーッッド!!」
そして、缶けりを続けるトモロヲ。
「水分をもたないスタンドには…効果はないらしいな」
瞬間。
ドォン…
爆発が、L'Arc-en-Cielをかき消した。
「…ぐんまけん」
「ぐッ!!」
突然の出来事で防御が遅れるレッド。
壁に打ち付けられひるんだ為L'Arc-en-Cielを解除してしまう。
「チッ……だが、しかし!どうやらお前のスタンドは水分を吸うと遅くなるみたいだな!それなら俺のスタンド……で?」
サターンバレーを避けようとするジャンケルビッチの身体に異変が起きた。
「S・H・I・T!射程距離に入ったわ……貴方の両足を制御不能にする……もっとも能力を発動する為に近くに居たこのカエルを触らなくちゃあいけないのだけども……」
後ろから杏子の声がする。
L'Arc-en-Cielの解除=トモロヲのSKOOL KILLの解除!
捕らわれていた杏子達の魂も元に戻る!
「ぽえーん!」
土星がジャンケルビッチの水分を奪う為サターンバレーを近づける。
「く…クソがァァァァァァァァッ!!」
どう足掻いても動かない足とゆっくりとした動きで迫るサターンバレー……
--プツンッ--
極限に追い込まれたジャンケルビッチの中で何かが『キレ』た。
-ドカァーン!!-
その瞬間サターンバレーが爆発するッ!
爆発によりすっ飛ばされるジャンケルと杏子。
ジャンケルビッチはとっさに持っていたマッチでサターンバレーに火をつけたのだった。
「……おどろき もものき どせいさん」
(訳:爆発で移動……そして杏子さんの能力を解除するとは……)
土煙の中からジャンケルビッチがゆっくりと近付いてくる。
今度は小さめのサターンバレーですばやく攻める土星。
-ボンッ!ボンッ!-
しかし、サターンバレーはジャンケルに近付くことなく爆発した。
「ぐんまけん……」
「さっきからよぉ……テメー何言ってるか訳わかんねぇんだよォォォォッ!!群馬県がどーしたッてンだッ!!」
『空っ風』……
風が山を越える際、気温、気圧共に下がることによって、空気中の水蒸気が
雨や雪となって山に降る。
そのため、山を越えてきた風は乾燥した状態となる。
これを空っ風という。
「ぐんまけん」
土星は上を見上げ、そう呟いた。
「だから群馬県が……ッ!?」
ジャンケルビッチの言葉は、途中で絶句へと変わった。
彼の頭上……そこには、直径10mはあろうかという巨大なガス球が
いつの間にか浮かんでいた。
「なんだ……!? これは! いつの間にッ!?
いや! そんなことより……『ヤバい』! この、大きさはッ!」
「ぐんまけん」
(訳:群馬県……私の故郷であり、『カカア天下と空っ風』で有名な地方です。
上空高く舞い上がったガス球は、気圧の低下によって膨れ上がり、
雲から水分を大量に吸収する……
膨れ上がった状態で『水分』を吸収したガス球は、その『大きさ』を
保持したまま、水分の重みによってゆっくりと降下してくる……
この、『上昇して水分を含んでくる』という『概念』……!
『空っ風』と『真逆』の発想……普通は男が強い所を、女が強い『カカア天下』の
様に、『真逆』の発想です。
『サターン・バーレー』の『射程範囲』は30m。この範囲を超えると
操作できなくなるから、『風任せ』なのと、時間がかかるのが欠点ですが……
何とか間に合ったようです。
そして、知りたがっていたようですから、教えてあげましょう。
これが私の必殺技……!)
ゆっくりとガス球は降下し、ジャンケルビッチを飲み込んでいく。
「水がッ……! 水分が、失われる……ッ!
ちくしょう、火も水分が多すぎてつかねぇ!?
『ザ・シャイニン』……」
5mの範囲内での亜光速移動。それすらも、無駄だった。
ガス球の方が、遥かに巨大だからだ。
「ぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐんぐん……」
ぐんぐんとジャンケルビッチの水分が、ガス球に吸収されていく。
「『ぐんまけん』……!」
パァンッ! と、水分過多で弾けたガス球の後に残ったのは、
ミイラと化したジャンケルビッチの姿だった。
『ジャンケルビッチ ミイラになってリタイア』
「大した物だな…実際」
レッドは土星を見つめながら言う。
「私のスタンドを消し去りそこの娘とムトウを呼び戻し、厄介なトモロヲの能力を解除させた。そしてさらに邪魔をしてくるであろうジャンケルビッチの攻撃の対策も用意していたとは…『エクセレント』だよ…ふふ…」
土星は驚いていた。爆発で吹き飛ばされたにも関わらず目の前で悠々と話し始めるこの男は一体…と。
「死せる魂を操るこのスタンドを手に入れたとき…私は自分の『天命』を悟ったのだ。死者を支配することが私の『天命』であると。世の中の全てが死者であれば私の『管理』する『完 全 世 界』が完成するのだ。」
狂ったように話を続けるレッド。
「そんな愚かな理想の為にスタンド使いを増やし、殺し合わせるように仕向けていたのですか…。」
現れたのは…ムトウタチバナである。カンケリから解放されたものの、場所が離れていた為に少し時間がかかったがようやく到着したのだ。
「貴様にここまで早く接触する事になるとは思いもよらなかったよ。そこに居る男が居なければ全てトモロヲに倒されていたハズだからな…」
言葉を発する事無く身構えるムトウ。もはや聞く耳など持ち合わせてはいない。目の前にいる男にいかなる理由があろうともそれは自らの理想・信念とかけ離れたものであり、恩師の教えや愛するものの意志とも違うものであったからだ。
ムトウは「無敵の自信」を打ち崩され精神力が低下したはずだった。しかし「目の前の男」への苛立ちが。佐藤やサトヨシへの『愛』が。打ち崩されたものを更なる高みへと積みなおしたのである。

「『ブルース・ドライブ・モンスター』ッ!ピリオドを打つぞ!」
ド ド ド ド ド ド ド !
今までとは違う雰囲気がレッドを襲っていた。
「フフ…『無敵の力』を欲したわけではないが…。身についたものは使うしかあるまい…?」
フッとレッドは消える。いや、恐ろしい程のスピードで動いたのだ。
―ザ・シャイニングワールドの能力―
「何も『本体を呼ぶ必要は無い』ッ!私の「LA'rcーen・iel」は『本体だけならば夢の世界に飛ばすことが出来る』ッ!」
ムトウは笑う。その程度、自分のB・D・Mが見切れないハズは無いと。実際に完全に捕らえていた。が…
ス…!触ることが出来ない…。
―ヘヴィー・クライの能力―
「フフ…『1度に呼べる魂は一つじゃない』のだ。しかしこのままでは攻撃できないよなァ…?これが『完成』だッ!」
アオォォォォォォォン!!
雄叫びと共にB・D・Mは殴り飛ばされる。
―ムーン・ライダーの能力―
「LA'rcーenーciel」は高い攻撃力・スピード・防御力を兼ね備えたスタンドに変化したのだ。
「これが『極地』…『ネオ・ユニバース』…」
ド ド ド ド ド ド !
ムトウは『決意』を固めていた。生まれて初めてだが「冷や汗」をかいている。涙さえもにじみ始める。
「ぽえ~ん」
土星は最大までガス球を膨らませた。
「ありがとうございます。私の考えを理解してくれたようですね。そこのクサレビッチを連れて離れてください。」
「ぐんまけん」
そう言い残すと土星は気絶していた杏子を抱き上げその場から離れる。
「終わりだッ!ムトウタチバナ!」
ヘヴィークライの能力が切れるとすかさずレッドはムトウに襲い掛かる。恐ろしいスピードで。
「あなたの…負けですよ。B・D・M!」
ガス球を殴り始めるB・D・M。
分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!分解!
レッドは驚き、動きを止める。
「バカな…それは…ッ!貴様もッ!死ぬんだぞッ!」
ムトウは笑みを含む。
「あなたの言うように『天命』に殉ずるのも美しいものですね。」
分解されたガスは「水素爆発」を起こす。それもかなりの量が一気に分解された為にとてつもない威力で。
ズガオオオオオオオオオオオオン!!
近くのビルも大きく崩れていく…
「アイ・ルーズ・コントロール…」
レッドはその言葉を残して死んだ…。その後、杏子と土星が戻ってきた。そして佐藤達が到着し、レッドの死体を確認した。しかしムトウの死体は見つからなかった。どうにか生き延びたのか…レッドよりも爆発の中心に居た為に消滅したのか…。
そしてスタンド使い達は知ることになる。「完全世界」の理想を…レッドの遺志を継ぐものがいるということを…
レッド死亡:リタイア!
第5話「ぐんまけん―天命―」
to
be continued...