【18時40分】
「確か、茜が『サヨナラ』ッて言ったところまでは覚えている。
急にあたりが真っ暗になって、
それで……。」
――シバミ一行到着。
真っ赤に染まる、コウの身体。
崩れはじめているW・W・W。
「コウゥゥーーーーーーッッ!!!」
シバミが咆哮がこだまする。
「クソッ!なんてこった……」
「……お、お嬢…。」
ヒデエモンとザキが怒りに震える。
顔に手をやり、うつむき加減で沈黙を続けるDr。
「えッ!?ちょっと待ってみんな!!
私はここにいるよッ!
ねぇッ!?
どうしてッ!!
ちょ!!
あんたもなんとか言ってよッ!!」
必死で男平に語りかける。
が、その声は届かない。
男平が静かに口を開いた。
「すまない。俺がいながら……。一瞬の事だった。アイツらが煙の中に消えたと思った、その瞬間だった…。
彼女は既に……。」
顔を俯け、背を向ける男平。
「アンタッ!!なんでッ!?どうして助けてくれなかったよォォォォ!!まだ、コウと色々やりたい事、いっぱいあったのに……。」
シバミは怒り散らし、その場に泣き崩れた。
その時、コウは全てを理解した。
今、自分の置かれているその状況を。
「そっか……。
シバミ、それにみんな…ゴメンね。
私、死んじゃったみたいだね。」
シバミは、私の亡骸を抱き締めて・・・大声で泣いている。
ザキとヒデエモン、それとドクター、おまけに赤倉とかいう男も、沈痛な表情を浮かべていた。
皆、私の死を悲しんでいる・・・・・・。
・・・・・・このまま死ぬなんて、私には似合わないわね。
名前も、顔も思い出せないけど・・・・・・
私を救けてくれた人の為にも、そして、私の『大切な人』・・・・・・
シバミの為にも、何かを遺さなければ。
少しずつ、私の身体は透けていってるみたい。意識も、薄くなってきた・・・・・・もう、時間がないみたい、ね。
私が、最期に出来ること・・・・・・皆にしてあげられること、それは・・・・・・
もう、殆んど消えかけていた『ワールド・ワイド・ウェブ』がバチッ、と火花を散らす。
「ッ!」シバミは消え逝くWWWを視た。
WWWの火花は徐々に激しくなり・・・・・・周囲を真っ白な世界に変えんばかりの眩い閃光となって、シバミ達を飲み込んだ。
・・・・・・闇の中、横たわるコウ。
その傍らに、誰の記憶にも存在しない、巨躯の漢。
ぐにゃり。
コウの近くの空間が歪む。
漢はそれに気付いて、コウを突き飛ばした。
そして - 歪んだ空間に飲み込まれ、消滅する。
歪んだ空間が、元通りになろうとする、その向こう側 - 一人の、青年の姿が観えた。
その青年は - 。
・・・・・・シバミ、貴女に出逢えて良かった。
私は、後悔なんてしていない。
貴女と過ごした日々・・・・・・長くはなかったけれど、私の人生の中で、一番楽しかったわ。
これから先、苦難の道が待っていたとしても・・・・・・貴女なら、大丈夫。
きっと、どんな苦境でも乗り越えられる筈。
あ、でもお酒の呑み過ぎには気を付けてね。
それだけは心配だわ。
ザキ、シバミを頼んだわよ・・・・・・それと、もっとしっかりしないと、尻に敷かれっぱなしになるんですからね。
ヒデエモン・・・・・・貴方が建てる家に、住んでみたかった。
いつも見守っていてくれて、ありがとうね・・・・・・カーペンターズ、あまりコキ使っちゃダメよ?
・・・・・・もう、時間ね。
さよなら、みんな・・・・・・ありがとう・・・・・・大好きよ。
【本体:コウ/スタンド:ワールド・ワイド・ウェブ - 死亡】
「今の・・・・・・は?」誰ともなしに、呟く。
まるで白昼夢のような光景は、既に消えていた。
そして、WWWも消滅していた。
「『アカシック・レコード』・・・・・・と言うものがある。」赤倉が呟く。
「宇宙や人類の過去から未来まで、歴史の全てが記されていると言われる、一種の記録をさす概念らしい。」懐から煙草を取りだし、口にくわえて火を着ける。
「彼女の能力は、『情報を操作する』ものだったようだな。恐らく、最期の力を振り絞り・・・・・・」フーッ、と紫煙を吐き出して、赤倉はシバミを見つめた。
「最期の力を振り絞り、『アカシック・レコード』から情報を引き出したんだろう。この『場所の記憶』・・・・・・・『残留思念』を。」煙草の火を消し、携帯灰皿に入れる。
「そこまでして、彼女は君にあの光景をみせようとしたんだ・・・・・・彼女の死を、無駄にしてはいけない。」ぽん、と赤倉はシバミの肩に手を置いて励ました。
「ありがと、オジサン。」弱々しくだが、微笑むシバミ。
「オジ・・・・・・!?」軽くショックを受ける赤倉。
「それにしても・・・・・・さっきのアイツ、まさか・・・・・・」
「あぁ、まさか・・・・・・信じられないけど、あれは・・・・・・」ザキとヒデエモンは、信じられないといった表情を浮かべてシバミを見る。
「うん・・・・・・間違いない。さっきのあの顔・・・・・・アイツは・・・・・・」
「『サトヨシ』ッ!!」三人の声が重なった。
「信じられない・・・・・・信じられないけど、コウが最期に遺してくれたメッセージ・・・・・・間違ってる筈がない!」グッ、と拳を握り締めるシバミ。
「最後に観えた、コウにトドメをさしたあの女をブチのめす。それと、サトヨシに訊かないとね・・・・・・何故、コウを狙ったのか。」ザキとヒデエモンも頷く。
「あぁ・・・・・・コウの敵討ちだッ!」
「絶対にゆるせねぇ!てやんでぇ!!」
闘志を燃やす三人に、赤倉が話しかける。
「良かったら、私も手伝おう・・・・・・彼女の事は、私にも責任があるからな。」
「えぇ、ありがとう。絶対、コウの敵を討つわよッ!!」バッ!と手を突き出す。
その上に、三人も手を重ねる。
「見ててね、コウ・・・・・・私、やるわ!」シバミの瞳の奥で、炎が揺らいだ。
決意の、炎が。
シバミ達が去った後、赤倉は以前その場所に立っていた。
手には『矢』と『写真』が握られていた。
(まさか、彼女が『矢』の所持者だったとは……
『コレ』の存在が外部に知られるのは危険だ。
早急に財団に届けなければ……
それまでは、私が管理せざるをえないな。
それれ……彼女が持っていた写真……
『確かに』一人の男性と一人の女性が映っていたはず……
この街で、何か奇妙なことが起こっているようだ。
こちらも調査しなければならないな……)
赤倉は荷物の中に『矢』と『女性一人が映った』写真を入れ、その場を後にした。
――――――
「……以上です。
ケイ様が仰られていた『欠落』が発生したので連絡のために帰還しました」
「ねぇねぇ☆ケイちゃん、ナデナデ~」
そういわれると、ケイは自分よりも背の小さい茜の頭の上に手を置き、撫でてやった。
しかし、その表情からは決して『愛情』だとかいう感情は見て取ることができない。
「三人とも御苦労だった。
しばし待機、連絡は後ほど行なう」
三人が部屋を出ると、ケイはソファーにゆっくりと座り、笑みを浮かべる。
「フフフ……サトヨシめ……
前の世界のようにはいかないぞ。
今の私は、前の世界のように甘くはないぞ……
今の私は『救世主』じゃあない。
今の私は『十字軍』
神のためなら、容赦無く眼前敵を圧倒し、撃滅し、打ち滅ぼす。
せいぜい、山羊を導いていい気になっているがいい……」
歯車は『再び』動き出す。
第12話『一意専心 ~信念に殉じた男~ 』
To
be continued...