ゴポゴポ…ブルブル
(え?何してるのか?と?このクサレ売女に朝から番まで監視されて鳥肌が立っているんですよ。おまけに他に「コノ部屋」入ってくるのは女好きの不潔な男性…コレではこちらがどうにかなってしまいますよ。)
ERの「隠れ家」。病院の地下にあり、ERとその監視役・シルビア以外に存在を知るものはいない。
現在「ムトウタチバナの頭部」が保管されている。
ゴポゴポ…ブルブル…
(嗚呼…私の体はドコへ行ってしまったんでしょう…あそこまで美しい体だ…いつどこでクサレビッチ共の汚れた手で触られてやしないか…嗚呼…サトヨシ…先生…)
「ムトウタチバナの頭部」は現在謎の液体に浸かっていた。しかしERが部屋に入ってくると彼は急に液体をケースから抜き始めた。
ジャバジャバ…
(ん?この水槽からだしてくれるのですか?ありがとう不潔な男性…お礼を言いたいのですが口が無いので言えませんね。)
タチバナは片方しかない目でERを見つめた。
「そんなに見つめるなよ。君が誰かは知らないが…ココに置いておくのが危険になってね。少々危険だが…『引渡し』をすることに決めたよ。」
(『引渡し』…?まぁここにいるよりは『復活の可能性』が出てくる…)
ERは『頭部』を別のケースにしまうとシルビアに渡した。
「頼むよ。シルビア。君が監視するのは…私ではなくこの『頭部の彼』だったんだね。」
シルビアは問いに答える事無く隠れ家を後にする。
「さて…そろそろ出てきたらどうだい?」
物陰から男がスゴスゴと出てきた。
「君は…私の担当の患者だね…?たしか…『モリー』…さん?ここは患者さんは立ち入り禁止なんだがね…。」
モリーはスタンド能力をもってはいたが以前から病気がちでこの病院に入院していた。そして監視していたのだ…ERを始めとする「病院のスタンド使い」達を…
「先生ェ…どうやらオレの目的に気付いてるようだなァ…回診の時とは違う鋭い『眼』だ…ちょっとブルッたぜ…。しかしながら…オレも随分待たされたんでなァ…アンタを倒してさっきの女を追わせてもらうぜ…ッ!それが『尖兵』としての俺の役目ッ!『覚悟』を決めな…ッ!」
モリーはスタンドを発現させる。
「私は『戦闘向き』じゃあ無いんだがね…表に出ようか…?ここにある『私の興味』を壊したくは…」
ドスッ!
ERの腕に『メス』が刺さる。モリーの左腕にはメスが握られ、右手には穴が空いている。
ERが倒れたときに棚の中にある『ERの興味』がいくつか壊れた…
ド ド ド ド ド ド ド !
「先生よォ…?わかるかい?俺達ァ今…『命のやりとり』してんだぜェ…?それに俺は今・『覚悟』は出来てるのか?ッて聞いてる…。答えは『Yes』or『Yes』だ…アンダスタン?」
ERは血を流す…深紅のそれは肩から腕にかけて滴り落ちる。
「『私の興味』は君などには無いよ…だから『覚悟』なんてものは君だけがすればいい。私がココで倒れれば病院内の患者の命に関わるッ!(それに『眼福』を味わうことも出来ないしねッ♪)」
モリーは『Yes』以外の返答に目を血走らせる。
「テメェェェェェェ!!『Yes』or『Yes』だッツってんだろーがァァァ!?『モンキィィィィ・マジィィィィック』!!」
ドンドンドンドンドンドン!!!
モリーはメスを乱射する。ERはかわしながら少し距離をとり、スタンドのパワーで高圧の血を飛ばした。
シュビィッ!
モリーの目の近くを霞める。
「くッ!?こいつ…この『強さ』ッ!?『背負うもの』が精神力を高めているだとッ!?だがな…俺にだって…『負けられない理由』ってもんがあるんだよォ―――――――ッ!!」
モリーは『病弱』という言葉が嫌いだ。『病』を持っている自分が『弱い』とさげすまれているようで。生まれつきそうであったモリーは、それが母への侮辱とさえ受け取った。携帯電話やパソコンなどに現れる文字でさえ腹が立った。幼少の頃からの『劣等感』はやがて『トラウマ』となり、限界を超えた『憤怒』となってモリーのいスタンド能力を強化していた…。そこへ女が現れたのだ。
―私の力でこの世から『病弱』なんて言葉消してあげる―
モリーはそれを条件に『尖兵』となり、病院で気を伺いつづけたのだ。入院患者として。それさえも『耐え難い屈辱』であったが『憤怒』の浄化の為。モリーは『尖兵』となった。
「ぬああああああああああああッ!」
Monkey Magicの発射スピードが上がる。ERの体を徐々に捕らえ始める。
傷口の血を『凝固』させながら距離を詰めようとするER。
(あの『顔の傷』から入った『私の血液』を『凝固』させることができれば…ッ!戦闘不能にできる…ッ!)
モリーはメスを捨て、部屋にあった『別の何か』を右手に持った。
キィッ
掴んだ「何か」から、鋭い悲鳴があがる。
「それは…ッッ」
そう言ったERの視線の先には、一匹のリスザルの姿があった。
いつの間にか彼の『興味』に紛れ込んでいたようだ。
「さ…猿だとぉッッ?!」
さすがに予想外だったのだろう。
モリーの手から、猿を持つ力が緩む。
キキィッ!
「な…なんだとぉっ!」
刹那、猿の目が光ったかと思うと
「これは…私…?スタンド…か?」
ERの眼前に、ERがたたずんでいた。
【ルピ/Westward Odyssey】
(私の任務はタチバナの監視……)
(Dr.ERの生死は任務には関係ない……関係ないのに……)
シルビアは隠れ家を離れながら想っていた。
今まで、感じた事の無かった感情。
―――いや、過去に一度だけ……。
(スケベでサイテーなヤブ医者だけど……)
(たくさん話してくれた……心配もしてくれた……優しくしてくれた……)
(そして何より……暖かかった……ッ!!)
しかし、スタンドが出せない彼女にはERを助ける事など出来ない。
もし、それでも助けに行こうものなら、自分の任務さえも危なくなる……
『無力』と言う言葉がシルビアの頭に響き渡る。
しかし、それでも彼女は足を止めはしない。
今はERが託してくれた物を『引き渡す』事が彼女に出来る最大の行動だから……
「……あ」
「……え?」
―――過去に一度だけ……。
暖かい感情に包まれたことがあった。
いや、正確にはもっと過去にもあって忘れていただけかもしれない。
(会ってしまえば、私は貴女に甘えてしまう……)
(こんな感情は切り捨てないと……)
(そう、思って今まで会わないようにしていたのに……)
忘れていた……。
いや、忘れようとしていた。
暖かい気持ちに気付かせてくれた人。
「シバミ……」
シルビアの押し隠していた感情が頬を伝う。
「先生を……助けてッ!!」
状況が上手く飲み込めないシバミ。
感情の押さえが利かなくなったシルビア。
そして、その後ろには……その二人を見つめ何かを考えるコウの姿があった……。
「シルビア!? 落ち着いて!! どうしたっていうの!?あなたは、、無事なの? 今まで、どこに、、」
シバミはシルビアのただなら状況に困惑もしたが、、それ以上に心には熱い感情がこみ上げていた。
それは、再会の喜び
(やっと、、会えた! シルビア!!
もう、一人でどっか行くなんてさせない!
あんたを、こんな風に悲しませたりさせないから!)
シルビアはシバミに訴えた
「先生を、、Dr.ERを、、、ッ!! お願い! 私じゃ、、何も、出来ないから、、!」
「Dr.ERだって!? あのエロ医者がどうかしたの!?」
「おそらく、、敵のスタンド使いの襲撃をうけたのね、、。」
シバミの背後から、コウが声をかけた
側ではW・W・Wがケーブルを無数に広げ、周囲から情報を入手し始めている
「コウ、、敵だって、、?この周辺に敵スタンド使いの影は存在しないって既にW・W・Wで調査済みじゃあ、、!」
「ごめんなさい、、シバミ。検索不足だったみたい。 敵は私たちが来る前からこの病院に入院していた患者のようね。 場所は、、、この病院の、、地下よ、、!」
「地下、、、。私、行くわ!! ERを助ければいいのね!シルビア!!」
シバミを見つめ、うなずくシルビア。 しかしその涙は流れたまま、、
「ごめん、、なさい、シバミ。 私、貴方に迷惑ばかりを、、、、!」
「、、、、、、、、、えいッッ!」
ドスン!
「----ッッ!??」
シルビアのおでこにシバミの平手チョップが炸裂した
「シ、、シバミ??」
「えへへ、、涙は止まった?? 別に迷惑だなんて思ってないよ。私、シルビアにまた会えて嬉しいんだから!!後で絶対乾杯ねッ!未成年だから無理だとかは言わせないよー! あ、そんなに痛くなかったでしょ~。手加減したのよ。」
(お酒は成人してからです。シバミを見習ってはいけません。法律は守りましょうね。(笑))
にっこりと微笑むシバミ。 その笑顔をのぞき込むと、シルビアの中の曇り空が晴れていく様だった。
「あ、、、、、うん。 ERを、、、お願い。」
シルビアは、久しぶりに心に温かいものを感じた。
とても、、心地よい、素直に受け入れてしまいたくなってしまう、温かいもの。
まだ、全てを受け入れる勇気はないが、、少しだけなら、、甘えてしまいたくなるこの気持ち。
( 、、、、ありがとう。 )
(でも、、結構痛かったわ、、。シバミ。)
「シバミ!私も、、、、くッ!」
同行しようとするも、隕鉄にやられた傷を押さえて苦しむコウ
「コウ!あんたはまだ駄目だッ!傷が癒えてない!!」
「だけど、、。」
「コウの姉貴はまだ休んでてくだせぇ!」
「やっぱ、泣いてる女の子はほっとけないしね。」
いつの間にか、コウとシバミの背後に2人の男が立っていた
「ヒデエモン、、ザキ、、! 傷はもういいの!?」
「ああ、何故か、、腕の回復が異常に早いんだ。もう痛みもあんまりないし、これ以上シバミ一人に無理させれないしね。」
「おなごを守るのは、男の務めでぇ!ちょっとぐらいの怪我でへたばってなんかいられねぇってもんよ!」
仲間、、、
シルビアは彼らの姿を、そういうのだと思った。
(、、いいなぁ。 仲間、、か。)
「わかったわ。じゃあDr.ERの事はお願い。私はこの子と一緒に安全な所に避難するわ。」
「お願い!コウ!!それじゃあ、シルビア!またあとでね!!」
地下へと書けていくシバミ達
その姿を見送るコウにもう痛みに苦しむ様子はなかった、、、
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
「さぁ、、行きましょうか。シルビア?」
「 ? え、、、ええ。」
「何ィ…『二人』ッ!?」
慌てたモリーは、リスザルを取り落とす。
「…本体を二人に増やす…『能力』かァ~?」
モリーは、目を細め二人のERを見比べる。
「その通り。偽物の私が攻撃を受けても、
本物の私にダメージは無い…と、言うわけさ」
言いながら後から出た『ER』が、ERに軽くウィンクした。
(この能力…まさか、ルピがスタンド使いだったとは、なぁ)
平静を装いながら、ERは、動物実験から救ってやった
小さな友人の事を考える。
今は…どこかの影に、隠れているのか?
(しかし、それにしても…)
顎に手を当て、
(なかなか男前じゃあないかやっぱり私は!
今のウィンクなんか、看護婦のハートをワシ掴みに違いないぞッ!
やっぱりこの渋みがたまらんな!
よし、次の昼休みはこの流れだ。
ウィンクして、ワシ掴み。
ウィンクして、ワシ掴…ッ!
ワ シ 掴 み ッ ! ! )
両手をワサワサと動かすER。
それを呆れた目で眺める、『ER』…。
「ニヤけやがって…
馬鹿にしてんのかあァ~ッ?
俺が貧弱だと思って馬鹿にしてやがんのかァァァ~ッ!」
叫びながらモリーが手にしたのは…薬瓶ッ!
「おっとモリー君…医者として忠告しておくが、
薬品は用途・用量を守って使うものだぞ?」
言いながら、さり気なく間合いを詰める、その顔面を、
「黙れッ!俺は…病人じゃねえんだッ!!」
複製、発射された薬瓶が直撃ッ!
…しかけたその寸前、『ER』の姿はカキ消えた。
壁に当たり、割れるガラス瓶。
(むぅ。こりゃいかんなあ…
今持ってるのはただの食塩水だから構わんが、
手当たり次第薬品を投げられたら、
何と何が混ざるか知れた物じゃあない…)
顎をいじりながら考えるERの傍らに、再度現れる『ER』。
(む、剃り残し…)
指で摘んで、抜く。
(痛ァッ!
……ふむ。
モリー君のスタンド…発射される手と複製される手は…
『固定』されているのか…?
左右入れ替えは利かない…発射は、右手のみ、か?)
不意に、モリーの右手側に走るER。
一拍遅れて、逆側に走り出す『ER』。
「これだから医者は嫌だぜ…自分がアタマいいからって…
病人がアタマワリィとでも思ってるのか?
さっき消えて出たのが偽物で、テメエが本物に…
決まってんだろうよッ!」
乱射される薬瓶ッ!
「液体が詰まったガラス瓶は、ただの石よりも
ある意味でより『凶器』だな…
直撃すればッ!
『 打 撃 』プラス『 斬 撃 』、
イコール 『 惨 劇 』ィッ!」
「くぅ…ッ!
こりゃあキツイッ!」
(だが、私が囮になり…
安全な反対側から、もう一人の私が…)
モリーが滑らかに手を動かした。
全く目を、顔を、脚を、動かさず…腕だけを『ER』に向け、撃つ。
「う、ぉぉおおッ!」
肩をまともに直撃…吹っ飛ばされる『ER』。
「ちょっとブルったぜ…
自分がアタマ良いって思ってるクソ医者野郎を出し抜くのは……
ブルッっとくる快感だぜッ!!」
どこかで、リスザルの悲鳴が聞こえた。
また、不自然なほど滑らかに、照準を戻すモリー。
「油断してんだろ?
俺が手にしてるのがただの食塩水だから…
あのリスザルのスタンドが回りこんでるから…
油断したんだろォ~? 『 オ イ シ ャ サ ン 』よぉ~~…」
スタンドが左手の瓶を放り投げ、別の瓶を手にする。
(バ、馬鹿なッ!
分身の私がルピのスタンドだと最初から気づいていたのか?
そしてマズいぞ…アレは即効性の筋弛緩剤ッ!
傷口から少量でも体内に入れば…)
「動く事すらままならなくなる、だろ?」
「な、なぜだッ!?」
「この部屋の情報はよ、ツツヌケだぜ、俺には……」
彼のポケットの中に、通話中の携帯電話がある事を、ERは知らない。
「そして俺のオフクロは、
医者が『ただの風邪だ』と油断したから死んだ…
油断するようなオイシャサンはよ……」
ERの頭上を狙う、モリー。
恐らくは、どこを狙えばERが避けられないか……
『計算済み』、なのだろう。
「必要無いよなァ、病院にも、この世にもッ!!」
「全く…君は健康体じゃあないか…。元気いっぱい暴れまわってくれちゃって…」
ERは急いで傷口を『凝固』させる。目眩がしてきた。恐らく血が足りないのだろう…。
「コレで終わりだ先生ェ…。アンダスタン?」
ERは口元を緩ませる。
「どうかな?打ちこんできてみなよ?『教えておいてやる』。私の『血液』は限界だ。もう先ほどのように『圧』で飛ばしたりは出来ない。」
(なんだと?動揺を誘っているのか?いや…『あと一撃』…打ちこめば終わりのはず…。それとも何か勝算があって…?ええいッ!くだらない!ハッタリに決まっている!)
モリーは少し目を血走らせERを見た。
―笑っている―
(なんだとォォォ~~~~~!?なめやがって!消えろッ!)
「『モンキィィィィィ・マジィィィィィック』ッ!!」
ドドドドドドドドド!!!
全弾命中ッ!「ER」はその場に倒れる。
ヒタ…
モリーのこめかみに後ろから何かの手が触れた。
「化かし合いは私の勝ちだ…ルピ、頭のいい猿だねキミは…」
「キィ」
モリーはサーっと血の気が引いた。
「な…なんだとォォ!?なんで…てめェ…そこにッ!?」
「簡単な話さ。始めから『キミが本物だと思っていた私』が『ルピのスタンド』だっただけ…。ルピは『生き残る為』に私に力を貸してくれたのさ…」
ERはスタンドの力を込める。
「『覚悟』は出来てるんだったよな?答えは『Yes』or『Yes』だ。キミの『頭の中に入った私の血液』をッ!『凝固』させ『血栓』を作るッ!」
ビシィィィィィィッ!
「あ…う…ッ…!な…何…!?」
モリーは倒れる。
「『脳の血栓』…ウチの脳外科は優秀だからこの程度なら問題はないだろう。そして…『病弱』という言葉を憎む前に自分の『病』を憎みたまえ。その方が治りも早い。『病は気から』だ。『アンダスタン』?」
「…フ…先生…ありがとう…俺の『尖兵の役目』は終わりだが…『尖兵』は俺だけではない…俺を誘った『女』がいる。名前は『コウ』…気をつけ…ろ…」
ガクっとモリーは意識を失った。
モリー/戦線離脱
ガクっとERの膝から力が抜ける。
「く…ぅぅ…輸血が必要だな…。トマトジュースが飲みたい…それに外科のあのナースの尻がけしからん…」
ERは意識を失った。
―――――――
「…者ッ!エロ医者ッ!」
ERは目を覚ます。目の前にはいつもベロベロの面会人。患者・ザキ。そしてベロベロの面会人と一緒にくるガテン系の男。
「何故…?ここが?」
「シルビアに頼まれて…ヒデエモンの『カーペンターズ』がここを探し当てたわ…」
シルビアが…余計なことを…ん?
「シルビアはどうした?」
「今はコウと一緒に…」
ERの顔色が変わる…まずい…
(どうやら全て掌の上だったようだ…『コウ』もまた『尖兵』…ッ!追わなくては…『あの男の頭部』が狙いなのか…?それとも別の何か…?)
ERはフラフラと『隠れ家』を後にする。
「ちょッ!?あんたドコへ…!!ああ!もう!ザキ!ヒデエモン!行くわよ!」
シバミ達もERの後に続くのであった。
「まったく・・・トマトジュースを飲むヒマすらないじゃあないか」
ふらつく足取りで、病院を彷徨うER。
シルビアの居場所など、見当もつかない。
「・・・そうだ。」
ふと、歩みを止め、追従するシバミたちに声をかける。
こいつらなら、知ってるんじゃぁないか?
「そこのオッサン。売店に言ってトマトジュースを買ってきてくれ。隣の若いのは、誰か看護婦を捕まえて輸血用血液を。何型のものでもいい。Dr.ERに頼まれたといえば、出してくれるはずだ。」
矢継ぎ早に(しかも、全く関係のない)指示を出す。
「・・・君は・・・」
ふと、シバミに目を留め、
舐めるように観察。
「よし、ナース服を着て・・・」
すぱぁんッ!
言葉の途中で、シバミの平手がERの頭を打つ。
「・・・・痛いじゃないか。」
「ふざけてないで、早くシルビアを助けに行きなさいよッ!」
「そッスよ~」
「てやんでぇ」
冷たい視線を送ってくる三人に囲まれるER。
四面楚歌である。
「・・・・大体、私は彼女がどこにいるかすら知らんのだが」
三人の額に、青筋が浮いた。
「お嬢さん……その、大事そうに抱えている物って何かしら?」
不意に立ち止まりシルビアに迫るコウ……。
「(この女……何かさっきから様子がおかしい……)」
異変に気付き警戒していたシルビアは更にコウとの間合いを取る。
「……フフ……物分りが早い子って嫌いじゃあないわ……これで素直だったなら、尚グッドなのだけれど?」
更にシルビアに迫るコウ。
壁を背にしたシルビアは追い詰められる!
「シルビア……確か貴女には『抹殺命令』が下りていたわね……まさか、あのエロ医者に匿われてるとは思わなかったけど……」
すべてを見透かす様な目で見つめるコウ。
「……それとも他に『協力者』が居るのかしら?」
その言葉にシルビアはビクッとした……。
(いけないッ!『あの人』の事がばれると『あの人』まで危険な目に……)
その一瞬の動揺をコウは見逃さなかった!
「ワールド・ワイド・ウェブッ!シルビアの携帯を検索……ッ!?」
スタンドを出す為、振り上げた腕が掴まれる。
「……その必要は無い」
「チャー!?どうしてここにッ!?」
【本体:チャー スタンド:ルイ・アームストロング】
「チャー?どう言うつもりなのかしら?」
腕を掴まれながらもコウは冷静に返す。
チャーは腕を放すとシルビアとコウの間に入る。
「こういうことだ……」
「そう……『協力者』は『裏切り者』でもあったということね?」
静かにコウはチャーを見据える。
「チャー!だけどそんなことしたら貴方まで危険にッ!」
「……今まで、我輩はずっと考えていた……」
チャーはシルビアを見つめ顔を曇らせる。
「我輩は明るい『未来』を信じて『神』に従ったッ!
……だが、現状はどうだッ!?
何故、こんなことをせねばならぬッ!?
何故、子供が血を流さねばならぬッ!?」
チャーはシルビアを殺せと『命令』されていた。
だが、彼はそうしなかった……。
しかし、殺さなければ『反逆者』として自分が狙われる。
だから、シルビアをERに預けた。
『タチバナ』と言う希望を持たせてッ!
「それが『神』の意思だからよ……
理解できないなら理解しなくていいわ
『 反 逆 者 に は 罪 と 罰 を 』
……チャー、覚悟はいい?」
ゆっくりと構えるコウ……
「!!……よし、わかった……やろうか?」
それに答えるチャー。
シルビアは持っているケースをぎゅっと抱きしめた。
雨が…降ってた
やまない、雨
その日、私は病室のベッドから抜け出して、裏路地を歩いていたわ
行くあてもなかったし、いつも見舞いに来てくれるシバミには申し訳なかったけど…
でも、もうあそこに居ちゃいけない。
あのままあそこに居たら、きっと『神』の手が病院にも及ぶ
戦う『力』を無くした私を、彼らは裁きにやってくる
『神』の『尖兵』になったのはいつだっけ
あぁ、、そうね。
父さんと母さんを失った日。
あの日、私が…二人を……
ずっと忘れてた。
違う、忘れようとしてた。
ずっとそうやって、『のみ込んで消して』…
『のみ込んで』??
違う、『のみ込んで』もいなかった
ただ、『消し』ていた
逃げて、全てを消して、何も無くなった私に、神は話かけてきたわ
『シルビア…何もなくなっちゃったんだね。 そこは、冷たく暗いだろう。君は、深く潜りすぎた。 でも、大丈夫。 私とおいで、君が海の底にいるなら、全てを海に沈めてしまえばいい。 大陸を、全て海底に。 でも、君は方舟に乗るんだ。 アルマゲドンまでは、まだまだ神の尖兵が必要だからね。』
私は、神を簡単に受け入れた
神の与えてくれる『尖兵としての使命』だけが、私を動かしていた
でも、、あの日シバミに出会った
力は失ったけど、昔に置いてきた、忘れていたものを、思い出したわ。
もう、『神』の『尖兵』ではいられない。
そして、『神』も私を放ってはおかない
だから、シバミ達に迷惑はかけれない
でも、ドコへ?
そんな事を考えてた時、チャーが目の前に現れた
彼は死を覚悟した私に言った
「…これが神の意思なのか?」
私とチャーは、長い間雨にうたれてお互いを見つめていたわ。
------
そいつは、最初から歪んでいたわけではなかった。
ただ、人の為に…そう、純粋に他人の為だけに、
ためらう事なくその驚異的な能力を使い続け…
結果、そいつは歪ませた。
自分の能力の副作用により、自分の世界も信念も…
その在りようを、曲げてしまった。
一度曲がった針金は、もう一度曲げ直しても直線にはならない。
歪みきった彼が望んだのは…全ての支配。
だが、そいつの余りに強力な力に、世界は耐えられなかった。
それでもそいつは己の欲望のままに能力を振るい続け、
そいつの世界を歪ませきってしまった。
そいつの世界を、壊してしまった。
------
だから俺は来たのだ…
時間をねじ曲げて…
空間をねじ曲げて…
俺の居た時から『過去』にあたる、
だが別の世界の俺の中へ。
今度はできる限り能力を使わずに。
今度こそ、世界を支配するために。
ダイハード・ザ・キャットが効かない?
当然だ。この能力は、僕だけの物ではない…
俺の物でも、あるのだから。
何も知らない甘ちゃんの僕が
クソったれ恩知らずの土星を始末してくれたことは、
思い出すだけでニヤけてくる。
だが、土星がレッドと秀丸を滅ぼし、その土星を僕が滅ぼし…
それでもまだ、あの矢は見つからない。
ならば…鍵となるのは、この『コウ』だ。
コウを『始末』しなければならない。
だが、速すぎても、遅すぎても駄目だ。
コウの後ろに居る何者か。
世界を守るという美意識に酔った、神の尖兵気取り。
その尻尾を見咎めた瞬間…
コウ、貴様にこの世界では『多くは使えない』、
『究極の攻撃』を与えてやる…。
BUMP OF CHICKEN:ユグドラシル(生命の樹)。
存在すると言う事実をネジ曲げる、究極の一撃で…
コウをこの世界から『追放』する。
俺の名は……サトヨシ。
僕という惰弱な存在の中に隠れ住む、
最強のスタンド使い。
【スタンド名:BUMP OF CHICKEN
本体名:サトヨシ(一巡『前』の存在。
『僕』は『俺』を知らない)
能力:全てを曲げる。
能力を振るう度、世界は歪み、やがて壊れる】
「この『WWW』は地上最弱のスタンドだと…私は常々言ってるわ…」
コウはWWWを発現させる。今までの闘いの中でコウは常に『自分の実力を隠してきた』。シバミ、ムトウタチバナという強者の影に隠してきたのだ。
「我輩の『志』が故にッ!この『男の頭部』を守らなければならなかったのだッ!男は既に再生しつつあるッ!シルビアが『頭部』を届けさえすればッ!『ムトウタチバナの復活』は確実なのだァァァァ!」
コウはフッと口元をにやけさせると
「むさ苦しいわね…良いからとっととかかってらっしゃい。『頭部』なんて私にはなんの関係も無いけど…私達の聖書に『ムトウタチバナ』の名前なんてないの。」
と冷たく吐き捨てる。
「命まで奪いはしない…『L.A(ルイ・アームストロング)』ッ!つおおおおおおおッ!!」
L.Aはそのパワーで力任せにコウに殴りかかる。コウはWWWのいケーブルを『自分に接続する』。
「…行動パターン解析、回避行動書きこみ…」
ブオッ!
LAの拳が空を切る。
「そのスタンドのスピードなら…WWWを接続した私に当たることはないわ…そして…WWWッ!ケーブルをチャーに接続ッ!視覚・聴覚に『ウィルス』を流し込むわッ!」
チャーは突如目の前がゆがみ始め、耳鳴りが始まり混乱する。
「ぐおおッ!?なんだッ!?この…ッ!?」
コウはあたふたするチャーを無視し、シルビアに近づきはじめる。
「さぁ…『それ』を渡してもらいま…」
「 一 意 専 心 ッ ! ! 」
強烈な『気合』を感じ、飛びのくコウ。
ブオッ!
視覚・聴覚が麻痺しているはずのチャーが殴りかかってきていた。
―決意と使命―
それが『倒すべき敵』を察知したとでもいうのだろうか。コウはその様をみて恐怖する。
「我輩の…ッ!!命に替えてもッ!『シルビアを送り届ける』ッ!」
バグオオ!
連打!連打!連打!連打!連打!連打!連打!連打!連打!
乱打!乱打!乱打!乱打!乱打!乱打!乱打!乱打!乱打!
そこら中の者を鉄に変えながら徐々にコウを捕らえ始めるチャーの拳。
コウも服が所々金属化し始め、重量が増してWWWの書きこみに体が追いつかなくなり始める。
「そろそろ決めない…と…!?」
コウの目の色が変わる。周りの金属がくっついてバリケードのように自分を囲んでいる。それはコウ服が変化した金属にもくっついていた。
「我輩が目も見えずただガムシャラに打ちつづけているとでも思ったのかァッ!全ては貴様の動きを封じる為よッ!…さあ…観念するのだ…我輩の拳で…女を手をかけたくはないのだ…」
チャーはゆっくりとコウに近づく。
「アンタの『鉄に替える能力』…アタシの『WWW』とは相性が良いわよ…電気信号を通すものなら…アタシの『WWW』は相手を選ばないッ!」
一面金属化した床を通し、WWWの電気信号はチャーを直撃する。
「このまま『眠ってもらうわ』ッ!意識を失えばスタンド能力も消えるはずッ!」
チャーは眠らない。WWWの電気信号は確実にチャーの脳神経に信号を送ったはずだった。チャーはカッと目を開きコウをみた。
「コウよ…我輩は今ッ!『義』によってここに立っているッ!その前にはいかなるまやかしも振り払うことができるッ!LA(ルイ・アームストロング)…!我輩の神経の一部を金属化し、「神経を伝う電気信号を筋肉中に分散させている…ッ!我輩はこの場で死ぬだろう。だがしかしッ!この場に貴様をくぎ付けにすることは容易いッ!さぁ!シルビアよッ!走れッ!」
シルビアは震えながらうなづくとその場を離れ走る。病院を抜け、『ムトウのパーツ』の集まる場所へ…
「コウよ…もうこの場で戦う意味はあるまい…我輩は女に止めを刺したくはないのだ…もう我輩の前で女に死んで欲しくはないのだ…」
コウはそのセリフを遮るように言う。
「裏切り者に…『罰』をッ!『WWW』…!!!」
そして一部始終を見ていたサトヨシはスタンドを発現させた。
そしてニヤっと笑うと力を込めた。
「貴様の存在はこれで消える…誰も気付くことはない…。貴様は『始めからいなかったのだ』ッ!『 ユ グ ド ラ シ ル 』ッ!!」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ !
じわり・・・・
コウを包んでいた空気が、ゆっくりと「歪んで」ゆくのが、『俺』の眼に映る。
ユグドラシルの欠点は・・・「歪む」まで、僅かだがタイムラグが存在することだ。
まぁ・・・そんなものは『俺』の技量でカバーできる。
じわり、じわり
確実に「歪み」は進む。
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「裏切り者に…『罰』をッ!『WWW』…!!!」
「ぬぅぅんッ!!」
「歪み」が完成する瞬間だった。
破れかぶれだったのか、己の意思でそうしたのかは分からない。
チャーが、コウを突き飛ばした(実際は体当たりなのだが)。
・・・・ふざけるな!
止むを得ん、コウは、ここで確実に「消しておかなくては」ならないッ!!
『俺』は再び、コウに「歪み」の照準をあわせた。
・・・・加熱し、冷静さを失った、イカれる寸前の頭で。
サトヨシは先ほどから照準を合わせるが、絶妙なタイミングで避けられる……
いや避けられると言う表現では少し場違いだった。
「……コレはッ!?」
サトヨシはおもむろに二人の間に姿を現す。
「裏切り者には『罰』をッ!」
「ぬるいわッ!」
サトヨシが姿を見せたにも関わらず二人は尚も戦い続けているッ!?
「……フフ……ハハハッ!ハァーッハッハッハッハッ!!」
サトヨシはいきなり笑い出すとBUMP OF CHICKENで二人をかき消す。
「 あ の ビ チ グ ソ 共 が ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ァ ッ !!」
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「本当に私の『WWW』と貴方の『LA』は相性がいいのね」
「いや、アレはお主の発想が生んだ賜物だ……
我輩には到底思いつかん『金属化した壁や床を利用して幻像を作り出す』など……」
先ほどの場所から離れるように駆けるチャーとコウ。
「難しい事じゃないわ……過去にも一軒居酒屋を燃やした事もあるしね」
コウは思い出したようにクスッと笑って見せる。
「だけど、貴方の様な人があの組織にいるなんて思いもしなかった……」
「教団も初めはあの様な方針ではなかったのだ……しかし、あの男が着てからと言うもの、あらぬ方向へと進みだしてな……」
「そうみたいね……古参の『教団側の人間』は全て殺されたと聞いたけど?」
「我輩が全て処理した……もちろん、殺してなどいないがな。
それより、お主の方こそ何故だ?今の状態に陥ってからと言うもの入団するものは歪んだ意思の者達だというのに……」
チャーの質問に少し照れながらもコウは答える。
「貴方と理由は変わらないわ、『守りたい人』が居るからよ……」
「ヌハハハ!お主、スパイと言う訳かッ!自ら危険に飛び込んでまで助けようとは、お主相当そやつに入れ込んでおるな?」
豪快に笑い飛ばすチャー。
コウは顔を赤らめ下を向いている。
「しかし……先程の輩は一体……?」
「さぁ……?でも、勝てるような相手じゃない……『教団』が気付いて私達を殺しに来たのかしら……?」
「……『裏切り者は殺せ』か……ま、戦うにしても逃げるにしてもシルビアとは引き離さんとな」
二人は走り続ける。
追ってきてるのは『教団』ではなく……
『最凶のスタンド』だと知らずに……
「いったい、、何があったんだ、、!?」
むき出しの鉄の奇妙な造形と瓦礫を間も辺りにして、シバミ達は息を呑んだ
しかし、ここで何があったのかを語る当事者は、いない
「くそぅ! コウは、、シルビアは無事なのかッッ!?」
苛立つシバミ
コウのスタンドは戦闘には向いていない
シルビアはスタンド能力を失っている
それを分かってたのに、何故2人から離れたの!?
もう、絶対シルビアを危険な目に遭わせないって決めたのに!
「くそぉぉぉーーーッ!!」
目の前の分厚い鉄の壁に素手で殴りかかるシバミ
ガシィ!
「 、、ッッ!?」
「シバミ、やめろ! お前がそんな事しても状況は変わらない!!」
「 ザキ、、。」
「大丈夫、コウの能力を信じるんだ。下手すりゃ俺たちより強いぜ、アイツは。」
「そうですぜ!コウの姉御をなめちゃいけねぇ!!」
シバミは目を潤ませて訴える
「分かってる!分かってるよ!?コウのW・W・Wがスゴイのは私も充分知ってるッッ!」
「シバミ、、。」
ザキはシバミを優しく抱き、肩を叩いて落ち着かせた
「じゃあ、なおさらもう、、」
「だって、最近はお酒を隠してもいつも簡単に検索されて見つかるし、後でこっそりお酒に変えようって思って買ったミネラルウォーターもすぐにスキャンされて没収されるし、しまいにはお酒を買う為にお金をおろす時だけ何故かいつも口座が凍結されるんだよーーッ!!W・W・Wは強すぎるゥーーッッ!!」
「、、、、、。」
ザキは全身から力が抜けていくのが分かった。
後ろのヒデエモンも同じみたいだ。顔がどうしようもないくらいがっかりしている。
(ま、、こんだけ言えるなら、大丈夫だな。)
ザキはシバミにもう一度話しかけた
「、、、とにかく!ここにこれ以上いてもしかたない、コウを捜そう!な!? シルビアもきっとコウが守ってくれて、、」
「それは、、少し違うな。」
「え?」
3人と少し離れた所から、ERがザキの言葉を遮った
「残念だが、、私の知っている情報は君たちにとって良くない話みたいだ。」
「どういう事でぇ!」
「、、ER?」
ERはシバミ達を見た
(ここで、真実を告げるのは心苦しい、、が、しかたがないな)
「コウは、君たちが仲間だと思っているコウは、、敵だ。」
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あれは、、シバミ達か、、
くそ、コウを始末しようと思ったのに、これでは姿を見られる危険が多い
それに、僕の意思もそろそろ覚醒する頃だ
まぁいい、僕は確実に歪んでいく
俺の『自由』を手にするのも、時間の問題
コウは近いうちに必ず始末する
そしてふざけた神とやらも
邪魔な奴は全て、このBump of Chickenが葬ってくれる
なぁに、機会は自然に手に入ってくるさ
今回はたまたまタチバナの友人を見舞いに来ただけ
ただそれだけ、、、
じゃあな、交代だ。脆弱な『僕』
、、、
、、、僕、、は?
あれは、、シバミさん?
「それはないッ!」
即答した。
一瞬、場が沈黙に包まれる。
「シバミ君…。君の気持ちも解る。
だが、これは間違いなく…」
「別にドクターの言っている事が、
『嘘だ』と言うつもりじゃないの」
あっけらかんと。
何も考えていないような笑顔で。
「だから、コウは敵の軍団…軍団?軍勢?軍隊…」
「軍隊は違うな…多分」と、ザキ。
「ま、敵のなんかに所属してるんでしょ。
でも、コウは私たちの敵じゃあないの」
言葉を失う、ER。
「解りやしたか、お医者の先生よォ…
なんで俺っち達が、シバミ姐さんについて来たか」
ERの視線を受け、またシバミは笑った。
何にも悩みがないような、満面の笑みで。
溜め息と共に、額を掌で軽く叩くER。
「全く厄介な患者だ…
だが私も医者だ。自分の患者は見捨てられん」
「……本音は?」ぼそり、と聞くザキ。
「男なら見捨てられるが、
一部けしからんから見捨てられん」
…。
「ま、まあともかく…お医者の先生が仲間なら、
俺っちも今まで以上に無茶ができるってぇもんだな!」
「エーッ」
「マダムチャシタリナイノカヨッ」
「オレタチャカロウシシチマウヨー」
「ストレートスルゾッ、ストレートッ」
「ばっきゃろぃ!それを言うならストライクだろ!」
「…突っ込まないわよ」
「あ、あのぉ…」
不意にかけられた声の主に、四人の視線が集中する。
引く、青年。
「あ、えっと、お取り込み中すいません…
ムトウタチバナに頼まれまして、
シバミさん達にお見舞いの花を……」
人の良さそうな青年は、大きな花束を差し出す。
(それにしてもどうかしてるな…
お見舞いに来たのに、花を待合室に置き忘れるなんて…)
――貴様ゴトキガ…俺ト言ウ真実ニ…辿リ着ク事ハデキナイ…
「ん?何これ。メッセージ付き…?」
花の間に挟まれた紙を開くシバミ。
"これで酒の臭いを消しなさい。
他のまともな患者さんに迷惑ですよ、ビッチ…失礼"
「っンだとぉーッ!」
「うわあっ!す、スイマセンッ!
何だか知らないけどスイマセンッ!!」
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「悪いが君の事は信用できんな」
煙草の煙が、ゆっくりと天井まで登って行く。
「ほう…信用、できない、と」
テーブルの下、全てを破壊する拳が現れる。
「ああ、信用できん。
… だ が … 」
ピクリッ
神の使徒は、拳を僅かに震わせ、そして緩めた。
「世界が滅ぶというその話…
俺も、別の人物から聞いている」
「――女帝、か。
まさかそこまで掴んでいるとは…驚きだ」
「驚きはこちらの方だ。君の情報網とやら、
かなり『優秀』の様だな」
眉一つ動かぬ鉄面皮(ポーカーフェイス)で、
二人の会話は続いていく。
「では、神の尖兵となってくれるのだな?」
「勘違いするな。
この件に関して依頼を受け付ける……
これはビジネスの話だ。そうだろう?」
見詰め合う、二人の男。
「……いいだろう。
だが、先ほども言ったとおり……
確実な証拠を掴むまでは、本題を『実行』に移すのは危険だ。
とりあえずは、私の意図に従って貰う」
「構わない。
仕事ができ次第、連絡をくれ」
一人の男が立ち上がり、
もう一人の男は頷いた。
「ああ、そうだ…
基本的に俺は、客にサービスはしないんだが…
あんたには特別に言っておいてやる。
変な動きをしたら、あんたも潰す」
「大変だな、その掃除は……
大仕事になるが、ボランティアか?」
「こう見えてもエコロジストでね。
地球を大事に、ゴミはゴミ箱に、な」
二人の男は、睨みあいながら、声だけで笑う。
(経験で解る。こいつは『邪悪』……)
(賞味期限切れの固茹で卵が……)
――だが、どうやら今は、
そんな事を言っている場合ではないらしい。
「お前の手駒は2枚だな?
生き過ぎた女帝に、助手の孫娘」
「手駒じゃあない。仲間だ。
そして、もう一人忘れている。
感動の風を巻き起こす、やさぐれたロッカーをな」
「フン。
……では、宜しく頼むぞ、掃除屋バーレル」
神の尖兵長、ケイ。
掃除屋バーレル。
世界の崩壊を防ぐ為……
契約、完了。
第11話『信念に生きる者達に、花束を』
To Be
Continued... ・外伝『モリーズ アナザー エピソード』