アタクシは『 剛 司 』と申します。
前座の落語家。 三十路男でございます。
この度、『レッド様、秀丸様』にくっついて、『 色々な悪事 』を行っております。
ここでのお話は、その『 悪 事 』。我ながら悪い事をしているなと思います。
ですが、勤勉な努力家故、レッド様、秀丸様から『 信 頼 』を得る立場になる事ができました。
さて、今回のお話でございます。
秀丸様が『 戦 場 』へと到着致しました。
そこで出迎えておりますのは、アタクシ『 剛 司 』でございます。
どうか、事の成り行きを、見守り下さいまし。
・・・・・・
「失敗したようだね、剛司。」
秀丸は、剛司に話しかける。
剛司は、俯(うつむ)いて、気を落としている。
剛司の顔にアザがある。
どうやら、『重力波を展開するスタンド使い』と『触れた物を二つに「分ける」スタンド使い』は、
ジョーイをぶつける策を見破り、難を退けたようだ。
だが、『策は 一 つ で は 無 い 』。
「レッド兄さんの居所は教えたのだろう?
トモロヲは『 惨劇を起こすスタンド』。彼等が見つける事も容易いだろう。」
剛司は答える。
「御意にございます。
『ジョーイくんは、息巻いて向かいました。』
上空を見上げると、『D・M・Q嬢』も確認致しました。
ジョーイくんを、追って行ったようです。」
「しばらくして、レッド様がいらっしゃいます方向で『 激しい爆発 』が起こりました。
どのような結果になったか計り知れません。
しかし、この両名。
『風を操るスタンド』に『箱に閉じ込めるスタンド』にてございます。
何らかの。『 想定外(死人が減ったりとか)』が起こりうる可能性が高いと思われますなァ。」
「報告は以上でございます・・・。」
「さて、秀丸様。」
「『一つ お 話 』がございます。」
秀丸は、少し怪訝に・・・。
「どうした。 剛司?」
と、問いかけた。
剛司は話を続ける。
「この度のお話。アタクシは『 悪事 』を行っております。」
秀丸は遮(さえぎ)るように。
「お前の仕事振りは見事。今回の失敗など、物の数ではないよ。
スタンドも使い勝手が良い。これからも、『役に立ってもらうからね。 』」
剛司は更に続ける。
「いえいえいえいえ。
『そう言った事じゃあ、ございません。』」
秀丸右眉は『ピクリ』と痙攣させ。
「君ねぇ・・・ッ。」
不愉快に言い捨てる。
そんな秀丸を、嘲笑うように。
剛司は『 ニ コ ヤ カ 』に言い放った。
「レッド様ッ!秀 丸 様 御 一 行 ッ ッ!
『 壊 滅 の 回 』で、ご ざ い ま す ッ ッ ! ! 」
「ご納得して、頂きたいのですが『 構 い ま せ ん ね ッ ッ ! ! 』」
秀丸は
「君ねぇ・・・。」
激怒を覚え、
「剛司ィィイ・・・ッ。」
そして『 言い放っ た ッ ッ ! 』
「僕 は ァ ア ア ア ー ッ ッ ッ ! !
裏切られるのが『 大 嫌 い な ん だ ァ ア ア ア ア ア ッ ッ ! ! ! 』」
剛司は変わらずニコヤカに答える。
「裏切りでは、ござい ま せ ん ッ ッ ! !
『全 て は ッ ッ ! !
ぐ ん ま け ん の 真 理 が 故 に ッ ッ ! ! 』」
・・・・・・
少し離れた場所で、静観をする男が一人。
「(土星さん。
アンタの策略は、ホントに見事だったぜぇ。)」
俺と剛司さんに言い渡した、
数年に渡る、レッド、秀丸一味へのスパイ指示。
昨日の掃除屋(バーレル、林檎)への連絡。
脅威的な掃除屋への対抗の為に、
俺は昨日、今回の『 トモロヲ作戦』をレッドに進言した。
だが、それは、土星さんの!
『レッド一味を討たんが為のッ!
長 年 に 渡 る 大 策 略 ! !』だったのさッ!!
全ては土星さんの手の平なのさ!
掃除屋は『 此処へは来ないッ!』
秀丸を『 この場で始末する為』に呼び出したのよ・・・ッ!
秀丸さんよォ。
凄腕の二人ってのはなァ・・・。
「『 俺 達 二 人 の 事 な ん だ よ ・ ・ ・ ッ ッ ! ! 』」
「君にとって。『 愛とは何だと思う? 秀丸?? 』」
静観をする男。
『MOTTY(モティ) 』は、静かに言い捨てた。
・『本体:剛司/スタンド名:サンドマン 能力:相手を眠らせる。』
・『本体:MOTTY(モティ)/スタンド名:True Rommance 能力:相手の能力を倍増させる。』
「愛、だって……? フンッ、何を今更。今まで僕を見てきた君達ならわかるだろ? 愛なんて所詮飾り。奪い、利用し、飽きたら捨てる。それだけじゃあないか」
「ンッン~ッ! わかってない、わかってないね~、秀丸く~ん?
どれだけ飽きても手に入れようとするのはな~ぜかな~?」
顔の前で立てた人差し指を、左右に振りながらニヤけた顔で言うMOTTY。突如真顔になり、続ける。
「『渇く』、からさ」
馬鹿にしたようなMOTTYの仕草に、再度激昂する秀丸。
「戯言はいいんだよォォッ!! そんなに渇くならお前たちの血だまりでビチョビチョのベチョベチョにしてやるぜェェッッ!!」
叫んで懐から板チョコを取り出し、思いきりかぶりつく。板チョコの割れる音とともに、秀丸の姿が掻き消える。
「どうだァァッ!? これからジワリジワリとお前らをいたぶってやるからなァァッ!! 僕を裏切った罰を存ッッ分に受けてもらうぜェェェ!!」
秀丸の声が、後ろからと思えば、前から。左からと思えば右から聞こえる。
神隠しで自らを消した後、幻聴で相手をかく乱。
さらに幻覚と鬼火で方向感覚を狂わせる。
「死ィィねェェェッッ!!」
秀丸のスタンド、鎧武者の姿をしたSuite YoshituneがMOTTYに、再び現れた秀丸が剛司に、同時攻撃を仕掛ける。
「サンドマンッッ!!」
「True Romance!!」
剛司のスタンド、サンドマンが鎧武者の前に現れる。鎧武者の刀は、サンドマンの持っていた袋に当たり、「砂」をぶちまけた。そこにミルク色の霧が立ち込める。剛司のTrue
Romanceの能力によって「砂」が倍増。秀丸のスタンドだけでなく、本体の秀丸自身も「砂」の標的になる。
「さぁてスタンド共々『砂』を浴びた秀丸。『秀丸壊滅の回』、そろそろ幕引きとさせていただきましょうかッ!!」
「……いや、鬼火がまだ消えていない。秀丸は恐らくまだ眠っていない」
MOTTYの言うとおり、まだ辺りには鬼火が漂っていた。
――――――
少し前。デュカは迷っていた。
「でも、秀丸さんどこに行ったのかな……。行き先も言わずに行っちゃったし……」
廃マンション付近から離れ、少し歩いたところで、途方に暮れ、立ち止まるデュカ。
「どうしようかなぁ……」
ガードレールにもたれながら、見るでもなく空を見上げる。
不意に、少し離れた所から、爆発音が響いてきた。
「……秀丸さん?」
「言っただろォォッ? 裏切った罰を味わってもらうってなァァッ!!」
神隠しから現れたと見えたのは、秀丸のドッペルゲンガーだった。
スタンドを一旦解除し、現れた秀丸はSuite Yosituneを再度発動、必殺の居合を放ち、剛司をとらえた。
「予告通り、罰は味わってもらったよ、剛司」
「いや、それにはちょいと時間がございます」
切られたはずの剛司の姿がかき消えた。
「鬼火が残っていましたんでね。今切ったのは、MOTTYさんのTrue Romanceで増幅したドッペルゲンガーにございます」
剛司の言葉を聞き、チョコレートをかじる秀丸。
「全く困ったものだよ剛司、MOTTY。僕は一度仲間と認めた相手は、困った時にはどうにかしてやる、と決めているんだ。
……わかるかい? こういう『困った』奴らは絶対に『どうにかしてやる』んだ」
すーわーまーいーあーがれー♪
場違いな曲が戦場に流れた。
秀丸の携帯だ。メールの発信相手は「逅歌 望(ぐか のぞみ)」。
見ている暇はない。すぐに携帯をしまう。
「オアツイねえ、秀丸。でも安心したまえ。アンタを倒した後は、俺がタ~ップリユ~ックリ楽しんでやるからよォォォ」
「黙れMOTTY。僕が罰を与えてやる」
秀丸の言葉に、取り出した扇子で太ももを叩いた剛司が言葉を継ぐ。
「お話の興が覚めてしまうじゃないですか。そろそろ落ちをつけさせてもらいますッッ!!」
突きのラッシュを放つサンドマンと剛司。
サンドマンは本来パワー型ではないが、MOTTYのTrue Romanceがパンチを『増幅』。
増幅された連打が向かった先は。
「デュカ!! 何で君がいるんだッッ!!」
「え、何ッ!?」
「先に邪魔者を排除させていただきますッッ!!」
爆発の方向に向かう途中で秀丸の声を聞いたデュカが、メールの返信がないので心配して近づいて来たのだが、先に気付いていたのは剛司だった。剛司のラッシュがデュカを襲う。
「グァアァァァッッ!!」
殴られたのは、秀丸のスタンドだった。思いきり吹っ飛ぶ重傷の秀丸。
「愛なんて……飾りなんだけどね。飾るからには……綺麗に飾りたい。……そう、思うよナァ……?」
満身創痍で、デュカに向けて秀丸は必死に微笑む。
「昔から病弱な僕に、こういうのはガラじゃないんですけど……、これで、少しは本当に心が奪えたか……な……?」
「秀丸……さん……。何で……? 私のこと、いじめて、閉じ込めて、何でこんな人好きになったんだろ、って思ったのに……。秀丸さん……何でッッ!!」
悲痛な叫びが響き渡る。
「今度こそ、『秀丸壊滅の回』、終了でございます」
デュカには、何が起こっているのかわからなかった
秀丸は傷だらけである
そして目の前には、秀丸の仲間であるはずの剛司が対峙している
秀丸はゆっくりと立ち上がりながら、考える
(デュカはこう思っている…
『現状を理解はできないが、重要なのは「愛する」秀丸さんが襲われ、傷を負っているということ
そして自分は秀丸のために戦わなければならない』
…と。)
そしてその考え通り、デュカは泣きそうな顔で戦闘態勢をとる
しかし秀丸は言い放つ
「君はこの場から去りなさい」
「で…でも秀丸さんッ大好きなあなたがこんなにも傷ついているのにッッ」
秀丸はデュカの頭にそっと手を置く
そして少し寂しそうな目をして、言った
「さよならだ」
簡単なことだ
洗脳を解けばデュカはシンを思い出す
同時に、ひどい仕打ちをした僕を憎むだろう
そんな僕を助ける義理などないのだから、安全な場所へ逃げてくれればいい
ズキュゥゥゥン
デュカの中に、シンとの思い出が甦る
「あああああッッ…
こ…
これはッッ!!」
「僕は…君の心を操っていたに過ぎないんだ、デュカ…」
「私…そんな…」
デュカが次に言葉を繋げようとした瞬間
「御喋りはその辺で終わらせて下さいますかッッ」
剛司が二人に殴りかかる
「早く逃げろッ!」
秀丸はデュカをかばい、またも攻撃をその身に喰らう
ドグッシャァァッ!
「うぐああああッッ!」
「秀丸さんッ!」
「…何をしている?早く…逃げるんだ…」
「どちらも逃がしませんよッ」
サンドマンの拳がデュカを狙う
「くそッ組曲義経!!」
神隠しにより、デュカは一瞬でその場から姿を消した
気が付くとデュカは、はじめに秀丸と出会った廃マンションにいた
横には秀丸がいる
「秀丸さんッ?わ…私ッ」
「デュカ…君の心には僕への恋心の欠片が残っているかもしれない
だがそれは単なる作られたものだ
君は僕を憎んで当然なんだよ…」
でも!あなたは私を守ってくれた!!
その言葉を告げる前に、ドッペルゲンガーだったのだろう、秀丸の姿は消えた
「余計なことをしてくれて…」とMOTTYが呟く
「あなたを殺した後!あの娘も殺してさしあげますよッ!!」
秀丸は二人を睨み付ける
「お前達がデュカに会うことはない!
ここで死ぬからだッ!!」
「そのボロボロの体で何ができるんでござんすかねェェェッッ!?」
歪んでいるんだ
僕は歪んでいる
妬ましかったのかもしれないね
シンとデュカの真っ直ぐな愛情が
僕の歪んだ愛情は
シンを殺して
デュカを支配しようとするものだった
デュカの洗脳を解いた今
もう会わせる顔は無いよなァ
だから
最後は
最後だけは
貫き通そうと思うんだ
この真っ直ぐな気持ちを
デュカを守りたいという気持ちをッッ!!
「そのためなら僕は喜んでこの命を捨てよう!!」
秀丸の周りを、数え切れない程の鬼火が取り囲む
ド ド ド ド ド ド ド ド ド
「組曲義経…」
「死になさいッッ!これで『終幕』でございますッッ!!」
True Romanceの能力により倍になった剛司の拳のラッシュが秀丸を襲う
「『組曲義経-来世邂逅-』」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
「うぐゥッ!?」
その拳が秀丸に届くことはなかった
その足には無数の針が突き刺さっていた
「足元を見ろよ…そんな針山に踏み込めるのかい?」
気が付けば、秀丸と剛司、そしてMOTTYの三人はこの世のものでは無い光景に包まれていた
地獄である
「こ…これはッ!?」
驚く剛司とは対照的に、MOTTYは言う
「剛司…慌てるな、幻覚に過ぎない…隕鉄との戦いでも見せていた」
「幻覚…?
違うねッ!」
ガシッ
MOTTYの足が何者かに掴まれる
「何ッ!?」
その腕は、地面から生えるように伸びていた
そしてさらに無数の腕が地面から現れる
「こっこれはッッ!?
く…剛司ッ!サンドマンで奴を眠らせろッ!!」
「無駄だよ…
僕を眠らせたところでもう遅い
この数え切れない腕は、僕のスタンドじゃあないし
まして、生き物ですらないんだから…」
腕は体中を掴んでくる
「く・・・くそッ・・・引きずり込まれるッ!!!!」
「この地は昔合戦場だったらしい
彼らが
君たちを呼んでいるのさ…
もっとも
僕もその例外ではないのだけどね…」
三人の体が見る見る地面に引きずり込まれていく
「ちくしょおおおッッッ」
「アタクシにはまだ…夢がッ…」
「夢か…『来世』でかなえるといい
ま、そんなものがあればだがね」
『来世』があるなら
その時は最初から、真っ直ぐな僕で
デュカ…君とまた巡り会いたい
剛司・MOTTY・秀丸:死亡
誰もいなくなった戦場―
けたたましく携帯の着信音がなり始めた。
「もしもし…ハイ。…今確認しました。」
「7人です。といっても爆発に巻き込まれた2人の死亡を確認することはできませんでした。」
「…ハイ。…まだ私たちの出る幕ではありませんよ。」
「あなたの出番はまだまだ先の事です。」
「…今『掃除屋』が『廃マンション』の方へ向かっていきますが、始末しますか…?」
「…ハイ。わかりました。放っておきます。」
「ところで『シン』とかいう小僧…スタンドが『進化』しています。『成長』というレベルじゃあありません。」
「『ナガセ』の時とは違い精神も安定してます。」
「…彼を射りましたね?」
「その『進化したウィルス』を宿した『矢』で…」
「皆が血眼で探すわけですね…。」
「『進化したスタンド』。欲しくない者はいないでしょう。」
「…ハイ。そうですね。私たちはまた潜みましょう…。」
「ではすぐ戻ります…。――――。」
上空を飛ぶ飛行機の轟音が声をかき消した。
携帯をしまい雑踏の中へ消えていった。
今年の誕生日は土曜日だった。
家に帰ったのは月曜の早朝で、お父さんもお母さんもすごく心配してくれていた。
そう、あの後私は秀丸さんの家に行き自分の荷物を持ち、廃マンションへ向かった。
でもそこにはなにもなく全てが砂になっていた。
シンが望んだ、最高の腕。
何があっても壊れない、全てを砂に変えてしまう
全てを砂に変え、バラバラにする――。
「シン~……ッ!!」
まるで世界の終わりを自分がつくったようなそんな、悲しい場所だった。
だけど、それはシンの最後の場所だった。
キャラメル・ミルクではなく、自分の記憶でシンを作る。
シンを作る。
シンを作る。
……………
狂ってしまいたかった、狂うことさえできなかった
気持ちを操作されていたとはいえ
シンが死んだと伝えられた時も
シンが私といない、もう“会 え な い”と悟った今も
涙が流れない
「今日は学校休みなさい」
両親に甘えて私は、一人で二人のことを考えていた
もう、会えない二人
好きだった…二人
例え理由がなんであれ、喪失感には変わりはなかった
ピーンポーン
呼び出し音が響く
――出たくない
ピーンポーン
デュカちゃ~ん
聞きなれた声
シンのお父さんだった
どうしたんだい?その顔
よほど酷かったんだろう、だから休ませてくれたのかもしれない
体調悪かったかな?ごめんね
おじさまは謝りながら、あるものを渡した
手紙と
簡素な包みに入った
ブラウニーケーキ
シン、事故にあったらしくてさ
それを代わりに渡してくれって今朝頼まれてね
……今朝
意味を理解するのに
時間が要った
おじさまッ、今なんて言いましたッッ!
シンは生きてるんですかッ!
ん?あぁ?動けないけど命に別状は…デュカちゃん?
ぼろぼろと、なみだがあふれる
ぼろぼろと、なみだがこぼれる
会いたい
会えるんだ、シン
会いたいよッ!!シン!!
私の涙は止まらなかった
第七話 「I want to meet you.」
to be continue...